ピアノの防音工事について!自宅に夜間演奏可能なピアノ防音室を作る際の注意点の費用感
今回は、自宅の一室に防音工事を施し、ピアノ用の防音室にしたいと考えている方に向け、ピアノ用防音室の注意点と工事にかかる大まかな費用をご紹介していきます。
皆さんはあまりイメージが無いかもしれませんが、実は日本と言う国は、諸外国と比較しても、楽器をたしなむ人の数が多い傾向にあると言われています。実際に、楽器の演奏を生業にしているという方でない場合でも、子供のころを考えるとさまざな楽器に触れた記憶を持っているのではないでしょうか?日本は、学校教育で音楽の授業がありますので、この時に色々な楽器に触れることで、大人になってからも楽器に興味を持つ方が多いのだそうです。実際に、我々のような防音工事業者に、ピアノやドラムなど、楽器演奏のための防音工事を相談してくる方は非常に多いです。
そして、ピアノは日本人にとって最もなじみ深い楽器の一つであり、ピアノの音色を聞いたことが無いというような方はほとんどいないと断言できるでしょう。ただ、非常に美しい音色を持っているピアノですが、自宅で演奏する場合には少し注意が必要です。いくら美しい音色だとは言え、その音を聞きたいと思っている方以外には騒音に間違いはないので、時間も考えず好き勝手に演奏してしまうと近隣住人との騒音トラブルが発生してしまうことでしょう。自宅で時間を気にせずにピアノの演奏をしたいと考える場合、近隣住民に配慮するためにも、防音室を作って音漏れしない環境を用意しなければいけません。
そこでこの記事では、自宅にピアノ用防音室を設けたいと考えている方に向け、工事の前に知っておきたい注意点と、ある程度の費用感をご紹介します。
ピアノ防音工事の注意点
それでは専門業者に依頼して、自宅にピアノ用の防音室を設ける場合の注意点についてご紹介していきます。もちろん、優良な防音工事業者に出会えたのであれば、工事を依頼するお客様側は、安心して防音室が出来上がるのを待っていれば良いです。しかし、防音工事が一般化した現在、防音に関する知識や技術を持っていない単なるリフォーム業者が防音工事を行うケースが増えており、防音工事に関するトラブルなども多くなっています。
ここでは、ピアノ用防音工事に失敗しないため、皆さんもおさえておきたい、いくつかの注意点をご紹介しておきます。
①ピアノの防音工事は「低音対策」が大切
ピアノの音色と聞くと、美しい高音をイメージする方が多いですね。しかし、ピアノの防音室を作る際は、低音に注意しておかなければならないのです。
そもそも、防音のことを考えた場合、低音は高音に比べて音の波長が長くなることから、防音壁の厚みに収まりきらないので、音が壁を貫通しやすくなります。つまり、「ピアノは高音を抑えるだけなので防音は簡単です」などと言う業者であれば、工事後に仕上がる防音室の性能が不十分な可能性が高いのです。ピアノ用防音室は、低音もきちんと遮音できるような性能を持っていなければいけないと考えてください。
低音をきちんと遮音するためには、下地や表層材に低音域の吸音や遮音に優れた吸音ボードを使用する方法が一般的です。なお、防音室の性能としては、遮音性能を示すD値(Dr値)が「D-50~D-55」程度を目標にすると良いでしょう。
ピアノの防音室を作る際には、「ピアノは高音から低音まで、幅広い音域をもつ楽器」だということを認識し、高音はもちろん低音もしっかりと遮音できる防音室を作ってくれるように依頼しましょう。低音の対策が不十分だと、せっかくお金をかけて防音室を作ったのに、近隣からクレームが入ってきて好きな時間にピアノの演奏ができない…などという状況に陥る可能性があります。
②ピアノの防音工事は「振動対策」が大切
ピアノは、ドラムのような打楽器ではありませんし、空気音の防音対策だけを施せば良いと考えていませんか?
