防音工事を検討している方が知っておきたい専門用語とその意味について

今回は、これから防音工事を専門業者に依頼しようと考えている方に向け、職人さんとの打ち合わせを行う前に知っておきたい、防音対策周りの専門用語とその意味をご紹介していきます。

防音工事業者と一度でも打ち合わせしたことがある人ならわかると思うのですが、防音対策周りで使用される用語は、一般の方の日常生活にはほとんど登場しない言葉が多いため、話していても職人さんが言っている内容を理解できなくて困ってしまうケースが多いと言われています。もちろん、防音工事業者も、可能な限りお客様に分かりやすいよう説明することを心がけていますが、つい普段の癖で専門用語を使ってしまい、後から認識の齟齬が存在して、トラブルになってしまう…なんてことも珍しくないと言われています。

そこでこの記事では、防音工事業者の職人さんと話す前に、皆さんが知っておきたい、防音工事周りの専門用語をご紹介します。

防音対策周りで登場する分かりにくい用語

何らかの音の問題を抱えた時には、防音工事業者に依頼して、騒音を抑えてもらうという方が増えています。もともと、防音工事というものは、自宅でも楽器の演奏をするといった特殊な要望を持つ方のみが必要とする工事というイメージだったのですが、コロナ禍以降、日常生活上に存在する普通の生活騒音を抑えるための防音工事の要望が急増しています。
そして、もともと防音工事などに何の興味もなかった方がいきなり職人さんと打ち合わせをすることになったことで、言葉の意味が伝わらずにトラブルになるケースが増加しているのです。ここでは、一般の方が分かりにくい専門用語と、それぞれの意味を簡単にご紹介しておきます。

  • 音圧
    音圧は、空気の重さにより生まれる大気圧から加えられる圧力の変化のことです。これは、音の大きさを表しており、『dB(デシベル)』という単位で表されます。
  • 周波数
    周波数は、一秒間に繰り返される波の数を示しています。『Hz(ヘルツ)』という単位で表されます。周波数は、音の高さに関連する単位で、波が少ない方が低い音に、多ければ高音になります。
  • 吸音率
    吸音率は、音がものに入射した時、反射・透過をせずに吸収されるエネルギーの比率を指しています。基本的に、音の反射や透過が多いほど、吸音率は低くなります。
  • 透過損失
    透過損失は、壁や床などの部材が、どれほど音を遮れるのかを表しています。ちなみに、単位として使用されるのはこれも「dB」です。遮音性能に優れる材質ほど、透過する音が少なくなり、透過損失が大きくなります。
  • 質量則
    質量則は、壁の1㎡当たりの質量が大きい、または周波数が高いほど透過損失が大きくなる法則のことです。
  • 遮音等級
    遮音等級は、建物や各部材の遮音性能のレベルを表すものです。壁の遮音性能を表す等級をT値、床の遮音性能を表す等級をL値と呼びます。

上記のような用語については、防音対策を検討した時に耳にする機会が多いと思いますので、頭に入れておくと良いでしょう。

音の3要素とは?

次は、音の3要素について解説していきましょう。防音工事というものは、「近隣から聞こえてくる音がうるさくて…」や「自分が出している音が他人に迷惑を掛けないように」と言ったことを考えて行うものです。ただ、防音工事が必要となる音についても、「音の大きさ」や「音の高さ」「音の音色」といった感じに3つの要素が存在するのです。

的確な防音対策を行うには、それぞれの要素が何を意味しているのかをきちんと理解しておく必要がありますので、ここでご紹介しておきましょう。

①音の大きさについて

一つ目の要素は音の大きさです。音の大きさは、音圧と呼ばれる、空気の圧力が変化する力の強さによって決まります。

そもそも音というものは、空気が振動することによって生じる波を人の耳が感知することで聞こえるものです。そして、この空気の波のことを音波といいます。音波にも振れ幅があり、振れ幅が大きければ大きいほど空気の圧力の変化が高まるので「大きな音」になります。その逆に、振れ幅が小さくなると小さな音として聞こえるといった仕組みになっています。

この音圧については、上述したように『dB(デシベル)』という単位で表されていて、皆さんの身近に存在する生活音の大きさを参考にすると、以下のような感じになります。

音圧 音の種類
130dB以上 大砲の至近距離、ジェットエンジンの近く
120dB 飛行機のエンジンの近く
110dB 自動車のクラクション、ヘリコプターの近く
100dB 電車が通過しているときのガードレール下
90dB 騒々しい工場の中、至近距離での犬の鳴き声
80dB 地下鉄の車内、ピアノの音(プロレベルではない)
70dB 至近距離の掃除機
60dB 通常の会話、チャイム
50dB 静かなオフィス
40dB 図書館
30dB以下 郊外の深夜、木の葉のふれあう音

