実際にあった騒音トラブルから学ぶ!何気ない生活音が裁判沙汰に発展することもある!
マンションで生活する場合、誰もが注意しなければならない代表的な心配事の一つが『騒音問題』です。
一昔前の日本では、『庭付き一戸建て』で生活する家族が多かったため、そこまで隣家の生活音に悩まされる…なんて心配はなかったのですが、近年では人々の生活空間が非常に近くなってきたこともあり、ちょっとした音の問題が裁判沙汰にまで発展してしまうなんてこともあるのです。
特に、マンション生活になると、壁一枚で生活空間を隔てることになるため、思わぬ音の問題に悩まされてしまうことも珍しくありません。誰もが、マンションの部屋を決める時には、内見で住環境の下見をするのものですが、実際に住んでみると内見では気づけなかった周囲の騒音により、生活に支障をきたしてしまうこともあります。また、その逆に、自分自身が騒音の元となってしまい、周辺世帯とトラブルになってしまう…なんてこともあるのです。
特に、今年は、新型コロナウイルスの影響で、多くの方がステイホームを強いられており、不便な生活環境のストレスから、今まで気にもしなかった騒音が気になってしまうようになったという方も多いかもしれません。現在の日本の法律では、工場や自動車が発する騒音を規制する「騒音規制法」という法律はあるものの、一般市民が日常生活で発生する生活音を取り締まる法律はありません。しかし、各家庭が他人に迷惑をかけないよう、騒音に配慮する必要はあるのです。
生活音を取り締まる法律がないとはいえ、度を越した騒音を出してしまうと、裁判沙汰にまで発展してしまい、実際に慰謝料の請求が認められたというケースもあるのです。そこでこの記事では、誰もが注意しなければならない生活音に関する騒音トラブルについて、実際に過去にあったトラブルの判例などをご紹介します。
実際にあった騒音トラブルの判例をご紹介!
それでは、実際にあった騒音トラブルの事例をご紹介しましょう。このトラブルは、マンションの生活音が原因となった騒音トラブルで、上階に住む家庭の子供が走り回る音に悩まされていた老夫婦が起こした裁判です。裁判沙汰に発展するまでには、管理組合、管理会社、警察などに何度も相談を行い、さらに加害者への直接の申し入れを行ったにもかかわらず、誠実な対応がなされなかったため、訴訟に踏み切ったという経緯になっています。
この騒音トラブルの詳細を以下でご紹介していきましょう。
騒音トラブルの概要
この騒音トラブルが発生した舞台は、昭和63年に建築されたマンションで、日本建築学会による「建築物の遮音性能基準」において『LH-60』に該当する、やや遮音性能に劣ると判断される構造の建物です。
原告側は、平成8年7月より当該マンションに妻と共に居住を始め、その後、被告家族が平成16年2月に転居してきたとのことです。もともと、上階には別の家族が居住していたのですが、その時には、原告側が騒音に悩まされるようなことは全くなかったそうです。しかし、被告家族が転居して以来、上階から子供が飛んだり跳ねたりする音が聞こえるようになり、そういった足音に悩まされるようになったとのことです。
もともと、原告が住む部屋付近の暗騒音(バスや飛行機などの騒音を発する対象の影響が無い場合の騒音)は、「27~29dB」と、ごく一般的なレベルにとどまっていました。しかし、上階に被告家族が住むようになって以来、昼夜を問わず「50~65dB」の騒音に悩まされるようになり、夫婦ともに不眠症などの健康被害が発生してしまいました。なお、60dBという音は、ファミリーレストランの店内に相当する音量ですので、この音が昼夜問わず聞こえてくるということは、相当な騒音被害が有ったと考えられます。
原告家族は、何らかの騒音対策をしてもらうため、管理組合・管理会社・警察などに相談することや、騒音計での記録をもとに被告家族への直接の申し入れなどを行ったものの、誠意ある対応がなされなかったため起訴に踏み切ったという経緯となっています。
原告家族側は、被告家族に対して、損害賠償権に基づき、慰謝料及び弁護士費用となる計240万円を求める訴えを起こしました。
判決はどうなった?
この騒音トラブルの判決は、被告に対し原告への慰謝料・弁護士費用含めて合計36万円の支払いを命じ、さらに今後騒音を出さないようにと命じました。
この裁判では、起訴沙汰に発展するまでに、騒音計での記録をもとに上階の家族に何度も改善の申し入れを行っていることや、警察への被害相談記録、医師の診断書などの客観的証拠が認められ、被告側にトラブルの原因があると認められる形になったのです。
また、この裁判では、一般生活上、各家庭が受忍すべき騒音の限度を超えていたかが争点になったのですが、条例により隣家との境界線における音量は45~50dBに規制されており、上述したように昼夜問わず規制を超える騒音(50~65dB)を発していたということや、騒音の改善の申し入れがあったにもかかわらず、誠意ある対応をとらなかったことから原告側の勝訴で決着したのです。
騒音の濡れ衣に注意!
