オフィスや医療現場での会話保護に活躍するサウンドマスキング。その仕組みをご紹介

皆さんは「サウンドマスキング」という言葉を耳にしたことはありますか?飲食店を経営している方やオフィスの設備担当者などであればよく耳にする機会もあるかもしれませんが、一般の方にとってはあまり聞き馴染みが無い言葉かもしれませんね。しかし、コロナ問題により、人々の在宅時間が長くなっている昨今、プライベート空間でもサウンドマスキングの必要性を感じる方が増えていて、一般住宅用の製品なども販売されるようになっています。

サウンドマスキングは、簡単に言うと人が不快に感じる、集中力を乱されるといった雑音を、他の音で覆い隠すことによって目立たなくするようにする技術です。どのような場所で活躍しているかというと、オフィスなどで他人の会話やタイピング音が気になり仕事に集中できない、会議室内での会話が室外に漏れないようにする、診察室での会話が他の患者さんに聞こえないようにするなど、医療やオフィスでのスピーチプライバシーを保護するために導入されるケースが多いです。

こういった音の問題は、会議室や診察室に防音工事を施すことで防ぐこともできるのですが、防音工事となると多額のコストをかけなければならないため、なかなか対策に踏み切れないという事業者様も少なくありません。そしてサウンドマスキングは、本格的な工事を行うのと比較すると、低コストで実現することができるため、ひとまずサウンドマスキングで対策してみるという方が多いです。
そこでこの記事では、サウドマスキングがどういった仕組みの対策なのか、また実際に導入する場合のメリットやデメリットをご紹介します。

サウンドマスキングとは

それではまず、サウンドマスキングがどのような仕組みの技術で、どういった効果が見込めるのかについて解説します。

サウンドマスキングの仕組み

サウンドマスキングは「sound」と「masking」を繋げた用語で、日本語に直訳すると音を「覆い隠す」「包み込む」と言った意味になります。ちなみに、マスキングの例としてよく挙げられるのが「悪臭などを、他のよい香りや別の強いにおいで包み隠す」ことが用いられています。サウンドマスキングも、これと同様な考えで、防臭ではなく防音目的で行われる対策となります。

サウンドマスキングの仕組みはそこまで複雑なものではなく、特定の音が存在する場所で、別の音を発生させ目立たなくさせるといった感じです。一般的には、雑音が生じやすい場所や、会話の内容が他人に聞こえてほしくないような場所について、スピーカーを設置して背景音を流すことで特定音を聞こえづらくするケースが多いです。
例えば、タイピング作業を行うオフィスなどにおいて、BGMとして音楽をかけておくことで、他の作業者のタイピング音が気にならなくなり、自分の作業に集中できるといった使い方が多いです。なお、サウンドマスキングとして流す背景音は、疑似空調音やヒーリング音楽など、さまざまなタイプが存在していて、メーカーが販売する機械やサウンドマスキングを導入する場所によって異なります。

サウンドマスキングの効果

それでは次に、サウンドマスキングにどのような効果があるのかについてもご紹介していきましょう。一般の方にとっては、あまり馴染みが無いものと感じますが、実は皆さんも日常生活の中でサウンドマスキングを体験しています。

例えば、テレビを見ながら家事を行っている時を考えてみてください。テレビの音をいつもと同じ大きさにしていても、洗い物をしている時や掃除機をかけている時などであれば、水音や掃除機の排気音などテレビの音が紛れてしまい、聞こえづらく感じますよね。もっと言えば、換気扇を回しているだけでも、テレビの音は聞こえづらく感じるのではないでしょうか?
つまり、サウンドマスキングの実用的な効果は、聞かれたくない会話などについて、その内容が他人に分かりづらくすることができるという点です。オフィスや医療現場などで考えると、社外秘の会議内容や病名などの診療結果を伝える際、会話の内容が不明瞭になるので、情報漏洩リスクが低くなり、プライバシーを守れるという訳です。

オフィスの防音対策は、本格的に行う場合、かなり費用がかかってしまうことになります。サウンドマスキングによる対策であれば、パーテーションで区切った応接スペースなどでも、会話が他の人に聞こえづらくなりますので、来客者が安心して相談することができます。そのため、金融関係や医療関係ではサウンドマスキングによる対策が人気です。

