『防音室』の条件!自宅に防音室が欲しい人が知っておきたい費用感と構造について

近年では、マンション暮らしの方が増えた、戸建て住宅ごとの距離が近づいてきたなどと言った理由で、生活音を原因とする騒音トラブルが増加しています。さらに2020年以降は、新型コロナウイルス感染症の拡大などがあり、日本国内でもテレワークが一般化してきたことで、騒音に悩まされる方が急増していると言われています。

こういった状況から、最近は「窓のみ」「壁のみ」など、部分的な防音リフォームを検討し始める方が多くなっています。それでは、もともと防音工事業界で行われていた、防音室を作る工事とは何が違うのでしょうか?部分的な防音リフォームで騒音を防げるのであれば、「防音室まではいらないのかな?」と考えてしまう方もいるのですが、部分的な防音対策と防音室は根本的に違うものだと考えた方が良いです。

そもそも防音室に関しては、高い遮音性能を備えた部屋のことを指しており、浮構造などにすることで、室外への透過音を抑えたり、室内への雑音や騒音の侵入を防ぐ目的で作られるものです。そして、部分的な防音リフォームは、「公園の子供の声がうるさい」「上階の足音がうるさい」など、騒音を防ぐのが主な目的なのですが、防音室は遮音や吸音で騒音を防ぐだけでなく残響なども計算されているという特徴があります。というのも、防音室は、自宅で楽器の演奏をするといった方やホームシアターを楽しみたいという方が施す工事で、単に音の侵入や騒音源になることを防げば良いというものではないのです。

防音室は、「その部屋で何がしたいのか?」という目的に合わせて、遮音・吸音のバランスを考慮し、室内の音の響きにまで気を配ることが大切な工事ですので、部分的なリフォームとは一線を画す難しさがあります。そこでこの記事では、防音室の基礎知識をご紹介します。

防音室が持つ性能について

防音室と聞くと、部屋に遮音性能を持たせることで、室外への音漏れを抑えたり、室外からの騒音が侵入しないようにする部屋という理解になると思います。確かに、防音室は、部屋の中に部屋を作るといった工法で、壁を二重にする浮構造や、壁や床、天井などに厚みや密度の高い素材を採用して、音を遮断する工事が施されます。しかし、単純に音漏れや音の侵入を防ぐだけでは、居心地の悪い部屋になってしまいますし、音の反響などもしっかりと計算された部屋にしなければいけないのです。

ここではまず、防音室のポイントとなる『遮音・吸音・残響』の3つの部分についてご紹介しておきます。

防音室の基本となる『遮音』

防音室の基本は『遮音』です。遮音とは、空気中を伝わる音を跳ね返すことで、室内で生じさせた音が外に漏れていかないようにする対策のことを指します。この遮音性能に関しては、空気音の遮音性能を表す「D値/Dr値」と、床への衝撃音に対する遮音性能として「L値」が採用されています。

分かりやすく解説しておくと、遮音対策が施されている室内で、90dB程度の音が生じる楽器をならしたとしましょう。この時に、外への透過音が40dBになっていた場合、90dBから40dBを差し引いた数値が遮音性能で、「D-50」などと表記されます。ちなみに、一般的な防音室では「D-50:小さく聞こえる」「D-55:かすかに聞こえる」「D-60:ほとんど聞こえない」と言った性能評価になっています。

遮音性能は、数値が高ければ高いほど高性能で、外に漏れ出る音が小さくなります。しかしその反面、遮音性能だけにこだわると、室内で音が反響しすぎてしまい、自分がならした音を聞き取りにくくなるなどの問題が生じます。

透過音や反響対策のための『吸音』

遮音は、上述したように、音を跳ね返すことで外に漏れていくのを防ぐ方法です。これに対して、吸音は、音を吸収することで、室外へ漏れていく音を間接的に抑えるといった対策になります。

そして、吸音対策は、音が反射することもある程度防ぐことが出来ますので、遮音のデメリットである室内の反響もおさえることができ、楽器演奏などに適した環境を作ることができます。

吸音には、グラスウールやロックウールなどの多孔質素材を用いるのですが、これらの素材は断熱材としても有効で、部屋の断熱性能を高めてくれるという副次効果も期待できます。これらの素材は、細孔に音を取り込んで中で拡散させ、それを吸収することで、透過や反射を防ぐという仕組みになっています。防音は、遮音と吸音をバランスよく組み合わせなければ、快適な部屋が出来上がらないと考えましょう。