騒音トラブルの難しいところは、「誰が出している騒音なのか」を特定することが非常に難しい点にあります。過去には、騒音トラブルの濡れ衣を着せてしまった…という事例もあるのです。
これは、同じマンションに住む区分所有者Aが区分所有者Bに対して、ゴルフの練習音がうるさいと騒音の苦情を行ったというケースです。しかし、B側は自分に思い当たることが無いと否定したところ、Aは管理組合や総会、理事会などでBの発する騒音を名指しで批判しました。
そこで、騒音に思い当たるふしのないAは、名誉棄損としてBに対して損害賠償請求をしたのです。Bは騒音を差し止めるようにと反訴して損害賠償を請求し泥沼の様な状況になってしまいました。このケースでは、裁判の結果、Bが騒音の発生源であるという事実が認められないという判決が下り、確証もないまま管理組合や理事会などの公の場で批判したAは、Bの社会的評価を下げるような発言を繰り返したことが名誉毀損にあたると判決が下ったのです。
このように、何らかの騒音に悩んでいる場合でも、確証もないまま発生源を決めつけてしまうと、逆に名誉棄損で訴えられてしまうこともあるのです。
騒音トラブルを回避するためには?
ここまでの内容で分かるように、日常生活で何気なく出している音というものは、一つ間違っただけで裁判沙汰にまで発展してしまうケースもあるのです。もちろん、この騒音問題は、自分が音に悩まされるだけでなく、あなたが騒音の原因となってしまい、訴えられてしまう危険もあると考えなければいけません。
『音』というものは、人それぞれ感じ方が異なりますので、「自分が良ければ問題ない」と考えるのではなく、周辺住民にきちんと配慮して生活しなければいけません。以下で、騒音トラブルを回避するために注意しておきたいポイントも簡単にご紹介しておきますので覚えておきましょう。
- 物件を決める前に遮音性能を確認する
マンションを購入する際は、管理規約などに記載されている遮音性能をきちんと確認しておきましょう。床の遮音性能などは日本建築学会が規定した『L値』で表記されています。なお、遮音性能は「L40」「L45」などと言う表記になっており、数値が小さいほど遮音性能が高くなります。 - 音に悩んだ場合は、管理組合・管理会社に相談
他家からの騒音に悩んでいる場合は、まず管理組合や管理会社に相談してみましょう。直接苦情を言いに行くと、正当な依頼でも「怒鳴り込まれた」と相手が感情的になってしまう場合がありますので、問題を穏便に解決するためにも、まずは管理組合などに相談するのがオススメです。管理組合などは「掲示板での告知⇒同じ階全体への手紙配布⇒対象の家に手紙の配布』など、段階をおって対応をしてくれますので、余計なトラブルにまで発展するのを防いでくれます。 - 自分で遮音対策をする
最も手っ取り早いのは、自分の部屋の防音性能を上げる方法です。最近では、DIYで対策ができる防音グッズも多く存在しますので、簡易的な防音対策をするのも良いでしょう。なお、騒音問題は、自分が悩まされる側になるだけでなく、発生源になることもありますので、小さなお子様がいるご家庭などは、階下に迷惑をかけないような配慮をしておくのもオススメです。 - 引っ越す
最終手段は、自分が引っ越すという手段です。騒音問題は、いくら指摘してもなかなか改善してもらえない…なんてことも多いですので、健康被害が出るようであれば、思い切って自分が引っ越すのも手です。
なお、マンションなどの防音対策については別記事でもまとめていますので、以下の記事もご参照ください。
関連記事:賃貸住宅の防音対策に最適!自分で取り付けできる防音グッズをご紹介!
関連記事:マンションの防音対策!何気ない生活音が騒音トラブルの原因になる?
まとめ
今回は、過去に実際にあった騒音トラブルによる裁判事例についてご紹介しました。人間が生活する時には、さまざまな音が出てしまうことになりますので、騒音トラブルというのは誰の身に起きても全くおかしくないことです。
特にマンションで生活する方であれば、生活空間の近さから、本当に何でもないような生活音が原因でトラブルに発展してしまう…なんてこともあるのです。音は目に見えないものですし、人によって感じ方も変わってしまうものです。したがって、何が他人の迷惑になるのか分からないということを意識しておく必要がありますよ。