楽器可の賃貸物件は注意が必要!「楽器可」は騒音を出しても良いという意味じゃない!

今回は、賃貸物件探しの際、言葉の意味を間違って認識している方が多い『楽器(相談)可物件』について解説していきたいと思います。

『楽器(相談)可物件』とは、建物そのものは一般的な物件と変わりがないものの、楽器の演奏が許されるケースがある物件のことを指しています。しかし、楽器相談可物件について、「楽器の演奏が認められるということは、防音性能が高い物件なのだ!」と考えてしまっている方が意外に多いようです。

そもそも、賃貸業界にて、楽器の演奏が許可される物件にはいくつかの種類が存在しています。しかし、物件ごとの違いを深く理解せず「楽器演奏が許される=防音対策が施されている!」と考えてしまって、騒音トラブルを引き起こしてしまう方が多いです。特に、コロナ禍以降は、戸建て賃貸を選択する方が増えており、こういった物件で「楽器相談可」となっていれば、「音を出しても構わない物件なのだ!」と勝手に考えてしまう方がいるのです。

そこでこの記事では、皆さんが押さえておきたい、いわゆる防音物件ごとの違いについて解説していきます。

楽器演奏が許可されている物件の種類について

冒頭でご紹介したように、楽器相談可物件とは、「楽器の演奏が許可される可能性がある」物件のことです。ただし、物件そのものの性能については、一般的な賃貸物件と何ら変わらず、防音性能が高いわけではありません。

例えば、音楽関係の学校に通っていたり、音楽に携わる仕事についていたりする方の場合、自宅でも楽器の練習ができる環境を求めますので、賃貸物件探しの条件として「楽器の演奏が可能」を入れていると思います。ちなみに、賃貸業界に存在する楽器演奏が許可されている物件は、以下のような種類が存在します。

  • ・楽器可物件
  • ・楽器相談可物件
  • ・防音物件
  • ・遮音物件

これらの物件については、どれも同じような意味合いの物件と考えている方が多いのですが、実はそれぞれに全く異なる特徴を持っています。以下で、それぞれの物件の特徴を簡単にご紹介しておきます。

①楽器可物件について

まずは『楽器可物件』です。これも勘違いされやすいのですが、楽器可物件は、「一般的な賃貸物件の性能しかないものの、楽器の演奏が認められている物件」を指しています。基本的には、物件オーナー様が空室対策のために取り入れているといった感じです。

楽器可物件は、趣味で楽器の演奏をしているといった方にオススメと言われるのですが、物件そのものは特別な防音性能などを持っていないので、「演奏可能な時間が決められている」「演奏可能な楽器の種類が決められている」など、何らかの制限が設けられていると考えておいた方が良いです。例えば、特に大きな音が生じるドラムや金管楽器などの演奏は不可となっている場合がほとんどで、許可されるのはギターなどが一般的です。

更に、楽器可物件は、あくまでも楽器の演奏が認められているだけで、騒音を出しても良いというわけではありません。そのため、楽器を演奏していて、ご近所さんからクレームが入ったなんて場合、後から楽器の演奏が不可になってしまうこともあると考えておきましょう。

②楽器相談可物件について

楽器相談可物件は、冒頭でご紹介したように、特別な防音設備などを整えているわけではないものの、物件側が認める条件下であれば「楽器の演奏が認められる」という物件です。基本的には、①で紹介した楽器可物件と同じような物件をイメージしていただけば良いのですが、こちらは入居者側が「楽器の演奏をしたい」という相談をするのが前提となり、基本的には楽器の演奏を想定していません。

そのため、楽器相談可物件は、基本的に物件そのものは一般的な建物で、高い遮音性能を有しているわけではありません。したがって、音量を小さくしていてもご近所さんに音漏れしてしまい、苦情が出る可能性もあると考えておきましょう。

基本的には、電子ピアノや電子ドラムなどの電子楽器で、イヤホンなどにつなぎながら演奏できる楽器であれば、このタイプの物件でも問題ないと思います。なお、どのような楽器を演奏する場合でも、大家さんもしくは管理会社に、楽器の演奏をしたいという意思表示をしなければならないと考えてください。

