低周波音による苦情が増えている?知っておきたい低周波音の基礎知識について
近年、低周波音による騒音トラブルが増加傾向にあると言われています。低周波音は、大きな音を出す人が近所にいて単にうるさくて迷惑するといった問題ではなく、人によって全く気にならない場合もあることから、対処が非常に難しい問題と言われています。
また、人々の日常生活の中にも、低周波音を発生させる機器が非常に身近な場所にあることから、気付かないうちに騒音源になってしまっている方も非常に多いと言われています。例えば、現代では、ほとんどの住宅に設置されているエアコンや、省エネ効果が高いと人気になっているエコキュートなどが低周波音の発生源になるケースがあり、これらの設備を使っているだけで低周波音を出してしまうので、対策がなかなか難しい問題となっているのです。
なお、低周波音による影響は、「うるさい!」という問題だけでなく、人によっては不眠や頭痛など、生活に支障をきたすような健康被害を引き起こす場合もあり、裁判沙汰にまで発展してしまうこともあるようです。そこでこの記事では、そもそも低周波音がどのようなもので、どういった対策をとれば良いのかについて解説していきます。
低周波音とは
それではまず、低周波音がどういったものなのかについて簡単に解説しておきます。一般の方からすれば、「音に違いなんてないのでは?」と考えてしまうかもしれませんが、そもそも人の耳に聞こえるのは、約20Hz(ヘルツ)から2万Hzまでの音と言われています。
そして、低周波音は、この音の中で、約100Hz以下の音波のことを指しています。ちなみに、20Hz以下の「人の耳では音として捉えられない物」を超低周波音、20Hzから100Hzの音を低周波音と分類します。低周波音は、上述したように、エアコンやエコキュートの室外機から発生する音の他、バスやトラック、船などのエンジン音、波が防波堤にぶつかる時の音、大きな滝で滝つぼに水が落ちる音などとなります。
低周波騒音の原因とは?
上でご紹介したように、低周波音の発生源はさまざまなモノが考えられます。ただし、低周波音による騒音問題については、やはり街中で発生する物だと考えられますよね。例えば、滝つぼに水が落ちる音や、波が防波堤にぶつかる音などについては、苦情をどこに言えば良いのかすら分からないと思います。
近年、テレビなどでも取り上げられる機会が増えている、低周波音による騒音問題は、住宅地の近くで発生していますが。例えば、住宅地の近くに工場や店舗がある場合、空調機器なども家庭用の物より大きくなるので、そういった場所で使用されている空調室外機やボイラー、冷凍機などが低周波音の発生源になるケースがあります。
この他にも、人々の生活空間が非常に近くなっていることから、一般家庭で使用されているエアコンやヒートポンプ給湯器(エコキュート)の室外機が発生源になっているケースが非常に多いです。特に、エコキュートなどに関しては、深夜帯にお湯を作るために稼働する設備となりますので、人が寝静まっている時に低周波音を発生させることから、近隣トラブルの原因となるケースが多いのです。
低周波音はどのような問題を引き起こすのか?
それでは、低周波音によるトラブルについて、どのような問題に発展するのかをご紹介していきましょう。一般的に、音が原因となるご近所トラブルは、単にうるさくて生活がしづらいという問題が起きるだけです。
ただし、可聴域の下限近い低周波音については、これに長時間晒され続けてしまうと、身体的にも精神的にも、人に悪影響をおよぼすケースがあると言われています。さらに問題なのが、人の耳には音として捉えられないような超低周波音であっても、心身に悪影響を与えてしまう場合があるのです。
低周波音による悪影響については、断続的に「ボー」といったような低めの鈍い音が聞こえるようになるというのが初期症状と言われています。これは、家の中でリラックスしている時や寝ている時にも聞こえてきてしまい、なんとなく耳が詰まってしまっているように感じるそうです。そして、それが長期化すると、耳以外にも不調を引き起こすようになり、落ち着きがなくなったり、胸の苦しさを訴えるなど、音とは全く関係性がなさそうな問題に発展するのです。
このように、低周波音が原因となる問題については、さまざまな種類が存在していて、苦情も「物的苦情」「心理的苦情」「生理的苦情」の3つに分類することができます。ここでは、それぞれについてもう少し詳しくご紹介しておきます。
物的苦情について
物的苦情は、室外機の振動や家屋・家具などが振動することに対する苦情のことです。
