マンションでの騒音トラブルについて
マンションのような集合住宅は、生活習慣が異なるさまざまな人が同じ建物内に住んでいますので、時として住民同士のトラブルが発生してしまうことがあります。
もちろん、住民同士のトラブルにも、その原因は複数あるのですが、近年特に増えていると言われているのが騒音に関する住民トラブルです。国土交通省の調べによると、マンションでの住民間のマナーを巡るトラブルのうち、生活音など騒音を原因としたトラブルは全体の約38%と最も高い割合を占めています。騒音以外では、違法駐車・駐輪が2位に位置するのですが、こちらは約28%と、騒音によるトラブルが2位を大きく引き離す結果になっています。
こういった住民間のトラブルが発生した時には、賃貸であれば引っ越しすれば良いのですが、物件を購入している分譲マンションの場合、簡単に手放すことができず、大きな悩みの種となってしまいます。そこでこの記事では、マンションで増加していると言われる騒音トラブルについて、皆さんが押さえておきたいポイントをご紹介します。
マンションの騒音トラブルの原因
マンションは、さまざまな生活習慣を持つ人が同じ建物内に住んでいることから、「固体音」と「空気音」ともに騒音トラブルの原因となってしまいます。戸建住宅であれば、近隣住民の固体音でトラブルになるようなケースは少ないのですが、マンションの場合、物理的に居住空間がつながっていることで、固体音に関しても注意が必要なのです。ここでは、マンションでの騒音トラブル原因について、固体音と空気音がどのような音なのかをご紹介しておきます。
固体音
固体音は、床や壁などの個体が振動して伝わる音のことです。固体伝搬音などとも言われていて、人の声やステレオの音、ペットの鳴き声など空気の振動を伝わる空気音と区別されています。
マンション等、複数の人が同じ建物内で暮らすときには、この固体音による騒音トラブルが多いです。特に固体音の難しさは、構造体を振動で伝わっていきますので、「真上から足音が聞こえてくる」と感じていたとしても、実は斜め上のご家庭だった…何ケースもあるのです。固体音による騒音は、音源の特定が非常に難しいので、安易に住戸を特定しクレームを言いに行ってしまうと、余計なトラブルに発展するので注意しましょう。
マンションでの固体音の具体例は以下のようなものがあります。
- ・足音
集合住宅では、足音によって上下階の住人がトラブルになるケースがあります。普通に歩いているつもりでも、床を振動が伝わり階下に騒音として響いてしまうことがあるのです。特に、子供が走り回る、飛び跳ねるなどといった場合は、大きな振動音が階下に伝わります。 - ・扉の開閉音
以外かもしれませんが、扉の開閉音も集合住宅での騒音トラブルの原因になります。壁に作りつけられた扉を開閉する場合、壁を伝って固体音が周囲に響いてしまうのです。特に、勢いよく扉を閉めると、大きな音が周囲に響くので、近隣住民を驚かせてしまうことがあります。 - ・家事の音
洗濯機や掃除機は音・振動ともに大きいうえ、毎日使用するものですので、騒音トラブルのもとになりがちです。特に、近年は自動ロボット掃除機を使用する方が増えているのですが、壁や家具にぶつかって方向転換する仕組みですので、コツコツといった固体音が響いてクレームにつながることがあるようです。
空気音
空気音は、文字通り空気と伝って届く音のことを指しています。空気伝搬音とも言われますが、このタイプの音は戸外からの音も伝わってくることがあります。空気音は、音源が近いほど聞こえる音が大きくなり、遠くなるほど小さくなります。つまり、空気音による騒音トラブルは、比較的近い住戸からの騒音である可能性が高いです。
- ・人の声
赤ちゃんの泣き声や子どもを叱りつける声など、人の声が騒音トラブルになるケースがあります。特に、窓を開けて大きな声を出すと、周辺にその声が伝わり騒音と感じられてしまうケースがあるでしょう。 - ・テレビの音・スピーカーから聞こえる音楽
テレビやスピーカーから発せられる音や音楽も、空気を介して周囲に伝わる空気音の一種です。なお、テレビなどを、壁にピッタリとくっつけている場合、固体音も伝わってしまうため、余計にうるさく感じられるでしょう。 - ・ペットの鳴き声
ペット可の物件が増えている近年では、ペットの鳴き声によるトラブルが増加しています。
騒音に悩まされた時の対処法とは?
