騒音規制法とは?騒音規制法の対象となる施設と方が定めている騒音の基準について

音は、聞いた人によって感じ方が異なることから、騒音と判断すべき基準を法律などで決めて取り締まることがなかなか難しい問題となります。実際に、日常生活を進める上では、誰でもさまざまな音を生じさせてしまうものですが、「うるさい!」と感じて公的機関に訴えても、騒音問題を即座に解決することはほとんどできないのが実情です。

ただ、日本には騒音に関する法律がきちんと制定されていて、騒音規制法というものが存在します。こう聞くと、「法律で基準が決まっているのであれば、騒音トラブルなんて起きないのでは?」と感じてしまいますよね。実は、この騒音規制法というのは、対象となる施設が明確に決められており、全ての音を対象としていないことから生活音などの問題にはあまり役に立たないわけです。

逆に言うと、騒音規制法の対象となる施設については、明確な騒音の基準が設けられており、それに違反したものは改善命令や刑事罰の対象となります。そこでこの記事では、騒音規制法がどのような法律で、この法律の対象となる施設がどのような物なのかを解説します。

騒音規制法とは?

騒音規制法は、その名称から分かるように、地域や時間帯に応じて「出しても良い音量」を指定する法律で、決められた範囲以上の音を生じさせた違反者に対して罰則を科す法律です。なお、この法律の目的については以下のように説明されています。

(目的)
第一条 この法律は、工場及び事業場における事業活動並びに建設工事に伴つて発生する相当範囲にわたる騒音について必要な規制を行なうとともに、自動車騒音に係る許容限度を定めること等により、生活環境を保全し、国民の健康の保護に資することを目的とする。
引用:e-Gov|騒音規制法

騒音規制法の規制対象について

騒音規制法という名称から、人が日常生活を進めるうえで生じさせる生活騒音なども規制の対象になると考えてしまう方がいます。しかし、騒音規制法が規制するのは、道路や建設現場、特定の製造施設などで発生する、いわゆる「公害」に認定される騒音です。具体的な規制対象については、環境省のサイトを参考に、以下にまとめます。

  • 工場・事業場騒音の規制
    機械プレスや送風機など、著しい騒音を発生する施設であって政令で定める特定施設を設置する工場・事業場が規制対象
  • 建設作業騒音の規制
    くい打機など、建設工事として行われる作業のうち、著しい騒音を発生する作業であって政令で定める作業が規制対象
  • 自動車騒音の規制
    自動車が一定の条件で運行する場合に発生する自動車騒音の大きさの限界値が定められている
  • 深夜騒音等の規制
    地方公共団体が、住民の生活環境保全の観点から、当該地域の自然的、社会的条件に応じて必要な措置を講ずる(飲食店の深夜営業に関わる騒音や拡声機を使用する放送に係る騒音など)

騒音規制法の対象となるのは上記のように、工場や建設現場、深夜営業の飲食店など、事業場がメインです。つまり、隣人などとの騒音トラブルをこの法律に当てはめて解決することはできません。

参照:環境省公式サイト

騒音に関するその他の法律について

冒頭でご紹介したように、音は人によって感じ方が異なるため、「問題ない音」と「違法な音」を法律で明確に分けることが難しいです。ただ、なんの基準も作らなければ、際限なく音を出しても構わない…と考えてしまう人が出てきますので、迷惑騒音を規制する法律はいくつか作られています。

騒音の基準に関しては、環境基本法という法律で大枠の基準が定められていて、騒音規制法は、個別に規制する法令の一つにあたります。また、騒音規制法以外にも、騒音に関してのルールを決めている法律があり、それぞれの法令によって基準が微妙に異なります。したがって、騒音への対処を行う時には、音の発生源をきちんと切り分けて、どの法律の基準を参考にするのか決めなければならないのです。

