地下防音室のメリットとデメリット。実際に地下室を設ける場合の注意点もご紹介

新築戸建て住宅を建てる時、ご近所さんに音の問題で迷惑を掛けないようにするため、高性能な防音室を求める人が増えています。例えば、楽器の演奏を生業にしている方や、ホームシアターが夢だったなど、防音室を設置する理由はさまざまですが、何らかの理由で大きな音を発生させる場合、家と家の距離が近くなった現在では、防音室が必要不可欠な時代となっています。

それでは、戸建てに設置する防音室について、最も防音性能を高めておきたいと考えた場合、どのような手段が正解なのでしょうか?防音室は、通常の居室と比較すると非常に重量のある部屋となってしまうため、建築基準法の関係から木造住宅の2階以上の場合、性能を控えめにしなければいけません。そして、こういった法律的なことを気にせず、高性能な防音室を用意するには、『地下』に防音室を設けるのが最もオススメの選択と言えます。

そこでこの記事では、地下防音室を作る場合のメリット・デメリットや、実際に防音室を作る場合の注意点をいくつかご紹介していきます。

地下防音室を作るメリット

一般の戸建て住宅であれば、地下室まで用意するケースはあまりありませんよね。しかし、地下室は、防音性・防振性に優れ、温熱環境の安定した空間となるため、さまざまな場面に利用できる非常に優れた空間となります。地下室の用途は、趣味を楽しむためのスペース以外にも、食品の貯蔵庫やワインセラーなど、狭小地に建てられるケースが多い、現在の戸建住宅には非常に利用用途が多いスペースとなります。

ここではまず、地下室を設けることでどのようなメリットが得られるのかをご紹介します。

メリット1 趣味のスペースを持てる

防音性に優れる地下室は、シアタールームや楽器練習室(ピアノや管楽器・声楽など)・音楽スタジオ(バンド練習室)など、大きな音が生じてしまう趣味のスペースとして利用されるケースが多いです。この他にも、大型の機械を設置するような本格的なトレーニングルームとして活用される場合も多いですね。

地下室を設けておけば、楽器演奏やトレーニング、音楽鑑賞など、趣味のために十分なスペースを確保することが可能です。特に、狭小地に建てられる現在の戸建て事情を考えると、リビングや寝室を潰す必要なく、自由に利用できる部屋が作れるのは非常に大きなメリットになるでしょう。

メリット2 騒音によるトラブルを未然に防げる

地下室を作る場合、鉄筋コンクリートで非常に頑丈な部屋を作ります。これは、地下室が上部の家そのものを支える基礎部分にもなるためで、通常の部屋と比較すると、床や壁、天井などが分厚くなることから、音や振動が外に漏れにくくなるというメリットをもたらせてくれます。ちなみに、地下室は、夏涼しく冬暖かい安定した温度環境になるので、過ごしやすい空間になります。

こういった特徴があることから、仕事の関係上、自宅でも楽器の演奏を行うとか、ホームシアターを作って大音量で映像を楽しみたいという要望を持つ方にとって、音や音による振動によってご近所さんとトラブルになる可能性を低くすることができるというメリットが得られます。ちなみに、地下防音室があれば、ホームパーティを開く際にも多少騒いでも近所迷惑にならない点を気に入る方が多いようです。

メリット3 居住スペースを確保できる

上述したように、近年では狭小地に戸建て住宅を建築する方が多くなっています。そしてこの場合には、建築基準法の床面積上限制限(容積率制限)によって、限られた床面積しか確保できないことに不満を感じてしまう方が多いです。

ただ、地下室の場合、建築基準法の容積率緩和を受けることができ、地上二階を作るよりも、住宅全体に広いスペースを確保することができます。このため、狭小地に建てる通常の戸建てと比較すると、部屋数を増やすことができるというメリットが得られます。地下室は、防音室など趣味の部屋として利用できますが、その他にも家族が増えた時の寝室や子供部屋としても利用可能です。

メリット4 建物の耐震性が向上する

上述しているように、地下室を作る場合、鉄筋コンクリートの頑丈な部屋を作ることになります。そして、頑丈な地下室があるということは、建物自体の耐震性能を高めてくれるというメリットをもたらせます。頑丈な地下室は、万一地震が発生した時には、揺れに対してばねのような働きをして、地震の揺れを軽減してくれるとされています。したがって、地下室が無い家と地下室がある家で比較すると、地震の揺れが半減するとまで言われているのです。

この他に、竜巻や台風など、強風を伴う自然災害時には、避難場所として活用することが可能という点もメリットにあげられるでしょう。

地下防音室を作るデメリット

自宅に地下室を設けようと考えている人であれば、上述のようなメリット面だけでなく、デメリット面についてもしっかりと押さえておきましょう。

デメリット1 結露が発生しやすい

地下室は、温度が安定しているというメリットがあるのですが、湿度が常に低く保たれる地下室では、特に夏場に結露を起こしやすいというデメリットがあります。そもそも、地下室は窓を設けることが難しいですので、湿気が溜まりやすいという特徴があります。
地下室については、断熱工事をしっかりと行う、換気口を設置するなど、結露の発生を防ぐ対策を施す必要があります。

