効果的な防音対策を目指すなら防音材ごとの特徴をつかんでおく必要がある!

近年では、ホームセンターやネット通販などで販売されていますし、一般の方にとっても身近な存在になっているのが防音材です。日常生活の中で気になる生活音程度であれば、わざわざ大金をかけてまで防音工事をするわけにはいかないし、防音材を購入して自分で対処しようと考える方も多いのではないでしょうか?

ただ、一口に防音材といっても、音を吸収するタイプのアイテムと、音を遮るタイプのアイテムなど、さまざまな種類が存在しています。さらに、防音材は、それぞれに特徴が異なりますので、防音材が持つ性能をきちんと発揮させるためには、素材に適した用途で用いなければあまり意味をなさないのです。

実際に、「自分で防音対策をしたいけれど、どの防音材を購入すれば良いのか分からない…」「ネットで検索したら、さまざまな防音材がヒットしたけど、違いが分からない…」など、防音材に関してさまざまな疑問を抱いている方も多い事でしょう。

そこでこの記事では、防音に関する知識があまりない方でも、知っておきたい防音材の基礎知識をご紹介していきます。

防音材とは?

それではまず、「防音材とは何なのか?」について簡単に解説しておきましょう。防音材は、その名称からイメージできるように、何らかの音(騒音)を防ぐ効果をもたらせてくれる素材の総称です。

なお、防音材について知りたい場合には、そもそも「音にも種類がある!」というポイントを押さえておくべきですので、音の種類についても簡単に解説しておきます。

音の種類について

防音工事の匠のコラムをちょこちょこ見ていただいている方であれば、「音にも種類がある」ということは既に理解していただいていると思います。実は、日常生活の中で、皆さんの耳に届く音にも、大きく分けて空気伝搬音と個体伝搬音の2種類が存在するのです。そして、この二つの音については、それぞれ音の伝わり方が異なります。

  • ・空気伝搬音は、空気中に放出され、空気を伝わって広がる音です。空気伝搬音は、音源から距離が離れるほど音が減退されるのが特徴です。
  • ・固体伝搬音は、衝撃や力によって生じた『振動』が建物の構造体などを伝わり、壁などを振動させて空気中に放射される音です。音の伝搬経路が非常に複雑で、さらに減退しづらいという特徴があることから、空気伝搬音に比べると制御が難しい音になります。

音は、大きく分けると上記の2つの種類が存在します。なお、日常生活の中に存在する、空気伝搬音と固体伝搬音が合わさった音は、『混合音』と呼ばれます。

防音方法について

防音とは、その言葉通り「音を防ぐ」ことを指しています。ただ、防音という言葉は、あくまでも概念的なものであり、具体的な手法を指しているわけではありません。皆さんが、日常生活の中で、何らかの音の悩みを抱えた場合、その音が上述した音の種類のどちらなのかによって、適切な防音方法を採用しなければいけません。

具体的な防音方法については、以下の4つの種類が存在します。

  • ①空気伝搬音に対し、「音を吸収する」ことで防ぐ
  • ②空気伝搬音に対し、「音を遮断する」ことで防ぐ
  • ③個体伝搬音に対し、振動源そのものの振動を減退させ音を防ぐ
  • ④個体伝搬音に対し、振動を減退させることで音を防ぐ

このように、問題となっている音の種類に合わせて、適切な対策を施す必要があるのです。つまり、防音材は、音の種類に応じた製品(素材)が用意されているので、何を採用すれば良いのかをしっかりと検討する必要があります。

防音材の種類について

ここまでの説明で、何らかの音の問題を抱えてしまい、防音材を活用して自分で対処しようと考えると、「音の種類に合わせた防音材を用意する必要がある!」ということが理解できたと思います。要は、防音効果をもたらせてくれる防音材にも、いくつかの種類が存在しているという意味です。