防音室は『残響』に気を配ることが重要

そして最後は『残響』です。防音室を作る工事まで行う方は、楽器の演奏や音楽鑑賞、映画鑑賞などが目的ですので、室内からの音漏れを防ぐだけでなく、「美しい響きのある空間」を作る事も大切だと考えるはずです。単に、遮音性能を高めて音漏れしなくなっても、反響音でまともに音が聞きとれなくなる…なんて状態では、使用目的を果たすことはできませんよね。

音は、壁や天井、床に反射すると、室内に響きが残ります。そして、これが『残響』と呼ばれるのですが、遮音性が高すぎると、反響しすぎますし、吸音性が高すぎると音が吸収されてしまい残響がなくなってしまいます。残響が少ない状態になると、味気ない音になってしまい、高いお金をかけた防音室に不満を感じてしまうことでしょう。

したがって、室内に響く音質までこだわるのであれば、防音室内で演奏する楽器の種類や、どういった音楽・映像を流すのかをきちんと考え、遮音と吸音のバランスを計算しないといけないのです。防音工事の専門性が非常に高いと言われるのは、この部分の計算が非常に難しく、経験が非常に大切になるからです。最近では、一般のリフォーム業者が防音工事業界に進出してきており、「壁に吸音材を詰めれば良い。遮音材を貼れば良い」などの考えのもと施工を進めますが、その結果出来上がるのが、音を楽しめない防音室ですので業者選びは注意してください。

防音室が必要になるのはどんな人?

防音室は、どの程度の広さなのか、何を目的にしているのかによっても変わりますが、最低でも200万円弱は必要になる非常に高額な工事です。例えば、子供に本格的なピアノ用の防音室を…と考えた場合、6畳程度の防音室を想定すると、190~250万円程度は必要になると考えておきましょう。そしてこれが、ドラムなどの打楽器のための防音室になると、同じ部屋の広さでも500万円以上かかってしまうこともあるのです。

近年では、目の前の公園から聞こえる声がうるさいからなどと、窓の防音工事を行う方が増えているのですが、こういった部分的な防音工事であれば、10万円程度からでも可能です。つまり、防音室を作るまでとなると、一般的な防音リフォームとは比較にならないほどのコストがかかってしまうのですが、どういった方が防音室を必要とするのでしょうか?
ここでは、防音室を作るリフォームがおすすめの方について簡単にご紹介しておきます。

楽器の演奏を考えている方

防音室を作るまでの工事を行う方の代表が「自宅でも楽器の演奏がしたい」という目的がある方です。楽器の音色はどれも美しいものですが、その音を聞きたいと思っていない時に聞こえてくると、単なる騒音に感じてしまう方が多いです。そして、楽器の音量というものは非常に大きく、何の防音対策もしないまま夜間に演奏などをしてしまうと、ほぼ確実に騒音トラブルが発生してしまうでしょう。

したがって、自宅でも楽器の演奏をしたいとお考えの方は、防音室が必要と考えてください。なお、楽器はそれぞれ決まった音域がありますので、その音域に合わせた防音工事を提案してくれる業者に依頼しましょう。

ホームシアターを考えている方

新築などで、ホームシアターを設けて、大きな画面、迫力のある映像や音を楽しみたいと考えている方も、防音室が必要と考えてください。以前、ホームシアター用の防音室についてまとめた記事でご紹介していますが、ホームシアターは、サウンドシステムなどが普通のテレビとは異なりますので、何の対策もせずに映画を楽しむなんて生活をしていると、すぐに苦情が来ると考えておきましょう。

特に、ウーファーを利用して重低音まで表現するのが普通ですので、広い周波数帯をカバーしなければならず、部分的な防音リフォームでは気兼ねなくホームシアターを満喫することなどできないと思います。

まとめ

今回は、本格的な防音室の基礎知識について解説してきました。近年では、生活音を原因とする騒音トラブルなどが増えていることから、部分的な防音リフォームを検討する方が多くなっています。例えば、窓部分の防音能力を高めるため、二重窓にする工事を行ったり、集合住宅でペットを飼う時に床の防音工事を行うなんてケースが多いですね。

このようなことから、防音工事自体が身近な存在になってきており、一般のリフォーム業者などが防音工事業界に進出してくるようになっています。ただし、この記事でご紹介したように、防音室を作るまでの工事になると、部分的な防音リフォームとは比較にならないほどの専門知識が必要になり、知識のない業者に依頼してしまった時には、「防音性能は確かにあるけれど、音の反射で長時間演奏することが難しい…」なんて部屋に仕上がってしまうことがあるのです。

防音工事は、単に遮音性を高める、吸音性を高めるといった単純なものではないので、工事を依頼する前にきちんと専門的な知識と技術を持った業者なのかはチェックするようにしましょう。

スタッフ A

大阪で20年間にわたって防音工事に携わってきました。
防音工事に関しての事、音に関する豆知識などを配信しております。

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