防音室とは?防音室を作る前に知っておきたい基礎知識をご紹介!
マンション暮らしの方が増えている、戸建てでも家ごとの距離が近くなっているなどといった理由から、自宅で楽器の演奏を楽しみたい、映画館さながらの迫力で映像を楽しみたいなどという要望を持っている場合、ご近所さんに音で迷惑を掛けないためにも防音室を用意するのが一般的になっています。
ただ、防音室に関しては、必要とする人と全く必要としない人に分かれてしまうことから、どういった時に必要になる部屋なのか、またどのような種類があっていくらぐらいかかるのかといった基本的なことを疑問に感じてしまう方も多いようです。
そこでこの記事では、近年自宅に導入する方が増えていると言われている防音室について、基本的な知識から実際に導入する場合の費用相場などをご紹介します。
防音室はどういった時に必要?
それではまず、どういった方が防音室を必要とするのかについて簡単に解説しておきましょう。
楽器の演奏や歌の練習に使用
自宅に防音室を設置しようと考える方で、最も多い理由が、ピアノやギター、ドラムなどの楽器演奏や声楽の練習を自宅でも行いたいと考えている方です。要は、楽器や声楽の練習で生じる音が外に漏れてしまい、近隣の方に迷惑を掛けないようにするという配慮から防音室を作るのです。
なお、演奏を予定している楽器の種類によって、必要になる防音室の性能なども大きく異なります。例えば、電子ピアノや電子バイオリンなどであれば、音量調整が可能ですので、簡易的な防音でも十分に楽器の演奏が可能です。ただし、グランドピアノやドラムなどを自宅で演奏する場合、振動なども発生しますので、本格的な防音室が必要になります。特に、マンションなどの集合住宅の場合は、振動対策が非常に重要です。
ホームシアターなどのため
ホームシアターや音楽鑑賞が趣味という方の中には、音量や音質にこだわりを持っているため、防音室を求める方が多いです。防音室は、中で生じる音を漏れないようにするだけでなく、外から音が侵入することも防いでくれますので、映画や音楽に集中することができるのです。また、防音工事業者は、室内の音響調整などもしてくれますので、より良い音環境を求めている方が防音室を作るケースが増えています。
特に、コロナ禍の現在では、在宅時間をより充実させたいと考える方が増えており、ホームシアター以外にもゲームをするための部屋、カラオケルームなどの施工が増えています。
テレワークや動画配信用の防音室
コロナ問題発生以降、テレワーク対応や動画配信用防音室の問い合わせが急増しています。この記事を読んでいただいている方の中にも、コロナ問題発生以降、テレワークが導入され、自宅に仕事専用の場所が無くて困ってしまった…なんて方もいるのではないでしょうか?
元々、日本の住宅というのは、自宅で仕事をすることが想定されて作られていないケースが多いので、コロナ問題以降は、階段下のスペースやクローゼットを簡易の防音室に作り替え、テレワーク専用の部屋として利用するケースが増えています。他にも、Youtubeなどの動画配信を生業にしている方の中には、人々の在宅時間が長くなってきたことで、配信中の声が漏れてしまいクレームになる…なんてケースも多くなっているようです。そういったこともあり、最近では、動画配信者様から防音に関する相談が増えています。
防音室の種類について
一口に防音室といっても、何のために防音室を必要とするのか、どういった用途で防音室を使うのかなどによって、導入すべき防音室もいくつかの種類が存在しています。ここでは、代表的な防音室について、それぞれの特徴をご紹介しておきます。
簡易タイプ
これは、自宅でテレワークする方に向けた防音室で、ブースタイプやテントタイプがあります。簡易タイプの防音室も、グレードがありますが、基本的には安価で手に入れることが可能で、専門業者などに頼まなくても、自分で組立てすることが可能です。マンションなど、本格的な防音室を設置するようなスペースが無いケースでは、部屋の一室にテントタイプの簡易防音室を設置するケースが多いです。
ただ注意しておきたいのは、簡易タイプは、防音室を名乗っていたとしても、下で紹介する本格的なものと比較すると遮音性能がかなり低くなります。正直な話、簡易タイプであれば、楽器防音などに対してはほとんど役に立ちません。基本的には、テレワークやリモート学習など、大きな音を生じさせるわけではないうえ、周囲の音をある程度遮って、集中できる環境を作る目的で使用されるものです。
ユニットタイプ
これも組み立て式の防音室になるのですが、上述した簡易タイプとは比較にならないほど高い遮音性能をもっています。楽器メーカーなどが、マンションなどの集合住宅に設置する防音室として開発したもので、部屋の中に遮音性能をもったプレハブ小屋を建てるといったイメージをしていただくと分かりやすいと思います。
ユニット型防音室は、使用用途によって広さを選べるようになっており、狭い物であれば0.8畳タイプから存在しています。グランドピアノなど、ある程度の広さが必要な場合、4~5畳タイプのユニット型防音室を設置することになるのですが、ここまでの物となると、下で紹介する自由設計タイプの方が費用対効果が良くなると思います。
自由設計タイプ
これが皆さんがイメージする防音室だと思います。要は、お客様の要望や使用する楽器などに合わせて、一から防音室を作り上げるという方法です。空き部屋などの壁を一度壊し、防音性能をもった壁に作り替える方法になるので、費用さえかければお客様が希望する防音室を一から設計することが可能です。
