防音カーテンの効果とは?人の話し声ならカーテンで遮音できるの?

今回は、DIYによる防音対策のなかでも、最も手軽で誰でも簡単に音の問題を解消できる方法として注目されている防音カーテンについて、その効果などを解説します。

近年では、テレワークなど、在宅で仕事をするスタイルが当たり前になってきています。実際に、この記事を読んでいただいている方の中にも、会社に足を運ぶのは月に数回程度で、基本的には自宅で仕事をするスタイルが定着しているという方も多いのではないでしょうか?ただ、コロナ禍以降、一気に浸透し始めたテレワークという新たな働き方ですが、もともと日本の住宅が「家で仕事をする」ということが想定されていなかったこともあり、自宅では音の問題で仕事に集中できない…と言った悩みを抱える人が増えているのです。どのような場所でも、昼間は多くの人が活動する時間ですので、自宅周辺にはさまざまな環境騒音が存在します。そして、そういった外部からの騒音が家の中まで侵入し、集中力を乱されてしまう…と言った問題が生じているのです。

そして、こういった外部騒音の侵入対策として効果的と言われているのが防音カーテンです。防音カーテンは、その名称通り、通常のものよりも遮音性を高める工夫が施されたカーテンで、これを窓に設置することで、人の話し声程度の外部騒音ならシャットアウトすることができるとされています。しかし、一見すると普通のカーテンと何ら変わりないように思えますし、「防音カーテンは本当に効果があるのか?」と言った疑問を感じる方も多いようです。防音カーテンは、通常のカーテンよりも割高な価格設定になっていますので、設置した後に「全然防音できてないじゃん!」と言った失敗は誰でもしたくないはずです。
そこでこの記事では、防音カーテンの効果や使い方、どのような音の問題を防げるのかについて解説します。

防音カーテンの効果とは?

それではまず、防音カーテンが主にどのような場所で活躍するアイテムなのか、また防音カーテンを設置することで本当に効果が得られるのかと言った問題について解説します。冒頭でご紹介したように、防音カーテンは、一見すると、通常のカーテンと何ら変わらない見た目をしているため、「カーテンを交換するだけで本当に音を防げるの?」と言った疑問を感じる方がいます。

ここではまず、防音カーテンによる防音対策が有効と考えられる主な箇所と、得られる効果について解説します。

防音カーテンが採用される場所

防音カーテンが設置されるのは、主に『窓』と『ドア』です。もちろん、窓とドア以外にも、防音カーテンを利用して、簡易の防音室のような物を作るケースもありますが、基本的には、窓やドアから侵入する音を防ぐという目的で使用される場合が多いです。

それでは、防音カーテンが窓とドアに設置されるのは、どのような理由があるからなのでしょうか?これについては、窓とドアは住宅のさまざまな箇所の中でも、防音上の弱点になってしまいがちだからです。実は、窓やドアは、以下のような理由から、音漏れや音の侵入原因となってしまい、快適な住空間を壊す要因となる可能性があるのです。

■窓は、音や熱の侵入口となりやすい!
住宅の窓は、採光や換気を目的として設置されるものなのですが、壁と比較した場合、非常に薄い素材で構成されていることから、音や熱を遮る能力がどうしても弱くなってしまいます。

一般的な一枚物の窓ガラスは、0.2~0.8cm程度の厚みしかありません。これが、壁になると約15cmほどの厚みを持っており、さらに家の断熱性が重視されるようになった現在では、壁の中に吸音効果を持つ断熱材がしっかりと敷き詰められるようになっているのです。一般的に、建材の防音性能は、その厚みや密度、重さなどに比例して高くなっていくものですので、厚みが少ない窓は、どうしても防音性や断熱性が低くなってしまうのです。

なお最近では、窓の防音性を高めるために、防音対策がしっかりと施された窓ガラスも登場しています。このタイプは、二枚の窓ガラスを用いて、ガラスとガラスの間に特殊な膜を挟み込む、もしくは真空状態にするといった対策で、非常に高い防音性を保持しています。ただ、窓ガラスの機能性が高くなる分、一般的なフロートガラスよりも価格がかなり高くなります。

この他にも、窓は換気のために頻繁に開閉が行われる場所になります。そのため、窓を使用する人の利便性を考え、スムーズに窓が開閉できるように、レール部分に隙間が生じるような構造になっています。音は、空気の振動で拡散していく空気音というものがありますので、隙間から空気が侵入するということは、音も同時に侵入できるようになるのです。こういった理由から、窓はどうしても防音性が低くなり、住宅への音の侵入を考えた場合は大きな弱点となります。

