テレワークの拡大で自宅に防音ブースを求める方が急増?小型ボックス型防音室の注意点

新型コロナウイルス感染症の影響により、日本国内でもテレワークやリモート学習が広く普及しました。現在では、新型コロナ問題も解消されており、コロナ前の生活が戻っていますが、テレワークなどの在宅勤務形態の利便性が理解された現在では、コロナ禍の働き方を継続するという企業も多いです。従来の日本の働き方は、オフィスに出勤して対面で仕事をするという形態が一般的でしたが、web会議ツールの利用が一般化した現在では、わざわざ会社に出勤しなくても今まで通りに仕事をすることが可能です。そのため、企業側からしても、オフィスを縮小することで経費削減が可能、労働者にとっても通勤時間を自分の趣味の時間に利用できるなど、双方にメリットがあることから、テレワークを継続する企業が多いのだと思います。

ただ、実際に自宅で仕事をすることになった方の中には、家の作りがテレワークに適していないことに悩む方が多いと言われています。というのも、日本の住宅は、家で仕事をすることが想定されていない場合が多く、同居する家族が生じさせる音などが気になって仕事に集中できない…となるケースが多いのです。したがって、在宅勤務形態が継続される方の中には、自宅で仕事に集中できる環境を作るため、小型の防音ブースなどを設置しようと検討し始める方が多くなっていると言われています。

そこでこの記事では、コロナ禍以降、一気にその需要が高まっていると言われる小型の防音ブースについて、そのメリットや実際に購入する前に知っておきたい注意点をご紹介します。

小型防音ブースのメリットとは?

それではまず、テレワーク対策などのため、小型の防音ブースを自宅に導入するメリットからご紹介します。防音対策と聞くと、我々のような防音工事業者に依頼し、専用の防音室を作ってもらうリフォーム工事をイメージする方が多いと思います。しかし、防音室を導入する方法には、工事以外にも、既製品の防音室を購入し、それを部屋の一角に設置するという方法があります。

いわゆるユニット型防音室などと呼ばれるものをイメージする方が多いのですが、テレワークが広く普及し始めた現在では、防音性能を抑えた防音ブースなるものが安価に販売されるようになっています。大きさに関しては、パソコンデスクが設置されていて、人ひとりが作業できる程度のスペースしかありませんが、テレワークやリモート学習用に集中するためにはちょうど良い大きさと人気になっています。

メリット1 低コストで防音環境が手に入る

一つ目のメリットは、本格的な防音工事と比較すると、はるかに低コストで防音環境を手に入れることができるという点です。テレワークやリモート学習用の防音工事であれば、楽器用防音室と比較すると、かなり安価に工事が可能です。例えば、外からの騒音を防げれば良いというのであれば、窓の防音工事のみで済む場合もあり、これであればリフォームの場合でも10万円前後で可能です。しかし、防音性能はおさえめでも、一室をテレワーク用の防音室に作り替える場合、数十万円から場合によっては100万円以上のコストになるでしょう。

これが、テレワーク用として販売されている小型の防音室になると、本体価格で数万円程度から高いものでも20~30万円出せば満足のいく防音室を導入できるのです。最近では、レンタルサービスなども登場しており、その場合は月額1万円もかからず設置が可能です。

メリット2 すぐに設置できる

二つ目のメリットは、「テレワークのために防音環境を作ろう!」と決断してから、防音室が出来上がるまでがスピーディだという点です。専門業者に依頼して、防音工事を行う場合、工事内容にもよりますが1週間~2週間程度の工期になるのが一般的です。もちろん、工事の前には相見積もりや現地調査、施工提案などが必要になりますので、その辺りを含めると最低でも1カ月程度の時間はかかるでしょう。

これが小型防音ブースの場合、既製品を購入するだけですので、業者と日程調整ができれば注文から数日で防音室の設置まで完了します。中には、自分で設置が可能な製品などもありますので、これであればもっと早いです。小型防音ブースは、導入までのハードルがかなり低くなる点が大きなメリットになると思います。