先ほど紹介した、防音方法ごとにどのような防音材を利用すべきかを以下でご紹介してみましょう。

  • ①空気伝搬音に対し、「音を吸収する」ことで防ぐなら⇒吸音材を利用
  • ②空気伝搬音に対し、「音を遮断する」ことで防ぐなら⇒遮音材を利用
  • ③個体伝搬音に対し、振動源そのものの振動を減退させ音を防ぐ⇒制振材を利用
  • ④個体伝搬音に対し、振動を減退させることで音を防ぐ⇒防振材を利用

このように、防音方法によって利用しなければならない防音材は異なるのです。ちなみに、一般の方の多くが「防音材=吸音材」とイメージしているようですが、防音材と呼ぶ場合は、「上記のどれか」という意味です。

なお、防音対策のことを考えた場合、遮音材や吸音材など、性質の異なる防音材を組み合わせることで、相乗効果が生まれ防音性能を効率的に高めることが可能です。要は、ある程度、静かな環境を求める場合には、上述した防音材をうまく組み合わせて利用しなければならないのです。

吸音材とは?

それでは、防音対策を自分で行おうと思った時、必ず使用することになる吸音材と遮音材について、それぞれの特徴をご紹介していきます。まずは、吸音材からです。

吸音材は、空気伝搬音の振動を熱に変換することで、音を減退させる防音材のことを指しています。なお、室内の反響音を抑えるといった目的や、残響時間を調整したりする目的でも利用されますので、楽器用防音室の音響調整では欠かせない材料となります。

吸音材については、いくつかの種類が存在しており、それぞれのタイプによって音を吸収する仕組みが違います。ここでは、防音工事の現場でよく利用される多孔質型吸音材と共鳴器型吸音材の特徴を簡単にご紹介しておきます。

多孔質型吸音材

多孔質型吸音材は、素材に小さな穴がたくさん存在する吸音材です。このタイプは、素材に空いた小さな穴に音が入ることで、摩擦や振動が生まれ、熱エネルギーに変換されることで、音が吸収(減退)されます。

代表的な多孔質型吸音材では、グラスウールやロックウールなどの断熱材やウレタンスポンジ材、フェルトなどがあげられます。本格的な防音工事となると、密度が高い厚手のグラスウールを壁内に充填するという方法が採用されるケースが多いです。グラスウールは、吸音性能が高いだけでなく。不燃材料であるため、一般住宅などでも安全な建材として利用できるからです。

共鳴器型吸音材

共鳴器型吸音材は、空気自体を振動させ、摩擦熱を発生させることで音エネルギーを消費させるという、共鳴現象を利用した吸音材です。

代表的なものでは、共鳴器となるたくさんの穴があいた有効ボードやパンチングメタルなどがあります。これらは、学校の音楽室の壁などにも採用されていますので、材料の名称は知らなくても、ほとんどの方は目にしたことがあると思います。

共鳴器型吸音材は、壁と吸音材との間に空気層を設けることで、吸音可能な周波数が変化するという特徴を持っています。なお、壁との間に前述の多孔質型吸音材を設置することで、吸音率を高めることも可能です。

遮音材とは?

次は、遮音材についてです。遮音材は、人の声などの空気伝搬音を遮断する材料のことです。簡単に言うと、壁や天井などに遮音材を設置すると、室内で発生した音が透過することなく跳ね返されるので、音漏れを防ぐことができるといった使い方がなされます。

遮音材は、面密度(面密度=厚み×比重)や質量があるものほど性能が高くなるのが特徴で、賃貸物件を探す時に、木造アパートよりも鉄筋コンクリート造の方が音に悩まされにくいのは、木よりもコンクリートの方が質量が高いからです。巷で見かける遮音材は、比重の高い鉛などの金属製やコンクリート製品、樹脂やゴム製品などがあります。

注意が必要なのは、部屋の遮音性を高めすぎると、必要以上に音が反響するようになってしまい、音が聞き取りにくくなったり、室内に長時間滞在すると耳や頭の不調が現れたりするケースがあります。そのため、高性能な防音室を作る時には、吸音材や調音材を併用し、防音室内の音環境のバランス調整まで行います。一般の方が、DIYなどで防音室を作った場合、この辺りの調整が上手くいかず、使いにくい防音室になってしまうケースが多いです。

防音材選びのポイントをご紹介!