■ドアは家族間の騒音問題の原因となる
防音カーテンは、ドアの防音対策としても活用されています。実は、一般的な室内ドアは、閉じていても音漏れし放題な構造になっています。まず、窓ガラスと同じように、ドアも壁よりもかなり薄い作りになっています。一般的な室内ドアは、壁の半分程度の7~7.5cmほどの厚みです。こう聞くと、窓ガラスよりは高い防音性がありそう…と感じるかもしれませんが、実際のところ、非常に薄いベニヤ板を使って構成されていて、板と板の間は完全な空洞になっています。つまり、音を遮るための木材は1cmもないほどの厚みなのです。また、木材は重量や密度が少ないため、そもそも高い遮音性を持っていません。したがって、ドアは音を遮る能力がたいして高くないのです。

さらに室内ドアの音漏れでは、窓以上に大きな隙間が生じていることが要因になります。皆さんも、自分の部屋のドアをよく確認してみてほしいのですが、ドアの下部には1cm程度の隙間が作られているのではないでしょうか?実は、気密性が高くなった現在の住宅では、人の健康被害を引き起こす有害物質が部屋にこもらないようにするため、常に換気がなされるようになっているのです。したがって、ドアを閉めていても、換気がしっかりと行われるよう、わざと隙間が生じる構造になっているのです。上述したように、空気を伝わる空気音は、隙間を通じて出入りしてしまうようになります。そのため、ドアを閉めていても、他の部屋からの話し声やTVの音などが侵入し、家族間の騒音問題に発展してしまうケースがあるのです。

防音カーテンは、上記のように、住宅の防音上の弱点となってしまう、窓とドア部分に設置されることが多いです。それでは、カーテンで、窓やドアの音の問題は解消できるものなのでしょうか?

窓やドアの音の問題は防音カーテンで解消できるの?

防音カーテンの主な使用場所は分かっていただけたと思いますが、それでは、これらの防音上の弱点に防音カーテンを設置することで、音の問題を解消することはできるのでしょうか?今まで、防音カーテンを使用したことがない人であれば、「見た目は普通のカーテンだし、防音効果なんてないのでは?」「布で作られたカーテンが音を防げるとは思わない!」と言った感想を持ってしまうかもしれませんね。

ただ、防音カーテンが、一般的な室内カーテンと比較して、高い防音効果を持っているのは事実なのです。窓やドア部分に、正しい方法で防音カーテンを設置した場合、空気伝搬音の問題であれば、確かな防音効果を見込むことができるはずです。防音カーテンを販売している通販サイトなどでは、「窓などに防音カーテンを設置することで、80%もの減音効果が得られた!」と解説している場合がありますが、さすがにここまでの効果を見込むことは難しいです。もちろん、業者さんが広告のためにウソの表示をしているというわけではありませんが、特定の周波数帯のみで測定しているなど、効果を良く見せるための工夫は行っていると思います。

なお、防音カーテンによって効果が期待できる音の種類は限られていますので、その点は注意しましょう。防音カーテンによる対策は、人の話し声やTVの音声、緊急車両のサイレン音など、いわゆる「空気伝搬音」の侵入は軽減することは可能です。しかし、近くの工事現場の振動音、大型車両の走行音など、振動を伴う「固体伝搬音」に対しては、なんの防音効果も発揮しません。したがって、防音カーテンを購入する際には、現在悩んでいる音の種類が空気伝搬音なのかきちんと確認してから購入を決めましょう。

防音カーテンを購入する前におさえておくべきポイント

それでは、現在抱えている音の問題を、防音カーテンを使用することで解消したいと考えている方に向け、実際に防音カーテンを購入する前におさえておくべきいくつかのポイントをご紹介していきます。現在では、DIYによる防音対策が一般的になってきたことから、ホームセンターやネット通販で、防音対策のためのアイテムを簡単に手に入れられるようになっています。

しかし、防音カーテンにもいくつかの種類が存在しますし、そもそも対策として適切でない場面があるアイテムだということを忘れてはいけません。防音カーテンは、既存のカーテンを防音カーテンと交換するだけで音を防げると紹介されるアイテムですが、以下のようなポイントを押さえておかないと、カーテンの購入にかけたコストが無駄になってしまう可能性があります。

防音カーテンにも種類がある

一つ目のポイントは、防音カーテンにもいくつかの種類があるという点です。皆さんは、「防音カーテン」という名称で販売されている製品は、全て同じ効果を持っていると考えてしまいがちですが、そうではないので注意が必要です。中には、一般的なカーテンよりも布が分厚いだけの製品を、「防音効果のあるカーテン」として販売しているケースもあるのです。

そもそも、音を防ぐ「防音」の仕組みは、音を遮る『遮音効果』と音を吸収する『吸音効果』を組み合わせることで発揮する効果です。防音と言う言葉は、何らかの具体的な対策を表すのではなく、あくまでも概念的なもので、遮音と吸音を合わせた最終的な性能を防音効果と呼んでいるだけなのです。

