管楽器用防音室を実現するためのポイント。実は同じ管楽器でも種類によって防音の難易度が変わる

今回は、トランペットやトロンボーン、サックスなど、管楽器の防音工事をお考えの方のため、管楽器用防音室を作る時のポイントをご紹介します。

管楽器は、ピアノやドラムなどと異なり、楽器から直接振動が伝わることが無いですし、比較的高音域の音が発生するという特徴から、防音対策はそこまで難しくないと考えられています。ピアノやドラムなどの楽器は、演奏することで衝撃音が床に直接伝わることから、マンションなどで防音室を作る場合、浮遮音床構造にしなければならないなど、防音室の構造が複雑化します。これが管楽器の場合、楽器が直接床に触れる様なものが少ないことから、空気音に対する防音だけで良いと考えられているからです。

ただ、管楽器の防音工事は、皆さんが考えているほど簡単ではなく、実は建物構造や管楽器の中でもどの楽器の防音室なのかによって注意点がかなり違うのです。最近では、防音工事の専門業者ではなく、一般住宅リフォーム業者が防音工事業界に参入してきており、表面的な防音手法のみで対策を行うことで、防音工事に失敗してしまうケースが増えています。

そこでこの記事では、管楽器用防音室の注意点を解説します。

管楽器にもいろいろな楽器がある

一口に管楽器と言っても、さまざまな種類の楽器が存在します。そもそも、管楽器は『金管楽器』と『木管楽器』に大きく分類することができるのですが、この二つは何が違うのか知らない人も意外に多いです。よくある勘違いとしては、金管楽器は金属でできていて、木管楽器が木が主材料になっているといった考えですが、これは間違いです。金管楽器と木管楽器の違いは、以前別の記事でご紹介していますので、詳しくはそちらの記事を見ていただきたいのですが、簡単に言うと「音を出す仕組み」によって分類されています。金管楽器は、マウスピースに唇を当て唇を振動させることで音を出すのですが、木管楽器はリードを使用して音を出します。
もう少しわかりやすい例を出すと、金管楽器はトランペットのような楽器でマウスピースと呼ばれるパーツを使って音を出します。木管楽器は、サックスなどが代表的ですが、リードと呼ばれる振動体を取り付けて音を鳴らします。なお、フルートやピッコロは、リードを取り付けないのですが、息を吹き込んで空気を振るわせる楽器であることから「エアリード」と呼ばれ、木管楽器に分類されています。

このように、「管楽器」という分類方法は、そもそも音を出す仕組みが異なるものをひとまとめにしているかなり大雑把な分類方法ですので、防音対策の注意点が全て同じになるわけがないと考えなければいけません。さらに、管楽器は、同じサックス(サクソフォン)でも中音・高音が生じるアルトサックスやソプラノサックス、中音・低音が特徴のテナーサックスやバリトンサックスのように、音域まで異なる楽器が存在しています。当然、楽器が生じさせる音の種類によって必要な防音対策は異なるわけですので、防音室の中で使用する楽器が何なのかによって防音工事の注意点が変わると考えてください。

最近では、この辺りの基本中の基本を理解せずに防音工事を請け負っている業者も多くなっているようですので、注意が必要です。

関連記事:勘違いしている人が多い楽器の基礎知識!「金管楽器」と「木管楽器」の違いとは?

管楽器の防音工事について

それでは、トランペットやサックスなどの管楽器用防音室を作る場合の注意点をご紹介します。ここでは、建物構造に着目しながら、楽器の種類ごとの防音上の注意点をご紹介します。

中高音域の管楽器はマンションなら防音が容易

まずは、トランペットやアルトサックスなど、比較的中高音域が出る管楽器についてです。実は、管楽器の中でも中高音域が出るタイプは、建物構造がしっかりしているマンションであれば、防音が比較的容易です。音には、低音~高音まで種類があるのですが、実は壁や床、天井などは低い音の方が通りやすく(伝わりやすい)、高い音は通しにくいという特徴があります。

そのため、トランペットを始めとして、ホルン、ソプラノサックス、アルトサックスなど、管楽器の中でも中高音域の楽器は、特に鉄筋コンクリート造のしっかりしたマンションなら、防音工事の難易度はそこまで高くありません。

防音性能の目安としては、ピアノ室などと同じく、上下左右の住戸に対して、D-65をクリアするように対策を施せば十分でしょう。

戸建てなら中高音域の管楽器は窓に注意

注意が必要なのが、一戸建てでトランペットやアルトサックスなど、中高音域の管楽器を演奏したいと考えた場合です。一戸建てであれば、こういった楽器でも屋外に対する防音対策をしっかりと行わなければいけません。

というのも、住宅の居室には採光や換気のため、窓が設けられていますが、実は窓ガラスは高音域の防音性能が落ちるという物理的な特性を持っています。そもそも、窓ガラスは壁と比較すると非常に薄い素材で出来ていますので、防音を目的とした特殊なガラスでなければ、防音上の弱点になります。さらに、FIX窓以外の窓は、開閉する時の利便性を考えて、きちんと閉めていてもいくらかの隙間が生じるような構造になっており、この隙間も高音が通りやすく音漏れの心配があるわけです。

