防音室完成後不満に感じる可能性があるポイントについてご紹介
今回は、これから自宅に防音室を設けようとお考えの方に向け、それなりのコストをかけて防音室を作ったのに、出来上がった防音室に不満を感じてしまうことが多いポイントをご紹介していきましょう。
近年では、マンション暮らしの方が増えている、戸建てでも家ごとの距離が近づいているなどと言った理由で、自宅で楽器の演奏やホームシアターを楽しもうと考えた場合、本格的な防音室が必要不可欠になっています。もちろん、地方に住んでいる方であれば、庭付き一戸建てに住む場合も多いので、そういった条件であれば、夜間に大音量を出さない限りは防音室は必要ないかもしれません。しかし、大阪市内など、都市部の戸建ては、お隣の家と数十cmしか離れていない…なんて状況になっているため、音に関する問題が非常に増えているのです。
そこでこの記事では、専門業者に依頼して防音室を作ろうと考えている方に向け、実際に工事を依頼する前に押さえておきたい、「防音室に不満を持ちやすいポイント」についてご紹介します。防音工事は、他の住宅リフォームとは一線を画すほど専門性が高い工事ですので、「どこに注意すれば良いのか?」がイマイチ分からず、自分の要望をうまく業者に伝えられないことで、後から「もっとこうしていれば良かった…」と後悔してしまう方がいます。この記事では、防音工事に失敗しないため、皆さんがおさえておくべきポイントをご紹介します。
防音室の基礎知識
防音室は、通常の部屋と異なり「音の強さを低減させる仕組みが施されている」部屋のことを指しています。ただ、勘違いしてほしくないのは、「防音室=音が一切漏れない」と言うものではなく、あくまでも音の強さを低減させる部屋だということです。防音室が持つ遮音性能は、どういった仕組みになっているのかで大きく異なり、多額のコストをかけたのに、音が漏れてしまう…なんてことも普通にあり得ます。
なお、音が一切漏れない部屋は「無響音室」と呼ばれ、内部で発生する反射音なども無視できる程度まで抑制するようになっています。ただ、防音室に関しては、室内にある程度の吸音性能を持たせているものの、無響音室とは異なり、限定的な吸音になります。これは、防音室は、室内で自分(もしくは機械)が出した音色を楽しむために作る部屋だからです。
防音室を作る際に知っておきたい音の単位
『音』と言うものは、何らかのモノが動き、擦れたりぶつかったりすることで発生する空気の振動を耳が感じ取るものを指しています。そして、この振動が音の強さとなるのですが、一定以上の音の強さになると、人は「うるさい」「不快だ」と感じるようになり、これがいわゆる騒音と呼ばれるものです。ちなみに、こういった音に関しての単位についてはさまざまなモノがあり、防音室を作る際にはよく登場することになるので、それぞれの単位が何を指しているのかきちんと押さえておきましょう。
■デシベル(db)
まずは「デシベル(db)」です。デシベルは、音の強さを表す単位で、数値が大きくなればなるほど大きな音になります。一般的に、60dBを超えてくると、人はうるさい・不快に感じるようになるとされています。そして、環境省が設定している人が普通に過ごす際、許容できる音の範囲について、一般住宅地で、「昼間が55dB以下、夜間で45dB以下」とされいます。また、音の強さごとの人の感じ方については、以下のように分類されています。
- 20db:人の耳にほとんど聞こえないレベル(雪の降る音、葉が擦れる音など)
- 30~40db:人が静かだと感じるレベル(鉛筆の執筆音、図書館内の音など)
- 50~60db:日常の生活音レベル(人の話し声、エアコンの室外機など)
- 70~80db:人がうるさいと感じるレベル(パチンコの店内音など)
- 90db:非常にうるさいと感じるレベル(カラオケの店内、犬の鳴き声など)
防音室は、室内で大きな音を鳴らしたとしても、防音室の外では生活音や人が静かだと感じるレベルまで音を抑えるための部屋になります。
参照:環境省「騒音に係る環境基準について」
■Hz(ヘルツ)
音の周波数を表す「Hz(ヘルツ)」と言う単位は、防音工事業界以外でも目にする機会がありますね。周波数は、振動回数のことを指していて、高い周波数は振動回数が多い音、低い周波数は振動回数が少ないということになります。そして、この周波数は数値が低ければ低い音、大きくなるほど高い音になっていきます。防音工事で押さえておきたいのは、一般的に低音域の音ほど防音がしにくく、高音域になるほど容易になるということです。
■Dr
「Dr」は、「ディーアール値」などと呼ばれ、部屋の遮音性能を表すためのものです。遮音等級などとも呼ばれます。例えば、30dBの遮音性能を持つ防音室は「Dr-30」と言う表記をされ、「Dr」の後ろにつく数値が大きくなるほど遮音性能が高くなります。
■T値
「T値」は、JIS規格で定められたサッシやドアの遮音性能を表すものです。「T1~T4」までの4段階に分かれており、数字が大きくなるほど遮音性能に優れていることを表しています。この等級ごとの使用用途は以下のような感じです。
- T-1・・・通常の耐熱サッシ
- T-2・・・一般気密構造の防音ドア①(カラオケルームや会議室用)
- T-3・・・一般気密構造の防音ドア②(楽器用防音室、映画館用)
- T-4・・・・ハイレベルな防音ドア(レコーディングルームなど)
このように、防音工事を行う時には、さまざまな単位が関わってきますので、それぞれが何を意味しているのかをきちんとおさえておかないと、防音工事業者との話がかみ合わなくなってしまう可能性があります。