ホームセンターやネット通販で販売されている本格的な防音カーテンについては、先ほど紹介した遮音と吸音効果を持たせるため、通常のカーテンにはない特殊な加工が施されています。例えば、特殊な織り方が採用され、カーテンに凹凸が生じることで吸音効果を発揮する、カーテンに金属を使用した特殊なコーティングを施すことで遮音効果を持たせるといった感じです。
つまり、防音カーテンを選ぶときには、単に名称だけを確認するのではなく、どのような加工が施されていて、どの程度の効果が期待できる製品なのかをきちんと確認しなければいけないのです。単純に厚みのある布を使って重たいカーテンになっているなんて製品の場合、本格的な防音カーテンよりも安価ですが、目的である「防音効果」は得られないでしょう。つまり、お金を無駄に使う結果になってしまいます。

防音カーテンは防げる音と防げない音がある

防音カーテンの購入を検討している場合、「どのような音でも防げる製品ではない!」というポイントを押さえておかなければいけません。上でもご紹介していますが、防音カーテンによって防げる音の種類は、空気を伝わる空気伝搬音のみです。固体の振動を伝わる固体伝搬音に関しては、防音カーテンを設置したとしても、その前後で効果を実感することはありません。以下に、防音カーテンで対策可能な音の種類と、対策が難しい音をご紹介しますので、あなたが抱えている音がどっちなのかを慎重に検討してみてください。

■防音カーテンで対策が可能な音

  • ・人の話し声
  • ・TVやオーディオの音声
  • ・ペットの鳴き声
  • ・緊急車両のサイレン音

上記のような空気音であれば、窓からの侵入、音漏れを防ぐことが可能です。楽器の音に関しては、中音域から高音域の音であれば、軽減することが可能です。

■防音カーテンで対策が難しい音

  • ・大型車両の走行音
  • ・近所の工事現場の振動音
  • ・上階からの足音

上記のような固体の振動で伝わる固体伝搬音は、防音カーテンで対策することはできません。ただ、空気音と固体音が混ざった混合音の場合、空気音のみは軽減することが可能なので、防音カーテンを設置すれば、多少の効果を感じることができるかもしれません。

正しい防音カーテンの設置方法について

防音カーテンは、通常のカーテンと同じように設置したのでは、その効果がほとんど発揮できなくなる可能性があります。通常のカーテンは、カーテンレール部分が、普通に開放されていますし、横の部分にも大きな隙間が生じる構造になっていますよね。窓やドアの防音性が低い要因は、隙間が生じるからとご紹介しましたが、一般的なカーテンは、普通に隙間が生じる構造になっているのです。カーテンは、視線や直射日光を遮るためのものですので、通常であれば多少の隙間は問題ないのです。

しかし、音を遮る事が目的の防音カーテンの場合、設置時に隙間が生じてしまうと何の意味もありません。カーテン部分はきちんと音を防げていても、隙間から音が抜けて行ってしまい、防音カーテンの効果が発揮できなくなるわけです。したがって、防音カーテンを設置する際には、しっかりと隙間が生じないような大きさのものを購入し、設置時にも以下のような点に注意しましょう。

  • ・窓を完全に覆えうように設置する
  • ・レール部分の隙間を塞ぐため、カーテンボックスを設置する
  • ・サイドの隙間を無くす工夫をする。(テープなどで壁に密着させるなど)

防音カーテンは、通常のカーテンと同じように、隙間が生じるような設置方法では意味がありません。しっかりと隙間が生じないよう設置してください。

まとめ

今回は、窓やドア部分の簡易的な防音対策として人気になっている、防音カーテンについて解説しました。防音カーテンは、一般的なカーテンよりは分厚く見えるものの、布が原材料となっている点などが同じなので、「大した防音効果なんてないのではないか?」と考えている方が多いです。もちろん、防音カーテンにも種類があり、安価なタイプの製品は、皆さんが考えている通り、ほとんど防音効果など持たない気休め程度にしかならないと考えた方が良いです。ただ、本格的な防音カーテンは、人の声や近所の犬の鳴き声程度であれば、十分に防音効果を実感できる効果を持っています。一般的なカーテンと比較すると、信じられないほど高価なカーテンですが、特殊な織り方、表面コーティングがなされているため、想像以上に高い効果を持っているのです。注意が必要なのは、本格的な防音カーテンは、非常に重量があるため、通常のカーテンレールでは支えることができません。したがって、そのような場合は、カーテンレールごと交換が必要になり、設置は専門業者に依頼しなければならないケースもあるのです。

なお、防音カーテンは、あくまでも簡易的な防音対策です。防げる音は、人の話し声やペットの鳴き声程度ですので、自宅で楽器の演奏を考えている、カラオケを楽しみたいなど、大きな音が生じると想定している場合、防音カーテンで対策を使用と考えてはいけません。このような場合は、専門業者に相談し、防音室を作るなど、本格的な防音工事が必要になります。

現在、何らかの音の悩みを抱えていて、「どんな方法で対処すれば良いのか分からない…」とお悩みであれば、お気軽に防音工事の匠にご相談ください。

スタッフ A

大阪で20年間にわたって防音工事に携わってきました。
防音工事に関しての事、音に関する豆知識などを配信しております。

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