こういったことから、トランペットなどの中高音域が出る管楽器用防音室を作る場合、窓の防音対策をしっかりと行いましょう。例えば、二重サッシによる窓の防音対策がありますが、縦すべり出し窓と内開き窓を組み合わせた二重窓でD-50ぐらいの性能をもたせることができます。窓が面しているのが開けた道路の場合は、この程度の防音性能があれば問題ないでしょう。ただし、窓のすぐそばにお隣の家が建っているなどと言った条件で、かつ窓の目の前が開口部(相手方の窓や換気口など)になっている時はこれよりもさらにランクを上げ、D-55以上の防音性能を確保しましょう。

マンションでも低音域の管楽器は高性能な防音室が必要

冒頭でご紹介しているように、管楽器は空気音の対策だけをすれば良くて、ピアノやドラムのような衝撃音に対する防音は不要だと考えている方が多いです。しかし実は、管楽器の中でも、トロンボーン、ユーフォニアム、チューバ、テナーサックス、バリトンサックスなどは、低音域の音が出る楽器として有名で、建物構造がしっかりしているマンションなどでも高性能な防音室が必要です。

壁や床、天井は、低音が通りやすいという弱点を持っているうえ、金管楽器やサックスは音圧レベルが高いという特徴があります。そのため、トランペットのような中高音域の管楽器のようなD-65程度の防音性能では物足りない場合があります。注意しておきたいのは、マンションでの防音工事の場合、D-65よりも高い性能を発揮させるのが難しいケースがある点です。

楽器用防音室は、壁の防音対策の他に、浮き床や浮き天井など、部屋を絶縁二重構造にするといった対策を施します。この時、駆体との空気層を大きくすることで、低音の防音性能を高めることは可能なのですが、空気層を大きくとるということは、部屋が狭く、天井高が低くなるということです。つまり、もともとの部屋が広くて高い天井であれば、問題なく低音域の管楽器対策が可能ですが、このような好条件のマンションはなかなか少ないのが実情です。

こういったことから、マンションにて低音域の管楽器用防音室を作る時には、何とかD-70を目標値として、それが可能かどうかを確認してみましょう。

戸建てでの低音管楽器の防音室について

最後は、トロンボーン、ユーフォニアム、チューバ、テナーサックス、バリトンサックスなど、低音域の音が出る管楽器の防音室を一戸建て住宅に作る場合の注意点です。金管楽器やサックス用の防音室は、マンションなどと同じく、ピアノ用防音室よりも高い防音性能が求められます。ただ、マンションに防音室を用意するよりも、戸建ての方が実現しやすいと考えて構いません。

もちろん、防音室は絶縁二重構造にすることが大前提です。そして、外部への音漏れを防止するため、外壁に面する壁の空気層をできるだけ大きくとると良いでしょう。そうすることで屋外への防音性能をUPさせることができます。なお、住宅が密集している、お隣の家と近いなどと言った条件であれば、D-60以上の性能が必要でしょう。

窓については、可能であれば開閉できなくなるのを我慢してFIX窓を導入するのがオススメです。建築基準法上の要件を満たすのであれば、窓を無くすことも検討すると良いでしょう。目の前が道路に面しているといった条件の場合、D-50程度の防音性能でも問題ないケースが多いです。

まとめ

今回は、楽器防音室の中でも、管楽器用防音室の特徴についてご紹介しました。管楽器は、大きく分類すると木管楽器と金管楽器の2つに分けられるのですが、細かく見た場合、本当に多くの種類が存在していて楽器ごとに音の特性が変わるケースがあります。

例えば、サックスについても、中音・高音が生じるアルトサックスやソプラノサックスと、中音・低音がでるテナーサックス・バリトンサックスに分かれていて、それぞれに防音上の注意点が異なるわけです。防音室を作る時には、工事にかかる費用にどうしても目が行ってしまいますが、何に使用する防音室でどのような性能が必要なのかを意識しておかなければ、何の意味もない防音室にお金をかける結果になりかねません。

特に、防音工事の需要の高まりに比例して、防音工事業界に参集するリフォーム業者が増えています。そういった業者の中には、防音に関する知識や楽器ごとの特性について何も知らない…なんてことも少なくないようです。普通の室内ドアを防音ドアに交換するだけと言った簡易の防音工事であれば、安さを重視しても構いませんが、本格的な防音室を求めている場合、費用ではなく「自分の要望が叶えられるのか?」に着目するようにしましょう。

防音工事の匠では、商業用のテナント防音やプロ演奏家の防音室など、豊富な施工実績を持つ防音工事を専門とする会社です。近畿圏内は、無料で現地調査・お見積りを行っていますので、高性能防音室が必要な場合は、お気軽にお問い合わせください。

関連記事:管楽器の防音室について。楽器別に防音室の注意点をご紹介!

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大阪で20年間にわたって防音工事に携わってきました。
防音工事に関しての事、音に関する豆知識などを配信しております。

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