サウンドマスキングの種類

サウンドマスキングには、主に以下の二つの種類が存在します。

  • ・エネルギーマスキング
    エネルギーマスキングは、音のエネルギーの差を利用したサウンドマスキングです。この場合は、「ザー」と聞こえるようなノイズ音を流します。ただ、ノイズと会話の音声は分離して聞こえやすいので、会話が目立たなくなるようにするには、ある程度の音量のノイズ音を流さなければいけません。そのため、サウンドマスキングのために流しているノイズを不快に感じてしまう場合がある点に注意しましょう。
  • ・情報マスキング
    情報マスキングは、周波数・時間・空間特性など、エネルギー以外の要因によって、会話の内容を把握しにくくする方法です。この方法では、音声を加工して意味を分からなくした音などを使用するのが一般的ですが、機械によってはさらに川のせせらぎ音などを加えて、心地よいと感じるような音に加工している場合も多いです。情報マスキングは、人の声などから加工した音を流しますので、実際の会話の音と特性が非常に似ていることから、小さな音量でも高いマスキング効果が得られます。

サウンドマスキングのメリット・デメリット

それでは、オフィスや医療現場などにおいて、スピーチプライバシーを保護するためサウンドマスキングを導入するメリットとデメリットについても解説します。

サウンドマスキングのメリット

まずはサウンドマスキングのメリット面です。

  • ・大掛かりな工事が不要
    サウンドマスキングは、スピーチプライバシーを保護したい場所に小さなスピーカーを設置するだけで導入可能です。本格的な防音工事であれば、設計から施工までを考えると数週間以上かかるのが一般的ですが、サウンドマスキングの場合、早ければ一日で導入が完了します。したがって、オフィスが休みの日などに設置をしてもらうことで、業務に支障を出すこともなく防音対策が可能です。
  • ・低コストで導入が可能
    これは本格的な防音工事と比較した場合のメリットです。サウンドマスキングは、壁や床、天井などに遮音や吸音工事を行う必要がありません。広いオフィスであっても、配線工事程度で設置が可能ですので、対策にかかるコストが大幅に安くなる点がメリットになるでしょう。
  • ・空間デザインにほとんど影響を与えない
    場所や業種によっては、防音対策を行いたいけれど、空間デザインや雰囲気を壊したくないと考え、なかなか導入に踏み切れないケースもあります。ただ、サウンドマスキングは、小さなスピーカーの設置だけで導入できますし、人の視覚に入らないような場所に設置することが可能です。例えば、天井裏に設置するなど、空間デザインには一切影響を与えずに導入可能な製品もあります。
  • ・音の問題を解消できる
    サウンドマスキングがオフィスなどで人気なのは、人が集中しやすい環境を作れる防音対策だと考えられているからです。オフィスには、空調音や人の声、タイピング音など、人の集中を乱すような音がさまざまあります。サウンドマスキングを導入すれば、そういった人が不快に感じるような音が目立たなくなり、集中力が低下しづらくなるとされているのです。というのも、本格的な防音工事を行い、高い遮音性を実現した場合、逆に小さな音が気になるようになってしまい、生産性が落ちたといった声も存在します。サウンドマスキングは、人が集中するのに程度な音を発生させる仕組みですので、より生産性が高くなると言われています。皆さんも、あまりに静かな場所にいると、なぜか落ち着かないように気分になった経験があるのではないでしょうか?

