一戸建てのピアノ防音について。騒音トラブルを防止するために最低限行うべき防音対策
今回は、一戸建てにピアノを置こうと考えている方に向け、近隣住民との騒音トラブルを防止するため、最低限行っておくべきピアノの防音対策をご紹介します。
一戸建て住宅は、マンションとは異なり、建物同士が独立していて、各家庭の生活空間が離れているので、音に関する問題は発生しにくいと考えている方が多いです。確かに、一昔前までの戸建て住宅であれば、庭付き一戸建てが当たり前で、家と家の距離が離れていたことから、ピアノなどの演奏音も昼間であれば問題にならないことが多かったです。ちなみに、昔はご近所さんとの関係性が現在よりも近かったことも、騒音に関するトラブルが少なかった要因ではあると思います。要は、知り合いの子どもが生じさせる音なので、そこまで気にならないという前提が昔の日本にはあったわけです。
これが近年では、一戸建てでも、家と家の距離が非常に近くなっている、近隣の方との関係が希薄になっているなどといった要因から、ちょっとした音でも騒音トラブルにまで発展する場合が目立つようになっています。実は、お客様からの防音に関する相談については、楽器の演奏に関わるもの以外に、生活音で苦情を言われた…というものが増えているのです。
こういった状況から、一戸建て住宅でピアノの演奏を行う場合でも、近隣の方とトラブルにならないように、防音には注意を払わなければいけません。
ピアノの演奏音でトラブルになる理由
近隣トラブルはさまざまな理由で起きますが、その中で一番多い原因が『音』によるものだと言われています。人々の生活空間が近くなった現在では、洗濯機や掃除機の音、テレビの音、家族の会話の声など、日常生活の中で誰もが生じさせてしまうような生活音でも騒音トラブルを引き起こす場合があります。そして、あなたが生じさせる音が、ピアノなどの楽器の演奏音となると、何の対策もしなければ、高確率で騒音トラブルの要因となってしまいます。
なぜなら、ピアノが生じさせる音の大きさは、90~100dBもの音量となっており、これは地下鉄の中で聞こえるレベルの騒音値です。近年では、騒音トラブルの原因となる洗濯機やテレビですが、それでも洗濯機は脱水時で50dB前後、テレビは65dB程度の音量と言われているので、ピアノの音がどれほど大きいのか理解できると思います。
このような非常に大きい音を生じさせるピアノについて、以下のような意識を持っている方も多いことから、一戸建てでもトラブルに発展していると言われています。
- ・平日の昼間なら多少の音が出ても問題ないと考えている
自宅で楽器の演奏を検討している方で、防音室を用意しない人に多い考えが「昼間なら問題ない」という意識です。昼間は、環境騒音も多いですし、ピアノの音もそこまで目立たないと考えているわけです。しかし、近所の方で夜勤で働いている人が居れば、昼は寝ているわけですし、体調が悪い方、受験を控えていて勉強をしている方など、さまざまな人が居ます。さらに、コロナ禍以降は、テレワークが浸透していて、自宅で仕事をしている人も増えています。こういった方にとっては、昼間の演奏音も十分に騒音に感じるはずです。 - ・戸建てなら騒音問題の心配がないと勘違いしている
一昔前の戸建ては、家と家の距離が離れていることから、音が減退し騒音に感じないというケースもありました。しかし現在では家と家の距離が近くなっていて、ピアノの音がそこまで減退せずにダイレクトに伝わります。そのため、過去の常識が現在でも通じると考えている方がトラブルに発展します。ピアノの音は100dB近い大音量になるのですが、木造住宅が持つ防音効果は約30dBと言われています。これが窓部分になると15dBほどなりますので、窓からは85dB程度の音が漏れているのです。お隣の家が近ければ、この音を防ぎきれず騒音に感じられてしまいます。