実際に、知識のない業者がこの考えで防音工事を行うことで、マンションなどの集合住宅にて「防音室を作ったのに階下の方からクレームが来た…」と言う事例が増えているのです。実は、ピアノに関しては、ペダルを踏む際の振動や弦を打つ時の振動があるので、きちんと振動対策をしておかなければ、防音室を作る意味がないのです。ピアノによる騒音トラブルは、お隣とのトラブルが多いと思うかもしれませんが、実は集合住宅にて、上下階の住人でトラブルになる…と言うケースが多いのです。
そもそもピアノは、足が床に接地しているわけですので、楽器から生じる振動が床に伝わってしまいます。そして、床に伝わった振動が階下の部屋にまで伝わり、階下の住人さんから苦情を言われることになるのです。こういった構造体を伝わる音は『固体伝搬音』と言われるのですが、空気を伝わる音よりも防音が難しいという特徴があります。
特に、防音に関する知識がほとんどない業者の中には、「ピアノは固体伝搬音の心配がない」と考えてしまっている業者もあり、そういった業者は、本格的な防音工事業者よりも床の工事が無い分安い見積りを提示してきます。そのため、工事業者をコストで決めてしまう場合には、高確率で知識のない業者を選んでしまう…と言う結果につながってしまうのです。
こういった問題を防ぐ為には、「床の防音は大丈夫ですか?」「振動対策もきちんとしてくれているのですか?」と言ったことをきちんと確認しておきましょう。その時に「ピアノは振動対策が必要ないです」などと言ってくる業者はやめておきましょう。
③どのような防音工事でも「防音室の重さ」に注意
最後は防音室の重さです。都市部などでは、狭い敷地に3階建ての家を建てることが多くなっていますが、こういった住宅に防音室を設ける場合、防音室の重さに注意しなければいけません。
と言うのも、しっかりした性能を持つ防音室を作る場合、床や壁、天井などを二重構造にするのが一般的です。つまり、防音室を作る時には、部屋の中にもう一つの部屋を作ることをイメージしていただければ分かりやすく、防音室は一部屋で二部屋分の重量近くになります。具体的には、それなりの性能を持つ6畳程度のピアノ室を作る場合、防音室の重量は1.5トン程度になると言われています。そして、防音室の中にグランドピアノやちょっとした家具を設置することになれば、ピアノ用の防音室は約2トンもの重量を持つ部屋になります。
6畳の部屋は、約10㎡の広さになりますので、6畳のピアノ室は「1㎡当たり200kgの重さが加わる部屋」になると言い換えることができます。日本で家を建てる時には、建築基準法を守らなければいかないのですが、実は、住宅の基準は「少なくとも1㎡あたり180kgの荷重に耐える」とされています。これからも分かるように、しっかりした性能を持たせた防音室は、通常の戸建て住宅の強度を超えてしまう危険があるのです。
プロの防音工事業者であれば、「防音室は非常に重たい」と言うことを理解していますので、お客様の要望が3階建ての3階部分に防音室を設けたいという場合、補強工事の話からスタートします。これは、防音以外の部分に多額のコストがかかることから、可能であれば1階にしませんか…と言った交渉でもあります。この他にも、演奏時間を工夫することで、防音室に持たせる性能を下げ、重量を緩和するといった対策も練られます。
皆さんに覚えておいてほしいのは、「防音室は非常に重量がある」と言う事実で、戸建て住宅の2階以上に防音室を作る場合、何らかの工夫が必要と考えてください。
ピアノ防音室を作る時の費用について
それでは最後に、ピアノ用の防音室を自宅に設けたいと考えている方のため、防音工事にかかる大まかな費用をご紹介しておきます。ここでは、RC造のマンションの一室を、楽器用の防音室にリフォームする時のある程度の費用相場をご紹介しておきます。なお、以下で紹介する防音室の性能は、開口部を除いた複合遮音性能で『D-65』程度です。
- ・既存部屋面積が4畳の場合⇒300万円程度
- ・既存部屋面積が5畳の場合⇒325万円程度
- ・既存部屋面積が6畳の場合⇒350万円程度
- ・既存部屋面積が7畳の場合⇒380万円程度
- ・既存部屋面積が8畳の場合⇒400万円程度
一般的な防音工事業者に、ピアノ用の防音工事を依頼する場合の費用相場は上記のような感じです。なお、ピアノはさまざまな楽器の中でも中間程度の音量になりますので、上記レベルの防音室を作れば、さまざまな楽器の演奏が可能です。ただ、ドラムに関しては、電子ドラムなら問題ないのですが、生ドラムの演奏は振動が大きすぎるため不可能だと考えてください。
また、ピアノ用防音室として利用する場合、楽譜に書き込みを行う小机を置いたり指導してもらうことを考えると、4畳の防音室では少し手狭です。防音室の仕上がりが4畳の場合、アップライトピアノがギリギリで、グランドピアノを設置する予定であれば、5畳以上、余裕を持って演奏を楽しむ場合は、6畳以上がオススメです。
防音工事の匠では、年間1,000件以上の店舗工事の実績を持つ建築会社を母体に持つことから、材料メーカーなどの協力により、必要最低限の建材・工賃による防音工事が可能です。そのため、他社が施工する同程度の防音性能をもつピアノ用防音室の防音工事でも、180~250万円程のコストでご相談を受け付けているので、ピアノ用防音工事をお考えであれば、お気軽にお問い合わせください。
まとめ
今回は、ピアノ用の防音室を作ろうとお考えの方に向け、ピアノ防音室の注意点をご紹介してきました。この記事でご紹介したように、ピノ用の防音室を作る際には、意外に細かな注意点が存在していて、これを無視してしまうと、想像していたような防音室が出来上がらず、後悔してしまう可能性があります。
特に、防音室の重さに関しては、一般の方がほとんど認識していないので、防音室以外の部分に想像以上のお金がかかってしまうことにびっくりしてしまう方が多いです。この辺りの知識を持っておけば、本当に知識と技術を持った防音業者かどうかが判断できるようになりますので、ぜひ頭に入れておきましょう。