マンションの購入前に知っておきたい、騒音・防音目線での物件選びの方法とは

皆さんは、マンションの購入を検討した場合、何に注目して物件選びを進めるでしょうか?多くの方は、日常生活の利便性を考えて、駅からの距離や間取り、近くに買い物ができるスーパーがあるのか?などと言った事が主な検討事項になっていると思います。実際に、国土交通省が公表した平成30年度マンション総合調査によると、現在マンションに暮らしている方が物件の購入時に考慮した項目は、以下のような順になっています。

  • 1位 駅からの距離など交通利便性 72.6%
  • 2位 物件の間取り 63.7%
  • 3位 日常の買い物環境 52.8%

上記にのように、マンション購入時には、多くの方が生活の利便性ばかりに注目するようです。しかし、実際に住んでみた場合に起こりえる居住者間のトラブルについては、あまり考慮せずに物件の購入を行ってしまい後悔してしまう方も多いのです。
というのも、マンションというものは、各ご家庭の生活空間が非常に近いため、ちょっとした生活音で近隣住民とのトラブルを抱えてしまう危険があるのです。実際に、平成30年度マンション総合調査によると、「居住者間のマナーをめぐるトラブルの具体的内容」については、『生活音によるトラブルが38%』と最も多くなってしまっているのです。

そこで今回は、マンション購入前におさえておきたい、騒音・防音目線での物件選びについてご紹介します。

参考資料:国土交通省『平成30年度マンション総合調査

物件選びの際におさえておきたいポイント

それでは、現在マンションの購入をご検討中の方が、実際に物件選びを行う時に頭に入れておきたいポイントをご紹介していきましょう。マンション暮らしの方が増加している近年では、日常生活を進める際に生じる『生活音』が近隣トラブルのもとになることが増えています。

極端に言ってしまえば、各ご家庭の生活空間を「壁1枚」で遮るだけですので、防音性能の低い物件を選んでしまうと、「自宅にいるのにお隣の音でリラックスできない…」なんてことになる危険があるのです。それでは、実際にマンションでの生活を検討した場合、できるだけ音に悩まされないような物件を選ぶためにはどうすれば良いのでしょうか?以下で皆さんがおさえておきたいいくつかのポイントをご紹介します。

床の防音性能に注目すべき

日常生活を進めるうえで、全く音を出さずに生活することなど、誰もできることではありません。例えば、椅子に座る際の移動音や、物を落とした際に生じる高音域の音などは、注意していても生じてしまうものです。こういった高音域の衝撃音は『軽量衝撃音』などと呼ばれるのですが、こういった音の遮音等級は床材に左右されるところが大きいのです。例えば、床材がカーペットや畳など、クッション性が優れる柔らかい素材のものであれば、高い遮音性能が期待できるでしょう。

しかし、現在のマンション事情を考えてみると、多くのマンションで見かける床材は、フローリングです。フローリングは、掃除の手間がかからない、メンテナンスが容易などと言うメリットがあるのですが、遮音性能の観点で考えると、前述の『軽量衝撃音』が響きやすい…という側面があるのです。実際に、もともとカーペットや畳だった部屋をフローリングに張り替えたことで、階下に音が響くようになってしまい、近隣トラブルに発展してしまった…なんて事例も少なく無いと言われています。

これからも分かるように、マンションを購入する際には、床材の遮音性能をきちんとチェックするようにしましょう。フローリングの中にも、遮音性能の違いがありますし、施工方法によって遮音性能を上げることが可能です。したがって、内見の際には、床の遮音性能について質問するべきと考えておきましょう。
なお、中古物件の購入を検討している方で、購入後フローリングへの張り替えを検討している方であれば、床材の下に遮音用のゴムマットを敷いてから施行するなど、施工業者に遮音性能を高めるように指示しておくのがオススメです。

重量衝撃音の対策について

小さなお子様がいるご家庭などであれば、『重量衝撃音』についても検討すべきです。重量衝撃音とは、子供が室内を走り回った時や飛び跳ねと時に生じる「ドンッ」というような低音域の音のことです。床の防音性能というものは、仕上げ材だけに注意するのではなく、スラブ厚(コンクリートの厚さ)や床の構造によって大きく変わってしまうということも覚えておきましょう。特に、重量衝撃音は、床のスラブ厚が大きく影響しており、厚ければ厚いほど遮音性が高くなります。一般的に、子供が走り回る際などの「重量衝撃音」に対応する床のスラブ厚は200mmが標準程度と言わています。

しかし、スラブに円筒状の穴をあけて中空にすることで小梁を無くしながら強度を保つ工法である「ボイドスラブ工法」が採用されていた場合は、通常のベタスラブと比較して80%程度の遮音性になってしまうと言われています。つまり、この工法が採用されている物件であれば、250mm程度のスラブ厚で通常のスラブ厚200mmと同等になると考えなければいけないのです。なお、ボイド部分に「どのような遮音材を入れているか?」によっても床の遮音性能は変わります。

