賃貸住宅なら音の悩みは諦めるしかない?賃貸でも可能な防音対策をご紹介します。
今回は、賃貸住宅に住んでいる方が音の悩みを抱えてしまった時の対処法について考えてみたいと思います。
賃貸住宅は、皆さんもご存知の通り、毎月の家賃を支払うことで借りることができる家のことを指しています。こういった賃貸住宅は、何らかの問題が生じた時にはすぐに引っ越しできるという身軽さが大きなメリットになるのですが、コロナ禍になってから「音の問題を抱えても解消することができない…」と言う事が密かに話題になっていました。実際に、コロナ問題発生以降、賃貸住宅に求められる条件として『防音性能』をあげる方が増えていると言われていて、引っ越しする人が急増したと言われています。
賃貸住宅は、あくまでも大家さんから借りているだけの部屋になりますので、出ていくときには『借りた時の状態に戻す(原状回復)』必要があります。さらに、後々のトラブルのことを考えて、専門業者に依頼するような大掛かりなリフォーム工事は禁止されるケースが多いことから、持ち家のような防音対策を施す事ができないのです。
そこでこの記事では、現在、賃貸住宅に住んでいる方で、音の悩みがあるけれど「賃貸だし諦めるしかない…」と考えている方に向けて騒音対策をご紹介します。
賃貸物件で考えられる騒音問題とは?
それではまず、賃貸マンションや賃貸アパートなどで生じる音の問題について簡単に解説しておきましょう。一般的に、戸建て住宅と比較すると、マンションやアパートなどの集合住宅の方が音の問題に悩まされる可能性が高いと言われています。これは、集合住宅は、各住人の生活空間が非常に近い位置にある事や、各居室が構造物によって物理的につながっているというのが大きな要因です。
ここでは、賃貸マンションやアパートなど、集合住宅で考えられる騒音問題を簡単にご紹介しておきます。
建物の中で発生する音の問題
マンションやアパートなどの集合住宅で生活する場合、同じ建物内に複数の家族が生活することになります。特に、集合住宅の2階以上に住んでいる方であれば、左右だけでなく上下も他のご家庭が住んでいますので、さまざまな音の悩みを抱えてしまう可能性が生じます。人が生きていく限りは、誰でも完全に無音の状態で生活することなど不可能ですので、以下のような音に悩まされてしまう可能性があるのです。
- ・近隣住宅から聞こえてくるドアの開閉音
- ・周りの部屋からの音漏れ(話し声やオーディオの音)
- ・上の階から足音が伝わってくる
- ・掃除機や洗濯機などの家電による生活音
このように、集合住宅は、各家庭の生活空間が非常に近いことから、「そんな音が聞こえるの!?」と思うような騒音に悩まされてしまうケースがあります。さらに、物件の条件などによっては、ペットの鳴き声で悩まされてしまう…なんてことも多いです。
このような集合住宅で発生する騒音に関しては、発生した音が空気を伝わり、換気扇やドア・窓の隙間などを伝わって聞こえるというケースや、空気の振動が壁を揺らすことで伝わってしまうケースが考えられます。ちなみに、上の階からの足音については、上の階の床(下の階からすれば天井)から振動が伝わり騒音が広がります。
物件外からの騒音
マンションやアパートの周辺に、線路や大きな幹線道路、公園などがある場合には、それらで発生した音が騒音として伝わってしまうケースも考えられます。例えば、公園で遊ぶ子供の声をうるさいと感じてしまったり、前面道路を大型車が通り過ぎる時の振動音に悩まされてしまうという話はよく耳にします。
賃貸物件で可能だと考えられる防音対策とは?
上述のように、賃貸マンションやアパートなどの集合住宅は、その構造的な条件などもあり、さまざまな音の問題を抱えてしまう可能性があります。それでは、「本格的な工事は難しい」と考えられる賃貸物件の場合、どのような対策なら可能なのでしょうか?
