床断熱のカビリスクについて。カビの発生を疑うべきポイントとカビを抑える対策について
防音室に関して調べてみると、壁や天井、床の防音のために使用される断熱材が、経年劣化でカビてしまうことがあるという情報を見かけて不安になってしまう方も多いのではないでしょうか?断熱材は、基本的に壁の中や天井の中など、人の目につかない場所に施工されていますので、カビが発生したとしても部屋の景観を壊すことなどはありません。しかし、カビが大量に発生してしまうと、室内がカビ臭くなってしまいますし、空気中にカビの胞子が放出され空気が汚染されることで、小さなお子様や高齢者の健康被害を引き起こしてしまうリスクがあります。
最初に言っておきますが、高性能な防音室を作る際に必須となる断熱材は、何の対策も行わずに施工してしまうと、ほぼ確実にカビの温床になってしまうと考えておきましょう。日本は、高温多湿な気候ですし、断熱材そのものが結露などで発生した水分が長期間残ってしまう素材ですので、非常にカビが生えやすいという特徴があるためです。実際に、他社で防音工事を行ったお客様から「防音室の性能が落ちてきたので手直ししてほしい!」といった問い合わせも多いのですが、このようなケースでは断熱材がカビだらけになっていることが原因の場合がほとんどです。
そこでこの記事では、一般住宅でのカビ事情について、床断熱を参考にカビの繁殖を疑うべき状況やカビを発生させないための対策をご紹介します。
床断熱のカビリスクについて
それでは、床断熱のカビリスクについて解説していきましょう。冒頭でご紹介しているように、高温多湿な気候の日本は、何の対策も行わない場合、カビの発生リスクが非常に高くなると考えておきましょう。皆さんも、湿度が高くなる梅雨時期になると、さまざまな場所にカビが生えてしまうことに悩んだ経験があるのではないでしょうか?
ここでは、床断熱について、どのような原因でカビが発生するのか、いくつかの要因をご紹介しておきます。
湿気
誰もがイメージする通り、カビの起きやすさに最も大きな影響を与えると言っても良いのが「湿度」です。床断熱へのカビの発生については、床下の湿度の高さが大きく関係します。なお、床下の湿度の高さの要因は「築年数」「建物の立地条件」「床下の構造」「通気口の有無や基礎パッキン」などです。それぞれのポイントについて、以下でもう少し詳しくご紹介しておきましょう。
- ・床下の構造
床下が土壌となっている場合、湿気が溜まりやすいです。湿気が溜まりやすいということは、その分、カビが育ちやすい環境が整っていると言えます。 - ・立地条件
カビの生えやすさは、もともとの立地も関係します。例えば、地下水位が高い場所や、敷地が周囲の建物より低い、元々湿地だったなどといった立地の場合、住宅には湿気が溜まりやすくカビのリスクが高くなります。 - ・通気口や基礎パッキン
通気口や基礎パッキンというのは、床下の空気がきちんと流通して、湿気を溜めにくくするためのものです。しかし、雑草が生えて通気口を塞いでしまう、荷物を置いて空気の流れが悪くなるなんて状況になると、湿気が排出されにくくなるので、カビリスクが高くなります。 - ・築年数
住宅の基礎などに採用されるコンクリートは、湿気対策として有効です。しかし、築年数がまだ浅い建物の場合、コンクリートそのものがまだ水分を含んでおり、築1年程度まではコンクリートが湿気を吐き出しカビの要因になってしまいます。
断熱材の種類
意外かもしれませんが、採用している断熱材の種類によってカビの発生リスクが大きく変わります。一般の方は、余り考えたことが無いかもしれませんが断熱材にもさまざまな種類が存在しています。
そして、カビの発生リスクを低くしたい場合、水気を通しにくい押出法ポリスチレンフォームなどが有利です。一般住宅では、グラスウールやロックウールなど、繊維系の断熱材が人気なのですが、このタイプは、繊維と繊維の間に水分が入り込んだ場合、なかなか外に抜け出せないので、断熱材内部に湿気がこもってしまうのです。そのため、壁内結露などがおきて、断熱材が継続的に水分を保持しているような状況になると、カビの大量発生を招いてしまう恐れがあります。
季節
四季がある日本では、季節の影響も大きな要因になります。例えば、高温多湿な環境となる夏場は、床下で結露が発生しやすくなることから、カビリスクが高くなります。これは、通気口から床下に入ってきた外の暖かい空気が、ひんやりした床下の空気に冷やされることで結露が発生し、高湿状態を作るといった仕組みです。
ちなみに、壁内結露は、暖房で暖められた空気が壁の中に入り、冷やされることで結露を起こすといった仕組みになります。防音室などは、この壁内結露により急速に性能低下してしまう恐れがあるので注意しましょう。
カビの発生を疑うポイントとは?
