ピアノの消音ユニットとは?消音ユニットのメリット・デメリットをご紹介します
自宅でピアノの練習をする場合、近隣住民に配慮するために何らかの防音対策を施すのがマナーと言われています。一般的には、我々のような防音工事業者に依頼して、専用の防音室を用意するという選択をする方が多いのですが、ピアノ用の防音室を作るまでになると、防音工事にそれなりのコストがかかってしまうことになるため、「もう少しコストを抑えて防音対策ができないかな?」と考える方も多いです。
こういった場合の選択肢として浮上するのが、ピアノに後付けできる消音ユニットと呼ばれるアイテムです。ピアノの消音ユニットは、簡単に言うと、ピアノに取り付けておくことで、いつも通り演奏しても音が出なくなるというアイテムです。こう聞くと、ピアノの防音対策としては非常に優れたアイテムのように感じますが、ピアノ防音の第一の選択肢になっていないという点が気になってしまいます。
それでは、ピアノに消音ユニットと取り付けるという選択がイマイチ主流にならないのはなぜなのでしょうか?この記事では、ピアノの防音対策に消音ユニットを活用する場合のデメリットについて解説します。
ピアノの消音ユニットとは?
消音ユニットは、ピアノの演奏による騒音トラブルを防止するために開発されたアイテムで、簡単に言うと、アコースティックピアノでありながら、演奏音を外に出さず、ヘッドホンを通して演奏者だけが音を聞きながらピアノの練習ができる機械のことです。アコースティックピアノに後付けすることで、電子ピアノの機能を埋め込めるものと理解していただければおおよそ正しいと言えるでしょう。
これだけを聞くと、人々の住空間が近くなった現在、ピアノの演奏音で騒音トラブルを防止できる非常に優れたアイテムのように感じますよね。ただ、結論から言ってしまうと、ピアノの消音ユニットは、メリットがある一方、かなりのデメリットも指摘されているアイテムです。
アコースティックピアノの防音対策として、消音ユニットの取り付けや消音装置付きのピアノの購入を検討している方がいれば、下で紹介する消音ユニットのデメリットをしっかりと理解したうえで、検討すべきです。
ピアノの消音ユニットのメリット
まずは、アコースティックピアノによる騒音トラブルを防止するため、消音ユニットを利用する場合のメリットを解説します。消音ユニットには以下のようなメリットがあるとされています。
- ・防音室を用意しなくても演奏が可能
消音ユニット最大のメリットが、防音室がなくても、夜間や隣でテレビを見ている人が居ても演奏が可能だという点です。上述したように、消音ユニットを取り付ければ、電子ピアノのような機能が付属されますので、ヘッドホンを装着すれば外に演奏音を出さずにピアノが使用できます。したがって、近隣住民だけでなく、同居する家族間の音の問題も解消できます。 - ・防音対策にかかるコストが安い
夜間など、時間帯を気にせずにピアノの練習がしたい…と考える場合、演奏音で騒音トラブルを引き起こさないために何らかの防音対策が必要です。ただ、防音室を作るといった対策になると、200万円以上のコストがかかるのが一般的です。消音ユニットは、小さな機械をピアノに設置するだけで、製品自体も10万円前後で販売されている物もあります。つまり、防音室を用意するなどの対策と比較すると、圧倒的に安価で対策が可能です。 - ・電子ピアノの機能が付属できる
取り付けする消音ユニットによっては、パイプオルガンやハープシコードなど、ピアノ以外の音色を出せるようになるものがあります。他にも、メトロノームやデモ曲など、アコースティックピアノに電子ピアノの機能を付属することができる点はメリットと言えるでしょう。
消音ユニットによるピアノの防音対策は、低コストだという点が最も大きなメリットと言えるでしょう。また、機器を購入してピアノに取り付けるだけですので、本格的な防音工事のように対策が完了するまでに時間がかかることもありません。使用者によってピアノ以外の音色を楽しめるなど、電子ピアノの機能が付属できる点を気に入る方も多いです。
ピアノの消音ユニットのデメリット
それでは消音ユニットのデメリットについても解説します。デメリット面については、それぞれのポイントについて詳しく解説しますので、消音ユニットの購入を検討している方はぜひ参考にしてください。
■演奏音は消えても打鍵音は生じる
ピアノに消音ユニットを取り付けても、打鍵音は消えません。打鍵音とは、鍵盤を叩く時に生じる音のことです。一般の方からすると、「打鍵音なんて大した音ではないのでは?」と感じるかもしれませんが、これが意外に響く音で、マンションなどでは電子ピアノを演奏していた方が、階下の住人から「打楽器でも演奏していますか?」と苦情を言われたことがあるという事例まであるのです。
消音ユニットの仕組みは、ハンマーがピアノの弦にあたらないよう、ストップバーでさえぎることで音を消しています。そして、ハンマーがストップバーに当たる時にはカタカタと言った音が生じます。これらの打鍵音は、下の階にまで響いてしまうと言われていて、特に夜間の周囲が静かな時間にピアノの練習をしていると、かなり迷惑に感じます。消音ユニットをつけることで、演奏音が生じないため、夜間でも演奏できると考えますが、周囲が静かな分、打鍵音がかなり目立ってしまい、苦情に発展するケースがあるので注意しましょう。消音ユニットは、演奏に関わる全ての音を消せる機能はありません。
■機械なので突然の不具合がある
消音ユニットは、電子機器なので、その他の機械と同じく、突然のバグや不具合に悩まされる可能性があります。