ここでは、賃貸住宅で音の悩みを抱えてしまった場合、どうやってそれを軽減すれば良いのかについて考えてみます。
遮音シートを壁に貼る
一つ目は、ホームセンターやネット通販などで『遮音シート』を購入し、これを壁に貼り付けるという方法になります。遮音シートは、その名称から分かるように、「音を遮る」ことができるシートです。非常に薄く加工されているのですが、これを壁に貼り付けることで、音を反射することができるようになるのです。
ただ注意しておきたいのは、遮音シートは、あくまでも音を吸収するのではなく、反射するだけですので、これだけでは効果的な防音対策になり得ません。例えば、遮音シートのみを直接壁に貼り付けたとしても、壁の振動を抑えることができないため、外からの振動を伴う騒音を防ぐことができないのです。
遮音シートを使って騒音を抑えようと思えば、壁の中に吸音材をつめ、その上に遮音シートを貼るという対策が有効です。なお、自分が生じさせた音が外に漏れないようにするには、遮音シートの上からもう一度吸音材を施工する必要があります。そうしないと、室内で音が反響してしまうようになります。
吸音材を設置する
吸音材もホームセンターや通販サイトで手に入れることが可能です。この素材は、音を吸音材内部で反射させることで熱エネルギーに変換して音を抑えるというものです。なお、吸音材としてよく採用されるアイテムについては、グラスウールやロックウールなど、住宅の断熱材として採用される製品が多いです。
防音工事業者に施工を依頼すると、壁の中に吸音材を隙間なく施工していきます。しかし、賃貸住宅の場合、そういった対策がなかなか取れないので、壁に貼り付けていくという対策になると思います。なお、吸音材単体を壁に貼るだけでは、思うような効果が出ないと思います。吸音材は、空気の振動を吸収するものですので、建物そのものの振動を吸収できません。したがって、上述した遮音シートとうまく組み合わせることで防音対策を行いましょう。
部屋に存在する隙間を埋める
音は、小さな隙間を伝わって部屋の中に侵入してきます。したがって、外部からの音を防ぎたいと思った時には、部屋の各所に生じている隙間を埋めてあげることが重要なのです。
例えば、窓やドアに関しては、きちんと閉じていれば隙間などないと考えている方が多いのではないでしょうか?しかし、窓やドアは、「わざと隙間が生じる」ように作られているのです。窓に関しては、左右に動かすことで開閉するのですが、スムーズに開閉できるようにするには、ある程度の隙間が必要です。そして、ドアに関しては、換気などを目的に、ドアの下に隙間が生じるようになっています。
音は、こういった隙間から侵入してしまいますので、音の悩みを抱えている場合、隙間を埋めてみましょう。最近では、ホームセンターなどに防音用隙間テープが販売されていますので、そういったアイテムで隙間を埋めると良いでしょう。
家具の配置を考える
賃貸住宅でも可能な防音対策について、最も手軽なのが家具の配置を考えるというものです。と言うのも、音は距離で減衰するだけでなく、「何かにぶつかる」と減衰します。したがって、隣の部屋からの音に悩んでいるという場合、音を生じさせている部屋の境界壁部分に大型家具を配置するだけで、伝わってくる音を小さくすることができるのです。
ちなみに、家具を配置する時には、壁の振動がそのまま伝わらないようにするため、家具を壁から1cm程度離して置きましょう。そうすることで、壁を伝わった振動音が空気音になり、その音を家具が吸収して小さくするという好循環を作ることができます。
賃貸は専門業者に工事を依頼できないのか?
ここまでは、賃貸物件に住んでいる方が、何らかの音の問題を抱えてしまった時、どうやってその問題を解消するのかについて解説しました。上述しているように、賃貸物件での防音対策になると、DIYともいえない程度の、非常に簡易的な対策で何とかしなければいけません。これは、分譲マンションや戸建てなど、持ち家と異なり、賃貸の場合、退去の際に原状回復義務があるからなのです。要は、入居者が退去する時には、「入居した時の原状(元の状態)」に戻さなければならいのです。したがって、壁を一度取り払って断熱材を施工するといった本格的な工事を行ってしまうと、退去時にそれを元に戻すために多額の費用がかかってしまうことになりかねないので、「壁にテープで設置する」といった簡単な対策しか施せないわけですね。
賃貸でも業者に工事を依頼できることがある
上述したように、賃貸の場合、DIYでも修復可能な範囲でなければ、退去時に大金がかかってしまうことになるので、業者に依頼して本格的な防音対策を施すことなどできない…と考えている方が多いですよね。防音工事と聞くと、一度壁を壊して、吸音材や遮音シートを用いた防音性の高い壁に作り直すといった本格的なリフォーム工事をイメージする方が多いので、「賃貸では大家さんがOKを出さない!」と考えてしまうことでしょう。
