長時間の使用を考えた場合、BOX型の防音室はあまりオススメできない!

今回は、何らかの理由で自宅に防音設備が欲しいと考えている方に向け、そもそもどのような方法が存在するのかと、短期間・比較的安価に防音室が手に入ると人気になっているBOX型防音室の弱点について解説していきたいと思います。

一昔前までは、プロの演奏家や音楽スタジオなどの商業目的施設など、特殊なケースで必要とされていたというイメージの防音工事ですが、ここ数年、一般住宅のリフォーム工事としても非常にポピュラーな存在になってきています。これは、マンション暮らしが増えてきたことや、都市部の戸建て住宅については隣家との距離が非常に近くなってきたことで、日常生活を進めるうえで、致し方なく生じるような生活音が原因となる騒音トラブルが頻発するようになっているからです。さらに昨年からは、新型コロナウイルス問題の影響で、在宅時間が長くなってきた、自宅で学習や仕事をするのが当たり前になってきたことから、家の中にプライベート空間が求められるようになっているのです。

そのため、現在では、窓やドア、床や天井など、部分的な防音工事については、一般的な住宅リフォームと言った扱いを受けるようになっています。ただし、防音室を作るまでになると、「どういった方法で導入するのか?」で結果が大きく変わってしまうので注意しましょう。この記事では、これから防音室を作ろうと考えている方に向けて、いくつかの手法とBOX型防音室の弱点をご紹介しておきます。

防音工事の手法について

それではまず、自宅に防音性の高い部屋を設けるための手法をいくつかご紹介しておきます。防音室は、気密性、吸音性、遮音性が高い部屋にして、室内からの音漏れはもちろん、室外の音の影響を受けにくくするのが目的の部屋です。もともと、プロの演奏家の方などが、自宅でも時間を気にせずに練習したいという要望で、近隣住宅との騒音問題を発生させないように、防音室を作るといった工事が一般住宅ではほとんどでした。それが近年では、ゲーム実況などを行うユーチューバーの方など、動画配信のために防音室を求める方や、コロナ禍では在宅ワークやリモート学習のために防音室を求めるという要望も多くなっており、防音室に求められる性能もかなり格差が生じ始めています。

それでは、自分が求める性能の防音室を得るためには、どういった方法が最も適切なのか判断するため、防音室を作るための手法を押さえておきましょう。

①DIYで防音室を作る

まず最も安価で手っ取り早い方法が、DIYで防音室を作るという手法です。最近では、ホームセンターやインターネット通販で、防音室を作るための吸音材や遮音材を購入することができるようになっています。さらに、動画配信サイトなどで探せば、そういった材料を使用して、自作の防音室を作っていく工程を紹介しているような配信者さんも意外に多いです。

この方法であれば、時間と手間はかかるものの、材料費のみで防音室を作ることができるという点が最大のメリットになります。ただし、防音室の性能的には、プロの防音工事業者が作る物とは比較にならないほど低くなってしまうと考えてお行きましょう。正直な話、DIYで楽器用の防音室を作るというのは、もともと防音工事の職人として働いているという方以外は無理だと考えておいた方が良いです。
要は、自作で出来る防音室に関しては、動画配信者のような人がしゃべる声をなるべく外に漏れないようにするとか、テレワーク中に家事の音などで集中力を乱されたくない…という方にしかオススメできないと考えておきましょう。人の話し声や、テレワーク、リモート学習程度であれば、空き部屋に吸音材や遮音シートを貼り付けて対策するという程度で構わないと思います。

②ユニット型(BOX型)防音室を設置する

二つ目は、大手楽器メーカーなどが販売しているユニット型防音室を購入して設置するという方法です。これは、プレハブ小屋のようなBOXを部屋の中に組み立てて、防音室として利用できるというものです。ナサールやアビテックスが有名ですね。

ユニット型防音室は、リフォームで一から防音室を作るのと比較すれば、安価だということや、工期が非常に短くて済むというのが大きなメリットです。防音性能に関しても、いくつかの種類が用意されており、プロの演奏家が出す楽器の音でも対処できるような防音室も存在しています。
デメリットとしては、基本的に演奏する楽器の種類でユニットの大きさを決めるのですが、それでも大した広さの防音室ではないので、長時間の演奏には向かないと言われる点です。どのような楽器でも、防音室内で演奏すれば、室内で反響してしまうのですが、そういった自分が出す音を苦痛に感じてしまうようになる点や息苦しさを感じてしまうようになると言われています。また、複数人で入室して演奏することは基本的に想定されていないため、教室を開くために…という要望の場合、確実に使い勝手が合わないと思います。
その他の弱点は後述します。

