『D値』や『L値』?防音工事によく登場する専門用語をご紹介します。

防音工事の必要性を感じた場合には、まずインターネットなどで防音工事業者や必要な工事について調べてみる…という方がほとんどです。しかし、実際にネットで検索してみると『D値』や『L値』、遮音や吸音など、普段の生活であまり耳にすることのない用語がたくさん登場してしまい、何が何やら余計に分からなくなってしまうということも少なくありません。

さらに、防音工事業者に現地調査をしてもらい、見積書を提出してもらった時には「○○dB減衰保証」などと言った事が記載されているものの、結局何を保証しているのか分からない…という方も多いのです。防音工事は、他の住宅リフォームと比べると、かなり専門性が高いものとなりますので、一般消費者からすれば理解できない点が多いです。
しかし、防音工事を成功に導くためには、自分の要望を正確に業者に伝えるためにも、最低限おさえておかなければならない基礎知識というものがあるのです。そこでこの記事では、実際に防音工事を依頼する前に知っておくべき音の知識についてご紹介しておきます。

音の大きさを表す『dB(デシベル)』

防音工事を検討した場合には、外からの音に悩まされている…、自宅で楽器の演奏がしたい…など、何らかの音の問題を抱えてのことだと思います。それでは、日常生活上で皆さんが耳にする音の大きさはどのような単位で表されるものなのでしょうか?
防音工事を考えなければ、特に気にする必要もないのですが、音の悩みを抱えているのであれば、知っておく必要があります。音の大きさというものは『dB(デシベル)』という単位で表されています。以下に、楽器や日常の生活音の音の大きさをご紹介しておきます。

音の大きさ 楽器音 生活音
130dB 生ドラム・ロックバンド・パーカッションなど 落雷など聴覚器官にダメージが大きいライン
120dB テナーサックス・ライブハウスなど ジェット機(200m)・新幹線の鉄橋下など
110dB ピアノプロ・アルトサックス・金管楽器など ジェット機(600m)・車のクラクション(2m)
100dB ピアノアマ・ハープ・吹奏楽など 地下の構内・地下繁華街の音
90dB ピアノ低学年・フルート・ヴァイオリンなど 地下鉄車内・大型ウーハーのオーディオ
80dB ステレオ中音量・ギター・ヴァイオリンなど ボーリング場・大型幹線道路沿い
70dB 掃除機・普通会話・テレビの普通音など 新幹線内・乗用車内・静かなレストラン内
60dB テレビ小音・小さな会話・大型クーラー 学校の授業・事務所
50dB 換気扇・住宅のエアコン(空調の音) 静かな室内(図書館など)
45dB ささやき声・小雨の音など 昼の住宅街・コオロギの遠音・換気扇
35dB 洋服を着る音・静寂・人の吐息など 夜の住宅街の静けさ・録音スタジオ
20dB やっと音として聴こえる程度・ほぼ無音に近い 呼吸する音・雪の降る音・木の葉のそよぎ
10dB 聴こえる事の出来る限界(超サイレント) 無音に近い・蝶の羽ばたき・髪のそよぎ

音の大きさの参考値は上記のようになります。
そして防音工事で言う「50dB減衰を保証」というものは、現在発生している音の大きさ(dB)からどれくらい減退するのかを保証するものなのです。例えば、ピアノ室の防音工事を参考してみましょう。現状110dBの音が出ているピアノの場合、「50dB減衰保証」というのは、以下のような計算になります。

MEMO
110dB(ピアノが発生させる音) – 50dB(工事による減退) = 60dB(外部で聞こえる音の大きさ)

これは、110dBの音を出しているピアノについて、防音室の外では60dB以下まで減退させるという工事になります。防音工事を行う前には、現状どの程度の音が生じているのかをしっかりと調査し、建物の構造等からどの程度まで音の大きさを減退できるか業者が計算してくれます。そして見積りと一緒に、達成可能な性能を提示してくれることになるのです。
この音の大きさの知識を持っていれば、業者の提案が自分の要望に沿っているのか理解できるようになります。

遮音性能を表す『D値』

防音工事の見積書では「D-65」や「D-60」などと言った表現が使われることも多いです。これについては遮音性能を表す用語になるのですが、こちらもしっかりとその意味をおさえておきましょう。『遮音』とは、文字通り「音の伝わりを遮断する」ことを指しています。
何らかの音が空気中を伝わる際、音源と音を聞く場所の間に壁などの遮蔽物を置くと、音が小さくなります。この音の伝わりを遮断することを『遮音』というのです。一般住宅の防音工事では、外壁、開口部・窓、内壁、床など、音が漏れる可能性がある部分に対して施工を行います。

