木造一戸建ての防音性が気になる!戸建てに引っ越しても木造なら騒音トラブルに悩まされるってホント?

今回は、戸建て住宅の中でも、木造一戸建て住宅の購入を検討している方が不安に思うケースが多い、「戸建てと騒音」の関係について解説していきたいと思います。一般的に、各ご家庭の生活空間が、物理的につながっている集合住宅と比較すれば、独立して建築される戸建て住宅の方が音の悩みを抱えるリスクが少ないと考えられています。しかし、実際に木造一戸建ての購入を検討した場合、

  • ・木造の戸建て住宅で騒音トラブルが増えていると聞いた…
  • ・木の家が良いけど、音漏れが不安…

このような悩みを抱えてしまう方が多くなっていると言われています。実際に、大阪市内など、都市部の戸建て住宅になると、家と家の距離が非常に近くなっていることから「戸建てなら音の心配がない!」と考えて購入した方が、ご近所さんと騒音トラブルに陥ってしまう…というケースが多くなっていると言われています。

そこでこの記事では、木造一戸建ての防音性能や、騒音トラブルを引き起こさないためにどのようなことを考えておくべきなのかについて解説していきたいと思います。

建物の構造で防音性能は変わる

それではまず、建物構造によって防音性能がどれほど変わってしまうのかについて簡単に解説しておきます。戸建て住宅でも集合住宅でも同じですが、建築方法によって建物構造が異なり、どのような構造の建物になっているのかによってさまざまな機能性が違ってくるのです。

そして、一般的に、賃貸住宅を選ぶときも、音に敏感な方は木造ではなくRC造やSRC造の建物を選んだ方が良いとされています。日本国内では、高温多湿な気候であることから、通気性の良い木造が人気なのですが、この通気性の良さは、空気だけでなく音を通すという特性を持つことになり、騒音トラブルを抱えやすくなってしまうのです。

ここでは、建物構造ごとの防音性についてご紹介しておきます。

遮音等級 建物構造 音の聞こえ方
L-35 日常生活上で気になるような音はほぼ聞こえない
L-40 SRC造 高い防音性を持ち、外からの音が軽減される
L-45 子供の泣き声・足音が少し聞こえる程度
L-50 RC造 子供の泣き声・足音が聞こえる
L-55 洗濯機・掃除機の音が多少聞こえるが気にならない
L-60 重量鉄骨造 足音・ドアの開閉音など、振動を伴う音が聞こえる
L-65 軽量鉄骨造 多少は音が軽減されるが、生活音はほぼ聞こえる
L-70 L-75よりはマシだが、大差はない
L-75 木造 隣家のテレビなど、生活音がかなり聞こえる

参考:音環境運営委員会「建築物の遮音性能基準と設計指針(第二版)

この表からも分かるように、木造の建物は、他の建築構造と比べた場合、遮音性能が最も低くなります。集合住宅などであれば、隣家の生活音が普通に聞こえてしまう物件がほとんどと考えておきましょう。なお、鉄骨造については、木造よりは多少ましという程度で、防音性能を重視したいと考えているのであれば、RC造(鉄筋コンクリート)以上のしっかりとした建物構造のマンションを選択すべきです。

木造住宅の防音性について

上で紹介しているように、木造住宅は、他の建物構造と比較すると、最も防音性が低くなってしまう構造といえます。

基本的に、住宅の防音性というものは、密度が高い構造であるほど高くなるもので、そのため「鉄骨鉄筋コンクリート造>鉄筋コンクリート造>軽量鉄骨造>木造」の順に防音性が高くなると言われているわけです。鉄筋コンクリート造などになると、構造体内部にコンクリートが満たされていますので、音を非常に通しづらい環境を作ることができます。一方、木造の場合、「隙間風が…」などといった冗談が存在するほど気密性が低い構造となり、この特徴から防音性が低くなってしまう訳です。なお、日本は高温多湿という気候であることから、そもそも防音性をそこまで配慮せずに家が作られていた時代背景がある点も非常に大きいです。現在の戸建て住宅は、壁に囲まれ、採光のために窓を取り付けるのが一般的ですが、古い日本家屋は、壁や窓すら存在せず、襖や障子によって各部屋を隔てるような構造になっていたのです。つまり、古い日本家屋は、外からの騒音の侵入など完全に無視していたわけですね。

とはいえ、現代社会でこのような住宅を作るわけにはいきませんので、現在では、木造住宅でもしっかりと防音対策のことを考えられて建物が建てられるようになっています。実際に、「木造だから騒音トラブルに巻き込まれる!」のかというとそうではなく、ハウスメーカーの中には、以下のような工夫を施し、音の問題を抱えずに生活できる環境を目指しているケースも多いです。

  • ・気密性を高めて外からの音の侵入を防ぐ
  • ・高い遮音性を持つ外壁材を使用する
  • ・断熱材や石膏ボードを重ねて施工し、密度を上げる
  • ・吸音性のある床材を使う
  • ・高い遮音性を持つ窓ガラスやサッシを採用する
  • ・窓シャッターを設置する(メインは防犯効果です)

ハウスメーカーの中には、上記のような対策を施し「防音性が高い」ということを売りにする場合が増えています。ちなみに、防音性が高い住宅の特徴については『高気密・高断熱』という性能を持っているので、高い防音性だけでなく、省エネ効果ももたらせてくれると考えても良いですよ。

