自宅に防音室を作ったらどの程度の効果が期待できる?楽器別防音室の性能について
今回は、防音工事業者に依頼して、自宅に防音室に作る工事を行ってもらう場合、どの程度の費用にがかるのかと、いくつかの楽器に分けて、音がどの程度小さくなるのかをご紹介していきます。
近年では、都市部の戸建て住宅の距離が近づいていることもあり、せっかくマイホームを購入したのに、騒音トラブルのことを考えると自由に演奏ができない…という悩みを抱えてしまう方が増加していると言われています。一般的に、さまざまなライフスタイルを持った方が同じ建物内に暮らすマンションなどであれば、お隣さんが出す音が漏れてきて、騒音問題に発展してしまう…というイメージがあると思います。しかし、戸建て住宅になると、独立した建物なのだから、線路沿いに建てるなどの立地の悪さが無ければ、音の問題なんて抱えることはないと考えてしまう方が多いです。要は、戸建ての方が、遮音性が優れているから、静かに暮らせると思ってしまう訳ですね。
しかし、実際にマイホームを購入し、暮らし始めてみると、お隣さんの生活音が筒抜けでマンションで生活していた時よりも音の悩みが大きくなってしまう…なんてことも珍しくないと言われています。これは、限られた土地を可能な限り有効活用するため、家と家の距離をほとんどあけずに建てているのが原因です。音は、距離で減退するものですので、近ければ近いほど音が聞こえやすくなってしまいます。こういったことから、戸建て住宅でも、楽器の演奏をするにはしっかりとした防音室を設けなければならない時代になっています。ただ、防音室に関しては、非常に高額だと聞くし、どの程度まで音が小さくなるのかいまいち分からないから、なかなか決断ができない…と言う方も多いと思います。
そこでこの記事では、いくつかの音の種類に分けて、防音室にかかる費用と、どの程度の性能を想定すれば良いのかをご紹介しておきます。
防音室の性能は遮音等級に注目
音は目に見えないものですし、防音室を作ったからといって、どの程度、音がおさえられているのか確認するすべがないのでは…と考える方も少なくありません。そもそも、音の聞こえ方は、個人によってかなり違いがありますので、ある人がうるさいと感じる音も全く気にならない人もいるわけです。それでは、防音室の性能は、何を基準に考えれば良いのでしょうか?
これについては、遮音等級と言うものがありますので、遮音等級から自分に必要な防音室の性能を考えると良いでしょう。このサイトの別記事でも何度もご紹介していますが、音の単位は『dB(デシベル)』で表記されており、例えばピアノから生じる音の大きさは90~100dB程度となります。そして、一般的に人がうるさいと感じる音の大きさが50dB程度からだと言われているので、防音室は一般的に気にならないとされるレベルの40dB程度まで音を下げることを目的とします。
この時に、防音室に必要な性能は「90dB-50dB=40dB」となりますので、50dBの音を下げなければいけないのです。そしてこれが防音室の性能を表す数値となり、「D-50」「Dr-50」という表記で遮音性能が表されています。
こう聞くと防音室の性能は非常に分かりやすいと思いますね。要は、生じさせる音の大きさを一般にうるさいと感じられない程度まで下げる性能を選ぶ感じになります。
防音室を作る場合の費用目安について
それでは、防音工事業者に依頼して、防音室を作ってもらうという場合、その工事にかかる費用や防音室の性能によってどの程度音が小さくなるのかも見ていきましょう。
ここでは、防音室を作りたいという依頼が多い、楽器をいくつかピックアップし、必要な性能などについてご紹介します。
ピアノ・ヴァイオリン・ホームシアターなど
まずは、ピアノやヴァイオリン、ホームシアターなどが目的の防音室からです。これらは、一般的に90~100dB前後の音が生じるので、防音室などを設置していなければほぼ間違いなく騒音トラブルに発展してしまうでしょう。実際に、リビングなどに大型スクリーンをつけたのは良いものの、使ってみると音が思った以上にうるさくて、全く活用できていない…なんて話はよく耳にします。
新築を建てる時には、憧れなどからあれこれと設備を導入してしまう方がいるのですが、それを利用する際に、周辺にどんな影響が生じるのかもしっかりと考えておきましょう。なお、このタイプの防音室を作るには以下のような費用が必要です。以下の費用目安は、D-60~D-65の遮音等級を実現する場合と考えてください。
工事前の部屋の広さ | 防音室の広さ | 費用目安 |
---|---|---|
12畳 | 約10.8畳 | 360万円〜 |
8畳 | 約7畳 | 290万円〜 |
6畳 | 約5.2畳 | 260万円〜 |
4.5畳 | 約3.8畳 | 230万円〜 |
それでは、戸建て住宅でピアノなどの音を抑えるための防音室を作った場合、遮音等級によって音の聞こえ方がどのように変わるのかも見ておきましょう。
遮音等級(D値) | ピアノやオーディオなどの音の聞こえ方 |
---|---|
D-65 | 通常では聞こえない |
D-60 | ほとんど聞こえない |
