自宅の防音対策はDIYでも可能なのか?DIYで防音対策を行う時のコツと注意点について

なんらかの音の問題を抱え、自宅の防音対策を検討した時には、どのような方法があるのでしょうか?楽器の演奏やホームシアターなど、本格的な防音室が必要になった場合には、専門業者に防音工事を依頼するというのが一般的ですが、隣人の生活音に悩んでいるといった音の問題の場合、多額の費用をかけてまで専門業者に依頼するのは躊躇するという方が多いです。特に、お住まいが賃貸物件の場合、専門業者に工事を依頼したくても、管理会社や物件オーナー様の許可がおりず、本格的な工事ができないケースも少なくありません。

このような場合、ネット通販やホームセンターなどで防音対策用のアイテムを購入し、DIYによる防音工事を検討する方が増えています。近年では、リフォームに関する本格的な知識がなくても、比較的簡単に防音対策が実現するアイテムが販売されていることから、DIYなら費用も抑えられるし一石二鳥だと考える方も多いです。

それでは、実際にDIYによる防音対策の実行を考えた時、防音に失敗しないためのコツのような物はあるのでしょうか?この記事では、DIYによる防音対策を成功させるためのコツと、注意点をご紹介します。

音の種類によって適切な防音対策は変わる

音にも種類が存在していて、防音対策を施すにはそれぞれの音の特徴に合わせて行う必要があります。一般的には、音は以下の2つに大きく分けることができます。

  • 空気伝搬音
    空気を媒体として伝搬する音を指します。具体的には、人の話し声、ペットの鳴き声、スピーカーからの音声などがこれにあたります。
  • 固体伝搬音
    壁や床、天井などに振動が伝播し、音となって現れるものを指します。足音や椅子を引きずる音、ドラムなどの振動音がこれにあたります。

それでは、上記のような音を防ぐには、どういった対策が必要になるのでしょうか?

空気伝搬音の防音対策について

空気伝搬音は、空気を媒体として伝わると紹介しましたね。つまり、この音を防ぐためには、空気の通り道を少なくするという対策が有効です。簡単に言うと、部屋の気密性を高めるということです。空気音は、空気の振動を利用して伝わるわけですので、部屋の隙間を可能な限り少なくして、空気の通り道がなくなればその分、音漏れや侵入を防ぐことができます。
対策としては、隙間テープなどを設置する、防音カーテンを設置したうえで、吸音材を利用して音を吸収するといった対策が個人としてできる対策となります。

個体伝搬音の防音対策について

個体伝搬音は、空気伝搬音よりも防音が難しいので注意が必要です。建物の構造体の振動で伝わっていきますので、特に集合住宅などは注意が必要です。

固体伝搬音は、固体が振動することで拡散していきます。したがって、固体に振動を伝えないよう、音が発生する部分に振動を吸収する物を設置することで対策を施すことができます。例えば、足音や固いものが床に落ちた時の音を防ぐなら、床にカーペットなど、衝撃を吸収できる物を敷くだけでも音の伝わりを少なくすることが可能です。

防音対策に種類がある

音に種類があるように、防音の方法にも種類が存在します。そもそも「防音」という言葉については、具体的な対策を示しているのではなく、対策が施された後の結果を示す言葉です。そして、最終的に「音が小さくなる」という結果をもたらす防音には、吸音・遮音・制振と言った異なる対策が存在するのです。実は、防音という言葉はあくまでも、これらを含んだ対策を総称する言葉な訳です。

したがって、実際に何らかの音に悩んでそれを解決したいと考えた時には、吸音・遮音・制振がどういった対策で、どのような音を防げるのかを頭に入れておく必要があるのです。ここで、主な防音方法である、吸音・遮音・制振について、それぞれの特徴を解説します。

