大きな音が出る現場は騒音対策が重要!工場などで発生する騒音性難聴について

今回は、工場など、大きな音が常に発生する環境における健康被害を解説していきたいと思います。現在工場で働いていない…という方でも、パチンコ店やライブハウスなど、大きな音が生じる場所に長時間滞在した場合、耳鳴りや耳が聞こえにくくなる…といった症状を感じたことがあるのではないでしょうか?実は、そういった症状は、騒音性難聴と呼ばれるもので、立派な健康被害と考えなければならないものなのです。

騒音性難聴は、作業に大きな音が伴うような金属加工工場で働く方は経験したことが多いのではないでしょうか?また、このほかにも、仕事中に耳鳴りの症状を感じたことはないものの、毎日のように騒音にさらされる環境下に置かれていれば、将来的に耳が悪くなってしまうのではないか…といった不安を感じてしまう方は多いと思います。工場などでの作業は、大型機械を使う訳ですので、「ある程度の騒音は仕方ない」と考えてしまうかもしれませんが、きちんと対策を施すことで、健康被害の可能性を低くすることはできるのです。

そこでこの記事では、騒音性難聴の基礎知識や、従業員を騒音から守るための対策などについて解説していきます。

耳鳴りの原因

誰でも今まで生きてきた中で、一度は『耳鳴り』を経験したことがあると思います。例えば、飛行機の地着陸時、車の運転中にトンネルに入った時などは、ほとんどの方が耳鳴りがするのではないでしょうか?こういった日常生活の中で経験する耳鳴りに関しては、急激な気圧の変化が原因となっていることから、ほとんどの方が体験することになるのです。

ただ、耳鳴りに関して、前述のような気圧の変化など関係なく、常に耳鳴りがしているような感じがする…、特に理由もないのに頻繁に耳鳴りがする…といった感じに、慢性的な耳鳴り症状がある場合は、病気の可能性があると言われています。
耳鳴りを引き起こす病気については、耳自体に何らかの問題が起きている「中耳炎・外耳炎・メニエール病」などがあり、その他にも、脳梗塞や脳腫瘍、高血圧などの病気が耳鳴りにつながるケースやストレスや老化による耳鳴りが考えられます。

そして、大きな音が常に近くに存在するような工場で働いている方などについては、長時間大きな音を聞き続けることで耳に異常が生じるケースがあり、これが騒音性難聴などと言われています。

耳鳴りの種類

常に騒音にさらされ続けるといった環境で働いている方は、自身の耳の状態をしっかりと押さえておいた方が良いですよ。耳鳴りに関しても、飛行機の離着陸時のみなど、明確な原因がある場合は、特に気にする必要のない軽い症状もありますが、常に騒音にさらされ続ける…なんて状態になると、耳鳴りがしている状態が当たり前になってしまい、自分でも耳鳴りしていることに気付けていない…なんてケースもあるようです。そして、そういった症状を放置してしまうと、騒音性難聴と呼ばれる症状になっていくのです。

職場などで、すぐ近くに騒音源が常にあるという方で、以下のような症状が思い当たる方は注意しておいた方が良いですよ。

  • ・「ピ―」や「キーン」といった金属音や機械音のような高音の耳鳴りがする
  • ・「ゴー」や「ブーン」といった耳に詰まりがあるような低音の耳鳴り
  • ・複数の音が入り混じったような雑音が聞こえる耳鳴り
  • ・上記以外の音が単音で聞こえる

耳鳴りのパターンは、人それぞれで、感じる音の種類も上記のように複数あります。さらに、片耳だけ聞こえる…、両耳に聞こえる…など、症状が出る場所も違います。

騒音性難聴について

それでは、騒音によって引き起こされる『騒音性難聴』について、これがどういったものなのかを解説していきましょう。騒音性難聴は、常に騒音にさらされ続ける環境下で働いている方が発症するケースが多く、「職業性疾病」の1つに指定されています。なお、「職業性難聴」とも呼ばれています。

騒音性難聴のメカニズム

それでは、騒音にさらされ続けることで、騒音性難聴という問題が生じてしまうメカニズムについても簡単に解説しておきましょう。

耳の中については、ほとんどの方がどのような構造をしているのか分かっていないと思います。実は、耳は目に見えないほど奥に、カタツムリのような形状をした蝸牛(かぎゅう)という器官があります。そして蝸牛には、有毛細胞があり、この細胞が蝸牛のリンパ液の振動を電気信号に変換し、脳に伝えることで、人が音として認識できるという非常に重要な役割があるのです。

しかし、大きな音に長時間晒され続けてしまうと、音を伝える役割を持つ、有毛細胞がダメージを受けてしまうことになり、徐々に壊れてしまうことで、騒音性難聴という症状が出るというメカニズムになっています。

騒音性難聴は治せるのか?