このように、私たちを取り巻く住環境が変化している、社会生活の変化があったことから、昼間でもピアノの音を迷惑に感じられてしまう可能性が高くなっています。環境省が定めている騒音の基準では、住宅街では「昼間は55dB以下」「夜間は45dB以下」が望ましいとしています。ピアノの音は、最大で85dB近い音が窓から漏れていく可能性があるわけですので、騒音トラブルの要因になり得ると考えなければいけません。
一戸建てのピアノ防音について
それでは、一戸建てにピアノを設置しようと考えている方に向け、騒音トラブルを防止するために行っておきたい防音対策をいくつかご紹介します。
防音ドアを設置する
比較的費用を抑えられ、防音効果を期待できるのは防音ドアに交換するという方法です。防音ドアへのリフォームは、比較的容易にでき、本格的な防音室を作るのと比較するとかなり安価(30万円以上が一般的です)にピアノ防音が可能です。
ドアを防音ドアに交換すると、ピアノの演奏音が外に漏れていくことを防ぐほかにも、外からの音が遮断されるので、自分の演奏音をしっかりと聞けるというメリットが得られます。一般的なドアは、閉じていても換気がなされるように、ワザと隙間が生じるような作りになっています。防音ドアに交換することで、この隙間を埋めることができるので、音漏れを防ぐことが可能です。
比較的リーズナブルでそれなりの効果を見込める対策ですが、夜間など時間帯を気にせずピアノの演奏をしたいという場合には、性能が足らないと考えてください。
二重窓など、窓の防音対策を行う
住宅の音漏れは、窓の防音性の低さが原因となっている場合が多いです。上でも少し触れていますが、一般的な木造住宅が持つ防音効果は約30dBと言われているのですが、窓は薄い素材で出来ているため、15dB程度の防音効果しか持ちません。そのため、壁が高い防音効果を持っていても、窓から音漏れして苦情が出る可能性があるのです。
ピアノの防音対策として効果的なのは、この窓の防音性を高めてあげることです。例えば、既存窓の内側にもう一枚窓を設置する二重窓の対策は、非常に効果の高いピアノ防音になります。新たに設置する窓の種類によって費用が変わりますが、1箇所10万円程度からリフォームが可能です。
窓の防音対策は、このほかにも、既存の窓ガラスを防音ガラスに交換する、防音カーテンを設置するなど、いくつかの方法があります。注意が必要なのは、築年数が経過していて、壁の防音性が低い場合、窓の対策だけでは音漏れを防げません。
防音室を作る
一戸建てにピアノを設置し、24時間、時間帯を気にせずに演奏を行いたいと考えている場合、窓やドア、壁など、部分的な防音工事では苦情を抑えることはできないと考えましょう。
これは、夜間は周囲の環境騒音が少なくなっているため、自宅から漏れていく音についても、より小さくしなければならないからです。音は、防音性が低い部分からどうしても漏れて行ってしまいますので、夜間の演奏まで考えている場合は、部屋全体に防音対策を施し、ピアノ専用の防音室を作らなければならないと考えてください。
まとめ
今回は、一戸建てにピアノを設置しようと考えている方に向け、ピアノの音による騒音問題と、必要な防音対策をご紹介しました。
もともとマンションで生活していた方が、一戸建てに引っ越す際には「戸建てなら音の問題を抱えなくても良い」という点をメリットに感じる方が多いように思えます。一戸建てであれば、建物が独立していることから、集合住宅でよくある足音などによる騒音トラブルの心配がなくなります。
ただし、一戸建て住宅だからといって、一切の音の問題がなくなるかというと、そうではありません。近年では、戸建てに住んでいる方同士でも、生活音が原因となる騒音トラブルが発生しているなど、皆さんが考えている以上に音の問題を抱えやすくなっています。これは、大阪市内など、大都市圏の戸建て住宅の場合、家と家の距離が近くなっていることから、建物が独立していたとしても、音を防ぎきれないのが大きな要因です。特に、ピアノなどの楽器の演奏音となると、かなり大きな音量となるので、何の防音対策もしなければ、ほぼ確実にトラブルに発展すると考えた方が良いです。
防音工事の匠では、お客様のご予算やご要望に最適な防音対策のご提案を行っていますので、どのようなお悩みでもぜひご相談ください。