マンション床の構造に関しては、他にも注意点があります。マンションの床は、「床スラブの上に支持ボルトなどをおいて、その上に下地材とフローリングなどを張る二重床の構造」と、「床スラブの上に直接フローリングを貼っていく直床構造」の2つがあります。二重床に関しては、床下に各種配管などが設置できるなど、設備のメンテナンス面では非常に有利というメリットがあるのですが、防音の観点から見ると、スラブと床材の間で音が反響してしまうという『太鼓現象』の恐れがあります。したがって、物件の購入時には、スラブ厚や床の構造がどうなっているのかもしっかりと確認しておくべきです。

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戸境壁や天井の厚み、工法などについて

ここまでは、床の防音性についてご紹介してきました。しかしマンションに住むのであれば、お隣や上階のことも考えなければいけません。賃貸アパートなどで暮らした経験がある人であれば、壁の防音性能について気にしている…という方も多いことでしょう。というのも、隣家から漏れ聞こえる生活音は、戸境壁が厚ければ厚いほど低減されるものなのです。一般的に、戸境壁の厚さが180mm以上あれば、一定の遮音性能を期待できると言われています。

注意が必要なのは、戸境壁がコンクリート以外で作られている場合や、構造スリットなどが設けられている場合で、こういった部屋の場合には厚みがあっても音が漏れやすくなってしまいます。また、壁の構造に関しても、コンクリート壁に直接クロスを貼る『直貼り工法』の場合と、戸境壁に枠組みを作り、石膏ボードなどの下地材を貼ってからその上にクロスを貼るという『二重壁工法』でも遮音性能が大きく異なります。二重壁にする場合には、下地材とコンクリートの間に吸音材を入れることで、太鼓現象を防止し、遮音性能を高めることができます。この方法は、二重床工法の太鼓現象防止でも有効です。
また、天井に関しても同様で、「直天井」「二重天井」と言った構造の違いがありますので、物件選びの際は慎重に検討しましょう。

なお、実際に住み始めてから、隣や上階からの生活音が気になる…なんて場合は、天井や壁の下地に吸音材や遮音シートを入れる防音工事を行うのがオススメです。

外部の騒音は窓の防音性能を確認する

日常生活上の騒音は、住戸の中だけにとどまりません。例えば、幹線道路沿いにあるマンションであれば、大型車の走行音が気になる…なんてこともありますし、他にも外で遊ぶ子供の声や工事現場の音など、外部からの騒音に悩まされることも珍しくないのです。実は、こういった外部からの騒音は、窓の防音性能に原因があることが多いのです。

皆さんはあまり気にしたことが無いと思うのですが、サッシにもJISが定めた遮音性能等級があり、使用されているサッシによって防音性能がかなり違ってしまうのです。また、窓に採用されているガラスに関しても、防音性能に違いが存在します。

例えば、近年の新しいマンションであれば、複層ガラスなど遮音性の高いものが採用されるようになっていますが、一昔前までであれば、単板ガラスとアルミサッシの組み合わせが一般的でした。しかし、この組み合わせの場合、遮音性能が低く、周辺環境によっては外からの騒音に悩まされてしまう…なんてケースが多くなってしまうのです。したがって、マンションの購入時には、窓の防音性能に関してもしっかりと確認しておきましょう。

ちなみに、住み始めてから窓の防音リフォームを検討した場合、「サッシは共用部分にあたる」となっていることが多いです。そのため、各家が個人的に防音性の高いサッシに交換することができないのです。そのため近年では、マンションの窓の防音性を上げる場合、今ある窓の内側にもう一つ窓を取り付けるリフォームが人気です。内窓を作れば、窓と窓の間に空気層ができ、サッシを交換するよりも安価で高い防音性能を得られることも多いです。

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まとめ

今回は、マンションの購入前におさえておきたい、防音対策を考慮したうえでの物件選びについてご紹介してきました、冒頭でご紹介したように、マンション暮らしの方が増加する中、生活空間が近くなったことにより、居住者間での騒音トラブルが増加していると言われています。特にマンションでの騒音トラブルは、非常識な行いから出る大きな音が原因になるのではなく、誰もが日常生活を普通に過ごしているだけで起こってしまう…というのが非常に難しいものです。

日常生活を進めるうえで、全く音を出さずに生活するなんてことは誰にもできませんし、「自分は騒音トラブルとは関係ない…」とは言えないものなのです。したがって、物件選びを進める際には、日常生活の利便性だけでなく、将来的なトラブルをできるだけ防げるように…という視点も重要だと考えておきましょう。
マンションの構造や使われている材料によって、居室の防音性能が大きく異なりますので、その点にも注目して物件選びを進めるのがオススメです。

スタッフ A

大阪で20年間にわたって防音工事に携わってきました。
防音工事に関しての事、音に関する豆知識などを配信しております。

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古民家再生ショールーム防音工事の匠はショールームがあります

ピアノ防音室

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鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の建物にショールームがある会社さんが多い中、特に施工後にショールームと性能や音の反響がちがうといったトラブルが戸建てのお客様に多い業界ですが、町家再生事業として難易度の高い防音室を防音性能が最も出にくいとされる木造町家のショールームをご用意いたしました。

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