サウンドマスキングのデメリット

それでは、サウンドマスキングのデメリット面もご紹介していきます。メリット面を見ると、オフィスなどにとっては非常にありがたい仕組みのように考えられますが、いくつかの注意点が存在しています。この部分を把握せずに導入を進めてしまうと、後悔につながる恐れがあるので、以下の点はきちんと押さえておきましょう。

  • ・騒音を小さくする技術ではない
    サウンドマスキングは防音対策の一つではあるのですが、皆さんが知っている防音工事とは根本的に異なるものだということを忘れてはいけません。どういうことかとサウンドマスキングは、あくまでも特定の音を聞こえづらくするための仕組みで、騒音を物理的に小さくしたり消したりすることはできません。そのため、サウンドマスキングを導入したとしても、騒音はそのまま残りますので、人によっては何の改善にもならないと感じてしまうケースがあります。例えば、あなたの要望が「騒音をなんと静かにしたい!」というものであれば、サウンドマスキングではなく防音工事がオススメです。
  • ・サウンドマスキングの音が騒音になる
    サウンドマスキングのためにスピーカーを設置する場合、音漏れが発生している場所と音漏れを聞く人がいる場所の2パターンが想定できます。音が漏れている場所にスピーカーを設置する場合、音漏れが聞こえてしまう場所にマスキング音をきちんと届けるため、大きな音を出さなければいけません。そのため、サウンドマスキングは、音漏れを聞く人がいる場所にスピーカーを設置するのが原則となります。ただ、この場合、もともと静かだった場所にスピーカーを置くことになりますので、マスキング音が騒音に感じられてしまう恐れがあります。

サウンドマスキングが導入されている場所について

それでは最後に、サウンドマスキングがどのような場所で活用されているのかについて代表的な場所をご紹介します。

①オフィス

サウンドマスキングが最も活用されている場所がオフィスなどの事業用施設です。オフィス内は、さまざまな雑音が存在しているので、従業員が音を気にしてしまい集中できなくなるケースが考えられます。この他にも、会議室や来客スペースがパーテーションで区切られているだけと言ったオフィスであれば、会議や来訪者の声が業務スペースに漏れ聞こえてしまうといった問題が生じます。
そしてオフィスでは、こういった音の問題を解消するため、サウンドマスキングを導入するケースが多いです。会議室や来客スペースでの会話がその場以外に漏れないようにすれば、機密情報の流出を防ぐことができ、プライバシーを守ることに繋がります。

②病院

サウンドマスキングは、病院などの機密性が高い会話が行われる場所で活躍します。診察室では、医師が患者にカウンセリングや診察を行いますし、その際の会話は外部に漏れないようにしなければいけません。
しかし、病院によっては壁と天井の間に隙間が生じていたり、カーテンで仕切られているだけなんて場所もあり、この場合、患者さんが音漏れを気にして悩みを相談しづらいと感じる恐れがあります。こういったこともあり、カウンセリングや診察の際の会話が他の来院者に聞き取りづらくなるようにサウンドマスキングを導入する院が多いです。なお、病院でサウンドマスキングを導入する場合、ヒーリング系のマスキング音が採用されるケースが多いです。

③住宅

最近では、一般家庭でもサウンドマスキングを取り入れる方が増えていると言われています。例えば、線路沿いに住んでいる、目の前に公園があるなど、住宅の立地的な問題から騒音に悩まされているという場合、そういった音を紛らわすための音のカーテンとしてサウンドマスキングを導入するようです。
この他にも、睡眠環境に適した音を発生させる事が出来る製品などが発売されており、安眠グッズとしてサウンドマスキングが活用されるケースがあるようです。

まとめ

今回は、音の問題を解消するための一つの方法であるサウンドマスキングについて解説しました。この記事でご紹介したように、サウンドマスキングは、騒音を小さくしたり無くしたりする技術ではなく、他の音を発生させることで目立たなくさせるための仕組みと言った感じです。したがって、「静かな環境を求めている」という場合、サウンドマスキングで対策を行うと全く効果が感じられないでしょう。また、ご近所さんからの騒音のクレームに対処するためという場合は、騒音そのものを小さくする対策ではないので、何の役にも立ちません。

サウンドマスキングは、会話の内容を他の人に聞かれたくないなどと言った場合には非常に効果的な方法で、防音工事などよりも安価に導入することができます。したがって、まずはどのような音を何の目的で対策したいのかをよく考え、防音工事とサウンドマスキングどちらが良いのか判断すると良いでしょう。

スタッフ A

大阪で20年間にわたって防音工事に携わってきました。
防音工事に関しての事、音に関する豆知識などを配信しております。

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