上述の通り、マンションで生活する場合、他のご家庭との距離が非常に近いことから、騒音トラブルの可能性は意外に高いと考えておいた方が良いでしょう。
それでは、実際に近隣の住戸から聞こえてくる音に悩んでしまった場合、どのような対処を取ればよいのかも考えてみましょう。
受忍限度内の騒音の場合
近隣から聞こえてくる騒音についても、程度の違いは存在していますよね。まずは、受忍限度内の騒音について、どのような対処が適切かをご紹介していきましょう。この場合は、以下のような対処を行っていくのが良いと思います。
- ・管理会社に相談する
マンションなどで何らかのトラブルが発生した場合、まずは管理会社に相談してみましょう。管理会社は、管理組合からマンションの清掃や共用部の管理などを委託されている会社で、騒音トラブルなどがあった際には張り紙の設置などを行ってくれます。ただ、あくまでも清掃や共用部の管理業務が委託内容ですので、住民間の仲裁などは期待できません。張り紙などを行っても騒音が収まらない場合は、管理組合に相談し、議題に上げてもらうと良いでしょう。管理組合は、住民同士で形成されていますので、第三者を交えての議論が可能です。ただ、管理組合に相談する場合、騒音源を間違いなく特定しておかなければいけません。 - ・手紙を匿名で投函する
騒音主となっている方の中には、自分が騒音を出していると思っていない人が多いです。そのため、管理会社などが掲示板に注意を告知しても、自分のこととは考えないケースが意外に多いのです。こういった場合、匿名の手紙を騒音主の方に出すのも一つの手です。この方法であれば、騒音を出しているのだと認識してもらえますし、手紙で知るので感情的になりにくく、普段の行いを落ち着いて見返してもらうことができます。手紙の内容については、「うるさい!」など感情的な文章にすると問題がややこしくなるので、騒音の状況と解決策を客観的に提示するのが良いでしょう。 - ・当事者間で話し合う
基本的にこの方法はあまりオススメではないのですが、騒音源となっている方と普段から交流があるという場合、直接話し合いの場を持ってみるのも良いのではないでしょうか。ただ、話し合いによってさらなるトラブルになる可能性はあるので、その点は注意しましょう。
受忍限度を超えた騒音の場合
次は、受忍限度を超えるレベルの騒音が発生している場合です。この場合は、段階的に対処していく必要があるので、以下を頭に入れておきましょう。
■騒音を記録しておく
受忍限度を超える騒音の場合は、その事実を騒音計などを利用して確実に記録として残しておいてください。なお、騒音の記録として残すポイントは以下のような内容です。
- ・騒音の大きさ(騒音計を用いてデシベル数を記録するようにしましょう)
- ・騒音のする時間帯(何時頃に音がしているかを動画などで記録)
- ・騒音の頻度(単発で大きな音がするのか、継続的に音が響いているのか)
- ・騒音の種類(物が落ちるような固体音か、話声のような空気音か)
- ・騒音の発生場所
- ・いつから騒音がするか(何年の何月ごろから音がしているのか)
- ・騒音による被害(可能であれば診断書などを貰いましょう)
- ・注意喚起以前以後の騒音の状況(注意してから状況は変わったかどうか)
近年では、ネット通販などを利用して本格的な騒音計を手に入れることも可能です。ただ、裁判などにも使用できる公的な記録を残す場合は専門家による測定が必要になります。まずは、警察などに報告するための証拠として役に立つデータを残すため、上記のような内容を抑えておきましょう。
■警察に相談する
受忍限度を超える騒音の場合、警察に相談するという対処法も選択肢に入ってきます。「騒音で警察が動いてくれるの?」と疑問に感じる方が多いかもしれませんが、通報すれば警察官が来てくれ、騒音主に注意などをしてくれます。そして、警察に注意してもらっても状況が改善しない場合は、何度も通報すると良いでしょう。
警察に相談する時には、上述した騒音の記録をきちんと見せることも重要です。というのも、騒音トラブルは、被害に遭っていると主張する人が、感情的になって通報しているというケースも考えられることから、被害状況を客観的な情報として伝えることが重要になるのです。
なお、生活音による騒音に関しては、これ単体で犯罪行為になるようなことは基本的にありません。ただ、警察にまで注意されるとなると、何らかの対処は期待できるのではないでしょうか?
■弁護士に相談、裁判所での民事調停
最終手段としては、弁護士に相談し、裁判所での民事調停を行うという対処法でしょう。実際に、マンションでの騒音トラブルが裁判沙汰にまで発展し、騒音主に損害賠償命令が出た判例も多いのです。このような行動を起こすためには、客観的に被害状況がわかる資料が必要になるので、上述した騒音被害の記録が重要になります。
まとめ
今回は、マンションにおける騒音トラブルについて、どのような音が騒音トラブルの原因となるのかや、実際に騒音に悩まされた時の対処法について解説してきました。
マンション暮らしの方が増えてきた現在では、生活空間の近さからか、年々騒音を原因とした住民間トラブルが増加傾向にあると言われています。特に、新型コロナウイルス感染症の登場以降は、人々の在宅時間が長くなったことにより、余計に騒音を原因としたトラブルが増えていると考えられます。例えば、テレワークを導入する企業が増えてことで、日中は雑音が入らない環境を求める方が増えたことにより、ちょっとした騒音が近隣トラブルの原因となってしまうのです。さらに、コロナ禍ではペットを飼い始める方が急増していて、ペットの足音や鳴き声によるトラブルも多くなっていると言われています。
なお、人が日常生活を進める限りは、完全に無音で過ごすことなど絶対に不可能ですので、音を出しても他人に迷惑を掛けない防音環境を作るのが最もオススメですよ。