マンションでピアノを弾くとうるさい?実際の世間の声と集合住宅にピアノを設置する際の防音対策

今回は、マンションなどの集合住宅にて、ピアノの演奏をしても良いのかについて考えていきたいと思います。マンションやアパートなどの集合住宅は、隣家の生活空間と非常に距離が近いことや構造物でつながっているといった理由から、ピアノなどの楽器音ではなく、一般的な生活音ですら騒音トラブルを抱えてしまうことがあります。実際に、集合住宅では、上の階に住む人の足音に悩まされたことがある、隣の住人が夜遅くまで大音量でテレビを見ている…と言った音の問題を抱えた経験があるという方も多いのではないでしょうか?

それでは、生活音とは比較にならないほど大きな音が生じるピアノなど楽器の演奏は、マンションなどの集合住宅では非常識と考えるべきなのでしょうか?インターネットで検索してみると、「マンションでピアノの音がうるさい」と言った声を見かける機会は多いですし、子供にピアノを習わせたいと考えている方の中には「戸建てに引っ越さないとピアノは演奏させられないのかな?」といった疑問を感じているかもしれません。

そこでこの記事では、マンションなどの集合住宅において、ピアノの演奏はどのように考えられているのか、実際の世間の声を拾ってご紹介したいと思います。また、記事内では、集合住宅でピアノの演奏を考えている方に向け、必要と考えられる防音対策についても解説しますので、是非参考にしてみてください。

ピアノの演奏音は、空気音だけじゃない!

マンションでピアノを弾きたいと考えている方が抑えておきたいのは、ピアノによる騒音トラブルは、美しい音色である空気音が問題になるだけでなく、振動音が騒音苦情の原因になるケースがあるという点です。一般の方は、あまり意識することはないと思いますが、音にも、空気伝搬音と固体伝搬音という2種類の音があります。(二つが混ざった混合音もあります。)それぞれの音の特徴は以下のような感じです。

  • 空気伝搬音
    空気が振動して伝わる音が空気伝搬音です。分かりやすく言うと、人の話し声やTVの音声、楽器音でもフルートの音色などが空気伝搬音です。空気伝搬音は、距離が離れるほど小さくなっていき、さらに壁や窓などの遮蔽物によっても低減します。空気伝搬音の防音は、空気の通り道となる隙間を塞いだり、吸音材などを使うことで小さくすることができ、下で紹介する固体伝搬音よりも対策は容易です。なお、鉄筋コンクリート造など、密度の高い建物であれば、壁の厚さが150mm以上あれば、通常の人の話し声程度なら、特に対策をしなくても止めることが可能です。
  • 個体伝搬音
    壁や床など、固体に力や衝撃が加わった時、振動として伝わる音が固体伝搬音です。例えば、足音や床に物体が落ちた時の衝撃音、壁を叩いたときに、構造物を伝わる音です。固体伝搬音は、物体の振動で伝わる音なので、伝達経路が非常に複雑で、低減されにくいという特徴があります。この特性から、空気伝搬音と比較すると、防音が難しいと言われています。

一般的に、ピアノの演奏音は、上記のうち、空気伝搬音であると考えられがちです。しかし、ピアノは、本体を振動させることで音を出す楽器である、演奏時には鍵盤を強くたたく、ペダルを何度も踏むといったことから、固体伝搬音もかなり生じる楽器なのです。
実際に、集合住宅における、ピアノの演奏音に関する騒音苦情は、隣に住む住人から「ピアノの音色がうるさい!」と言われるのではなく、階下の方から振動音がうるさいと言われるケースの方が多いとされています。マンションでピアノを弾きたいと考えている方は、ピアノの音の特徴をしっかりとつかんでおかなければ、隣人との騒音トラブルを抱えてしまう可能性が高いです。