吸音の特徴

吸音は、音(空気音)が吸音材の中を通過する際に、音のエネルギーを摩擦により熱エネルギーに変換することで音を小さくすることを目的とした対策です。住宅の防音などではグラスウールなどが吸音材として利用されるのですが、こういった素材は内部に小さな穴が無数に存在します。そして、音が通過する際に小さな穴の中で反響することで、摩擦が起こり、熱エネルギーに変換されるという仕組みになっています。

吸音は、主に空気音に対する防音目的に用いられる方法で、人の話し声やペットの鳴き声、楽器の音色などに効果的です。本格的な防音工事では、壁の中に吸音材を充填するという方法が一般的ですが、DIYで防音対策を施す場合は、パネル状になった吸音材を壁に設置するといった対策が多いです。

遮音の特徴

遮音は、文字通り「音を遮る」ための対策で、一般的に遮音材と呼ばれるアイテムを設置することで音を跳ね返す対策となります。音を跳ね返すことで、音の侵入はもちろん、室内からの音漏れを防ぎます。

ただ、遮音は「音を跳ね返す」対策となりますので、音が小さくなるわけではないという点に注意が必要です。例えば、室内で生じる音が外に漏れないように、遮音性能ばかり高めてしまうと、音の逃げ場がなくなり室内で音が反響しすぎるようになります。そうなると、反響音により声や会話が聞き取りにくくなってしまうのです。

遮音対策として用いられるのは、遮音シートや遮音パネルと呼ばれるアイテムです。DIYによる対策では、窓部分に遮音カーテンを設置するという方法が採用されるケースが多いです。

制振の特徴

最後は制振です。これは「振動を制する」という意味があり、揺れや振動が原因で音が出てしまっている箇所の振動を小さくすることで、音の発生を少なくするという対策です。

分かりやすい例をあげると、洗濯機やエアコンの室外機など、稼働時に振動音を発生させる機器について、制振材や防振材と呼ばれるアイテムを挟み込むことで、振動が床などに伝わるのを防ぎます。制振や防振にはゴムなどの素材が利用されます。

DIYで防音対策を施す場合のコツ

それでは、実際にDIYによる防音対策を試みてみようと考えている方に向け、防音対策を施工に導くためのコツをご紹介します。

可能な限り隙間を作らない

DIYによる防音対策では、ホームセンターやネット通販で防音パネルや防音シートと呼ばれるアイテムを購入し、壁に設置するといった対策や、窓に遮音カーテンを設置するといった対策を行う方が多いです。

この時には、可能な限り隙間が生じないようにすることが大切です。上述したように、防音対策は、気密性を高めてあげることが非常に重要で、隙間があると空気の出入りができることからそこから音漏れ・侵入が発生してしまうのです。

こういったことから、壁の防音対策として防音パネルなどの設置を行う場合、きちんと寸法を測り、隙間が生じないように貼付けしていくようにしましょう。特に注意が必要なのは、防音カーテンで、普通のカーテンと同じように取り付けをしたのでは、上下左右に音漏れの原因となる隙間が生じてしまいます。したがって、防音カーテンを設置する場合、上部にはカーテンボックスをつける、左右は壁にとめられるようにするなど、隙間ができないように設置しましょう。もちろん、カーテンの大きさは、窓全体を覆えるサイズでなければ意味がありません。

購入する防音材は口コミをきちんと確認する

このポイントは意外に重要です。専門業者に工事を依頼する場合、防音材は業者が選定してくれますが、DIYによる防音対策であれば、必要なアイテムを自分で探さなければいけません。もちろん、ホームセンターやネット通販で探せば、「吸音効果を持つ」「遮音効果を持つ」ような防音材はたくさん販売されていますので、「防音材を手に入れることができない…」なんて事態になることはありません。