例えば、消音ユニットがあることから、深夜に安心してピアノの練習をしていたところ、突然大きな音が出てしまい、ご近所さんに迷惑をかけてしまう…なんてことが考えられます。もちろん、消音ユニットを利用していれば、必ず不具合が生じるというわけではありませんが、こういった事態はそれなりの頻度で発生するようです。
簡単なバグであれば、機器の初期化をすれば元通りに使えるようになりますが、メーカーによる修理や買い替えが必要になる不具合も多いようです。また、「いつ不具合が出るか分からない…」とビクビクしながらピアノの練習をすることになるため、ピアノの演奏がストレスに感じてしまうようになる方もいるようです。
■タッチと音が変わってしまう
プロの演奏家を目指しているという方などは、このポイントを嫌う方が多いです。消音ユニットをピアノに取り付けると、ついていないピアノと比べると、タッチと音が結構変わります。
消音ユニットは、取り付けのためにピアノの内部部品を調整する必要があります。ピアノは、レットオフと言って、ゆっくり鍵盤をおすとカクッとひっかかる点があるのですが、消音ユニットを取り付ける場合、このレットオフの位置を少し広げなければならないのです。
この作業によって、鍵盤からハンマーに力が伝わりにくくなり、特に弱い音を鳴らす表現に影響が出てしまうと言われています。普段ピアノに触らない…という方であれば、この違いに気付かないかもしれませんが、ピアノを習っている方なら、子供でも違和感を感じる程度にはタッチが変わると言われています。
ピアノは、鍵盤を押した時、その力でハンマーが弦を叩くことによって音が生じるのですが、消音にすると弦を叩かないように、無理矢理ストップバーでハンマーを止め、音を消します。したがって、ハンマーが弦に当たる感触がなくなり、演奏者が違和感を感じてしまう訳です。
■調律の邪魔になることがある
これは、演奏者よりも調律師に対するデメリットです。ピアノは、定期的な調律が必要になるのですが、消音ユニットを取り付けると、調律作業がしにくくなると言われています。
上述したように、消音ユニットによる消音のためには、ハンマーが弦に当たらないようにするため、ストップバーが追加されます。そして、このストッパーが調律作業の邪魔になるのだそうです。調律師からすると、消音ユニットが取り付けられているピアノは、作業にかかる時間が通常よりもかかってしまったり、調律の精度が落ちるなどと言った問題が生じると言います。
■消音時に出る音は電子音
意外な盲点となるのが、消音ユニットを取り付けている場合、音を消してしてヘッドホンで演奏音を聞く際には、アコースティックピアノの音ではなく、電子音になります。多くの方が勘違いしているポイントなのですが、消音ユニットの音は、アコースティックピアノそのものの音ではないのです。(誰かが引いた音を録音しておき、叩いた鍵盤に沿った音を出すといった感じです)
さらに、消音ユニットの音は、電子ピアノの音にも劣るという点も注意してください。電子ピアノは、スピーカーやヘッドホンが工夫されていて、ある程度立体感のある音が再現されるのですが、消音ユニットの音はそのような工夫がなく、薄っぺらい音になってしまいます。楽器の上達は、自分が出した音を聞くことも非常に重要とされていますので、これからピアノの上達を目指して練習したいと考えている方にとって、アコースティックピアノの音が全く出すことができない環境での消音装置はオススメできません。ピアノの上達を考えるなら、防音室を用意して、実際の演奏音を聞きながらの方が良いでしょう。
■消音ユニットを取り付けるとピアノの価値が下がる傾向にある
消音ユニットは、あくまでも電子機器ですので、機械的な寿命が存在します。そして、消音ユニットの寿命は、アコースティックピアノの寿命と比べるとかなり短いです。
したがって、寿命の長いアコースティックピアノに寿命が短い電子機器を取り付けることで、消音機付きのピアノは、ないピアノよりも価値が下がってしまうと言われています。さらに、消音ユニットの種類によっては、取り付けのためにピアノを傷つけてしまうものもあり、そういったものを採用する場合、さらにピアノの価値が下がります。
アコースティックピアノは、中古市場もしっかりしていますので、皆さんが考えている以上のデメリットになります。
ピアノの上達を考えるなら防音室がおすすめ
ここまでの説明で、ピアノの消音ユニットは、アコースティックピアノの演奏音を消すことができるという非常に大きなメリットがある一方、デメリットもかなり多いということが分かっていただけたと思います。
特に、消音ユニットのデメリットの中でも、ピアノのタッチが変わってしまう、消音ユニットを利用すると、電子ピアノ以下の音を聞くことになってしまうという点は、ピアノの上達を考えた時には、かなり致命的なデメリットになると言われています。消音ユニットは、低コストでさらに思い立ったらすぐにピアノの音を消せることから、手軽な防音対策として注目されますが、「なぜ楽器の演奏を行うのか?」という本質を見失ってはいけません。
ピアノの上達のためにと考えて、自宅での演奏を考えている場合、普段通りの状態のピアノを演奏するのが最も効果的なはずです。また、自分が出した音がどのような音色なのかも逐一確認できる状態の方が良いでしょう。したがって、将来的にプロのピアニストになりたいなどと考えているのであれば、コストをかけてでも時間を気にせずにピアノの演奏ができる防音室を用意すべきだと思います。
防音工事の匠は、長年大手防音工事会社の下請け会社として活動していたため、どこよりも安価に本格的な防音室の施工が可能です。防音室が欲しいけれど、予算の問題があるという方がいれば、お気軽に弊社にご相談ください。