壁やドアなど部分的な防音工事の効果は?音の悩みを抱えている方が知りたい防音方法について
今回は、コロナ禍以降、急激にお問い合わせが増えている部分的な防音工事について解説していきたいと思います。
防音工事と聞くと、自宅でピアノやドラムなど、楽器の演奏を考えている方が、大金をかけて1室まるまる防音室にしてもらう工事のことをイメージする方が多いのではないでしょうか。この場合、既存の部屋について、壁や床、天井など、全ての箇所に防音対策を施すことで、部屋全体の防音性能を高め、室内からの音漏れを防ぐといった感じになっています。つまり、部屋の防音性能について、全ての部分を平均的に高めるという工事になるわけです。
しかし、コロナ禍以降、家の中で過ごす時間が長くなった現在では、楽器などのように、特別に大きな音ではない生活音を防ぎたいと考えている方が増えています。そういった方は、前述のような全体的な防音室ではなく、窓だけ、ドアだけ、壁だけと言った部分的な防音工事で、特定の音を防ぎたいとご相談してくるのです。
それでは、このような部分的な防音工事というものについては、本当に皆さんが考えているような効果を得られるものなのでしょうか?実は、部分的な防音工事は、効果がきちんと得られる場合と、そうでない場合に分かれてしまいます。この記事では、どのようなケースで、部分的な防音工事が有効なのかを解説します。
どのケースなら部分防音の効果があるのか?
部分的な防音工事にいくつかの手法が存在しています。以下に代表的な部分防音リフォームの例をご紹介してみます。
- ・外部からの音の侵入を防止するため窓を二重窓にする
- ・家族間の音のトラブルを防止するため室内ドアを防音ドアに交換する
- ・ドアや窓の隙間を埋める
部分的な防音については、専門業者に依頼するものから、ご自身で対策可能なものまでさまざまな種類が存在しています。ただ、注意しておきたいのは、部分的な対策の場合、きちんと想像通りの効果をもたらせてくれる対策はあるものの、間違った対策をしてしまうと、何の効果も得られない…なんてことになるケースもあります。基本的に、部分的な防音対策で効果が得られるのは、以下のようなケースとなります。
部分防音で効果が得られるパターン
上の説明でも言っているように、部分的な防音工事は、全てにおいて効果が得られるわけではありません。それでは、どのようなケースであれば、狙った効果が得られるのでしょうか?それは、「防音工事を施す部分が、他の場所よりも防音性能が低い場合」と考えてください。
例えば、壁や床、天井などに、しっかりと防音対策を施した部屋を作ったとしましょう。しかし、この部屋について、ドアだけは薄いプラスチックが採用されていた場合、望んでいた防音性能が発揮されるでしょうか?当然、他の場所よりも性能が低いドア部分から音漏れが生じてしまうことになり、防音室として使用することなどできないはずです。
そこで、ドア部分について、他の部分と同様の防音性能をもつ防音ドアに交換するとどうでしょうか?この対策を施すことで、ドア部分も、壁や床、天井などと同等の性能を発揮できるようになるので、防音室としての効果が発揮できるようになるのです。
つまり、部分的な防音工事で効果を発揮できるパターンというのは、部屋の一部分が他の箇所に比べて著しく性能が低く、そこから音漏れしているというケースです。この場合、音漏れの原因箇所に部分的な対策を施すことで、部屋全体の防音性能が平均化され、防音の効果が得られるわけです。
部分な防音工事の具体例について
それでは、何らかの音の問題を抱えた時、防音室を作るまでのコストをかけずに対策が可能な、部分防音対策にはどのような工事があるのかをご紹介します。
①ドアからの音漏れ
家族間の騒音問題については、ドア部分の防音性能の低さが原因となり発生する場合が多いです。あまり認識している方はいないのですが、室内ドアというものは、きちんと閉じていたとしてもドアの下部に隙間が生じるような作りになっています。これは、ドアを閉めていても適度に換気が行われるようにと考えられてのことです。しかし、音漏れや音の侵入については、このドアの隙間が原因となるのです。
部屋を構成する壁や床、天井と比較した場合、ドアはどうしても防音性能が低くなってしまいます。したがって、ドアを防音ドアに交換することで、その他の部分と同じぐらいの性能をもたせるため、ドアの防音工事のご依頼は多いです。
ドアの防音工事は、部分的な防音対策の中でも、効果的な対策の一つと言えます。なお、ドア部分に生じる隙間を埋めるという対策ですので、防音ドアへの交換とまでいかなくても、隙間テープなどで対策を施すことも可能です。
②外からの音の侵入
お住いの環境によっては、外からの騒音の侵入に悩まされてしまう…というケースも多くなっています。テレワークなどで昼間も在宅する方が増えているのですが、目の前に公園がある、近くで大きな工事をしている、交通量の多い道路に面しているといった条件の住宅の場合、環境騒音が室内に侵入してしまい、仕事に集中できない…となってしまう訳です。このような音の問題については、窓の防音対策を検討する方が多いです。
住宅の窓は、採光や換気を目的に取り付けられているのですが、外壁と比較すると、非常に薄い素材となってしまうため、防音性能が十分でない場合があります。さらに、築年数が経過した住宅の場合、経年劣化などによりサッシ部分に隙間が生じてしまい、それが音の侵入口になっているなんてケースも考えられます。つまり、外壁と窓部分の防音性能に格差が生じてしまっている状況です。
この場合、部分的な防音工事として二重窓にする、窓ガラスを防音ガラスに交換するなどと言った対策が選ばれます。なお、窓の防音工事に関しては、外壁と同等レベルまでの防音性能を実現するのは少し難しいですが、環境騒音の侵入を防ぐ程度の効果を期待することは十分にできます。注意が必要なのは、音の侵入口が窓だけでなく、換気口などの隙間も関係している場合、窓のみを対策しても意味がありません。この場合は、窓と換気口の対策、両方とも行いましょう。
