防音室と窓の関係をご紹介!楽器防音など、高性能な防音室が必要なら窓の構造から考えよう!

今回は、防音室に窓が設置されている場合の注意点について解説していきたいと思います。このサイト内の別記事でもご紹介しているように、窓は外壁などと比較すると非常に薄い素材ですし、サッシにどうしても隙間が生じてしまうことから、しっかりと防音対策を行ったとしても、音漏れの弱点になってしまう場合があります。特に、日本国内で最も採用されている引き違い窓については、そもそも隙間が生じやすいうえ、経年劣化で隙間が拡大してしまうという特徴から、防音室の性能低下を招いてしまう大きな要因となってしまうのです。

ただそうはいっても、防音室にも自然な採光があってほしいと考える方も多く、窓はつぶさずに防音室を作ってほしいという要望が非常に多いのも事実です。そこでこの記事では、防音室の性能に関して、窓に着目して解説してみたいと思います。

窓の防音は、窓ガラスだけに注目してはダメ!

一般的に、窓の防音性を高めようと考えた場合、二重サッシを導入し、それぞれのサッシに単板ガラスとペアガラスを入れるのが最も手っ取り早くて、高い効果を得られる対策となります。わざわざ、異なるガラスを採用するのは、「ペアガラスは中低音域が弱い」「単板ガラスは高音域が弱い」など、ガラスごとに欠点が存在していて、別々のガラスを採用することで、弱点を補いあうことができるからです。

ただ、窓の防音対策については、二重サッシにしてガラスの構成を考えれば万全な対策ができるのかというと、実はそう簡単な話ではないのです。

最近では、コロナ問題によって在宅時間が長くなっていることや、人々の生活空間が近くなっているといった理由で、部分的な防音対策リフォームを検討する方が増えています。そのため、もともと防音工事を専門としていないようなリフォーム業者が、防音工事業界に進出するようになっているのです。そして、防音工事の専門業者ではないリフォーム会社や工務店さんなどが施工した防音室にありがちなのが、引き違い窓を二重サッシにしているというケースです。もちろん、お客様の要望であれば致し方ないわけですが、きちんと引き違い窓の二重サッシに存在する弱点を説明したうえで施工していなければ、施工業者が防音工事に関してくわしい知識を持っていないと言えるでしょう。

音はサッシの隙間からも漏れてしまう

窓の防音は、「ガラスは壁よりも薄いから、音がガラスを透過する」というイメージから、バランスの良い窓ガラスを選び、二重サッシにすれば防音対策が可能と考える方が多いです。もちろん、通常の窓と比較すれば、高い防音効果が得られるのは間違いないのですが、音はガラスを透過するだけでなく、サッシの隙間からも漏れてしまうのです。そして、窓に生じる隙間というのは、サッシの形状のよって大きな差があるということを忘れてはいけません。

日本国内の住宅で採用される窓については、以下のような形状があります。

  • ・引違い窓
  • ・上げ下げ窓
  • ・縦すべり出し窓(外開き窓)
  • ・すべり出し窓(横すべり出し窓)
  • ・外倒し窓
  • ・内開き/内倒し窓(ドレーキップ)
  • ・ルーバー窓
  • ・回転窓
  • ・FIX窓(はめ殺し窓)

このように、一口に『窓』といっても、その構造はさまざまなタイプがあるのです。そして、いろいろな窓がある中で、日本で最も使用率が高いのが、左右に開閉する構造になる引き違い窓です。築年数が経過した日本家屋には、現在でもふすまや障子があると思うのですが、これらと同じような使い勝手になることから、日本人にとって非常になじみ深いのだと思います。しかし、引き違い窓は、こと『防音』という観点で考えると、他の窓以上に問題点が存在します、

引き違い窓は、レールの上をスライドさせることで開閉するという構造になっているのですが、使用者が違和感を感じることなくスムーズに開閉できるようにするには、どうしても隙間が生じやすくなり、その隙間から音漏れが生じてしまうのです。ちなみに、上げ下げ窓についても、引き違い窓と同じような理由で隙間が生じますので、防音の面で考えるとオススメできません。ルーバー窓については、最近でこそ気密性に着目された製品が登場してきていますが、換気を目的とした製品ですので、隙間だらけになってしまい、防音効果を期待することができない窓です。

そして、内開き、内倒し、回転窓に関しては、構造や使い方を考えると、二重サッシにすることが非常に難しいのでオススメできません。

防音の観点からオススメの窓構造は?