メリット3 スペースをそれほど必要としない

3つ目はさほど大きなメリットとまでは言えませんが、小型防音ブースであれば、ほんの小さなスペースでも設置が可能だという点がメリットになり得ます。例えば、賃貸物件に住んでいる方で、同棲している場合、お互いがテレワークのためのスペースを確保できるほど部屋数が無いなんてケースもあります。このような時に、WEB会議の時間が被ってしまうと、お互いの音が入り込んでしまうといった問題が生じる場合もあるでしょう。

このような状況であれば、小型防音ブースが非常に役に立つと思います。最近では、軽量でほとんどスペースをとらないようなテレワーク用防音室なども販売されるようになっており、そのタイプであれば、部屋の隅に設置することでお互いの音を気にすることなく仕事ができるようになります。さらに、テントタイプの物であれば、必要な時に防音ブースを広げるだけで作業環境が作れますので、日常生活の中で防音ブースが邪魔になるなんてこともありません。

小型防音ブースのデメリットとは?

ここまでの内容を見ていると、テレワークやリモート学習を目的として防音室を準備する場合、小型の防音ブースが最適なのではないかと考えてしまうことでしょう。上述したように、安価でそれなりの性能をもった防音室がわずか数日で手に入るというのは非常に大きなメリットのように思えます。

しかし実は、小型の防音ブースには、決して見落としてはいけないデメリットも存在しています。ここでは、小型防音ブースの購入を検討している方に向け、絶対におさえておいてほしい注意点をご紹介します。

デメリット1 暑くて長時間の作業に適さない

ユニット型防音室を使用したことが無い人が知らない事実として、「ユニット型防音室の中はとにかく暑い」という点がデメリットです。そもそも、音は空気や構造物の振動で広がっていくものです。したがって、音漏れや音の侵入を防がなければならない防音室は、気密性が非常に高くなります。気密性の高い部屋は、空気の入れ替わりが少なくなりますので、室内に熱源があればどんどん室温が高くなるのです。

テレワーク用の防音室の場合、1畳程度の小さな防音室になりますし、中でパソコンを起動させればそれが熱源になります。さらに人の体温でも室温が上昇しますので、パソコン作業をしていたら数十分もすれば暑くて作業していられない…なんてことになる恐れがあります。ちなみに、1畳程度の小さな防音室は、エアコンなどを取り付けることは基本的にできません。テントのような防音ブースであれば、室内の気温が暑すぎる…なんて状況になりにくいですが、その分防音性は低くなってしまいます。

この問題については、「換気扇をつければ解決できるのでは?」と考えると思いますので、次のデメリットを見ていきましょう。

デメリット2 換気扇をつけるとうるさい

防音室内が暑くなるのであれば、換気扇などで空気の入れ替えをすれば良いと考える方は多いです。しかし、1畳程度の狭い防音室で換気扇をつけた場合、どうなるでしょうか?

当然、防音室内は広いスペースではないので、換気扇の吹出口は非常に近い位置に設置されることになります。そして、暑いと感じた時に換気扇を回すと、今度は換気扇の音が気になってしまうようになるのです。一般的な防音室であれば、換気扇も強弱を調整できる機能があるのですが、「弱」モードで稼働させると暑さを改善できない…、「強」モードだとうるさいといった感じになります。

上述したように、1畳程度のタイプであれば、エアコンなども設置できませんし、暑さで仕事に集中できなくなる、暑さを解消すると空調の音が気になるというかなり難しい状況になるケースが多いようです。

デメリット3 おいてみると意外に邪魔になるという声が多い

防音ブースは、1畳程度の小型のものでも、設置してみると思っていた以上にスペースをとってしまい、邪魔に感じてしまうという声が多いです。特に、賃貸住宅では、小型のものであれば設置できるというメリットを信じてテレワーク用に小型の防音ブースを購入する方が多いのですが、設置すると部屋が狭くなってしまい日常生活に不便を感じるようになったという方も多いです。