マンションでピアノを弾くとうるさい?否定派の意見

それではここから、インターネット上で拾うことができる、集合住宅でのピアノ演奏に関する実際の意見をご紹介していきます。現在では、さまざまな件に関して、一般の方が口コミを寄せることができるサイトが登場しています。集合住宅での生活に関しても、「マンションコミュニティ」など、一般の方が口コミを入れるサイトが運営されていて、いろいろな意見が寄せられています。

ここではまず、マンションでピアノを弾くことについて、否定的な意見をまとめてみたいと思います。

集合住宅でのピアノ演奏は「非常識だ!」という意見は多い

冒頭でご紹介したように、マンションなどの集合住宅は、各家庭の生活空間が1枚の壁、床だけで隔てられているだけで、非常に近い場所で異なるライフスタイルを持つ人が生活しています。また、戸建てとは異なり、各生活空間が構造物でつながっていることから、音が伝わりやすいという特徴があるのです。そのため、生活音とは比較にならない大きな音が生じる楽器の演奏については、非常識だと考えている方も多いです。

実際に、インターネットで少し調べてみただけでも、以下のような意見を見つけることができます。

  • ・集合住宅で楽器の音は単なる騒音!どうしてもピアノを弾きたいなら戸建てに引っ越すべき!
  • ・マンションでピアノを弾くなら音を消せる電子ピアノにすべき!
  • ・マンションでピアノを弾くなら防音室を用意すべきでしょ。それができないなら弾くべきじゃない
  • ・「楽器可」だけど、他の部屋に迷惑をかけていいわけじゃないでしょ。騒音に感じる人がいるのだから集合住宅でピアノはNG!

上記のように、マンションなどの集合住宅でのピアノ演奏は、否定的な意見を持っている方が多いです。ちなみに、マンションでピアノを弾きたいと考えている方が特に注意したいのは、『「楽器可」だけど、他の部屋に迷惑をかけていいわけじゃないでしょ。騒音に感じる人がいるのだから集合住宅でピアノはNG!』という意見です。集合住宅における楽器演奏を考えた時には、この意見は正に的を射た意見と言え、これを基準に物事を考えなければならないと言えるのです。

集合住宅は、賃貸、分譲に関わらず、「楽器演奏可」や「特定の楽器の演奏が可」と言った条件が設けられているのを見かけるケースが多いです。このような条件を見た時には、「物件側が認めているのだからピアノは演奏してよい!」と考えてしまう方が多いです。しかし、このような条件が付いていても、「騒音を出しても良い!」という許可ではないため、他の入居者が楽器の演奏音を苦痛に感じ、管理会社などに苦情を入れた場合、後から楽器の演奏が禁止される可能性もあるのです。

集合住宅は、さまざまなライフスタイル、考えを持つ人が、同じ建物内で生活することになるため、騒音問題に関しては、被害者側が守られる立場になるのが基本です。先ほど紹介したように、「楽器可」は「騒音を出しても良い」という意味ではないため、騒音に感じる方がいれば、演奏者側が何らかの対策を求められてしまうのです。

マンションでのピアノは肯定派もいる

ここまでの情報だけを見ると「マンションに住むと、やっぱりピアノは弾けないな…」と感じた方が多いと思います。ただ、集合住宅でのピアノの演奏に関しては、意外にも肯定的な意見も少なくないのです。例えば、以下のような意見をネット上で見かけることは多いです。

  • ・「楽器可」のマンションならピアノの音の苦情を言う方が違うでしょ。楽器の演奏を考えて決めた人もいるだろうし、弾く権利もある
  • ・今時、マンションでもピアノぐらい弾くでしょ。自分は気にならないし、気にする人が神経質すぎるのでは?
  • ・そもそも、騒音なんてどこにでもある。ルールを守って演奏するなら楽器に目くじらを立てなくても良いのでは?
  • ・夜中の演奏はさすがにNGだけど、昼間や夕方なら気にならない