低周波音は、音は感じられないのに、扉や窓などが揺れたりガタついたりすることがあるのが特徴です。なお、この現象については、全てが低周波音が原因となるのではなく。地面振動などが原因となるケースもあります。
物的苦情を感じる場合、多くのケースで20Hz以下に強い周波数成分を持っている超低周波音が起因となっていると言われています。近くで超低周波音が発生している場合、不安定でがたつきがちな建具について、以下の周波数と音圧で振動し始めるという実験結果も存在します。
- 5Hz:70dB
- 10Hz:73dB
- 20Hz:80dB
これからも分かるように、周波数が低い音の方が、小さい音圧でも家屋や家具に影響を出しやすいです。
心理的苦情について
心理的苦情とは、名称から分かるように、人が不快に感じたり、心身に支障をきたしていることに対する苦情です。
低周波音が常に聞こえている状態になると、人によってはリラックスできない状態が続いてしまい、集中力が低下したり、疲労感を感じたりするようになります。また、低周波音が気になり、ぐっすり眠れないなどといったケースでは、普段なら気にならないような物音や自分の寝返りで目が覚めてしまうなどといった状況になる人がいるそうです。そしてさらに状況が悪化した場合、不眠症を発症してしまいます。
このような状態が続いてしまうと、日常生活の中で、常にイライラしてしまう、倦怠感が続いてしまうなどの身体的不調につながってしまいます。
最悪の場合、自律神経失調症などの精神障害になってしまったり、薬物に手を出してしまうなどといった事例まであるそうですよね。低周波音は、「うるさい!」と感じるような音ではないのですが、ずっと聞こえているだけで、大きなストレスになってしまいます。
生理的苦情について
最後は生理的苦情です。これは、耳鳴りや頭痛、吐き気などといった症状に対する苦情です。主に、心理的苦情の症状が悪化したことにより起こると考えてください。
不眠症は、「よく眠れないだけで、そのうち眠くなるでしょ」といった感じに非常に簡単に考えてしまう人が多いです。しかし、よく眠れないことに起因した症状には、頭痛やめまい、腹痛、手足のしびれ、血圧の上昇、吐き気など、身体全体に関わるような不調がどんどん現れてしまう、非常に深刻な問題なのです。
更に、身体の不調だけにとどまらず、幻聴や幻覚などの症状が現れる場合もありますし、最悪の場合、交通事故で他人まで巻き込んでしまうような問題に発展するケースも考えられるのです。
低周波音の対策は?
それでは最後に、低周波騒音の対策について解説しておきましょう。低周波音は、人の耳ではとらえられないものがある点や、人によって感じ方がかなり違うことから、対策が後回しになってしまうケースが多いです。
近年では、テレビなどでも低周波音が特集されるようになっているのですが、これは、エコキュートと呼ばれる給湯器が全国的に普及したことで、低周波音による裁判沙汰が急に増えたことが要因です。というのも、エコキュートは、深夜帯の電気代が安くなるプランを用いて、お得にお湯を作るという給湯システムであることから、深夜帯に機器が稼働する仕組みになっています。そして、周囲が寝静まっていることから、通常は気にならないような低周波音が目立ってしまい、不眠による苦情などが一気に増えたという背景があるのです。
それでは、こういった低周波音は、どのような対策をすれば良いのでしょうか?実は、一般家庭で使用されている機器が発生源となる低周波音についてそこまで対策が難しいわけではありません。例えば、エコキュートであれば、振動源となる室外機を設置する際、地面に振動が伝わらなくなるよう防振ゴムなどを設置することで、低周波音の発生を防ぐことが可能です。
工場や倉庫など、大型機械が低周波音の発生源になっているという場合は、防振対策の他、機械の周りを防音材で囲むだけで、苦情が解決する可能性が高いと思いますよ。
まとめ
今回は、近年、音の問題として取り上げられることが増えてきた低周波音について解説しました。低周波音は、エアコンの室外機やエコキュートの室外機の振動が床を伝わり、近隣に迷惑を掛けるという問題です。今の時代、ほとんどの家庭がエアコンを設置していますし、夏場や冬場は寝ている時もエアコンを稼働させているという方も少なくありません。
室外機が発生させる音は、人がうるさいと感じるほど大きな音ではないのですが、周囲が寝静まっていることから、余計に目立ってしまうというのが特徴です。さらに、人は一度気になってしまうと、どんどんその音に注目してしまうようになり、トラブルに発展するわけです。
ただ、低周波音については、発生源を特定し、振動を伝えないようにすることで、ほとんどの場合、おさえることが可能です。低周波音に関する苦情があった時には、お気軽にご相談ください。