③リフォームで防音室を作る

三つ目の方法は、防音工事業者にリフォームで防音室を作ってもらうという手法です。最も本格的な防音室に仕上がりますし、自分の要望通りの防音室を一から作ることができる点が最大のメリットです。室内の音響などもしっかりと計算して設計してくれますので、長時間防音室を使用しても何の問題もありません。費用的には、どの程度の防音性能を求めるのかによって大きく異なり、同じピアノ用の防音室だとしても、昼間しか演奏しないという場合は150万円程度で可能ですが、24時間演奏に耐えるような高い防音性能が必要となると300万円程度になります。

デメリット面は、単純に防音室を手に入れるためのコストが最もかかるという点と、工事期間が長くなるという点です。DIYによる防音室の方が時間がかかると思うかもしれませんが、それはあくまでも空き時間に作っているので日数がかかっているだけで、実際の作業時間はプロが防音室を作っている方が長くなっているはずです。なお、防音工事業者の中には、『防音工事のプロ』を自称しているだけで、本来は単なる内装リフォーム業者である場合も多くなっているので注意しましょう。上述したように、近年では防音工事の需要が高くなっていることから、一般リフォーム業者が防音工事業界に進出してきています。したがって、工事を依頼する前に、本当に知識と技術を持っているのか、過去の実績やモデルルームなどで確認しておかなければならないと考えてください。

BOX型防音室の弱点

それでは最後に、BOX型防音室の弱点についてご紹介していきます。コロナ問題もあり、自宅で仕事や勉強をするようになってから、楽器メーカー以外もBOX型防音室を開発し、販売を始めるようになっています。最も安価なものであれば、段ボールで作ったBOX型防音室(これはかなり昔からありますが)などが10万円程度で販売されており、用途によってはこのような簡易的な防音室が非常にありがたい存在になるケースがあります。

しかし、防音室内にある程度の時間滞在することが予想されるという場合、こういったBOX型防音室は正直オススメできないのが実情です。その理由は非常に単純で、人が中に入って作業していれば、室内が熱くなってしまい、長時間の使用に人側が耐えられないからです。

上述したように、防音室に重要な要素は、気密性、吸音性、遮音性です。そして、防音の効果に対して最も重要になるのが気密性ですので、どの製品も吸音性と気密性を重視して開発されています。これは、室内で生じた音を外に漏らさないようにすることを考えると、当たり前の対策なのですが、気密性が高ければ、当然室内の温度は上昇をしてしまいます。最近では、室内の温度上昇を防ぐためにファンを取り付けているような物もあるのですが、大きなファンを取り付ければそのファンの回転音が騒音になりますし、吸気口と合わせれば気密性を損なってしまう恐れも生じてしまいますね。つまり、人が中で快適に作業できるような換気能力を持たせることが難しいのが実情なのです。

さらに、防音目的で使用される吸音材というのは、断熱材にも使用されるほど断熱性が高い素材です。つまり、BOX型防音室は気密性・断熱性に優れた部屋になり、室内の温度が上がりやすく冷めにくいという環境になってしまうのです。こういった特徴があることから、BOX型防音室に関しては、長時間の使用を想定していないような用途にしかオススメできず、そうなると動画配信者さんなどでしか最大限の効果を発揮できないのではないかと考えられるのです。
なお、ゲーム配信などを考えた場合でも、室内にPCを設置してしまうと、パソコンが熱を持つので室温がどんどん上がってしまう結果になります。そのため、防音室の外にPCを設置して、穴をあけて配線せざるを得ないなど、音漏れの弱点を自ら作るという本末転倒な結果になる恐れがあるので注意してください。

まとめ

今回は、自宅に防音室を設けるための手段と、安価で素早く防音室が手に入ると人気のBOX型防音室の弱点についてご紹介してきました。

この記事でご紹介したように、防音室を導入する方法にもいくつかの手法が存在しており、用途によって費用対効果をよく検討したほうが良いと思います。安価だと言われてBOX型防音室を購入したとしても、長時間使用に耐えられず、楽器の上達の邪魔になってしまうなんてことになれば、かけた費用が全て無駄になってしまうのです。
実際に、弊社のお客様の中には、100万円近いユニット型防音室を購入したものの、狭くて演奏しづらい、長時間使用できない…という問題から、しばらくカラオケボックスに通っていたなどという方もいらっしゃいました。ユニット型防音室も、用途によっては有効だと考えられますが、このような失敗談もありますので、慎重に防音室の導入手法は検討したほうが良いですよ!

スタッフ A

大阪で20年間にわたって防音工事に携わってきました。
防音工事に関しての事、音に関する豆知識などを配信しております。

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