1畳タイプであれば、6畳以下の部屋でも余裕で設置できそうに感じますが、基本的に固定式の防音ブースを設置するなら8畳以上の部屋にしましょう。6畳以下の部屋になると、防音ブースを設置することで圧迫感を感じてしまう場合が多いですし、部屋そのものを防音室にリフォームするのがオススメです。テレワーク用の防音室であれば、フルリフォームで防音室にするにしても、低コストで実現可能です。

デメリット4 小さくても防音性が高い物は重い

小型防音ブースの中でも高い防音性を持っているタイプは、皆さんが考えている以上に重量があります。もちろん、テレワーク用などの簡易的な防音室になると、楽器用のものよりは軽量ですが、それでも数百kgもの重さになるものが多いです。

小型防音ブースは、賃貸住宅などで非常に便利とアピールされていることが多いのですが、これだけの重量物を同じ場所に置き続けた場合、部屋に大きな負担をかけてしまうことになります。そのため、退去時の原状復旧費用が考えている以上に高額になる可能性が高いです。正直な話、賃貸住宅で防音環境を求めるのであれば、防音室を購入して設置するのではなく、テレワークが可能になるよう部屋数がある物件に引っ越すのがオススメです。

戸建て住宅の場合、上述したように、防音室を設置しようと考えている部屋の広さなどを考慮すると良いでしょう。6畳以下であれば、防音室を置くとそれ以外の用途として使えなくなる可能性があります。これが、きちんとリフォームで防音室を作れば、楽器の演奏や音楽・映像を楽しむための防音室としても活用できるようになります。

なお、小型の防音ブースの中には、ダンボールが素材となっている物や、キャンプ用品のテントと同じような素材で作られている物もあります。このタイプであれば、非常に軽量で持ち運びも可能です。ただ、その分、防音性能が低くなるので、防音ブースの中にいても音が気になる…なんてことになる可能性が高いです。防音性は音を遮る物質の重量があるものほど高くなりますので、ダンボールやテント素材の防音ブースは、音を遮るのではなく、家族の姿が目に入らなくなるため集中しやすいといった効果が得られる程度と思っておきましょう。安価な防音ブースは性能がそこまで高くないので過度な期待はしない方が良いです。

まとめ

今回は、テレワークやリモート学習が一般化する中で、それに対応するために販売されるようになってきた小型の防音ブースについて解説しました。記事内でご紹介したように、小型の防音ブースは、低コスト、短工期で導入することができる点が大きなメリットと考えられていて、オフィスなどでは1畳程度の防音ブースが複数台設置されているなんてケースが増えています。しかし、一般住宅に設置することを考えると、メリット面よりもデメリット面の方が大きくなってしまうのではないかという指摘もあります。

小型の防音ブースであれば、確かに少ないスペースでも設置可能ですが、元の部屋の広さによっては景観を大きく壊す、圧迫感を感じてしまうという方が非常に多いです。さらに、しっかりした防音性能をもっている製品の場合、狭い部屋の中で長時間作業するのが難しく、逆に効率が悪くなってしまったなんて声もあるほどです。テレワークやリモート学習は、大きな音を生じさせるわけではないので、本格的な防音工事はコストに見合わない…と考えている方が多いです。ただ、専門業者に工事を依頼する場合、テレワーク用の防音工事であれば、皆さんが考えているような金額にはならないと思いますので、まずは見積りだけでも取ってみるのがオススメです。さらに、専門業者が作る防音室であれば、テレワーク以外にも、ホームシアターやオーディオルームなどとして活用することができるはずです。

ちなみに、最近では、ダンボールやテント素材を使用した非常に安価なテレワーク用防音室なるものが販売されるようになっています。ただ、このタイプの製品は、高い防音効果は見込めないと考えておきましょう。防音性能は、気密性や素材の重さが関係しますので、このタイプの防音ブースは生活音程度でも防ぐことはできないと思います。作業中に家族が視界に入らなくなるので集中できる程度に思っておきましょう。

スタッフ A

大阪で20年間にわたって防音工事に携わってきました。
防音工事に関しての事、音に関する豆知識などを配信しております。

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