デメリット2 浸水の不安がある

地下室は、地面に穴を掘って設置します。つまり、地表よりも低い位置に部屋が作られるわけです。こういったことから、大雨が降った際には、浸水の心配があるということは頭に入れておきましょう。もちろん、通常の雨程度であれば、部屋の中に雨水が侵入するなんて心配はないのですが、近年では、ゲリラ豪雨や集中豪雨など、床上浸水を引き起こすような災害級の大雨が増えています。このような豪雨災害の場合は、さすがに地下室も浸水してしまうことになり、上部の家部分よりも大きな被害が生じると考えておきましょう。

デメリット3 コストがかかる

当たり前のことですが、地下室が無い家と比較すると、地下室がある家の方が工事にかかる費用が高くなります。

なお、地下室を設けると、通常の部屋と比較して約3割ほど床面積を増やせると言われているのですが、費用に関しては5割以上増しになってしまう場合も少なくありません。地下に部屋を作る場合、重機で穴を掘って、地盤が崩れないように対策を施したり、防水工事を行ったり、通常の部屋を作る場合には不要な工事が多いからです。

地下室による容積率の緩和について

日本国内に家を建築する場合、建築基準法に従わなければならず、この法律で床面積などの制限が設けられています。ただ、家に地下室を設ける場合、一定の条件を満たしていれば、建築基準法の容積率について緩和を受けることが可能なのです。容積率の緩和を受けることができれば、同じ面積の土地に家を建てる場合でも、地下室が無い家よりも床面積を増やすことが可能です。

以下に、地下室を設ける場合の容積率緩和条件をまとめておきます。

地下室の容積率の緩和条件

容積率は、敷地面積に対して、何パーセントの床面積の住宅を建てられるかを決めた上限です。例えば、敷地面積が30坪で容積率が150%だった場合、延べ床面積の上限は「45坪」となります。

地下室を作る際の容積率の緩和については、住宅の延べ床面積の1/3の面積を緩和してもらうことができます。前述の例でいえば、45坪の延べ床面積ですので、15坪の緩和を受けることができます。

なお、床面積の緩和を受けるためには、以下のような条件を満たしている必要があります。

■「地階」であること
「地階」については、全てが土の中に埋まっていなければならないと考えている方が多いのですが、実は土の中に全ての部分が埋まっていなくても地階と認められる場合があります。地階と認められるための条件は以下のような感じです。

  • ・地下室の床の高さが地盤面より下にあること
  • ・地下室の床~地盤面の高さ(H)が、天井高さ(CH)の1/3以上であること
    A≧CH×1/3
    地下室の床から地盤面の高さ90cm・天井の高さ 270cmの場合
    90cm=270cm×1/3・・・OKとなります。

■地盤面から地階の天井が1m以下であること
容積率の緩和を受けるには、天井の高さに規定があります。地盤面から地下室の天井高さについては、1m以下としなければいけません。要は、地盤面から上にある地下室の天井は、1m以内の高さにしなければならないということです。

■住宅の用途に供されている
容積率の緩和は、地下室の用途も関係しており、「住宅の用途」でなければ緩和を受けることができません。例えば、店舗兼住宅や事務所兼住宅などと言った場合に、地下室を事務所などとして利用する場合、前述の条件を満たしていたとしても、容積率の緩和を受けることができません。

地下室を設ける場合、ドライエリアは必要?

地下室は、日の光が届かないことから「部屋の中が暗い」、「ジメジメして、カビがはえる」など、少しネガティブなイメージをもっている方も多いです。土の中に部屋を作るわけですので、当たり前と言えば当たり前なのですが、最近では、こういった問題も解消することができる手法が開発されています。
これはドライエリアと呼ばれる手法なのですが、簡単に言うと、地下室の周りに「からぼり」を作るという方法で、これであれば窓をつけることで地下室に自然の光を取り込むことも可能です。ここでは、防音目的で地下室を検討している方に向け、より快適性を求める場合の手段をご紹介します。

ドライエリアとは

ドライエリアは、地下室の外壁に沿って作られるからぼりのことです。そもそも建築基準法では、地下室を設ける場合、からぼり(窓があるドライエリア)または換気設備または湿度調整設備の設置が求められます。一般的には、換気設備など機械の導入を行うのですが、自然光を取り込みたいと考える場合、からぼりの設置がオススメです。

ドライエリアの利点

ドライエリアは、地下室特有のデメリットである、「暗い」「ジメジメ」するといった問題を解消することが可能です。ドライエリアを設ける場合、一定基準の広さの確保と窓の設置が建築基準法で必要と定められていますので、これを設けることで地下室に自然の太陽光を取り込むことが可能になるのです。もちろん、FIX窓以外のものを設置した場合、窓を開けることで通風を確保することができ、換気などにも役立ちます。

