ピアノ用の防音室を作りたい!防音工事を依頼する前に知っておくべき基礎知識

ピアノなどの楽器の演奏を生業にしている方であれば、自宅でも練習する時間をとるために、防音室を作る方がほとんどです。

一昔前までであれば、庭付き一戸建てが主流で、家ごとの距離がそれなりに離れていたこともあり、昼間などであれば、プロの演奏家が自宅でピアノの練習をしてもトラブルになるような事はなかったと思います。しかし近年では、マンション暮らしの方も多くなっていますし、戸建てにしても隣家との距離が非常に近く、夜に楽器の練習をしようものならすぐに騒音トラブルに発展してしまう…なんてことになります。

まずおさえておきたいのは、ピアノ用の防音室を作る場合でも、公衆電話ボックスのように既に防音対策が施された小さな部屋を部屋の隅に設置する方法と、既存の部屋に防音リフォームを施し防音室を作るという手法が存在します。この二つの方法は、根本的に施工方法が異なることから、同じピアノ用の防音室が仕上がるにしても、費用的な違いも非常に大きいです。

それでは、自宅に防音室を作りたいと考えた場合、どちらの方法で工事を進めてもらうべきなのでしょうか?ピアノ用の防音室でも、100万円程度でできるものから最大350万円ぐらいかかる場合など、ちょっと信じられないほどの価格差が生じてしまいますので、自宅に最適な方法を選ぶためにも、その基礎知識はおさえておきましょう。

防音室の考え方を押さえておこう!

防音室を作ろうと業者に連絡した時には、必ず「どの程度の防音性能が必要なのか?」から質問されることになります。というのも、同じ防音室でも、演奏する楽器によって必要な施工内容は異なりますし、どのような時間帯に演奏するつもりか、もともとの家の構造がどうなっているのかによって、対策が全く変わってしまうのです。

防音工事は、性能が不足してしまうと、いくらお金をかけていたとしても苦情の原因となってしまいます。そうはいっても、際限なくコストをかけるわけにはいきませんし、過不足のない防音性能をきちんと見極める必要があるのです。
防音性能は、以下のように決めるのが一般的ですので、まずはここを押さえておきましょう。

使用用途や楽器の種類

防音室は、使用用途によって必要な性能が全く変わります。最近増えているのが、動画配信サイトなどで、ライブ配信やゲーム実況を行うなどと言った方で、この場合は人の声のみですので簡易的な防音でも十分な場合がほとんどです。

しかし、ピアノやドラム、トランペットなどの楽器の演奏になると、高い防音性能が必要になります。
例えば、人が普通に話すときの声は、おおよそ40dB程度と言われています。つまり、この音を聞こえない程度(20dB相当)にしたいというのであれば、Dr-20程度の防音性能を実現すれば良いのです。(Drは防音性能の数値で、実際に聞こえる音量は「音量(dB)-防音性能(Dr)」で計算します。)

これに対して、ピアノの音量というものは、90~100dBもの大きな音量になりますので、これを外に聞こえないレベルにしようと思えば、Dr-70程度の防音性能が必要になってしまう訳です。さらに、床に接地している楽器(ピアノ・ドラム・マリンバ・コントラバスなど)については、その足から音の振動が床に伝わってしまうため、音を防ぐだけでなく防振性能まで高めなければいけないのです。こういった理由から、本格的なピアノ室になると、部屋の中に部屋を作るといった感じで、防振ゴムを敷いた床(浮き床)の施工を行う訳です。

防音工事業者に相談する時には、防音室の使用目的、防音室の中で演奏する楽器などをしっかりとまとめておきましょう。

家の構造について

一般の方はあまり知らないと思いますが、家の構造によってそもそもの防音性能が異なります。家の構造とは、木造やRC造などのことで、どのような方法で家が建てられているのかによって、必要な防音対策が変わってくるのです。

一般的に、建物の構造による遮音性能の違いは「RC造>SRC造>S造>木造」という関係になっており、RC造の建物であれば、他の構造よりも防音室に求める遮音性能が少なくてすむわけです。

例えば、ピアノ用の防音室としてDr-70程度の防音性能が欲しいとなった場合、RC造の建物であれば、もともとDr-50程度の防音性能を持っていることから、「RC造の防音性能+防音室の防音性能」という感じで総合的に考えると、防音工事で追加しなければならない性能は少なくて済み、工事費用を抑えることが可能です。

これに対して木造住宅になると、もともと躯体の持っている防音性能が低いため、防音室自体の防音性能を高めなければいけないわけです。こういった事から、家の構造によって防音室を作るためのコストが変わってしまう訳です。

ちなみに、防音室を作る時には周辺環境についても考慮しなければいけません。例えば、幹線道路沿いでそれなりに騒音がある環境と閑静な住宅街では必要な防音性能は変わってきますよね。さらに、マンションの一室に防音工事を行う場合、上下左右に「音漏れさせてはいけない部屋がある」よりは、一部の方向だけ音漏れを防ぐ部屋の方が安くつきます。つまり、マンションの場合は、防音室の配置も考慮すべきということです。