それでは、どのような構造の窓が防音の観点からオススメなのでしょうか?防音性能を重視する必要がある防音室の窓については、以下の二つの構造がオススメです。

  • ・縦すべり出し窓
  • ・FIX窓

高い防音性能を求める場合には、上記の二つの構造がオススメです。

縦すべり出し窓については、あまり耳にしたことが無いという方も多いと思いますが、簡単に言うと、ドアのように外に押し出して開けるタイプの窓です。このタイプの窓は、開閉する扉部分と窓枠の間に、パッキンが設置されていて、窓を閉じている時にはパッキンがつぶれることで隙間を無くし、非常に高い気密性をもたらせてくれるのです。換気のために窓を開け閉めできるようにしたい場合でも、内側に内開きの窓を設置することで二重サッシにすることができますし、サッシ部分の隙間をパッキンで潰せるので非常に高い防音性を得ることが可能です。

なお、FIX窓については、開閉できないタイプの窓を指しています。つまり、窓部分に隙間が生じないので、防音性能の面では最も高性能になると考えてください。ただし、FIX窓を採用した場合、窓は採光には役立ちますが、開閉できないので換気の役割を果たすことはできません。

縦すべり出し窓とFIX窓の注意点

上述のように、窓の防音性能のことだけを考えた場合、縦すべり出し窓もしくはFIX窓を採用するのが最もオススメです。どちらも、窓部分に生じる隙間が少なくなるので、ガラスの組み合わせをきちんと考えておけば、防音の面では非常に高性能な窓を実現することが可能です。

ただ、使い勝手の面を考えると、どちらも一定のデメリットが存在しますので、以下のデメリット面はきちんと頭に入れたうえで、どの窓を採用するのか検討すると良いでしょう。

■縦すべり出し窓を採用する時の注意点
縦すべり出し窓のデメリットは以下のような感じです。

  • ・窓シャッターや格子をつけることができないので、防犯面で劣る(防犯ガラスや防犯フィルムで対処可能)
  • ・他の窓構造と比較すると、大きな窓にできない
  • ・引き違い窓と比較すると高い
  • ・窓の場所によっては、開けた扉が邪魔になる場合がある

ちなみに、縦すべり出し窓に似た構造で、横すべりだし窓というものもあります。この二つの違いについては、防音上はほとんど同じ効果が得られると考えて構いません。

■FIX窓を採用する時の注意点
FIX窓のデメリットは、以下のような感じです。

  • ・開閉できないので、換気機能を持たない
  • ・窓ガラスの間を自分で掃除することができない

既に引き違い窓が設置されている場合はどうする

ここまでは、防音室の窓についてできるだけ窓の防音性を高めるため、窓の構造の選び方について解説してきました。上述しているように、日本国内で最も普及している引き違い窓は、開閉のスムーズさが最も重要視されていることから、どうしても隙間が多くなってしまうのです。そのため、楽器用防音室など、非常に大きな音を生じさせることが前提の場合、あまりオススメできないわけです。

ただ、防音室の窓について、縦すべり出し窓やFIX窓がオススメといっても、既存住宅をリフォームして防音室を作る場合、「既に引き違い窓が設置されているのだけど…」と困惑してしまう方が多いと思います。新築の際に防音室を設けるのであれば、窓の構造も自由に決められますが、リフォームの場合、そうはいきません。

そこでここでは、既に引き違い窓が設置されているケースでの対処をご紹介します。

マンションの場合

まずは、マンションなどの集合住宅で、防音室を作る場合です。マンションなどであれば、防音性を考えて「縦すべり出し窓」や「FIX窓」にしたいという要望があっても、それは不可能だと考えておきましょう。というのも、マンションであれば、窓の素材などは全室共通で規格通りの物がはめ込まれますし、基本的には引き違い窓が採用されていると思います。そして、マンションの窓というのは、分譲マンション等、住人が購入しているような物件でも、共用部分とみなされ、住人の意思でサッシを交換することなど出来ないのです。

