近所の犬の鳴き声や子供の声がうるさい!外部騒音の侵入に窓の防音対策が有効と言われる理由は?
防音工事と言えば、百万円以上のお金をかけて本格的な防音室を作るというリフォーム工事をイメージする方が多い事でしょう。もちろん、この認識はあながち間違っているわけではなく、もともと防音工事と言うものは、「自宅で楽器の練習をしたい」「趣味のホームシアターを設置したい」など、一般住宅では必要としないレベルの防音性能を求める方のみが行う特殊な工事と言う扱いでした。
しかし、これが近年では、マンションに住んでいる方が「上の階に住む人の足音が…」「お隣の方の話し声が…」など、生活騒音を防止するために防音工事を検討する方が急増しているのです。こういった状況は、マンションなどの集合住宅で生活する方が増えていることや、戸建て住宅でも、隣家との距離が近くなってきたことで、他人の音が聞こえやすくなってしまったというのが大きな要因です。音は、振動で伝わるものですし、距離が離れれば離れるほど減退するものなのですが、現在の住環境は、各家庭の距離が非常に近くなったことで、ちょっとした音でも気になってしまうという方が多いのだと思います。
さらに2020年以降は、新型コロナウイルス問題の影響で、昼間でも在宅している方が増えてしまい、自宅で仕事をしている時に、家の前を通る車の音がうるさくて…と言った問い合わせが急増しています。こういった時には、窓の防音対策が有効と説明されると思うのですが、そもそもなぜ窓の防音がこういった音の問題に有効なのか不思議に思ったことがある人も多いと思います。
そこでこの記事では、なぜ窓が防音の視点で弱点になるのかを簡単に解説しておきます。
窓が防音の弱点になるのはなぜ?
それでは、住宅で起きる騒音問題において、外から侵入する音について、窓が弱点になっていると言われる理由についてご紹介していきましょう。
近年では、木造戸建て住宅でも、高気密・高断熱がキーワードになっていますので、一昔前の木造住宅よりも高い防音性能を持っていると言われるようになっています。しかし、家と言うのは、そこに存在するだけで徐々に劣化が進行してしまいますし、新築時は高い気密性があった家でも、徐々に隙間ができてしまい、音の侵入に悩まされてしまうようになります。
さらに、新築したばかりなのに、昼間に自宅でテレワークをする場合、道路騒音や近所の犬の鳴き声など、外部から侵入する騒音に悩まされてしまうケースも多いと言われています。そして、こういったケースでは、そのほとんどが窓が弱点となっているのです。
ここではまず、なぜ防音の観点で考えると、窓が弱点になってしまうのかをご紹介します。
①外壁と比較すると薄いから
家の防音性能を考えた時、外壁に取り付けられている窓が弱点になるという話はよく耳にすると思います。もちろん、これに関しては「窓を開け放っているから」と言う理由ではなく、きちんと閉めていた場合でも窓から音が侵入してしまうという意味です。それでは、窓をきちんと閉めているのに音が侵入してしまうのはなぜなのでしょうか?
これに関しては、非常に単純な理由で、一般的な窓は「外壁よりも圧倒的に薄いから」と言うのが理由です。戸建て住宅の外壁は、コンクリートで作られているマンションと比較すれば十分に薄いと言えるのですが、それでも、外壁材の中に木材の合板や断熱材、石膏ボードなどで構成されるため、一般住宅の外壁で155mm程度の厚みを持っています。ちなみに、断熱材として用いられているグラスウールやロックウールなどは、高い吸音性を持っている素材で、これがあることも外壁の防音性を高める理由になっています。
これが窓ガラスになるとどうでしょうか?窓を閉めていればそれなりに音を遮断してくれる窓ガラスですが、その厚みはなんと3~5mm程度しかなく、外壁と比較すれば圧倒的に薄くなってしまうのです。したがって、窓が無い外壁のみの部屋が「80dB⇒40dB」まで防音できたとしても、窓が存在すれば「80dB⇒60dB」までしか音がおさえられなくなり、騒音に悩んでしまう方が多くなるわけです。
実際に、楽器用の防音室を作る場合、外壁部分の窓を壁で潰してしまうという対策がとられることも多いです。
②窓に隙間が生じるから
窓をきちんと閉めていれば、「音の侵入口がなくなる!」と言うイメージを持っている方は多いですよね。確かに、高気密化が進んでいる近年では、樹脂サッシが採用されているケースが多く、窓部分の気密性も非常に高まっています。
しかし、現在でも、材料が安価なことから、アルミサッシを窓に採用しているケースはありますし、築年数が経過している家では、多くの場合アルミサッシが採用されています。このアルミサッシは、素材が軽量なことから、そもそも遮音性が高くない建材の上、窓を閉めていてもさまざまな部分に隙間が生じてしまい、その隙間から音が侵入してしまっているのです。