③防音物件について

防音物件は、その名称から分かるように、きちんと防音設備が整えられた物件のことを指しています。防音性能の高さについては、物件ごとに多少の誤差はあるものの、基本的には24時間いつでも演奏が可能な防音室が用意されていると考えても構いません。

特に、音楽大学の近くに建てられている防音物件に関しては、音の反響バランスまで考えられた、高性能な防音室が用意されており、楽器の演奏を生業にしている方にとっては最適な条件となります。ただし、一般的な賃貸需要からは外れてしまう性能を所持していることから、普通の賃貸物件よりも家賃が割高に設定されています。

※近年では、各居室に防音室が用意されるのではなく、住人が共用できる防音室が物件内に用意されているタイプの防音物件が登場しています。このタイプは、防音室を予約して使用することになるので、24時間いつでも使用できるとは限りません。

④遮音物件について

遮音物件は、防音物件よりは音に関する性能が劣るものの、一般的な賃貸物件よりは防音性に優れている物件のことを指しています。コロナ問題以降、テレワークなどで在宅時間が長くなったことから、楽器の演奏の有無にかかわらず、賃貸物件に高い防音性を求める方が増えています。そのため、24時間の楽器演奏に耐えられるほどの防音性はないものの、ある程度の音であれば、防いでくれるという物件が増えているのです。

遮音物件を借りて楽器の演奏を考えている場合、「演奏しても良い楽器が指定される可能性がある」ことや「演奏可能な時間帯が決められている」など、物件ごとに何らかの制限が存在すると考えておきましょう。基本的には、ドラムなど、特に大きな音を生じさせるような楽器の演奏は不可とされているケースが多いです。

楽器の演奏を目的としている場合でも、ある程度近隣に配慮しながら演奏できる楽器や、演奏時間の指定が合っても特に困らないという方にはオススメです。

賃貸で音のトラブルを抱えないための注意点

それでは次に、『楽器相談可物件』など、楽器の演奏が認められている物件において、音のトラブルを抱えないようにするための注意点をご紹介していきましょう。コロナ禍以降、賃貸でも戸建て賃貸の人気が急激に高くなっていると言われています。そして、戸建て賃貸については、集合住宅と比較すると周囲に音が伝わりにくいという特徴がある事から、ほとんどすべての物件で『楽器相談可』となっています。

ただ、上述しているように、このタイプの物件は、建物そのものが特別な性能をもっているわけではないので、音のトラブルを抱えないようにするには、入居者側がいろいろと注意しなければいけないのです。ここでは、賃貸物件において音のトラブルを抱えないための注意点をご紹介します。

①演奏可能な楽器は制限される

賃貸物件の中でも『防音物件』以外であれば、演奏可能な楽器が制限されていると考えておいた方が良いです。つまり、賃貸契約を結ぶ前に、自分が演奏しようと考えている楽器が許可されているのかを確認しておかなければいけません。

上述しているように、『楽器相談可』『楽器可』『遮音物件』の3つは、それほど高い防音性能をもっているわけではないので、楽器の演奏が認められるにしてもさまざまな制限がついてしまうのです。例えば、ギターでもエレキはNGでグラシックギターはOKとか、ピアノはOKだけど、サックスやドラムなど、大きな音が響く楽器はNGなどのルールは必ず設けられていると考えておきましょう。

他にも、演奏可能時間が決められていたりするので、事前にこの辺りをきちんと確認しておきましょう。

②物件の防音性能を過信してはいけない

二つ目の注意点は、物件が持つ防音性能をあまり過信してはいけないというポイントです。そもそも、楽器可や楽器相談可の物件であれば、物件そのものには何の対策も施されていないので、楽器を演奏すると普通に音漏れしてしまうと考えておきましょう。上でも少し触れていますが、楽器相談可や楽器可は、あくまでも「楽器の演奏が認められている」だけで騒音を出しても良いという意味ではないのです。そのため、こういった物件で苦情が来たときには、ピアノなら電子ピアノにといった感じで、音を調節出来るような楽器に変更する必要があります。