演奏時間について

最後は、楽器の演奏を「何時までしたいのか?」という問題です。当然、昼間と夜間では周辺環境の音が全く異なります。昼は、人間が活動する音がそこら中で発生していますし、多少の音漏れであれば、目立たないなんてことも珍しくありません。しかし、真夜中になると、周囲は寝静まっていますので、ちょっとの音漏れでも騒音トラブルになってしまう可能性があります。

ちなみに、環境省などが公表している騒音レベルなどでも、人の生活環境で、気にならない音のレベルについては、昼と夜で10dB程度の違いがあります。

つまり、夜中など、24時間いつでも楽器の練習ができるようにしたいというのであれば、かなり高いレベルの防音性能が求められるため、防音室にかかるコストも上がってしまいます。

防音室の費用について

ピアノなどの防音室を検討した場合、最も気になるのが「いくらかかるのか?」という費用の問題ですね。防音工事は、出来上がった防音室内の音響なども計算しなければならないため、非常に専門性が高く、経験も技術も必要な特殊な工事になります。そのため、一般の住宅リフォームなどと比較すれば、かなり割高に感じてしまうことでしょう。

そもそも、一から防音室を作る時には、ドアなどの建具に関しても専用の物を採用しなければいけませんし、ドア本体だけで数十万円かかってしまうなんてことも珍しくないのです。なお、安く抑えたいのであれば、ユニット型の防音室を設置するという手法もありますので、ここでは、ユニット型防音室とリフォームで防音室を作成するときにおおよその費用感をご紹介しておきます。

ユニット型防音室の費用

まずは、ユニット型の防音室を設置する費用です。カワイやヤマハなど、大手楽器メーカーからユニット型防音室が販売されていますので、それを購入し部屋に設置するという形になります。ユニット型防音室の場合、壁にくぎを打ち込むといった事もないので、賃貸などでも設置できる場合がある事や、設置工事が短期間で終わるので、すぐに防音室を使い始められるというのがメリットです。

なお、ユニット型防音室にもさまざまな種類が存在しており、10万円程度の非常に簡易的な防音ユニットから、100万円前後のもの、200万円以上するような自由設計のユニットまで存在します。

ただし、防音性能に関しては、最大でもDr-35~Dr-40程度となることから、ドラムなどの大きな音が生じる楽器の演奏が目的であれば、RC造など、もともと遮音性能が高い建物でないと厳しいと思います。

リフォームで防音室を作る費用

次は、皆さんがイメージしている、1部屋を解体して防音室に作り替えるという手法です。この場合、一から防音室を作り上げていきますので、工事に時間はかかるものの、高い防音性能と使いやすさを実現することが可能です。ただし、リフォームが不可となる賃貸住宅などでは採用することができない方法です。費用に関しては、広さや求める防音性能、仕様などによって異なりますが、6畳で200~350万円程度がピアノ室の相場です。

なお、上述したように、「24時間演奏を想定している」と「昼間しか演奏を予定していない」では、必要な防音性能が全く異なりますんので、後者の目的の場合は、もう少し安価な費用で防音室を作ることができるでしょう。

まとめ

今回は、ピアノなど、楽器の演奏を目的として自宅に防音室を作ろうと考えている方に向け、防音工事業者に連絡する前に押さえておきたい基礎知識をご紹介してきました。

防音工事は非常に専門性が高いことから、防音工事業者に全て任せておけば良いと考えてしまっている方が多いです。確かに、工事に関しては業者に全て任せれば良いのですが、どんな目的で使用するのか、どの程度の性能が欲しいのかは、きちんと考えておかなければ、中途半端に要望が業者に伝わり、仕上がった防音室に不満を感じてしまう…なんて結果になる危険があります。

特に、ここ数年、防音工事業界に一般のリフォーム業者が進出してきており、何も考えずに防音室の依頼をしてしまうと、防音性能はあるけれど、室内に音が反響しすぎてしまい、とても楽器の練習などできない…なんてことになりかねません。防音室は、単に音漏れを防げばよいのではなく、その中で快適に楽器の演奏ができるように、音響まで計算して施工しなければならないものです。こういった部分は、職人の経験がものを言う繊細な計算が必要になるので、本当に技術を持った業者なのかを見極める程度の知識がお客様側にも必要と考えておきましょう!

スタッフ A

大阪で20年間にわたって防音工事に携わってきました。
防音工事に関しての事、音に関する豆知識などを配信しております。

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鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の建物にショールームがある会社さんが多い中、特に施工後にショールームと性能や音の反響がちがうといったトラブルが戸建てのお客様に多い業界ですが、町家再生事業として難易度の高い防音室を防音性能が最も出にくいとされる木造町家のショールームをご用意いたしました。

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