こう聞くと、「マンションの防音室は、どうしても窓が弱点になるのか…」と不安になってしまうものですが、安心してください。実は、マンションの防音室であれば、引き違い窓でも特に問題は生じないと思います。

というのも、マンションは、その構造的な問題から、窓の目の前の他のご家庭の部屋が近接するようなことはほとんどありません。タワーマンションなどを考えていただければわかりますが、目の前は単なる空間となりますので、窓が引き違い窓で、多少の音漏れがあったとしても迷惑を掛ける人がいないわけなのです。

こういった理由から、マンションの一室を防音室に作り替える防音工事の時には、引き違い窓を二重サッシにすれば問題ないと考えておきましょう。なお、稀に窓の目の前に他のご家庭の部屋が存在するケースもありますが、この場合でもそれなりに距離が離れているはずですので、経験上、窓からの音漏れでトラブルになるなんてことはありません。

戸建て住宅の場合

次は、戸建て住宅にリフォームで防音室を設ける場合です。新築時に防音の事を重視しているという場合以外、一戸建て住宅でもほとんどの窓に引き違い窓が採用されているはずです。ただ、戸建て住宅の場合、マンションよりも対処しやすいので安心してください。

というのも、戸建て住宅の場合、「窓は共用部分だからリフォームできない!」などといった制限なく、住人さんの考えによって自由にリフォームすることが可能です。したがって、コストがかかっても高い防音性を実現したいという場合、既存の引き違い窓を撤去して、新しくFIX窓や縦すべり出し窓を取り付けたうえで、二重サッシにするのがオススメです。
なお、ドラム室など、特に高い防音性が求められる場合には、二重FIX窓にするのがオススメです。この場合、窓の開閉ができなくなりますので、室内の換気性能に注意してください。日本の住宅は、建築基準法によってさまざまなルールが設けられており、換気量や採光に関する基準を満たしておかなければいけません。採光に関しては、二重窓にするだけですので基本的に考えなくても良いのですが、換気に関しては法で定められた換気量を確保できるような機械換気設備を導入する必要があります。(※窓を塞いで壁にするケースもありますが、この場合、法律上の採光面積を守る必要があります。)

ちなみに、建てたばかりの戸建て住宅で、「新品の窓を取り壊すのはちょっと気が引ける…」という方も少なくないと思います。この場合は、最終手段として3重サッシという方法で高い防音性能を発揮させる方法があります。窓の防音対策と聞くと、基本的に2重サッシをイメージする方が多いのですが、実は戸建て住宅の窓対策では、三重サッシが常套手段となっています。実際に、我々のような防音工事の専門業者でも良く採用する方法と言えるでしょう。三重サッシであれば、既存窓をそのままにして、サッシを追加するだけですので、サッシごと交換するよりも低コストに収まるのです。そして、音を遮断するものが増えるわけですので、確かな防音効果が得られます。
ただ、三重サッシに関しては、基本的にはオススメしていないと思っておきましょう。というのも、窓としての使い勝手が致命的に悪くなるからです。窓を開けるにしても閉めるにしても、同じ行動を3回しなければいけませんし、窓の掃除は本当に面倒になります。もちろん、防音室の窓ですので、そこまで頻繁に開閉しないとは思いますが、ベランダに出るために使用する窓などとなると、後悔するのは確実だと思います。

まとめ

今回は、防音室における窓について解説してきました。スタジオレベルの高性能な防音室を求める場合、窓を無くしてしまうのが最も高い防音性能を発揮するのは間違いありませんが、一般の木造住宅に作る防音室の場合、無窓状態は建築基準法に引っかかってしまうことから、なかなか実現が難しいという問題があります。建築基準法と窓の関係については、また別の機会にご紹介しようと思いますが、木造住宅に防音室を作る場合、無窓状態で実現することは法的になかなか越えられないハードルがあると考えておきましょう。

そこで、防音室の弱点になりうる窓については、この記事でご紹介したようなことを頭に入れておき、対策を施す必要があります。近年では、窓そのものの性能が飛躍的に向上していますので、きちんと対策さえ行っていれば十分な性能を発揮する事が可能です。

スタッフ A

大阪で20年間にわたって防音工事に携わってきました。
防音工事に関しての事、音に関する豆知識などを配信しております。

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