D-55 | かすかに聞こえる |
D-50 | 小さく聞こえる |
D-45 | 楽器の音を認識できる |
D-40 | 曲がハッキリ聞こえる |
D-35 | 楽器の音が日常会話くらい聞こえる |
D-30 | よく聞こえる |
D-25 | うるさく感じる |
D-20 | かなりうるさく感じる |
D-15 | 大変うるさく感じる |
これからも分かるように、D-60までの性能を持たせれば、夜間にピアノを弾いたとしても騒音トラブルの可能性は少ないと考えられるでしょう。
管楽器用(フルート・トランペット)の防音室など
管楽器は非常に大きな音が生じるというイメージがあるでしょうし、かなりの性能が必要になるのではと考える方が多いですよね。実際に、プロレベルの方が演奏する管楽器は、110dB程度の音が出るとされていますので、夜間演奏にも耐えるレベルとなるとD-60以上の遮音等級が必須だと考えてください。ただ、打楽器やピアノのペダル音のような振動音が無い分、実は防音自体はそこまで難しくありません。D-60~65の防音室を作る場合、以下が費用目安となります。
工事前の部屋の広さ | 防音室の広さ | 費用目安 |
---|---|---|
12畳 | 約9.8畳 | 430万円〜 |
8畳 | 約6.2畳 | 350万円〜 |
6畳 | 約4.4畳 | 320万円〜 |
4.5畳 | 約3.2畳 | 280万円〜 |
遮音等級別の音の聞こえ方に関しては以下のような感じになります。
遮音等級(D値) | 管楽器用(フルート・トランペット)の聞こえ方 |
---|---|
D-70 | 通常では聞こえない |
D-65 | ほとんど聞こえない |
D-60 | かすかに聞こえる |
D-55 | 小さく聞こえる |
D-50 | 楽器の音を認識できる |
D-45 | 曲がハッキリ聞こえる |
D-40 | 楽器の音が日常会話くらい聞こえる |
D-35 | よく聞こえる |
D-30 | うるさく感じる |
D-25 | かなりうるさく感じる |
D-20 | 大変うるさく感じる |
エレキギターを想定している場合も、このレベルの防音工事が必要でしょう。
打楽器用(ドラム)の防音室など
最後は、ドラムなどの打楽器です。一度でも防音室について調べてみたことがある人であれば、ドラムなどの打楽器の防音が最も難しいという情報は目にしたことがあると思います。まずは、D-75以上の遮音等級を実現する場合の費用目安をご紹介しておきます。
工事前の部屋の広さ | 防音室の広さ | 費用目安 |
---|---|---|
12畳 | 約8.8畳 | 750万円〜 |
10畳 | 約7畳 | 690万円〜 |
8畳 | 約5.4畳 | 630万円〜 |
6畳 | 約3.7畳 | 560万円〜 |
遮音等級ごとの音の聞こえ方は以下のような感じになります。
遮音等級(D値) | ドラムなど打楽器全般の聞こえ方 |
---|---|
D-85 | ほとんど聞こえない |
D-80 | かすかに聞こえる |
D-75 | 小さく聞こえる |
D-70 | 楽器の音を認識できる |
D-65 | 曲がハッキリ聞こえる |
D-60 | 楽器の音が日常会話くらい聞こえる |
D-55 | よく聞こえる |
D-50 | うるさく感じる |
D-45 | かなりうるさく感じる |
D-40 | 大変うるさく感じる |
D-35 | 騒音に聞こえる |
ドラムや和太鼓などの打楽器は、かなり高性能な防音室が必要だと考えてください。なお最近では、消音機能のある電子ドラムの性能が非常に高性能化していると言われているので、自宅の練習用は電子ドラムにするという場合、防音室の性能は少し下げても問題ないと思います。
まとめ
今回は、戸建て住宅で本格的な防音室を導入する場合にかかる費用目安や、防音室の遮音等級ごとに対象の楽器音がどの程度小さくなるのかの参考をご紹介してきました。例えば、楽器用の防音室でも、昼間にしか演奏をしない想定であれば、周囲もそれなりに喧騒に包まれているわけですし、多少の音漏れがあったとしても騒音のクレームが入ってくるようなことはないでしょう。しかし、これが周囲が寝静まっている深夜も演奏するという場合、可能な限り遮音等級を高くしなければ、すぐに騒音トラブルに発展してしまうと思います。
なお、近年では、都市部の戸建て住宅は3階建てが多くなっており、1階部分に駐車場を設けることで、防音室を2階以上に作らなければならないケースも多くなっています。この場合、防音室の重量などを考えると、防音工事の前に建物の補強が必要になるケースもあるので、注意してください。例えば、D-40程度のピアノ室を作る場合、防音室だけで約1tもの重量がありますし、そこに300kg以上のピアノを設置することになるわけですので、補強なしでは施工できないケースが多くなってしまうのです。
この辺りは、実際に現地調査を行い、お客様が求める遮音等級などから業者が指摘してくれると思うので、2階部分以上に防音室を想定している場合、別途補強工事が必要になるかもしれないと思っておきましょう。