騒音性難聴については、現状「損傷した有毛細胞が再生させることができない」のが実情ですので、騒音性難聴になってしまうと、症状を改善することができないと言われています。

この症状は、初期段階ではなかなか異変に気付くことができない点が非常に難しいです。そして、症状が進むにつれて、頻繁に耳鳴りがするようになったり、高音域の音が聞き取りにくいといった症状が現れるようになるようです。このような症状だけであれば、「日常生活に支障はない!」と考えてしまい、何の対処もしない方がいるのですが、これを放置してしまうと、次第に会話の声が聞き取りづらくなるなど、典型的な難聴の症状が現れると言われています。そして、さらに症状が進むと、耳のすぐそばで大声を張り上げて話してもらわなければ声が聞こえない…ほどに悪化するのです。

前述したように、騒音性難聴は、治療によって改善することができない症状ですので、出来るだけこの問題に早く気づき、大きな騒音への対策を施すことが重要になると考えておきましょう。

騒音性難聴を防ぐには?

上述したように、騒音性難聴は、従業員の人生に関わるような問題を引き起こすと考えなければいけません。そして、騒音性難聴は、治療で改善するという考えではなく、「騒音性難聴にならないようにする」ことが非常に重要なのです。

ここでは、工場など、大きな音が常にそばにある環境において、どのように騒音性難聴から従業員を守るのかを考えてみたいと思います。

個人で可能な対処法について

まずは、音にさらされる従業員自らが可能な対処法についてです。大型機械を使用する工場などであれば、音が避けられない作業を行う時に、耳栓など、耳を保護するための道具を活用すると良いでしょう。最近では、長時間つけていても、耳に大きな負担を掛けないような耳栓が販売されるようになっていますし、衛生的な材料を使用しているものもあるので、そういったアイテムを使用すると良いのではないでしょうか?

他にも、イヤーマフと呼ばれるヘッドホンのような防音アイテムもありますので、耳栓と併用することで、大きな騒音から耳を守ることができます。

注意が必要なのは、作業内容によっては、ある程度の音が察知できなければ、危険な状況に気付けなかったり、スタッフ間のやり取りが難しくなって作業に支障が出てしまうことがある点です。工場など、大きな騒音があるにもかかわらず、耳栓などによる対策がとりづらいのは、耳栓をしてしまうと逆に従業員を危険に晒してしまう可能性があるのも大きな要因になっているようです。

施設側が行うべき防音対策について

上述したように、従業員が騒音にさらされる場合でも、耳栓やイヤーマフなどが使用できない環境も存在します。ただ、厚生労働省では、騒音性難聴の原因となる騒音環境で働く労働者のため、事業者側に騒音レベルの軽減を促すためのガイドラインを作成しています。このガイドラインによると、著しい騒音を発生させる作業現場では、6ヶ月に1回の騒音レベル測定を行わなければならないとしています。

ちなみに、8時間以上にわたって85デシベル以上の騒音にさらされるという環境が、5年以上続く場合、騒音性難聴の発症リスクが高まるとされています。このことからも、作業現場の騒音レベルが85デシベルを超えているのかどうかは、定期的にチェックし、超えているようであれば、それに応じた防音対策を施すようにしましょう。

  • 機械の振動音が問題の場合
    大型機械が動作する際の振動で騒音が生じるという場合、工作機械などに防振対策を施すのが良いでしょう。
  • 切削加工などによる大きな音
    製造工程上、どうしても大きな騒音が生じるという場合、工作機械周りを防音壁で囲い、音が拡散しないようにすると良いでしょう。安全に作業できる作業面積をきちんとの確保しておけば、機械を動かす作業員は耳栓で対策をし、その他の従業員については、防音壁で音を緩和するという対策が可能です。
  • 工場の機械化
    最後は、防音対策とは異なるのですが、人の健康に悪影響を及ぼすような作業については、積極的に機械を導入し、自動化するという対策です。これであれば、作業員が長時間騒音にさらされ続けるということがなくなるので、ピンポイントの防音対策などは不要です。なお、工場の外に音が漏れていかないようにするために、建物そのものに対しての防音対策が必要です。

まとめ

今回は、常に騒音が存在する作業現場について、 職業性疾病の1つに指定されている騒音性難聴の基礎知識をご紹介してきました。

金属加工などを行う工場などであれば、常に甲高い騒音が生じてしまうことになり、その音が従業員の健康リスクになってしまうということを忘れてはいけません。この記事でご紹介しているように、騒音性難聴は、現代の医療でも治療することが難しく、一度発症してしまうと、根治出来ないという非常にリスクのある病気なのです。工場などは、音が伴うのがしょうがない…と考える方もいますが、きちんと対策を施すことで、従業員に健康被害を出さないようにすることは難しくないのです。

現在、作業現場で何らかの音の問題を抱えている場合は、お気軽に弊社までお問合せください。

スタッフ A

大阪で20年間にわたって防音工事に携わってきました。
防音工事に関しての事、音に関する豆知識などを配信しております。

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