D値について

それでは、遮音性能を表す『D値』についてもご紹介しておきましょう。音を遮断する能力を遮音性能と呼ぶのですが、空気音を遮音する数値は『D値』で表すようにJIS(日本工業規格)にて等級が定められているのです。以下が、JISによる遮音等級です。

遮音性能 ピアノなど大きな音 会話など一般発生音
D-65 通常では聞こえない 聞こえない
D-60 ほとんど聞こえない 聞こえない
D-55 かすかに聞こえる 通常では聞こえない
D-50 小さく聞こえる ほとんど聞こえない
D-45 かなり聞こえる かすかに聞こえる
D-40 曲がはっきりわかる 小さく聞こえる
D-35 良く聞こえる かなり聞こえる
D-30 大変良く聞こえる 話の内容が分かる
D-25 うるさい はっきり内容が分かる
備考 音源1Mで90dBを想定 音源1Mで75dBを想定

一般的に、ピアノ用の防音室であれば、D-50~55程度を目指します。ドラムなどの低音や振動まで考慮しなければならない場合には、D-65~70を目標値として設計を行うのが防音業界の基準と言われています。

床衝撃音を表す『L値』

住宅防音工事では『L値』という言葉も良く登場してきますので、こちらもどういった意味があるのかはおさえておいた方が良いでしょう。

こちらは、床衝撃音に関する等級となります。マンションなどに住んでいる方であればよくわかると思いますが、日常生活の中で上の階に住んでいる住人の足音や物を落とした時に聞こえる音が気になったことがあるという人も多いでしょう。こういった上階の足音や物を落とした時に下の階に伝わる音を『床衝撃音』というのです。
ちなみに、床衝撃音も、音の特性の違いから重量床衝撃音【LH】と軽量床衝撃音【LL】に分けられています。こういった衝撃音は、建物の構造や床仕上材の種類によって伝わり方が違ってくるため、性能によって等級が決められているのです。

床衝撃音の種類

  • 重量床衝撃音【LH】
    子供が飛び跳ねたり、走り回る時に発生する低音の衝撃音のことです。
  • 軽量床衝撃音【LL】
    スプーンなど、硬質で軽量なものを床に落とした時の音や、椅子を引くときに生じる床衝撃音です。「コツッ」といった感じで比較的高音なケースが多いです。

L値について

それでは最後に、L値の詳細もご紹介しておきましょう。L値に関しては、L-80からL-30までに分けられているのですが、D値とは逆に数字が小さくなるほど性能が高くなります。

遮音性能 重量床衝撃音【LH】 軽量床衝撃音【LL】
L-80 うるさくて我慢できない うるさくて我慢できない
L-75 かなりうるさい 大変うるさい
L-70 うるさい かなりうるさい
L-65 発生音がかなり気になる うるさい
L-60 よく聞こえる 発生音がかなり気になる
L-55 聞こえる 発生音が気になる
L-50 小さく聞こえる 聞こえる
L-45 聞こえることはあるが、意識することはあまりない 小さく聞こえる
L-40 かすかに聞こえるが、遠くから聞こえる感じ ほとんど聞こえない
L-35 ほとんど聞こえない 通常ではまず聞こえない
L-30 通常ではまず聞こえない 聞こえない

マンションなどであれば、住む前にL値についてきちんと確認しておくことも重要です。

まとめ

今回は、防音工事を検討している方に向け、防音工事の前に知っておきたい音の知識についてご紹介してきました。この記事でご紹介したように、防音工事は、非常に専門性の高い工事となることもあり、業者との打ち合わせや提案書などにさまざまな専門用語が登場してきます。特にそれらの多くは、日常生活の中で耳にすることなどほとんどない物ばかりなので、何の前知識も持たずに業者と打ち合わせを行った際には、相手が何を言っているのか全く分からない…、自分の要望が上手く業者に伝えられない…など、致命的なミスにつながる可能性があるのです。

しっかりと、自分の要望通りの防音室を作るためには、音の基礎知識に関してもある程度学んでおくことがオススメです。そうしなければ、契約書に書かれている意味すら分からず、求める性能が出ていないのに「契約書通りの工事になっています」と、防音工事の失敗につながってしまうのです。

スタッフ A

大阪で20年間にわたって防音工事に携わってきました。
防音工事に関しての事、音に関する豆知識などを配信しております。

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