皆さんの身近にも存在する音を参考にすると、上記のような表になります。なお、100dB以上の音圧になると、聴覚機能に異常をきたす可能性があると言われます。また、人が騒音と感じないレベルが40~60dBの間ぐらいで、日常生活の中でも静かだと感じるのが、45dB以下だとされています。ただ、音の感じ方は人によって異なるので、あくまでも一般論と捉えておきましょう。

②音の高さについて

音の高さは周波数によって決まるもので、その音域は7段階に分けられています。上述したように、周波数の数値が大きいほど高音域になり、小さいと低音になります。以下に、周波数によって異なる音域の種類をご紹介しておきましょう。

  • ・超低音域・・・16~40Hz
  • ・低音域・・・40~160Hz
  • ・中低音域・・・160~320Hz
  • ・中音域・・・320~2,600Hz
  • ・中高音域・・・2,600~5,000Hz
  • ・高音域・・・5,000~10,000Hz
  • ・超高音域・・・10,000Hz以上

ちなみに、人間の耳が聞きとれる周波数は「20~20,000Hz」と言われており、その中でも騒音と感じやすい音域が『31.5~8,000Hz』とされています。

③音の音色

最後は『音色』です。音色は、音波の質で変わるものとされており、たとえ音圧や周波数が同じであっても、音が発せられる物の鳴り方や材質によって違う音に感じてしまうことも珍しくありません。そもそも音色というものは、音の感覚的な特性のことを指していて、楽器や人の声といった感じに、発生帯によって異なる音の色あいのことを指しています。

覚えておきたい音の単位について

これから防音工事をしようと考えている方であれば「dB(デシベル)」と「Hz(ヘルツ)」という単位は頭に入れておいた方が良いでしょう。防音工事業者との打ち合わせ時にも、頻繁に出てくる単位だと思いますので、これが何を指しているのかを以下で簡単にご紹介しておきます。

①「dB(デシベル)」について

「dB(デシベル)」は、音圧や振動などさまざまな分野で使われる単位となります。防音工事の打ち合わせ時に登場する場合、基本的に音の大きさ(音圧)を意味していると考えておきましょう。

この単位については、人が聞き取れる最も弱い音を「0dB」として、それ以降、音が大きくなるごとに数値が高くなります。なお、人が静かに感じるのが「45dB」程度ですので、防音工事は基本的にこの数字を目指すと考えておきましょう。

②「Hz(ヘルツ)」について

上述したように、「Hz(ヘルツ)」というのは音の高さ(周波数)を表す単位となります。なお、高い音ほど周波数の数値が高くなります。人が聞き取れる周波数は「20~20,000Hz」と言われています。

音が伝わる仕組みについて

防音工事を行うのであれば、音が伝わる仕組みをきちんと押さえておかなければいけません。というのも、人が発生する声にしても、床に何かを落とした時の「コツン」といった音にしても、音であるということは間違いないのですが、発生する仕組みや伝わり方が全く異なるのです。

そして、それぞれの音の特性をきちんと押さえておかなければ、適切な防音対策を施すことが難しいわけです。ここでは、皆さんがおさえておきたい音の種類について簡単に解説しておきます。

①空気伝搬音

一つ目は、空気伝搬音と呼ばれる音です。これは、空気中に音が放射され、空気の振動として伝わっていく音のことを指しています。例えば、人の声や楽器の音、テレビやオーディオから聞こえてくる音声などが空気伝搬音に分類されます。

②固体伝搬音

次は、固体伝搬音です。個体伝搬音は、建物などに衝撃が与えられ、構造物が振動して伝わった先で、空気中に放出される音のことを指しています。分かりやすい例を挙げると、マンションやアパートなどにおいて、上の階に住む人の足音が階下で聞こえるといったものや、ドアの開閉音、機械などの駆動音などがこれにあたります。

③液体伝搬音

液体伝搬音は、あまり聞き馴染みが無いと思います。これは、水を始めとした液体を伝わっていく音のことを指しています。例えば、潜水艦のソナー音や海中で聞こえる魚の泳ぐ音などがこれに当てはまります。