防音室完成後によくある不満
それではここから、せっかく専門業者に依頼して防音室を導入したのに、工事完了後に出来上がった防音室の性能に不満を持ってしまうポイントをご紹介していきましょう。防音室は、目に見えない音の対策を行うものですので、防音室導入後に不満が出てしまう…と言うことも珍しくありません。実際に、弊社にも、他社で行った防音工事の手直しの相談が来ることも珍しくないのです。
ただ覚えておきたいのは、完成した防音室に不満を感じる場合でも、その原因が全て施工業者にあるわけではないという点です。もちろん、防音工事が一般化した現在、防音に関する知識を持たずに施工を行う業者が多くなっているのも事実ですが、中には防音工事を行う前にきちんと自分の要望を伝えきれていない…と言うケースや、施工費をケチってしまった…、打ち合わせ時の内容と異なる使い方をした…など、お客様側に要因があるケースも少なくないのです。ここでは、防音室完成後によくある不満をご紹介しておきますので、そうならないためにどうするかをしっかりと考えて工事を依頼しましょう。
①防音室の性能に満足できない…
一つ目の不満は、使用用途に耐えうる遮音性能が得られなかった…という不満です。なおこのようなことが起こる理由は、主に二つの原因が考えられます。それは、施工費の安さを重視してしまい、遮音したい音源に合わせた防音室を選択できていないというものと、施工業者の技術不足です。
防音工事は、非常に専門性が高い工事で、遮音性能が高い建材を施工すれば、要望通りの防音室ができるというような物ではありません。当然、音響まで考えた設計能力が必要ですし、さらに設計通りに施工できる技術力も併せ持つ必要があるのです。
こういった不満を持たないようにするためには、依頼する工事業者の実績やモデルルームなどを確認し、本当に技術を持った業者を選ぶということが大切です。優良な業者であれば、お客様の予算の範囲内で要望通りの遮音性能が実現できない場合、きちんと事前に説明してくれますので、多額のコストをかけて性能足らずの防音室に仕上がるなんてことはありません。
②音が悪い…
次は、防音室内で実際に楽器を演奏したり、映画を見てみると、思っていた以上に音が悪い…という不満です。これは、室内音響までよく考えて設計・施工を行っていない…、もしくは行える知識が無い業者に依頼した場合に多いです。
この不満に関しても、防音室の施工を専門に行っている技術力の高い防音工事業者に施工を依頼すれば起きないと思います。なお、防音工事の専門業者は、防音室のモデルルームなどを所持しているのが普通ですので、その業者の技術力を確認するためにも、防音工事の契約を行う前にモデルルームなどはチェックしておくのがオススメです。
③部屋が狭い、天井が低くて圧迫感が…
これは、防音室の使い勝手が思っていた以上に悪い…と言うものです。遮音性能などは満足できるものの、防音室の構造上、出入り口に段差があったり、ドアの開閉がしにくかったり、使い勝手に不満を感じてしまう仕上がりになるケースもあります。
そもそも防音室と言うものは、部屋の中に部屋を作るという手法となりますので、二重壁・二重床・二重天井で、既存の部屋よりはかなり狭くなってしまいます。また、天井高が低くなることから、なんとなく圧迫感を感じ、長時間、その部屋にいることがストレスになる…なんてこともあるのです。
技術力のある防音工事業者であれば、「部屋が狭くならない!」なんてことはないので、ある程度は我慢しなければならない部分もあります。しかし、優良業者は、ユーザーが防音室を使用する時のことを想定して設計を行いますので、防音室にストレスを感じてしまうようになる…と言った失敗は少ないです。また、施工前に、仕上がりがどのような状態になるのかをきちんと説明してくれるはずですので、理解したうえで工事を依頼できます。
④楽器が入らない……
ピアノなど、大型の楽器演奏を目的に防音室を作る場合、防音室が完成し、いざ楽器を設置しようと思うと、楽器が入らない…などと言うありえない失敗談もあります。この失敗については、特に近年増えていて、もともと防音工事を専門とする業者ではなかったのに、防音工事の依頼が多くなっていることから、防音工事の請負を始めた…なんて業者に多いです。
防音工事は、防音室に関する知識が必要なのはもちろん、ある程度、楽器の知識も必要になります。防音工事を専門としている業者であれば、こういたミスは絶対にないので、業者選びを慎重に行ってください。
まとめ
今回は、防音工事を依頼する前に知っておきたい防音室の基礎知識と、実際に工事を行ってもらった後、お客様が不満に感じてしまうことが多い失敗についてご紹介してきました。人々の生活空間が非常に近くなってきた現在、防音工事の需要が非常に高くなってきています。一昔前までは、楽器の演奏が生業の人や自宅でも映画館さながらの映像を楽しみたいなど、少し特殊な人のみが行うのが防音工事だったのですが、現在では、生活音による騒音トラブルを防止するために防音工事を行う人が増えているのです。
そして、防音工事の需要の高まりに比例して、防音工事を請け負う業者も急増していて、技術力や経験のない業者が防音工事を請け負うことで、完成後にお客様とトラブルになることが多くなっているのです。「どこが技術力を持った業者なのか?」はなかなか判断することが難しいのも事実ですが、まずはモデルルームなどを確認しに行く、過去の施工実績を見せてもらうなどと言ったポイントで業者の経験を測ると良いのではないでしょうか?