このように、マンションなどの集合住宅でのピアノ演奏について、肯定的な意見を持っている方も少なくないようです。ただ、これらの意見については、「ルールを守っているのであれば」「周囲が静かな夜間でなければ」など、いくつかの条件が付いている点は注意する必要があるでしょう。ピアノなどの楽器可の物件でも、一般的に非常識と考えられる「夜遅くまでピアノを弾く」と言った行為については、肯定的な意見を持っている方でも流石にNGだと考えているようです。

なお、楽器可のマンションについては、演奏可能な楽器が指定されている、時間帯を限定される、防音室を用意するなど、ピアノを弾くための条件が用意されている場合があります。当然、これらのルールを守らずに、自分勝手に演奏をした場合には、肯定的な意見を持つ方でも、騒音苦情をあげることでしょう。

マンションでピアノを弾くための防音対策について

それではここからは、マンションなどの集合住宅でピアノを弾くため、どのようは防音対策が必要になるのかについて解説します。

上述したように、マンションでのピアノの演奏については、賛否両論で、全ての方が弾くべきでないと考えているわけではありません。しかし、ピアノなどの楽器演奏について、肯定的な意見を持っている方でさえ「ルールを守っているなら」「昼間や夕方だけなら」と言った条件を付けていますし、何の防音対策もしないまま集合住宅でピアノの演奏をするというのは、やはり否定側の意見が強いと言わざるを得ないと思います。

そのような中、近隣の方に迷惑をかけないよう、ピアノの練習をするには、どのような対策を施せば良いのでしょうか?ここでは、マンションでのピアノ演奏を検討している方に向け、有効な防音対策をいくつかご紹介します。

電子ピアノや消音器で、演奏音を消す

一つ目の対策は、電子ピアノや消音器を用いて、近隣の方が騒音と感じるような「音を出さない」ようにするという対策です。

ピアノと聞くと、グランドピアノやアップライトピアノなど、いわゆるアコースティックピアノをイメージする方が多いですが、これ以外にも音を外に出さずに演奏が可能な電子ピアノがあります。電子ピアノは、本体でボリュームを調整できるほか、イヤホンやヘッドホンを繋げることで、演奏音を外部に全く出さずに演奏することが可能です。したがって、集合住宅でピアノの練習をする際は、こういった音が生じない楽器を利用することで、騒音トラブルを防止するという方法もあります。ただ、電子ピアノは、アコースティックピアノよりも鍵盤が軽いため、弾き心地がかなり違ってしまう…という問題があります。そのため、ピアノのレッスンなどでアコースティックピアノに触ることができないという方の場合、自宅には電子ピアノではなく、アコースティックピアノを設置したいと考える人が多いです。この場合は、ピアノ本体に『消音器』と呼ばれる器具を設置することで、外に音を出さないようにするという対策が有効です。

注意が必要なのは、電子ピアノにしても消音器による防音対策にしても、出なくなるのは空気音である「ピアノの音色のみ」だという点です。演奏音が外に出なくなれば、騒音トラブルの可能性はかなり低くなるものの、ピアノはペダル音や打鍵音など、固体伝搬音も生じるため、この部分の対策は別途必要です。上述したように、ピアノの演奏による騒音苦情は、階下の住人から…というケースが多いため、振動音対策は絶対に必要です。例えば、ピアノを設置する際、下に防音性の高いマットなどを設置するといった対策が一般的です。

簡易的な防音対策を施す

二つ目の方法は、ネット通販やホームセンターで防音対策用のアイテムを購入し、自分で対策を施すというものです。人々の生活空間が近くなった現在では、生活音レベルの音で騒音トラブルが発生するケースが増えています。そのため、一昔前と比較すると、防音需要が飛躍的な高くなっており、簡易的な防音用のアイテムがたくさん作られるようになっているのです。中には、プロの防音工事業者でも利用するような非常に高い効果を持つものもありますので、そういったアイテムを使用して自分で対策を施すというのも一つの手です。例えば以下のような対策があります。