③壁からの音漏れ
マンションなどの集合住宅であれば、上下階(天井・床)からの音は気にならないものの、お隣の生活音が漏れてきて困っている…という話はよく聞きます。これは、境界壁の構造などが問題となっており、壁の防音性能が低いことから、日常の生活音を防ぎきれていないのです。なお、このような音の問題に関しては、「一方的に迷惑を掛けられている…」と考えがちですが、あなたの音もお隣に漏れていて、迷惑を掛けている可能性もあります。
このような場合、部分的な防音対策として、壁の防音工事を行い、性能を強化するという選択があります。そして、こういった壁の防音対策は非常に効果的です。というのも、こういった音の問題は、「壁の性能が足らない」ことが原因ですので、防音工事によってその原因を解消すれば音の侵入や音漏れを防ぐことに繋がると期待できます。
④全方位からの音漏れ
築年数が経過した住宅であれば、さまざまな部分からの音漏れ、音の侵入に悩まされてしまうケースがあります。例えば、天井から上の階の足音が聞こえるうえ、お隣からは生活音が聞こえてきてうるさくてたまらない…なんてケースです。このような場合に、壁だけの部分防音を行う、天井の部分防音を行うといった対策を検討する方がいますが、残念ながらこのケースでは部分的な防音工事は意味を成しません。
というのも、弱点になっている場所は二か所以上あるわけで、壁だけ防音を施しても、天井からの音は防げませんし、逆もしかりです。つまり、複数の場所に防音上の弱点がある時には、部分的な防音対策ではなく、全体的な防音設計を行う必要があると考えましょう。
二重窓の注意点
部分的な防音工事のご依頼では、窓に対する防音工事のご相談が特に多いです。というのも、そもそも窓は住宅の中で考えると、最も音を防ぐ性能が低くなってしまいがちという弱点を持っています。
例えば、窓ガラスと外壁を比較した場合、圧倒的に窓ガラスの方が薄く、軽量ですよね。防音性能というものは、やはり重量があり分厚い方が高くなるという特徴がありますので、窓は壁部分の音漏れ、音の侵入原因となってしまうのです。さらに、窓のサッシについても、経年劣化などを理由として、徐々に隙間が生じてしまうことになり、窓を閉めていても完全に音を防ぐことができなくなります。実際に、築年数が経過した住宅などであれば、窓から雨漏りする…なんてこともあるのですが、これはサッシの隙間が原因なのです。
こういったことから、部屋の防音性能に不満を感じている場合、最も防音性が不足していると考えられる窓の強化を行うことが、効率的な防音対策になるわけです。そして、窓の防音対策として最も取り入れやすいのが二重窓にするという対策です。以下で二重窓にするときの注意点を簡単にご紹介します。
二重窓の選び方
窓の防音対策にもいくつかの手法があるのですが、最も一般的な対策が二重窓にするというものです。というのも、分譲マンションなどの集合住宅の場合、自分が購入した物件でも、窓ガラスやサッシは共用部分となっているので、防音対策をしたくても住人さんが勝手に手を入れることができない決まりになっているのです。戸建て住宅の場合、自由にリフォームすることは可能ですが、サッシごと交換する場合には、外壁まで手を入れなければならず、かなり大掛かりな工事になってしまいます。
これが二重窓になると、既存窓の内側にサッシを取り付けるだけの工事になるので、短時間・低コストで非常に高い防音性能を実現することが可能です。ただ、二重窓による防音対策を行う時には、いくつかの注意点があるので、以下のポイントは頭に入れておきましょう。
- ・新たに設置する窓は、既存ガラスと違う厚みのものにする
- ・ガラスの種類によって防げる音の種類が変わるので、防ぎたい音に合わせたガラスを選ぶ
- ・サッシについても、種類によって防音性能が変わる
- ・開け閉めしなくても良い窓であればFIX窓にする
二重窓による防音対策では、上記のようなポイントを抑えているかどうかで、得られる結果がかなり違います。最近では、防音工事に関する知識を持たないリフォーム業者が防音工事を請け負い、何も考えずに施工を行って、最大限の効果を発揮できていないケースが増えています。部分的な防音工事を行う時には、防音工事の専門業者に依頼するようにしましょう。
まとめ
今回は、コロナ問題以降、急激に増えている部分的な防音工事についてご紹介してきました。この記事でご紹介したように、防音工事と聞くと、1室まるまる防音対策を施す防音室の施工をイメージする方が多いのですが、実はどのような音の悩みを抱えているのかによって必要になる対策は全く異なるのです。
例えば、上の階の足音に悩んでいるという方が、数百万円のコストをかけて防音室を作った場合どうなると思いますか?この場合、確かに悩みの種である足音は聞こえなくなると思いますが、明らかに悩みに対してオーバースペックな防音工事になってしまいます。このような、天井から足音が…なんて時には、天井に防音対策を施すだけでほとんどの問題は解消することができます。
この他にも、外から聞こえる子供の声が…自動車の走行音が…なんて悩みの場合、窓が弱点になっていると考えられるので、窓の対策と言った感じに、防ぎたい音に対してピンポイントな対策を施すことで、低コストで悩みを解消することができます。
現在、日常生活の中で、ちょっとした音の問題を抱えている…という方がいれば、お気軽に防音工事の匠にご相談ください。防音工事の匠では、プロの演奏家が使用する本格的な防音室はもちろん、日常生活上のちょっとした生活騒音の悩みを解消する部分防音工事も請け負っています。お客様の悩みに対して、最も効果的な方法をご提案することが可能なので、まずはご相談ください。