それでは次に、床断熱などにカビが発生しているかどうかを判断するためのポイントについて解説していきましょう。上述しているように、断熱材は、基本的に人の目には触れない位置に施工される建材ですので、日常生活の中でカビの発生を早期発見することが難しいです。しかし、カビを放置してしまうと、最終的に家族の健康被害にまで発展してしまう恐れがあるので、可能な限り早く気付いた方が良いでしょう。
ここでは、カビの発生を疑うべきいくつかのポイントをご紹介しておきます。
押し入れなどでカビ臭さを感じたら危険
押し入れなど、空気がこもりがちな場所で、「カビ臭い」と感じてしまうようなら、床下などがカビの繁殖に適した状態になっていると考えられます。つまり、断熱材などのカビリスクが大きくなっている証拠と考えてください。
押し入れなどでカビ臭さを感じた時には、床下の状況を確認してみると良いでしょう。
構造体(根太や大引きなど)を目視して確認する
床下には、根太や大引きと呼ばれる木材が使用されています。そして、床下を定期的に確認してみて、これらの部材にカビが生えてしまっているようであれば、非常に危険だと判断しましょう。床下は、基本的にカビが繁殖しやすい環境が整っていますが、実はこのような環境はシロアリにとっても非常に好ましい環境と言えるのです。日本の住宅の天敵であるシロアリは、水を含んだ木材が大好物ですので、木材にカビが生えてしまうような高湿状態は、カビだけでなくシロアリの繁殖リスクも高くなります。
ちなみに、シロアリは、家の構造体である木材を食べると言われていますが、断熱材なども普通にかじりますので、最悪な状態まで放置してしまうと、木材、断熱材もろとも被害に遭ってしまい、家の性能が一気に低下してしまう恐れもあります。
床下の湿度や木材の含水率を調べる
床断熱のカビによる劣化を防ぐには、床下がどのような状態になっているのかを確認するのが最も手っ取り早いです。例えば、床下の湿度は、専門業者に依頼しなくても確認することができます。そして、湿度が60%を超えてくると、カビの発生確率が急激に高くなるので注意しましょう。
木材の含水率に関しては、住人さん自らが調べるのはなかなか難しいので、家を建ててもらったハウスメーカーなどに相談してみると良いでしょう。ちなみに、含水率は、20%を超えると非常に危険です、この場合、カビの発生だけでなく、木材そのものをボロボロにしてしまう、「腐朽」を引き起こす菌の発生リスクもあります。
床断熱のカビ対策について
それでは最後に、床下のカビ対策についていくつかの方法をご紹介しておきましょう。
①通気口を塞がない
どのような建物でも、床下に湿気が溜まらないように、通気口が設けられていて、通風することで湿気を吐き出すような仕組みになっています。つまり、適切なメンテナンスをしていれば、相当立地が悪い…などの理由が無ければ、床下でカビが大繁殖してしまう…なんてことは少ないのです。
しかし、住宅の床下部分に設けられている通気口について、前述のような役割があることを理解している方が意外に少ないというのが実情です。そのため、通気口の前に自転車などを置いて、風の通りを悪くしてしまう、雑草が生え放題になっていて通気口が塞がれてしまっている…なんてケースをよく見かけます。この場合、通気口が本来の役割を果たせなくなることから、床下に湿気が溜まってしまい、断熱材にカビが生えてしまうといった被害が生じます。
床断熱をカビから守るためには、こういったことが無いように、通気口の周りには何も置かない、雑草が伸びてきたら適度に除草するなどの対策を行ってください。
②湿気対策を行う
さまざまな理由から、建物の床下は、どうしても湿気が溜まりやすくなってしまう場合があります。したがって、そのような場合には、別途床下の湿気対策を行うことで、カビの発生を抑制する方法があります。
例えば、床下が土壌むき出しになっていて、地面から湿気が上がってきてしまう…という場合、地面に防湿シートを設置することで、湿度を抑えるという対策があります。他にも、床下換気扇を設置することで、床下の湿気を無理矢理排出する方法などが考えられます。
なお、コンクリート基礎の場合、上述したように、築1年程度まではコンクリートが湿気を排出しますので、床下が高湿状態になってしまいます。ただ、コンクリートの湿気は、経年で改善されていきますので、基本的には特別な対策をする必要は在りません。どうしても気になる…という方は、定期的に乾燥材などを床下に設置すると良いでしょう。
まとめ
今回は、防音室のカビ問題を分かりやすくするため、一般住宅の床断熱のカビ対策を取り上げてみました。この記事でご紹介したように、湿気が溜まりやすい床下は、木材にシロアリが繁殖するリスクがあるだけでなく、断熱材にカビが生えてしまい、家の性能低下やご家族の健康被害など、さまざまな問題をもたらせてしまう恐れがあります。
防音室については、土壌むき出しになっているわけではないし、「カビの心配などないのでは?」と考えてしまう方も多いのですが、全くそのようなことはなく、壁内結露が発生しやすい環境になることから、吸音材として施工されているグラスウールがカビだらけになってしまう…なんて被害が多発しているのです。防音室は、高気密・高断熱の環境を作りますので、冬場にエアコンなどをつけて長時間防音室を使っていると、室内の気温と壁内の気温の違いから結露が発生してしまう訳ですね。そして、グラスウールなどは、繊維と繊維の間に水分が入ると、長時間残ってしまうことになることから、カビが非常に発生しやすい環境になってしまうのです。そのため、壁内のカビ対策が何も行われていない防音室は、施工から数年経過すると、吸音材がカビだらけでダメになってしまい、本来の性能を発揮できなくなってしまうケースが非常に多いです。
なお、防音工事の匠では、こういった防音室の早期劣化を防ぐため、独自の『壁内換気システム』を開発し、高性能・長寿命を実現した防音室をご提供しています。防音工事会社は数あれど、こういった対策を行っている業者はまだまだ少ないのが実情ですので、防音室をご検討中の方は、ぜひ弊社までお問い合わせください。