  • ・床に防振マットを敷く
  • ・壁に防音パネルを貼り付ける
  • ・窓に防音カーテンを設置する
  • ・隙間テープで窓やドアの隙間を塞ぐ

簡易的な防音対策では、上記のような方法が効果的です。ただ、あくまでも簡易的な防音対策であり、楽器の演奏音をしっかりと防音できるほどの効果はないと考えてください。上記のような対策で騒音苦情を防げるのは、環境騒音がそれなりにある昼間などにピアノを演奏する場合や、ピアノを設置している部屋と隣家が接していないといった条件に限ります。

ピアノの演奏音など、空気音は、距離が離れるほど減退していくという特徴を持っていますので、マンションでピアノの演奏をしたいと考えている方は、可能な限り音で影響を与える場所と離れた位置にピアノを置けるような間取りの物件を選びましょう。特におすすめなのは、角部屋を選ぶという方法で、角部屋であれば、空気音の対策は一方向のみで済みます。また、1階部分の部屋を選べば、振動音で階下の住人から苦情が出る心配もなくなります。

夜間もピアノの練習をしたいなら防音室を用意する

最後は、防音工事の匠のような専門業者に依頼して、ピアノ用の防音室を用意するという方法です。なお、物件によっては、ピアノなどの楽器の演奏について「防音室を用意すること」が条件になっている場合もあります。この場合は、防音室を用意しなければ、ピアノの演奏が禁止されてしまうでしょう。

ピアノに限らず、楽器が生じさせる音の大きさは、生活音とは比較にならないレベルとなります。何の対策もしていない住宅で楽器の演奏を行えば、戸建住宅であっても近隣との騒音トラブルに発展することも珍しくないのですから、生活空間が非常に近い集合住宅の場合、高確率で苦情が出ると考えられるでしょう。特に、昼間や夕方だけでなく、夜間もピアノの練習をしたいと考えている場合、上で紹介したような簡易的な対策ではなく、本格的な防音室が必須です。ピアノは、演奏音だけでなく、振動音が生じてしまいますので、階下への音漏れを防止するための固体音対策が非常に重要です。そして、固体音の防音は、プロの業者でも難しく、高い技術力を持った業者でなければ、騒音苦情の心配が残ってしまうのです。

なお、マンションなどの集合住宅の場合、ピアノの演奏のために防音工事をしたくても、管理規約で大掛かりなリフォーム工事が禁止されている場合もあるので注意しましょう。この場合、ユニット型防音室の設置であれば可能かもしれませんが、専門業者に依頼して、部屋を防音室に作り替えるような工事が認めてもらえない可能性があるのです。

まとめ

今回は、マンションなどの集合住宅に住む場合、ピアノなどの楽器の演奏は可能なのか、また同じ建物内に住む他の住人はどう考えるものなのかについて解説しました。

一般的にですが、マンションなどの集合住宅は、各家庭の生活空間が非常に近い位置にあるため、防音室など高度な防音対策を施さない限り「ピアノを弾くのは非常識だ!」と考えている方が多いように思えます。ただ、「楽器演奏可」のマンションに限っては、周辺に騒音がそれなりに存在する「昼間ならピアノを演奏しても問題ないのかな?」と考える人も多くいるようです。したがって、お子様がまだピアノを習い始めたばかりで、今後続けるか分からないし多額の費用をかけて防音室まで作るのは気が弾ける…という場合なら、自分でできる簡易的な対策を施したうえ、昼間に限り演奏させても構わないと思います。もちろん、音の問題は、受け取り側との関係性も重要になるので、あらかじめ挨拶にお伺いし「可能な限り対策を施してピアノを弾かせます。どうしてもうるさいなら追加の対策をするので言って下さい」などと声をかけておきましょう。集合住宅での音の問題は、お互い様の面もありますので、きちんと挨拶などに伺っておけば、意外に我慢してもらえるはずです。

なお、本格的にピアノを習っている方で、夜間も演奏を考えているという場合は、本格的な防音室を作らなければならないと考えましょう。

スタッフ A

大阪で20年間にわたって防音工事に携わってきました。
防音工事に関しての事、音に関する豆知識などを配信しております。

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