ピアノやギターの音は騒音?自宅で楽器の演奏を考えている方が知っておきたい騒音の基準
自宅で、ピアノやギター、トランペットなど、楽器の演奏を考えている方は、自宅内はもちろんのこと、近所周辺への「騒音」には注意しなければいけません。
一般の方の中には、戸建て住宅であれば建物が独立しているため、ある程度大きな音を出しても、ご近所さんとの騒音トラブルにはならないと考えてしまっている方がいます。実際に、一昔前までの「庭付き一戸建て」であれば、家が独立しているうえ、隣家との距離が離れていることから、昼間にピアノなどを弾いていたとしても騒音の苦情を言われるケースは少なかったようです。
しかし、現在の戸建て事情を考えてみると、こういった騒音への考えを持つのは少し危険な状況になっています。というのも、現在では、狭小地に三階建て住宅を建てるケースが増えていて、家と家の距離が非常に近くなっています。さらに、コロナ禍以降はテレワークなどの新しい働き方が一般化しており、昼間でも音に関する問題を抱えてしまう方が増えていると言われているのです。
そこでこの記事では、こういった状況にある現在、自宅で楽器の演奏を行うため、皆さんがおさえておきたい騒音に関する基準などについて解説します。
騒音の基準について
それではまず、一般的な騒音の基準について解説します。音の問題の難しいところは、同じ音でも人によって受け取り方が違う点です。ただ、何の基準も設けなければ、際限なく音を出してしまう人が居るかもしれないので、環境省などから騒音に関する環境基準なるものが出されています。
騒音は、人々の住環境を悪化させる要因になることもあるので、「環境問題」のひとつと考えられています。「どの程度の大きさの音が騒音にあたるのか?」については、環境基本法によってその基準定められています。具体的には、以下のような基準となっています。
- ・療養施設、社会福祉施設などが集合して設置される地域をはじめとした、特に静穏を要する地域…昼間50dB以下、夜間40dB以下
- ・住居用として供される地域…昼間55db以下、夜間45dB以下
- ・住居と併せて商業、工業用に供される地域…昼間60dB以下、夜間50dB以下
これに加えて、道路に面している場所については、それぞれ上述した騒音の基準値に「+5~15dB」の数値が加えられます。幹線道路に面した地域については、一律で昼間70dB以下、夜間65dB以下まで基準値を上げています。
身の回りに存在する音の大きさとは?
それでは、騒音の基準値を理解したところで、私たちの日常生活の中で、身の回りに存在する音の大きさについても見ていきましょう。皆さんもご存知の通り、普通に生活をしているだけで、誰でもさまざまな音を生じさせてしまうもので、気付かないうちに他人に音で迷惑をかけてしまっている場合があります。
それでは、日常生活の中に存在する一般的な音の大きさはどれぐらいなのでしょうか?例えば、テレビやラジオ、水洗便所の排水音が、おおむね50~70dBになると言われており、この数値が一般的な生活騒音の平均値になると言われています。ちなみに、潮騒や小鳥のさえずりなどもこの範囲の大きさと言われています。
次に、人が「ややうるさい」と感じる音の大きさですが、これは70~90dB程度の範囲だとされています。具体的には、以下のような音がこの範囲の音に該当します。
- ・ステレオから出る音楽
- ・パチンコ店の音
- ・ボーリング場の音
- ・犬の鳴き声やセミの鳴く音
- ・新幹線車内の音
そして、人が「きわめてうるさい」と感じるレベルは、90~110dBの範囲の音で、以下のような音が該当します。
- ・地下鉄の音
- ・滝の音
- ・騒々しい工場の中
- ・電車が通るときのガード下
これ以上の110~130dBの範囲の音になると、聴覚障害を与える可能性があるとされています。ちなみに、ジェット機の騒音や道路などでコンクリートを掘り起こす音、落雷などが、これに該当し、さらに実は、叫び声やくしゃみも、この範囲の大きさの音になります。そのため、人の声に関する騒音問題では、子供の騒ぐ声よりも、親がそれをりつける時の声が指摘されるケースが多いです。
ちなみに、人が普通もしくは静かと感じるレベルの音は30~50dBの範囲の音で、鉛筆の音や衣擦れの音が該当します。
楽器の音の大きさとは?
それでは本題の楽器の音の大きさについて解説していきます。ちなみに、以前このサイト内で「楽器の音量ランキングをご紹介!楽器の音は騒音と言われてもおかしくない音量です」という記事をご紹介しています。この記事では、特に大きな音を生じさせる楽器の種類について解説していますので、自宅で楽器の演奏を検討している方は、ぜひこの記事もご参照ください。
楽器の音量について、いくつか分かりやすい例をご紹介します。まず、一般の方が「そこまで大きな音量ではない」と感じるクラシックギターやバイオリンの音量ですが、この楽器でも80~90dBの範囲の大きさとなります。先ほどご紹介した身近に存在する音の大きさで考えると、クラシックギターレベルでも、パチンコ店の騒音とさほど変わらないレベルになってしまうのです。
そしてこれが自宅で演奏させることが最もの多いピアノになると、90~110dBの範囲の音の大きさで、地下鉄の騒音と変わらない音の大きさよなります。さらに、サックスや金管楽器となると、110~120dBで、ジェット機並みの音の大きさ、ドラムやパーカッションに至っては、130dB程度の大きさで、落雷と同レベルの音量となるのです。
つまり、どのような楽器でも、何の対策もなしに自宅で演奏を行った場合、「非日常的な」騒音をまき散らしているのと同じだということです。近隣に住む方に楽器の音で迷惑をかけないようにするためには、専門業者による防音室工事など、防音設備をしっかりと整えておく必要があるでしょう。
まとめ
今回は、自宅で楽器の演奏を考えている方に向け、楽器の音がどれほどの音の大きさになるのか、騒音の基準と一緒にご紹介しました。
記事内でご紹介しているように、楽器が生じさせる音は、人が「きわめてうるさい」と感じるようなまさに騒音以外の何物でもありません。楽器は、美しい音色を生じさせるためのものですが、「美しいと感じるかどうか?」はその人の状況によって変わります。コンサートなどで聞く分には音楽として楽しめますが、自宅でテレワークをしている、受験勉強をしている、睡眠をとっているという時に、これほどまでの騒音が聞こえてくると、当然苦情の一つも言いたくなるものです。
自宅で楽器の演奏を行う時には、「非日常的な騒音を出している」という認識をきちんと持ち、しっかりと防音対策を施すようにしましょう。