防音室の素朴な疑問にお答えします!防音ドアの種類と暑さ対策編
今回は、お客様とのお打ち合わせ時によく登場する防音室のなぞについてお答えしていきたいと思います。
防音工事の匠では、大阪市中央区の古民家を改造して、お客様が実際の防音室を体験できるモデルルームを用意しています。防音室の必要性を感じる方は、何らかの音の問題に悩んでいると思うのですが、防音室を作ることでどれほどの効果があるのかがなかなかイメージできないという方は多いです。そのため、防音工事業者と契約する前に、現在抱えている悩みを相談するとともに、防音室の効果を体験できるモデルルームの見学をされる方は非常に多いです。
そして、防音室の見学を行う時には、お客様からさまざまな疑問をぶつけられるのですが、今回はその中でも「ドアは引き戸ではダメなのですか?」「防音室は暑いですか?」と言った疑問についてお答えしていきたいと思います。
防音ドアは引き戸と開き戸、どっちが良いの?
防音室の性能は、部屋そのものの性能が重要になるのは間違いないのですが、窓やドアなどの開口部からの音漏れには特に注意しなければいけません。窓やドアについては、きちんと閉めていれば音漏れを防いでくれると考えている方が多いのですが、実は通常の製品であれば閉めていても隙間が生じてしまう作りになっているのです。そのため、防音室への出入り口となるドア部分にも、防音性を持たせた防音ドアを設置することになるのですが、お客様の中には「引き戸と開き戸ならどっちが良いのですか?」と言った疑問を抱えている方がいるのです。
結論から言っておきますが、防音性能のみを考えた場合、開き戸一択と考えてもらえれば良いのですが、ここでは、両者の特徴を分かりやすくご紹介しておきます。
引き戸の防音性能について
引き戸は、ドアの中でも扉を左右にスライドさせることで開閉するタイプのものです。このタイプのメリットは、ドアを前後に開く必要が無いことから、ドアの開け閉めをするのにそこまで広いスペースを必要としないことです。さらに、一般的な開き戸は、床との段差を少なくすることができ、そこまで力を掛けなくても開けられるという特徴から、高齢者や障害のある方でも使用しやすいので、病院などでよく採用されます。
上記のようなメリットがある一方、引き戸タイプのドアは、スムーズな開閉を実現するため、ドアをスライドさせるために隙間を確保しなければいけません。つまり、ドアの構造的な問題から、隙間が生じてしまいやすく、音漏れしやすいドアと言えるのです。また、開閉する際に、前後には広いスペースが必要ないのですが、開け閉めするためには、扉を引き込むスペースが必要になるので、ドアの設置スペースが限られてしまうというデメリットがあります。戸を壁の中に収納するタイプであれば、その部分にはスイッチやコンセントなどを設置することができなくなるので、その辺りも注意しなければいけません。
防音性能面で考えれば、生活音レベルの防音であれば、特に問題ないと思うのですが、楽器の演奏やホームシアターなど、高レベルな防音が必要な場合、引き戸は適していないと考えてください。近年では、高性能な防音タイプの引き戸が販売されるようになっていますが、それでも開き戸と比較すると、性能が落ちてしまいますし、経年劣化による隙間なども生じやすい点が大きな弱点になります。
開き戸の防音性能について
開き戸は、扉を前後に動かすドアで、取っ手を動かすことで開閉します。そして開き戸は、上述した引き戸と比較すると、音漏れを防ぐ加工が容易な点がメリットになります。
ちなみに、防音タイプではない開き戸の場合、室内の換気のために、わざとドアの下部に隙間が生じるような作りになっています。また、建て付けの問題などもあり、ドアの周囲には小さな隙間がどうしても生じてしまうことから、きちんと閉めていても、音漏れを完全に防ぐことは不可能なのです。
防音タイプのドアに関しては、ドア枠にゴムのパッキンを取り付けていて、ドアを閉じた時には、このパッキンを潰すことで隙間を無くし音漏れを防ぎます。開き戸の場合、引き戸よりもパッキンを簡単につぶすことができるため、防音性能の高いドアを実現することが可能な訳です。
ただし、開き戸の場合、前後に扉を動かせるだけのスペースを確保しなければならないため、スペースに余裕が無ければ、開き戸タイプの防音ドアを設置することができない点がデメリットになります。また、開閉時には、引き戸とは比較にならないぐらいの力が必要になるので、高齢の方や障害のある方にとっては、非常に扱いづらいドアになるのが難点です。
開き戸か引き戸どちらが良いのかという問題については、防音室内で生じる音が、どの程度の大きさなのか、防音室を使用する人の属性などによって選ぶ必要があると考えてください。
防音室の暑さ対策について
それでは次に、意外と気にする方が多い防音室の暑さ対策について解説していきましょう。楽器用やホームシアター用など、本格的な防音室となると、非常に高い気密性と断熱性が得られるため、防音室内に長時間滞在していると、暑さを感じてしまうケースも少なくありません。もちろん、防音室にエアコンなどの空調設備を設置しておけば、防音室内の温度に悩まされる…なんてことはなくなるのですが、後付けで防音室を作る場合、工事費の問題などでエアコンなどの空調設備を設置しない方も意外に多いのです。そして、そういったケースでは、実際に防音室を使ってみると室温の上昇に悩まされてしまうのです。