また、防音性能だけでなく、室内の音響なども好みに合わせることができますので、ホームシアターなど、音環境が重要になる用途の場合は、自由設計タイプがオススメです。
防音室に関する基礎知識
それでは、我々のような防音工事業者が施工する防音室について、その基礎知識を簡単にご紹介しておきましょう。皆さんは、防音室はどのようにして作られていると思いますか?中には、防音性能が高い建材を施工すれば、防音室が出来上がるといった感じに、非常に簡単に考えている方が多いかもしれませんね。
防音室を作る工事は、壁・天井・床のすべての面に対して施工を行います。また、効果の高い防音室にするためには、音漏れの弱点となる窓やドアなどの開口部に関しても、しっかりと高い防音性能を発揮するように施工します。
ただ、こういった防音工事に関しては、単に性能の高い建材を使用すれば良いほど簡単なものではありません。例えば、防音室の壁は、グラスウールと呼ばれる吸音効果を持つ建材が充填されるのですが、隙間なくしっかりと施工していなければ、音漏れの原因となってしまいます。さらに、壁の中に充填されるグラスウールなどは、本来、断熱材として用いられるアイテムで、単に壁の中に詰め込んでいるだけであれば、壁内結露が生じてしまい、すぐに壁の防音性能が低下してしまうことになるのです。実際に、他社で施工した防音室について、施工から数年で音漏れするようになったと相談され、壁の中を見るとカビだらけで防音壁の体をなしていなかった…なんてケースも非常に多いです。
防音室の施工は、単に防音性能をもつ建材を施工するだけといった単純なものではなく、吸音と遮音のバランスを考えなければいけない非常に専門性が高い工事です。高い専門知識を持たない業者が施工した防音室では、防音室内で音が反響しすぎてしまい、「音漏れはしないけどとても楽器の演奏ができない…」なんて失敗につながるケースもあるので注意しましょう。
防音室の費用相場について
それでは最後に、自宅に防音室を導入しようと思った時、どの程度の費用を想定しておけば良いのかをご紹介していきましょう。ここでは、上述した防音室の種類ごとに、大まかな費用相場をご紹介しておきます。
簡易タイプ
まずは簡易タイプの防音室を導入する場合です。上述したように、簡易タイプは購入したものをその場で組み立てて使用するので、専門業者による施工費が必要ありません。一般的な費用に関しては、以下のような感じです。
- ・テントタイプ:10万円前後
- ・ブースタイプ:20~70万円前後
簡易タイプの防音室は、選ぶアイテムによって費用が大幅に変わります。テントタイプでそれなりの遮音性能を求めるのであれば、10万円程度は見ておいた方が良いでしょう。ネット検索すれば、2~5万円程度のテント防音室が販売されていますが、このタイプは一般的なテントと何ら変わりない性能しか持っていないので、個人的にはオススメしません。
ちなみにブースタイプは、物によって大幅にコストが変わります。最近では、オフィスなどに設置できるような本格的なブース防音室が登場しているのですが、ここまでの物となると、50万円以上します。価格やサイズの幅が非常に大きいので、用途などから必要な機能をしっかりと判断して購入しましょう。
ユニットタイプ
ユニットタイプも、既存製品を購入して、それを自宅内に設置してもらう感じです。ただ、高い遮音性を持った製品ですので、かなりの重量があり、設置工事はプロにお願いしないといけません。なお、ユニット型防音室の設置は、基本的に1日あれば完了します。費用に関しては
- ・0.8畳タイプ:45~80万円前後
- ・2畳タイプ:110~170万円前後
上記のように、防音室の大きさや性能などによって大きな幅があります。楽器メーカーのヤマハさんやカワイさんがユニット型防音室を取り扱っており、ショールームなどで見学することが可能です。ユニット型防音室を導入する場合は、事前に本体をチェックしてから購入すると良いでしょう。
自由設計タイプ
最後は自由設計タイプです。自由設計タイプは、お客様の利用用途などをお聞きして、最適な防音室を一から作り上げる手法となります。つまり、「防音室内でどんな楽器を演奏するのか?」「何時まで防音室を使用する想定か?」「広さは?」「マンションか、戸建てか?」などといった問題により費用は大幅に変わると考えてください。
基本的に6畳程度の部屋を楽器防音室に作り替えるとなると、200万円~という費用を考えておく必要があるでしょう。
まとめ
今回は、いまいち分からないことが多い防音室について、防音室を求める方はどういった問題を抱えているのかや、実際に防音室を自宅に設置しようと思った時、どのような選択肢があるのかをご紹介してきました。
新型コロナウイルスの影響で、人々の在宅時間が長くなってきた現在では、防音工事を求める方の数がどんどん増えていると言われています。防音室は、自宅で楽器の演奏を行いたいなど、少し特殊な要望がある人のみがお金を出して用意するものと考えられていましたが、最近では、新築の建売住宅に防音室がついているケースも増えていると言われています。
ただ、一口に防音室といっても、いくつかの種類が存在していて、どの手段を選ぶのかによって、防音室にかかるコストが大幅に違うということは頭に入れておいた方が良いですよ。テレワークが導入されたから、自宅でも集中して仕事ができるように防音環境が欲しい程度であれば、安価な簡易タイプの防音室でも十分だと思います。