ご近所さんが出す騒音の証拠を残したい!騒音計ってどんなのがあるの?
新型コロナウイルスの影響により、在宅時間が長くなってきた現在では、今まで気にもしなかった音に悩んでしまう…という方が増えています。特に、マンションなどの集合住宅になると、テレワークをすることになったけど、上の階の足音が気になる…、隣から聞こえる話し声で集中できない…など、騒音によりご近所間の関係が悪化してしまう…なんてことも増加しているようです。
そして、こういった騒音を原因として、裁判沙汰にまで発展してしまうケースが存在するのです。ただし、音の問題というものは、人によって感じ方が異なりますし、単にあなたが「うるさいと感じた!」などと訴えたとしても、裁判に勝てる見込みはないでしょう。こういった場合には、「本当に人体に健康被害を及ぼすような大きな音が発生していたのか?」といった証拠をきちんと残しておく必要があるのです。
ちなみに、音の大きさは『dB(デシベル)』という単位で表されており、環境省などでは日常生活の中にある騒音レベルの基準なども公表しています。したがって、近隣の家から聞こえてくる音がうるさくて、「夜も眠れない…」などといった被害が生じている場合、こういった音の量を測れる器具を用意して、記録に残しておくことが一定の証拠となるのです。
この記事では、あなたが騒音に悩まされたとき、その証拠を残すために有効な機器である『騒音計』の基礎知識をご紹介します。
騒音計の基礎知識と選び方
普段の生活の中で、騒音計を利用したことがある…なんて方はほとんどいないと思います。例えば、弊社のような防音工事を専門とする会社に勤めているという方であれば、防音工事の性能評価や、現地調査の際によく利用するのですが、一般生活の中で「音の大きさの数値は?」などといった事を測る機会などないですよね。そのため、『騒音計』といわれても、どんな形をしているのかすら分からない…なんて方も多いのです。
ここでは、騒音に悩まされてしまっている方が、その証拠を残すため、騒音計を購入する場合の選び方や、騒音計に関する基礎知識を簡単にご紹介しておきます。なお、購入するだけであれば、ネット通販などで手軽に手に入れることができる時代になっています。
POINT① 騒音計の種類
騒音計の購入を検討した場合でも、「騒音計にも種類がある」ということをおさえておかなければいけません。以下に、騒音計の種類をご紹介しておきますので、用途に合ったものを購入しましょう。
- 精密騒音計
精密騒音計は、研究・実験・評価などに利用されるものです。計量法やJIS規格に適合している騒音計となります。計量法とは、国際標準に沿った『計量の基準』や『機器の正確さの維持』を目的とした法律で、これによって騒音計の仕様が定められています。なお、JIS規格(日本の工業標準)は計量法よりも厳しく、JIS規格をクリアしていれば、計量法にも適合していると判断できます。精密騒音計は、音の大小を数値化した「dB(デシベル)」の精度が高い事や、「測定周波数範囲」が広いことが特徴です。また、騒音計は、実際の音と検知した数値に多少のばらつきがあるものですが、このばらつきが小さいのも特徴の一つです。ただし、精密な計測が行えるプロ仕様の機器となりますので、安い物でも20万円以上はかかるなど、非常に高額ですので、騒音トラブル用に使うのはあまりオススメできません。 - 普通騒音計
普通騒音計は、工場・住宅などの環境騒音を測定する際に用いられるものです。ちなみに、普通騒音計も計量法やJIS規格に適合しています。上述した精密騒音計との違いは、「dB(デシベル)」の精度や「測定周波数範囲」となります。
精度に関しては「±1dB」、測定周波数範囲は「8,000Hz」と、精密騒音計にはその性能が及びません。ただし、8,000Hzというのは、虫や鳥などの高い鳴き声くらいですし、用途によっては全く問題のない性能を持っていると言えます。なお、価格は10万円以上するのが普通ですし、騒音トラブルの証拠を残すため…となると、高すぎると考えられます。 - 簡易騒音計
「騒音問題の証拠を残したい!」という方にお勧めなのがこのタイプです。上の二つの種類とは異なり、かなりリーズナブルな価格設定ですので、ちょうど良いと思います。
注意が必要なのは、簡易騒音計といっても、ピンからキリまであり、安いものは単に数字が動いて騒音レベルの最大値や最小値を確認できる程度です。簡易騒音計の中には、より正確な数値を残せるような物もあるので、どこまでのデータが必要なのかをよく考えて、機能から選ぶと良いでしょう。なお、最も安い物であれば数千円で販売されていますが、仕様や機能が良くなるにつれ高くなっていきます。
POINT① 検定付き騒音計が良いとも限らない
裁判などでも使えるデータが欲しいため、「検定付き」の騒音計を購入しようと考えている方も多いかもしれませんね。しかし、上述したように、非常に高価な騒音計になりますので、本当に検定付きが必要なのかはよく考えた方が良いです。
例えば、計量法には、『取引や証明に使う計測結果については、計量法やJIS規格に適合している「精密騒音計」や「普通騒音計」などの騒音計で、しかも「検定を受けた」ものを使用する必要がある』とされています。これにより、高額な騒音計が必要と考えてしまうのでしょうが、実は、取引や証明に使う場合には、『有資格者(環境計量士)』がはかって初めて公的なデータとして利用できるようになるのです。つまり、何の資格もない方が、どれだけ精密な騒音計を利用したとしても、それは公的に使用できるわけではないということです。
このことから分かるように、個人で周囲の騒音レベルを測り、それを裁判などに使うというのであれば、高額な精密騒音計でも、安価な簡易タイプでも同じだということです。公的なデータとして提出したいのであれば、自分で騒音計を購入するのではなく、専門業者に測定ごと依頼するようにしましょう。
POINT③ 騒音計の細かな機能について
騒音計は、購入する機種によって仕様や機能なども変わりますので、用途に合わせて機能面の事も慎重に検討しましょう。
- 騒音レベル測定範囲について
計測したい騒音は人によって異なります。例えば、近隣からの騒音や目の前の道路から聞こえる交通音、近くの工事の音など、幅広い音の確認をしたい…という場合、測定範囲が広い物がオススメです。例えば、30~130dB程度までの騒音レベルが測れるものであれば、小さなささやき声からヘリコプターの大きな音まで測定が可能です。精度に関しては、±1.5dB程度までの物がオススメです。 - データ記録機能について
騒音レベルを表示させるだけでなく、記録しておきたいというのであれば、「データロガー」「データレコーダー」など、記録機能があるものがオススメです。なお、記録機能に関しても、1分程度のものから数時間連続記録が可能なものまでさまざまです。長時間記録するタイプは、SDカードなどに記録したり、ケーブルでPCにつなぎ、そこに記録を残すなど、種類があります。上階の足音など「いつ聞こえるか分からない…」騒音などは、長時間記録しておけるタイプが便利です。
まとめ
今回は、騒音トラブルが急増している今、いつ必要になってもおかしくない騒音計の基礎知識をご紹介してきました。この記事でご紹介したように、一口に騒音計といっても、さまざまな種類が存在しており、種類によって価格が大きく異なってしまうのです。
裁判などの資料として…と考えると、より精密なデータがとれる高額な騒音計が必要だと考えてしまうものですが、それを使って自分で計測するのであれば、そのデータは公的なものとは認められないのです。つまり、騒音の訴えの証拠として残す程度であれば、安価な簡易モデルでも十分だということです。
なお、公的なデータとして残しておくのであれば、専門業者に依頼して、きちんと測定データを作成してもらうしかありません。もちろん、それなりのコストがかかってしまうので、その辺りには注意です。