なお、防音物件についても、あなたが演奏を予定している楽器を想定して防音室を作ったわけではないので、実際に使用してみるといろいろな問題が発生してしまうケースも多いようです。我々のような防音工事業者は、お客様の要望に合わせて最適な防音室を作るのですが、賃貸の場合は、どのような要望を持つ人が住むのか分からないため、最適な防音室にはなり得ないと考えておきましょう。

③ルールは必ず守る

楽器演奏を想定した物件であれば、物件ごとに定められたルールが必ず存在するはずです。例えば、演奏可能な楽器の種類や、演奏可能な時間帯等に関するルールです。

特に、楽器相談可、楽器可、遮音物件などは、防音物件のような高い性能をもっているわけではないので、常識の範囲内で演奏できる時間帯が決められているはずです。したがって、物件の賃貸契約を交わす前に、どのようなルールが設けられているのかをきちんと確認しておきましょう。そして、当然そのルールを守らなければいけません。

④戸建て賃貸ならではの対策

最後は、戸建て賃貸ならではの対策についてご紹介していきましょう。コロナ禍で在宅時間が長くなってきた現在では、賃貸でも戸建てを求める方が増えています。これは、マンションなどの集合住宅と比較すると、他人と接する機会が少なくなり、感染予防になるからというのも大きな理由の一つなのですが、その他にも、部屋数があるので同居人のプライバシーが守れる、音の問題を抱えにくいなどという点がメリットとみなされています。

そして、戸建て賃貸であれば、音の問題を解消するため、集合住宅では採用するのが難しい対策も可能になるのです。そもそも、戸建て住宅であれば、建物が独立していますので、集合住宅と比較すれば、楽器の音漏れで周辺住人に迷惑を掛ける可能性は低くなります。
更に、戸建て賃貸ならではのメリットとしては、集合住宅とは異なり、住人が希望するリフォーム工事などを認めてくれる大家さんが多い点です。集合住宅の場合、他の居室との家賃の関係上、住人さんがお金を出すといっても大掛かりなリフォーム工事は認めてもらうことができません。しかし、戸建て賃貸の場合、他の居室と比較されることがありませんし住人さんが費用を出すのであれば、防音工事などの付加価値が付くリフォームであれば許可してもらえる可能性が高いのです。

つまり、戸建て賃貸で楽器の演奏を考えているのであれば、大家さんの許可を取って防音工事をしてみるのも良いのではないでしょうか。

楽器演奏可能な物件が多いエリアについて

それでは最後に、楽器演奏が認められる賃貸物件がどのようなエリアに多いのかをご紹介していきましょう。楽器演奏可能な物件については、どこにでもありそうと考えているのであれば大間違いです。というのも、賃貸物件の大家さんや管理会社は、住民間のトラブルは可能な限り少ない方が良いと考えていますので、防音設備が整っていない物件であれば「楽器の演奏は困る」と考えています。要は、楽器可や楽器相談可物件というのは、騒音トラブルの発生確率が高くなってしまうので、基本的に少ないのです。

そして、遮音物件や防音物件に関しては、さらに数が少なくなります。ここでは、賃貸物件でも、ある程度大きな音が出せる物件を効率よく見つけるためのポイントをご紹介しておきます。

音楽大学や専門学校の付近で探す

楽器の演奏が認められている賃貸物件は、音楽大学や専門学校付近に多い傾向にあります。

上述しているように、防音対策がきちんと施されている物件というのは、一般の物件よりも割高な家賃設定になっています。これは、高い防音性を実現するためには、吸音材や遮音材など、一般的な賃貸物件よりも多くの建材を使用することになりますし、高い施工スキルが必要になることから、どうしても建築コストが高くなってしまうのです。