以下に、騒音に関する何らかの取り決めが存在する法律をご紹介しておきますので、ご自身が関連しそうな法律があれば確認しておきましょう。

  • 環境基本法
    騒音以外にも、人の生活に関係するさまざまな環境問題について定めている法律です。騒音に関しては、その全般について基準を決めています。
  • 騒音規制法
    上述したように、工場や建設現場、道路など、事業や交通で生じる騒音の基準を決めています。
  • 風営法
    騒音とは関係がなさそうに思えますが、飲食店、風俗店、性風俗店などが発生させる騒音についてルールを設けています。(第15条関係)
  • 各自治体が定めている条例
    生活騒音に関しては、各自治体が条例を定めて何らかの規制を設けています。お住まいの地域の役所などで確認しましょう。

騒音に関する取り決めは、上記のようにさまざまな法令によって定められています。ただ、生活騒音に関しては、自治体ごとに取り扱いが変わりますし、明確な基準を作ることが難しいため、騒音に関する隣人トラブルを条例を参考に解決することはかなり難しいと言われています。ただ、工場や建設現場からの騒音に関しては、罰則付きの騒音規制法が存在するため、対処しやすいでしょう。

騒音規制法は具体的にどのような規制内容になっているのか?

それではここからは、騒音規制法が具体的にどのような基準を設けているのかについて解説します。

工場、事業場からの騒音について

騒音規制法の対象となるのは、下で紹介する「特定施設」を設置している工場などです。

  • ・金属加工機械(圧延機械、製管機械等)
  • ・空気圧縮機及び送風機(原動機の定格出力7.5kW以上)
  • ・土石用又は鉱物用の破砕機、摩砕機、ふるい及び分級機
  • ・織機(原動機を用いるもの)
  • ・建設用資材製造機械(コンクリートプラント、アスファルトプラント)
  • ・穀物用製粉機(ロール式かつ原動機の定格出力7.5kW以上)
  • ・木材加工機械(ドラムバーカー、チッパー等)
  • ・抄紙機
  • ・印刷機械(原動機を用いるもの)
  • ・合成樹脂用射出成形機 鋳型造型機(ジョルト式のもの)

上記の特定施設を設置する工場や事業所は、原則として設置工事開始日の30日前までに所定事項を市町村長に届け出なくてはならないと定められています。また、特定施設を設置している工場・事業所は、時間の区分及び区域の区分ごとに騒音の基準値が下図のように定められています。

引用:騒音規制法パンフレット

建設工事作業による騒音について

建設作業現場も、著しい騒音が発生する作業が指定されていて、そういった建設現場が騒音規制法の対象となります。騒音規制法の対象となる特定建設作業は、以下のような作業です。

  • ・くい打機(もんけんを除く)、くい抜機又はくい打くい抜機(圧入式くい打くい抜機を除く)を使用する作業(くい打機をアースオーガーと併用する作業を除く)
  • ・びょう打機を使用する作業
  • ・さく岩機を使用する作業(作業地点が連続的に移動する作業にあっては、1日における当該作業に係る2地点間の最大距離が50mを超えない作業に限る)
  • ・空気圧縮機(電動機以外の原動機を用いるものであって、その原動機の定格出力が15kW以上のものに限る)を使用する作業(さく岩機の動力として使用する作業を除く)
  • ・コンクリートプラント(混練機の混練容量が0.45㎥以上のものに限る)又はアスファルトプラント(混練機の混練重量が200kg以上のものに限る)を設けて行う作業(モルタルを製造するためにコンクリートプラントを設けて行う作業を除く)
  • ・バックホウ(一定の限度を超える大きさの騒音を発生しないものとして環境大臣が指定するものを除き、原動機の定格出力が80kW以上のものに限る)を使用する作業
  • ・トラクターショベル(一定の限度を超える大きさの騒音を発生しないものとして環境大臣が指定するものを除き、原動機の定格出力が70kW以上のものに限る)を使用する作業
  • ・ブルドーザー(一定の限度を超える大きさの騒音を発生しないものとして環境大臣が指定するものを除き、原動機の定格出力が40kW以上のものに限る)を使用する作業

これらの作業を行う場合、作業開始日の7日前までに市区町村長への届出が必要とされています。なお、騒音に対する基準値は以下のように定められています。

引用:騒音規制法パンフレット

自動車騒音について

騒音規制法の対象となる自動車騒音については、それぞれの車線の数などに応じて、「環境基準」と「要請限度」の2つの基準が設けられています。音のトラブルに関しては、基本的に要請限度に着目して違法性の判断を行うとされています。

要請限度は次のとおり定められています。

引用:騒音規制法パンフレット

なお、上記の要請限度を超えていない場合でも、必要に応じて市町村長は、道路管理者や関係行政機関の長に対して、騒音を小さくするように意見を言うことができるとされています。また、上記の他にも、自動車単体が一定の条件で運行する場合の自動車騒音について、許容限度を定めることで生産販売段階での規制が行われています。

騒音規制法に違反した場合どうなる?