それでは最後に、現在音の問題を抱えている方に向けて、用途別防音材の選び方を簡単にご紹介していきたいと思います。コロナ禍になってからは、人々の在宅時間が長くなってきており、些細な音の問題でご近所トラブルが発生する…なんてことが増えているようです。

もちろん、自宅で楽器の演奏を行っているなどという場合は、我々のような専門業者に依頼して防音室を作るのがマナーです。しかし、「子供の足音」「ペットの鳴き声」「テレワークの通話音」などの問題となると、大金をかけてまで工事をするのを戸惑ってしまう方も多いですよね。こういった方は、ホームセンターやネット通販などで、防音材を購入し自分で対策を施してみるのも良いと思います。

ここでは、いくつかの用途に分けて、必要な防音材の組み合わせをご紹介しておきます。

床の防音対策(足音など)

床への音の伝わりは、主に固体伝搬音の要素が強いため、対策を施すことが難しいのが特徴です。

ただ、マンション暮らしの方が増えている現在、音の悩みとして我々のような防音工事業者に入る相談では『床の対策』が非常に多くなっています。床の防音対策では、ゴミ製の遮音マットが非常に効果的です。このタイプのアイテムは、遮音性能が高いうえ、防振・制振材としての効果を持とますので、小さなお子様やペットの足音対策として効果的です。さらに、遮音マットの上に吸音効果を持つカーペットなどを重ねて利用することで、階下へ伝わる足音や物を落とした時の衝撃音などを防ぐことが可能です。

ちなみに、防音工事業者に本格的な対策を依頼する場合、床材の下地材としてグラスウールボードなどを施工し、床材を遮音性の高いものに交換するなどといった対策を進められると思います。

壁や天井の防音対策(空気音の対策)

人の話し声やテレビ・ステレオの音、ペットの鳴き声などの音の問題であれば、壁や天井の防音対策が必要になります。最近では、壁に内装仕上げ材として貼るだけで防音効果をもたらせてくれるようなアイテムが登場しています。ただ、本格的な音漏れ、音の侵入対策をしたい場合、壁の中に吸音材や遮音シートを施工するといった対策がオススメです。

壁や天井に採用できる防音材は以下のようなものがあります。

  • 壁や天井面に貼れる防音材・・・ガラスクロス(吸音ボード、ウレタンスポンジ
  • 壁や天井の中に施工する・・・グラスウール、遮音シート

まとめ

今回は、音の悩みを抱えていて、自分で何とか防音対策を行おうと考えている方が知っておきたい防音材の知識をご紹介してきました。

この記事でご紹介したように、一口に防音材といっても、さまざまな種類の材料が存在していて、「どんな音に悩んでいるのか?」によって採用すべき防音材が異なるのです。例えば、上の階からの足音に悩んでいる場合、固体伝搬音が原因となっているため、天井に吸音材を貼り付けても満足のいく効果を得ることなどできません。

最近では、一般の方でも簡単に防音材を手に入れることができるようになっていますので、専門業者に依頼しなくても自分で防音対策が可能と考える方が多いです。しかし、悩んでいる音に対して、どのような方法、材料を使用して対策をとるのかを判断するのはなかなか難しい面もあるので、的確な防音対策を施してできるだけ早く悩みを解消したい場合は、専門業者に相談するのがオススメですよ。コストが気になるかもしれませんが、自分であれこれと用意するにもそれなりのお金がかかりますし、せっかくお金をかけても何の効果も得られない…なんてことになると、最初から防音工事業者に頼む方が安くつくと思います。

特に、楽器用の本格的な防音室を作りたい場合、専門業者に依頼しなければ満足のいく防音室は絶対に作れないと考えておいた方が良いですよ!

スタッフ A

大阪で20年間にわたって防音工事に携わってきました。
防音工事に関しての事、音に関する豆知識などを配信しております。

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