ちなみに、水中の音は、空気中よりも4~5倍のスピードで伝わり、さらに伝搬経路が複雑であることから、空気中の音よりも弱まりにくく、遠くまで伝わるという性質を持っています。ただ、住宅の防音工事を考えた場合、液体伝搬音はあまり気にする必要はないでしょう。

④重量床衝撃音

重量床衝撃音は、重たいものを床に落とした時などに生じる衝撃音を指しています。例えば、子供が部屋の中を走り回った際に、下の階に伝わる足音や、タンスやテーブルなど、非常に重量のある物を設置する時に生じる「ズシン」といった音が重量衝撃音です。

⑤軽量床衝撃音

軽量床衝撃音は、小さくて軽いものによる衝撃音を指しています。例えば、床に小銭やスプーンなどを落とした時に生じる比較的高い音や、靴が床に当たった時のコツンといった音が軽量床衝撃音にあたります。

防音に関する用語

最後は、具体的な防音対策を行う時の用語についてです。実は、防音という言葉については、具体的に音を小さくするための対策を指しているのではなく、あくまでも概念的な言葉なのです。そして、防音を実現するための具体的な対策に『吸音』や『遮音』、『防振』などというものがあるのです。

例えば、あなたがこれから何らかの音の問題を解決したいと思ったとしても、自分が出す音が外に漏れるのを防ぎたいのか、外から聞こえてくる振動音を減退させたいのかなどによって、行わなければならない対策が変わってきてしまうのです。

ここでは、防音対策を行う時の、具体的な方法について解説しておきます。

①吸音

吸音は、その言葉通り、音を吸収して減退させるという方法になります。具体的には、音を吸収する効果のある吸音材と呼ばれる材料を、任意の場所に取り付けることで、反響音の軽減や音漏れを防ぐといった対策になります。

吸音材には、グラスウールやロックウール、ミニソネックスなどといった、素材自体に無数の細かな穴があいているものが採用されいます。音が、吸音材を通過する際、穴の中で摩擦によって熱エネルギーに変換され、小さくなるという仕組みです。

②遮音

遮音も、文字通り「音を遮る」という防音対策になります。遮音材などと呼ばれる、音を跳ね返す効果を持つ素材を、任意の場所に取り付けることで、本来は壁などを通過して漏れ出している音を遮断するという対策です。

遮音材には、石膏ボードやコンクリートといった密度が高く、硬い素材が採用されています。音は、壁やドアなどがあっても、物体をすり抜けるという性質を持つことから、音漏れが生じてしまう訳です。したがって、音を通しにくい性質を持つ遮音材を取り付けることで、音を外に逃がさず、内側に跳ね返すという仕組みになります。

③防振

防振は、振動をできるだけ小さく抑えるという対策です。例えば、工場の製造機械などは、振動が建物を伝わり、周囲に騒音をまき散らしてしまう…というケースが多いです。一般住宅でも、洗濯機などの振動を伴う家電製品は、防振対策などを無視してしまうと、建物の構造物を伝わり、近隣の方に迷惑を掛けてしまうことがあるのです。

防振に使われるのは、柔軟性のあるプラスチックやゴムなどが素材で、これを間に挟むことで、床などの構造物に伝わる振動を小さく抑えるといった感じになります。

④制振

制振も振動に関する対策になります。制振に関しては、振動している機械や構造物そのものの揺れをおさえるという対策になります。

まとめ

今回は、これから防音工事を検討している方が、専門業者と打ち合わせを行う前に知っておきたい業界用語をご紹介してきました。

上述した用語については、日常生活の中で耳にする機会があまりないことから、打ち合わせ時に唐突に言われても「職人さんが何を言っているのかよくわからない…」なんてことになってしまうケースもあるのです。もちろん、打ち合わせ時によくわからない内容が登場した時には、その都度、職人さんに質問すれば良いのですが、「話の腰を折るのも悪いし…」などと考えてしまい、そのまま放置してしまう方が意外に多いのです。

当然、内容を理解せずに話を進めてしまい、工事に入ると、あなたと職人の間で認識の齟齬が出てしまうリスクが生じてしまいます。防音工事のトラブルは、そういた基本的なミスから発生するものですので、この記事でご紹介した用語程度は頭に入れておきましょう。

スタッフ A

大阪で20年間にわたって防音工事に携わってきました。
防音工事に関しての事、音に関する豆知識などを配信しております。

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