騒音規制法は、上で紹介した騒音に関する基準を制定しており、これに違反した事業者に対して罰則も用意しています。罰則は非常に厳しく、懲役または罰金などの刑罰が科されます。

なお、騒音の苦情から実際に罰則が適用されるまでには、いくつかの段階があります。まず住民から騒音に関する苦情が入るなど、何らかの違反があると判断された時には、自治体などによる立ち入り検査が行われます。そしてその上、改善勧告や改善命令が発令され、それに従わない場合に罰則が適用されるという流れになると考えましょう。

騒音規制法の罰則規定については、以下のように定められています。

第六章 罰則
第二十九条 第十二条第二項の規定による命令に違反した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
第三十条 第六条第一項の規定による届出をせず、若しくは虚偽の届出をした者又は第十五条第二項の規定による命令に違反した者は、五万円以下の罰金に処する。
第三十一条 第七条第一項、第八条第一項若しくは第十四条第一項の規定による届出をせず、若しくは虚偽の届出をした者又は第二十条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、若しくは同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、三万円以下の罰金に処する。
第三十二条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前三条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。
第三十三条 第十条、第十一条第三項又は第十四条第二項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、一万円以下の過料に処する。
引用:e-Gov|騒音規制法

工場・事業所が騒音基準に違反した場合の罰則

工場・事業所にて、騒音の苦情が出て改善命令が出たにもかかわらず、それに反して基準値以上の騒音を出し続けた場合、1年以下の懲役または10万円以下の罰金に処せられます。

この他、特定施設を設置するのに必要な届出を出していない、もしくは虚偽の届出をしていたなどと言った場合には、5万円以下の罰金が科される、報告・検査に誠実に応じない場合は3万円以下の罰金が科されるなどの罰則も用意されています。

建設現場から生じる騒音が基準に違反した場合の罰則

建設現場の騒音が基準値を超え改善命令が出されたのにもかかわらず、基準値以上の騒音を出し続けた場合、5万円以下の罰金が科されます。工場・事業所とは異なり、建設現場の騒音の違反に関しては、懲役に処されることはありません。

なお、虚偽の届出をした、無届で特定作業を行った、報告・検査に誠実に応じないなどと言った問題については、共通で3万円以下の罰金を科すと定められています。

まとめ

今回は、日本国内の騒音に関する取り決めを行っている騒音規制法をご紹介しました。騒音トラブルは、日常生活の中で、いつ、誰のもとに訪れるか分からない問題です。そして、音の問題は、人によって感じ方が異なるため、数値による規制が非常に難しいとされていて、一般の生活音に関しては、法律による明確な基準がないのが実情です。

ただ、工場や建設現場などから生じる著しい騒音に関しては、近隣住民の生活環境を破壊しないために、きちんと法律による規定が行われています。騒音規制法は、騒音の上限値を定めたうえ、罰則規定まで設けていますので、近所にある工場などの騒音に悩んだ場合、自治体に相談すれば問題を解消することも可能かもしれません。ただ、法律の範囲内に音量が収まっている場合、苦情に対応してもらえない場合もある点は注意しましょう。もちろん、近隣住民からの苦情が出れば、何らかの対策を施してもらえる可能性もありますが、違反にならない範囲なのであれば、大掛かりな対策は期待できないでしょう。

このような場合には、自宅に防音工事を施すことで、音の侵入を防ぐしかないので、まずは防音工事の匠にご相談ください。

スタッフ A

大阪で20年間にわたって防音工事に携わってきました。
防音工事に関しての事、音に関する豆知識などを配信しております。

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