しかし、たくさんのアイテムが並びますので、「本当に効果のある防音材がどれか分からない…」という悩みは誰もが抱えてしまうことでしょう。特に、防音の需要が高まっている近年では、どんどん新たな防音材が登場しており、価格競争も起きています。そのため、防音材を探す時には、「できるだけ安い物を購入したい」という考えを持ってしまう方がいます。
言っておきますが、誰でも手に入れられる市販の防音材は、本当に効果がピンキリで、中には何の防音効果も持っていないような物もあるのです。いくら安価でも、そういったアイテムを掴んでしまうと、お金だけでなく時間も手間も損になりますので、安さだけに注目して購入するのはやめましょう。

防音材を選ぶときには、ネット上の口コミ情報をきちんと確認しながら選ぶのがおすすめです。今の時代、実際の利用者の声が簡単に確認できるようになっていますので、過去に利用した人が「防音効果を実感できているのか?」を重視しながら探すことで、効果のあるアイテムを見つけることができるはずです。

賃貸の場合、原状回復を前提にする

DIYによる防音工事の多くは、賃貸に住んでいるから専門業者による工事が許可してもらえないという理由があるからです。賃貸住宅の場合、いくら住人側が防音工事の費用を支払うといっても、他の住居との家賃の兼ね合いなどがあることから、部屋の性能を高めるようなリノベーション工事は認めてもらえない可能性が高いです。したがって、賃貸で音の問題を抱えた時には、防音アイテムを自分で集めてDIYによる対策がほとんどなのです。

ただ、賃貸住宅で防音対策をする際には、退去時には原状回復の義務があるということを忘れてはいけません。原状回復義務は、簡単に言うと「退去の際は入居時の状態に戻さなければならない」ということです。もちろん、経年劣化などに関しては住人の責任にはなりませんが、防音対策のために部屋を傷つけた場合、その部分は原状回復義務が生じるのです。

例えば、壁に貼り付けるタイプの遮音シートを何も考えずに採用した場合、退去時にはこれをはがさなければいけません。長年粘着テープなどで貼り付けていれば、はがすときには下地のクロスまで一緒に剥がれてしまうことでしょう。そうなると、原状回復のために請求される費用が大幅に高くなってしまうのです。賃貸では、退去時に必ず原状回復費を請求されますので、これに影響を与えない範囲での対策を検討すると良いでしょう。要は、物件そのものに傷をつけないで済む対策のみを施すといった感じです。

DIYでは高い防音効果は望めない

最後に本末転倒な事を言いますが、防音の知識を持っていない一般の方が、DIYで行う防音対策については、そこまで高い効果は見込めないと考えておいた方が良いです。近年では、それなりに高い効果を持つ防音材が簡単に手に入るようになっていますが、いくらそういった製品を購入しても、正しい知識のもとに正しく施工が出来なければ、本来の効果を発揮することができないのです。

実際に、防音材を販売している通販サイトなどを確認してみると、プロの防音工事業者が使用するような防音材に「何の効果も感じなかった!」と言った辛辣な口コミが記載されているのを見かけることも少なくありません。それでは、プロも効果の全くないようなアイテムを使って防音工事を行っているのでしょうか?はっきり言って、そんなはずはないですよね。

いくら効果の高い防音材でも、間違った施工方法で設置されると、その効果を発揮することができないため、間違った口コミが書かれてしまうことがあるのです。上述したように、音の出入りをシャットアウトするためには、少しの隙間が生じているだけでも施工した防音材は意味をなさなくなってしまいます。よくある失敗例としては、壁に隙間なく防音材を設置しているけれど、換気のための換気口を無視しているため、換気口から音が出入りするといったケースです。このような失敗は、DIYではよく見かけます。

防音工事は、目に見えない音を防ぐための対策なので、皆さんが考えている以上に難易度が高いです。賃貸に住んでいる方の場合、専門業者に工事を依頼できないかもしれませんが、持ち家の方であれば、無駄な材料費をかけなくて済むよう、ちょっとした対策でも防音工事の専門家に相談するのがおすすめです。

スタッフ A

大阪で20年間にわたって防音工事に携わってきました。
防音工事に関しての事、音に関する豆知識などを配信しております。

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