地下室に窓を設置できれば、湿気を外に逃がすことができますので、地下室特有のジメジメ感を感じることなく、長時間滞在しても快適に過ごす事ができるでしょう。地下室の実現は、上述したように、換気設備や湿度調整設備でも問題ないのですが、より快適に過ごせることを考えると、からぼりを設けるのが良いかもしれませんね。

地下室の注意点

それでは最後に、自宅に地下室を設ける場合の注意点についてもご紹介します。防音室として地下室を設けるのは非常に効果的な手法と言えますが、いくつか注意しておかなければならないポイントが存在します。

湿度調節と日当たりについて

地下室を設ける場合、湿度調節と日当たりの確保については十分に注意して設計しなければいけません。

地下室は、閉じられた空間になりがちですので、閉塞感を感じず快適にくつろげる空間にするためには、採光や換気方法が非常に重要になります。地下室で自然光を取り入れるには、上述したドライエリアを設けるという方法が考えられます。しかし、敷地面積のことなどを考えると、ドライエリアの確保が難しい場合もありますので、この場合はトップライト(天窓)の設置などで対策すると良いでしょう。
なお、地下室の採光のために取り付ける窓については、開閉可能なタイプとしておけば、換気対策にも使えますので、除湿対策の効果も得られます。

避難経路の確保について

意外に見落とされがちですが、地下室を設ける場合、避難経路の確保についてしっかりと考えておきましょう。万一、地下室が出られなくなってしまうと大変ですので、避難経路についてはきちんと確保するように設計してもらってください。なお、国土交通省では、地下室について以下のような厳しいガイドラインを定めています。

(特定少数の者が利用する地下空間における技術的基準)
6 特定少数の者が利用する地下空間における技術的基準は次のとおりとする。
一 地下空間の各部分において、その部分が浸水を開始した時から、地下空間に存する者が避難終了するまでの間、地下空間に存する者の避難経路となる居室、廊下等の各部分において、避難が困難となる水深以上の浸水をしないものであること。ただし、通常の経路以外にはしごその他の特別の避難設備を設け、かつ、当該避難設備からの避難が可能である場合においては、この限りでない。
二 避難経路となる階段は、地下空間に存する者が避難を終了するまでの間、階段上の浸水深が避難が困難となる水深以上にならない構造とすること。
三 第5第五号、第六号及び第八号に掲げる措置を講ずること。
引用:国土交通省資料より

ドライエリアの雨水対策

ドライエリアは、地下室の採光や換気などを目的に、地下室の周りの地面を掘って作るスペースのことです。日本語では『空堀』などと呼ばれています。

防音目的で、戸建て住宅に地下室を設ける場合、このドライエリアがあれば、地下室特有のデメリットを解消してくれます。しかし注意が必要なのは、ドライエリアを設ける場合、大雨の時の対処法も検討しておかなければならないということです。前述のように、ドライエリアは、建物の周りの地面を掘って作るわけですので、雨が降ればドライエリアに水が流れ込んでしまいます。つまり、ドライエリアに溜まった水をどのようにして排水するのかをしっかりと検討しておく必要があるのです。一般的には、排水ポンプなどを用いてドライエリアにたまった水を排出するのですが、この場合、排水ポンプのメンテナンスなどが必要になり、それなりのコストがかかってしまうことを覚悟しなければいけません。

さらに近年では、ゲリラ豪雨や集中豪雨など、非常に激しい雨が降る場合も多くなっており、そういった時にはドライエリアへの浸水をできるだけ遅らせる工夫なども必要になります。例えば、ドライエリアの周囲に、立ち上がりの壁を設置しておき、ドライエリア側に水が流れ込まないようにするなどの対策が有効です。

まとめ

今回は、一般住宅に防音室を設ける場合で、最も高性能な防音室が実現できると言われる地下防音室について解説してきました。防音室も、住宅の一部として作るわけですので、建築基準法にしたがって設計しなければいけません。例えば、二階以上に防音室を設けようと思えば耐荷重の関係上、どうしても高性能な防音室を実現することが難しくなってしまいます。

したがって、ドラム室や音楽スタジオなど、非常に高い防音性能が必要とされる場合には、この記事でご紹介したように、地下室を設け、そこに防音室を作るというのがオススメなのです。地下防音室の場合、土に覆われた部屋になりますので、音だけでなく振動などに関しても効率的に防ぐことが可能です。

注意が必要なのは、既存の住宅に一から地下室を設けるといった防音リフォームは基本的に不可能ですので、新築時に可能な対策になると考えておきましょう。

スタッフ A

大阪で20年間にわたって防音工事に携わってきました。
防音工事に関しての事、音に関する豆知識などを配信しております。

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