例えば、窓の開け閉めをスムーズにするため、レール部分には多少の遊びを持たせていますし、サッシの合わせ目やサッシ枠自体に隙間が生じてしまうことで、そこから音が侵入します。さらに、サッシも経年劣化が進みますので、徐々に隙間が拡大していってしまい、築年数の経過とともに騒音の被害が大きくなってしまうという問題もあるわけです。
このように、窓は使用している建材によって、音を防ぎきれない構造になってしまうことから、防音上の大きな弱点になってしまうと考えてください。
上記のような理由から、交通量が多い幹線道路沿いの住宅などでは、外から侵入する音に悩まされてしまうことが多くなり、弊社のような防音工事業者に相談した場合、窓の防音を勧められるわけです。
窓が防音対策について
それでは、窓の防音対策としてどのような手段が最適なのでしょうか?防音工事業者に、「隣接する道路から車の音が…」「目の前の公園で遊ぶ子供の声が…」「近所の犬の鳴き声が…」と言った理由で相談した場合、ほとんどの防音工事業者は、窓部分を二重窓にするリフォームと換気口があれば防音型の換気口にする工事を提案すると思います。
二重窓の工事は、以下のような点から窓の防音性を高めてくれます。
- 空気層ができて音が通りにくくなる
二重窓のリフォームは、既存窓の内側にもう一枚窓を設置するという工事になります。要は、内窓を設置するという方法ですね。これにより、窓と窓の間には空気層が作られることになり、この空気層で音が伝わりにくくなるのです。外から侵入した音は、内窓に反射するものとぶつかり合い、徐々に減退して小さくなります。そのため、最終的に内窓を通過して室内に侵入する音がかなり小さくなるわけです。 - 気密性が高くなる
これは分かりやすい特徴ですね。上述したように、窓の防音性の低さは、サッシの隙間などから音が侵入することにあります。要は、気密性の低さで音の侵入を許してしまっているわけですね。これが、窓が二枚になれば、それだけで気密性が高くなります。さらに、防音を重視する場合、開閉できないFIX窓にしてしまえば、防音性能が非常に高くなります。 - 複数の周波数に対応できる
既存窓ガラスと、新たに設置する窓ガラスの種類を変えることで、複数の周波数の音を防ぐことができるようになります。ガラスの厚みが変われば、対応できる音の周波数が変わりますので、二重窓にすることで、いろいろな音を遮断できるようになるわけです。この辺りは、現地調査で、どの窓を採用するのか業者と相談することになると思います。
このように、窓部分を二重窓にすることで、さまざまな効果を得ることができます。
注意が必要なのは、近年窓ガラスとして人気になっている『ペアガラス』が、二重窓と同じ効果があると考えてしまう人がいる点です。これは、一つの窓を2枚のガラスで構成するというものなのですが、内窓を設置する二重窓とは全く異なるので、ペアガラスで防音性が高まるとは考えない方が良いですよ。
ペアガラスも、ガラスとガラスの間に空気層ができると考える方がいますが、空気層は狭すぎると意味がありません。また、ペアガラスは、ほとんどの場合、同じ種類のガラスを2枚組み合わせるのですが、その場合、同じ振動の音しか防ぐことができないので、窓の防音性能が高まるわけではないのです。しかも、サッシは一つですので、その部分に生じる隙間からは音がいくらでも侵入できますし、二重窓ほどの防音性能は求められないと考えましょう。
なお、真空ガラスなど、『防音ガラス』として販売されているタイプは、十分に窓の防音対策として効果を発揮します。
まとめ
今回は、戸建てやマンションの部分的な防音リフォームとして非常に人気になっている窓の防音対策について、そもそも窓部分がなぜ防音上の弱点とみなされてしまうのかをご紹介してきました。
この記事でご紹介したように、窓は、外と内を隔てるための建材としては、他の部材よりも圧倒的に薄い素材です。外壁はもちろん、玄関ドアなどと比較しても、何十分の一程度の厚みしかないことから、十分な遮音性能などそもそも持っていないわけですね。さらに、サッシ部分に関しては、スムーズな開閉を実現しなければならないわけですから、ある程度の遊びを持たせておかなければならず、それが隙間となり音の侵入口をなるわけです。
逆に言えば、窓の弱点がわかれば、何を対策として施してあげれば、音の問題を解消できるのかがわかります。換気などは他の設備に任せるから、とにかくに遮音性を上げたいという場合、窓を無くしてしまうのが最も早く、楽器用の防音室などになると、窓を潰す方向で打ち合わせが進むケースも多いです。ただ、リビングの窓などになると、採光の役割もあるわけですので、この場合は、二重窓などとして、窓そのものの防音性を高める対策が施されるわけです。
現在、外からの音の侵入に悩まされていて、何が原因になっているのかも分からない…と言う場合、お気軽に弊社までお問い合わせください。