気密性が高い住宅の注意点

上述したように、『高気密・高断熱』は高い防音性を持っていると考えて構いません。気密性が高いということは、それだけ家に隙間が少ないという意味ですので、外から侵入する騒音をシャットアウトしてくれるからですね。

ただ、高気密を実現している住宅については、外からの音を軽減できる一方、「室内の音漏れ」には無防備であるという注意点が存在します。これは、機密性が高いという特性から、家の中で発生した音が外に漏れていかなくなることから、家の中にこもって響いてしまうことになるからです。実際に、高気密住宅が広く普及してきた現在では、外の音に対する防音ではなく、ご家族間での騒音問題が頻発するようになっており、我々のような防音工事業者に、「テレビの音がうるさいので受験対策のために防音工事がしたい」といった感じに、家の中の防音対策が急増しています。

ちなみに、このような家の中での音漏れについては、「木造だから」音漏れするのではありませんよ。鉄骨造やRC造の建築物についても、気密性が高い建物であれば、室内の音はどうしても響いてしまうものなのです。実際に、SRC造など、本来は防音性が非常に高いと言われるような建物構造のマンションなどでも、「上の階の足音がうるさい…」といった感じで、建物内で生じている音が伝わり、騒音トラブルに発展してしまうケースは少なくないのです。

防音性が高い木造戸建てを建てたい場合

それでは最後に、高い防音性を実現した木造戸建て住宅を建てるための注意点について解説しておきましょう。

①間取りの注意点

戸建て住宅を建てて、音の問題で悩まなくて良い環境を作るには、間取りに注意すべきと考えてください。

一般的には、吹き抜けや広いリビングなど、憧れの戸建て住宅を建てる時には「大空間」を求める方が多いです。確かに、大空間がある家はかっこいいと思うのですが、音はドアや壁の数が多いほど遮る事が出来るわけですので、広いリビング・吹き抜けなどは音が筒抜けになる原因になってしまいます。
最近の戸建て住宅では、家族のコミュニケーションがとりやすい間取りが人気で、「広いリビングに吹き抜けを設ける」や「リビング階段を採用する」などが人気です。ただ、こういった間取りは、ご家族間の生活音が響いてしまい、音の悩みを抱えてしまう原因になるので、音の敏感な方にはオススメできません。

②吸音性の高いマット・ドアを採用

家の中において、音が響きやすいのは、以下のような場所と考えられるでしょう。

  • ・成長期の子供部屋(室内を走り回るなどの足音)
  • ・いびきがうるさい人の寝室
  • ・大音量でTVを視聴する人の部屋
  • ・トイレ、お風呂など、水回り付近

このように、家の中の騒音源をきちんと分析し、適切な防音対策を施すのがおススメです。例えば、子供部屋がいつも騒がしい…という場合、床に吸音性の高いコルクマットなどを敷いておくことで、足音などが響きにくくなるでしょう。
他には、特定の部屋から大きな音が生じるという場合、その部屋のドアを防音ドアに交換することで、他の家族に音で迷惑を掛けないようにするといった対策がオススメです。なお、ご家族間で生活時間が異なるという場合、間取りの面から注意しておかなければいけません。例えば、「大学生の子どもがいていつも深夜にお風呂に入る」などという場合、隣や真下に寝室を作ってしまうと、夜中のシャワーの音などで、他の家族の睡眠が妨げられてしまう恐れがあるでしょう。ご家族間の生活時間が異なるという場合、トイレなどの配置もきちんと考慮しておきましょう。

③防音室を導入する

最後は、子供が自宅で楽器を演奏する…など、特別大きな音を生じさせる可能性があるという場合です。楽器の大きな音などに関しては、いくら気密性が高い住宅だとしても、家の外に音漏れしてしまいますので、ご家族間の防音対策以前に、防音室などを作らなければならないと考えておきましょう。

ただ、コロナ禍を経験した現在では、自宅で楽器を演奏するなど、特別大きな音を出すわけではないケースでも、防音室が求められるケースが増えています。例えば、コロナ問題以降、テレワークが導入されたことから、自宅で仕事をするようになった、子供の塾がリモート学習を導入したので集中して自宅学習ができる環境が必要になったなどですね。
このようなケースでは、ご家族が出す音で集中力を乱されてしまうという問題や、その逆にご家族が「静かにしないといけない!」ということをストレスに感じてしまうなど、さまざまな問題を引き起こしてしまいます。そのため、自宅でも落ち着いて仕事や学習ができるよう、テレワーク・リモート学習専用の防音室を導入するケースが増えています。

まとめ

今回は、木造戸建て住宅の防音性について解説してきました。日本の戸建て住宅は、そのほとんどが木造で建てられているのですが、これは、高温多湿な気候であることから、ある程度の通気性を確保しておかないと、湿気などによって家の劣化が早くなってしまうからです。

ただし、近年では、空調機器など、さまざまな面で高機能化していることから、住宅の高気密化が進んでおり、木造住宅だからといって「絶対に騒音に悩まされる!」かというとそうでもないのです。注意が必要なのは、気密性が高い住宅が実現することで、家の中で発生した音が外に漏れていかなくなることから、ご家族間で音の問題を抱えてしまうケースがあると言われています。
この記事では、戸建て住宅を建てる時の注意点などもご紹介していますので、これから憧れのマイホームを建てるという人はぜひ参考にしてみてください。

スタッフ A

大阪で20年間にわたって防音工事に携わってきました。
防音工事に関しての事、音に関する豆知識などを配信しております。

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