防音室は、部屋全体に断熱材が隙間なく施工されるケースが多いので、非常に高い断熱性が得られます。通常、断熱性が高いと言うことはメリットとして捉えられるのですが、熱を持つ機器を防音室内で多く使用するケースでは、断熱性の高さが弱点になってしまうケースもあるのです。断熱性が高いということは、内部の熱も外に逃げなくなるという意味ですので、防音室内の温度はどんどん上がってしまいます。さらに、防音室は、小さな隙間が音漏れの原因となることから、気密性も非常に高く、熱の逃げ場がなくなってしまうのです。したがって、防音室の使用感を考えず、とにかく防音性能に着目するといったやり方の場合、防音室を使ってみると、とても長時間滞在することができない…なんてことになるのです。
ここでは、防音室を使用する際に、異常に室温が高くなり、使い勝手が悪くなる…と言った問題を防ぐ為の対策をご紹介しておきます。
①室内灯をLED照明にする
意外に見落とされがちですが、非常にオススメな方法が防音室内の照明を白熱電球などではなく、LED照明にするという方法です。
室内の照明に白熱電球を使用した場合、狭い防音室では室温上昇に非常に大きな影響を与えます。したがって、防音室内の照明については、発熱量が少ないLED照明を利用すると良いでしょう。LED照明であれば、耐用年数も長いので、防音室の維持費も安くなります。
②防音室内で使用するアイテムは、出来るだけ発熱量が少ないものを
これは、防音室の利用用途が、音楽を録音するための自宅スタジオと言った場合や、ホームシアターなど、室内で多くの電子機器を使用するケースで考えておきたいポイントになります。
余り意識することが無いかもしれませんが、電子機器と言うものは、電源を入れて使用していれば、徐々に熱を持ってしまうのです。したがって、断熱性・気密性が高い防音室であれば、電子機器の発熱が、室温の上昇に大きな影響を与えてしまうことになるのです。
防音室の室温を高めないためには、パソコンではなくタブレットを使用するだとか、真空管アンプではなくトランジスタアンプを使用するなど、なるべく発熱しない機器を選ぶのがオススメです。
③こまめに換気をする
防音室の仕様上、どうしても発熱する機器を使用せざるを得ない…と言う場合は、小まめな換気を心がけましょう。なお、防音室内で熱を発する機器を多く使用する予定という場合、必ずエアコンなどの空調機器を取り付けてもらうようにしましょう。
既存の防音室で、現在防音室内の暑さに悩まされているという場合、定期的に室内の空気を入れ替えながら作業するようにしましょう。なお、別記事でもご紹介していますが、防音室の広さによっては、長時間防音室内にこもって作業をしていると、酸欠や二酸化炭素中毒の危険性があることも指摘されています。上述したように、防音室は、音漏れの原因となる小さな隙間を、可能な限り潰しているので、非常に高い気密性を持っています。通常の居室であれば、ドアの下などに設けられた隙間によって自然換気が行われているのですが、高性能な防音室には、そういった機能がありません。
したがって、防音室内で大きな音を生じさせる時以外は、ドアを開けて換気を行うなどの対策が非常に効果的です。
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④持ち運び可能な空調機器を使用する
最後は、小型の空調機器を使って、物理的に室温を下げるという方法になります。例えば、小型のサーキュレーターや、持ち運び可能な小型エアコンなどは非常に便利で、最近ではネット通販で数千円程度で手に入るような機器も存在します。
注意が必要なのは、こういった機器に関しては、稼働させる際にそれなりの音が生じてしまいますので、音楽を録音するという作業になると、雑音が入ってしまう可能性があります。したがって、作業内容によって使うか使わないかを選ぶと良いでしょう。
まとめ
今回は、防音室の打ち合わせ時に、お客様が心配されるポイントについて解説してきました。防音ドアに関しては、防音室を作る場合、必ずドア部分の音漏れ対策として、採用するのですが、引き戸と開き戸、どちらが良いのだろうか…と迷ってしまう方は意外に多いです。近年では、引き戸タイプの防音ドアの中にも、高い防音性能を発揮するものが登場していますし、開け閉めが楽になるなら引き戸タイプにしたいというお客様も意外に多いのです。ただ、この記事でご紹介したように、防音性能を重視する場合、やはりドアに生じる隙間をしっかりと潰せる開き戸タイプの方が優れていると言えます。もちろん、開き戸タイプにもいくつかの種類が存在しているのですが、音楽スタジオやカラオケボックスなど、非常に高い防音性が求められる施設では、ほとんどの場合、開き戸タイプが採用されていますよね。これは、開き戸タイプの方が安く済むからではなく、高い性能を求めるのであれば、開き戸タイプの方になるからなのです。
なお、防音室内の室温が気になるのであれば、多少工事費が高くなったとしても、エアコンを設置してもらうのがオススメですよ。上述した、小型エアコンなどで対処は可能なのですが、光熱費の面で考えると、据え付け型のエアコンの方が安くつくと思います。
防音室は、他の住宅リフォームと比較すると、かなり高額な施工費になりますので、さまざまな疑問が頭をよぎってしまうことでしょう。防音工事の匠では、お客様の不安をきちんと解消したうえで工事を行いますので、まずはお気軽にお問い合わせください。