ただ、防音工事の専門業者の中には、賃貸物件の防音対策に関する相談を受けている会社は意外に珍しくありません。もちろん、施工可能な対策は少ないですし、工事費以外にも原状回復費が必要になる工事が多いのですが、プロの目線で「どのような対策を行えば悩みを解消できるのか?」をしっかりと提案してくれます。
音の悩みについて、専門業者に相談する最大のメリットは、騒音の原因をきちんと突き止めてくれた上で、それを防ぐ為の最適な方法まで提案してくれる点なのです。DIYによる防音対策は、上述したように、遮音材や吸音材を設置したり、隙間を埋める程度しかできませんが、専門業者に依頼すれば、より効果的な防音対策を期待できます。
もちろん、賃貸物件であれば、出来ることに制限が出てしまうこともあるのですが、出来ない理由を明確に説明してもらうことができますので、すっきりした気分で諦めることが可能になります。
賃貸物件で防音工事をするときの注意点について
それでは最後に、賃貸物件での防音対策を、専門業者に依頼する場合の注意点についてもご紹介していきましょう。まずおさえておきたいポイントとしては、退去時に原状回復する予定だとしても「そもそも大掛りな工事を行っても良いのか?」を大家さんなり管理会社さんに確認しておかなければいけません。ここまでの説明で「退去時には入居した時の状態に戻さないといけない」と言うことは理解できたと思います。しかし、そのつもりでも、大家さんや管理会社に無断で業者を呼んで工事を行ってはいけないと考えておきましょう。
なんらかの音の悩みを抱えてしまい、防音工事を検討した場合、最初に「工事を行っても良いのか?」「どこまでの工事ならOKなのか?」を大家さんに確認しておきましょう。この段階で「どのような工事もNGです」と言われたとすれば、防音工事は諦めて引っ越しするしかないと思います。なお、最近ではDIY可能物件などが登場しており、こういった物件であれば、入居後にさまざまな手を加えることが認められていますので、問題なく防音工事が可能だと考えておきましょう。
次に、専門業者に工事を行ってもらった場合、退去時に原状回復をしなければならないというポイントです。賃貸物件で、専門業者に依頼してまで防音対策が必要となると、物件がきちんと防音されていないから必要になった工事なのだし、自分の責任ではないと考えてしまう方がいます。しかし、入居時に結んだ賃貸借契約書では、必ず原状回復義務について記載されているはずです。つまり、入居後に、防音工事などを行った場合、退去時にそれをもとに戻す必要があるのです。
このようなことを考えた場合、防音工事を行うにしても、原状回復のことを意識して防音工事を行ってもらうように依頼するのが良いでしょう。なお、工事後の原状回復については、「どこまでが原状回復なのか?」を工事前にきちんと取り決めておく必要があります。この部分に関しては、少し面倒に感じるかもしれませんが、大家さんと施工業者に立ち会ってもらい、きちんと書面に残しておく必要があります。口頭で取り決めしてしまうと、言った・言わないのトラブルに発展してしまうでしょう。
賃貸物件での防音工事については、「絶対に無許可で工事を行わない」ことと「原状回復のことを想定した計画を立ててもらう」という点に注意してください。
まとめ
今回は、賃貸住宅で音の問題を抱えている方のため、賃貸物件での防音事情について解説してきました。この記事でご紹介したように、賃貸住宅と言うものは、原状回復が入居者に義務付けられていますので、音の悩みを抱えたとしても、好き勝手にリフォーム工事などを行うことはできません。そのため、一般的には、窓に遮音カーテンを設置したり、隙間テープで音の侵入を防ぐなど、大掛かりな工事などを必要としない対策を行うケースがほとんどです。
ただ、コロナ禍で在宅時間が長くなってきた現在では、賃貸物件での騒音トラブルの増加が社会問題になってきており、入居者が物件選びをするときには、防音性に注目すると言われるようになっています。そのため、賃貸物件のオーナー様側が空室対策として、我々のような防音工事業者に相談してくるケースが増えてきており、探せば防音性の高い物件が近くにあるかもしれません。
要は、賃貸物件で音の悩みを抱えてしまった時には、自分で何とかしようと考えるのではなく、さっさと防音性の高い物件に引っ越すという対策もあるということです。賃貸の良いところは、何か気に入らないことがあれば、すぐに引っ越すという選択肢もあるという点ですので、騒音でストレスを抱えるよりは賢い選択になるのではないでしょうか?