当然、高いコストをかけて建てた物件ですから、常に満室経営を目指したいのが大家さんの気持ちですよね。しかし、「自宅でも楽器の演奏がしたい!」と考えるのは一般的ではなく、音楽関連の仕事をしている方や、将来的に音楽関連の仕事につきたいと考えている方となります。つまり、需要と供給の関係が合致するのが、音楽大学や音楽関連の専門学校周辺なのです。周囲に、音楽関連の施設が全くないような場所に防音物件などを建ててしまうと、他の物件よりも割高な家賃になってしまうことから、入居者募集に苦労してしまう訳ですね。

したがって、「24時間演奏が可能な賃貸を探している!」という場合には、音楽大学付近で探してみると良いでしょう。なお、戸建て賃貸などを借りて、後から防音工事の許可を取りたいという場合であれば、立地にこだわる必要はないと思いますよ。ただ、物件を借りる前に「楽器の演奏をしたいので、防音に関するリフォームを認めてくれるか?」を確認しておきましょう。

周囲に騒音が存在する場所

一般の方にとっては不都合に感じる条件ですが、自宅で楽器の演奏を考えている、気兼ねなく音を出したいと考えている方は、周囲にある程度騒音が存在する立地条件で物件探しをするのがオススメです。

例えば、繁華街の中にある物件や、近くにライブハウスや音楽スタジオがある、飛行場や幹線道路沿いといった立地条件です。

なぜ、一般の方が敬遠するこういった条件がオススメかというと、周辺にそれなりの騒音が存在する立地条件の場合、その中でも問題なく過ごせるように物件の防音性能が一般の物件よりも高い場合が多いのです。例えば、窓が最初から二重窓になっていたり、夜間の騒音を防ぐために窓シャッターが取り付けられているなど、一般的な物件の家賃と同じなのに、遮音物件並みの防音性能がある物件も存在します。

更にオススメポイントとしては、周囲に騒音が存在することから、あなたが演奏する楽器の音が多少漏れたとしても、周辺の騒音に混ざって目立たなくなるという効果も得られるのです。防音工事は、対策を施す物件のみのことを考えるのではなく、周辺の音環境も含めて「どの程度の性能が必要なのか?」を検討します。よって、元々それなりの騒音が存在する場所であれば、多少の音漏れがあってもクレームにつながらないという利点があるのです。

ただ、こういった立地条件は、楽器の演奏をしていない日常生活のことを考えると、少し不便に感じてしまうかもしれません。

まとめ

今回は、賃貸物件に住んでいても楽器の演奏がしたいと考えている方に向け、意外と勘違いしている方が多い「物件の防音性」をご紹介してきました。

この記事でご紹介したように、賃貸物件探しをしている際、物件情報に記載されている「楽器可」や「楽器相談可」という文言は、あくまでも楽器の演奏が認められているという意味であり、「防音対策をしていますよ」という意味ではありません。そのため、こういった物件で夜間に楽器の演奏をしていると、お隣や階下に住んでいる人から「うるさい!」と苦情を言われてしまう可能性が高いです。何度も言いますが、楽器可や楽器相談可物件は、あくまでも楽器の演奏が認められているだけで「騒音を出す」ことが認められているわけではないのです。

賃貸物件の中で、楽器の演奏を行っても苦情の心配がないのは、基本的に『防音物件』だけだと考えておきましょう。その他の物件は、楽器の演奏が認められていたとしても、本来は楽器の演奏に耐えられるような防音性能は持っていません。
なお、コロナ問題以降、戸建て賃貸の人気が年々高くなっていると言われていますが、戸建て賃貸の場合、大家さんが認めてくれれば本格的な防音工事も可能です。戸建ての場合、他の居室との家賃の兼ね合いを気にする必要はありませんし、住人さんが工事費をもつのであれば、他人のお金で物件の価値を高めてもらうことができるわけです。もちろん、許可をとらずに防音工事などを行うのはNGですが、あなたがお金を負担するのであれば、ほぼ間違いなく認めてもらえると思いますので、一度相談してみると良いのではないでしょうか。

スタッフ A

大阪で20年間にわたって防音工事に携わってきました。
防音工事に関しての事、音に関する豆知識などを配信しております。

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