一戸建てでピアノ用防音室の導入を検討している方が押さえておきたい、マンションとの違い
今回は、一戸建て住宅に住んでいる方が、ピアノ用防音室を導入する場合の注意点などについてご紹介します。
一般的に、近隣住宅との音の問題については、マンションやアパートなど、集合住宅で発生するもので、家が独立している一戸建てなら騒音トラブルの心配はないと考えてしまう人が多いです。確かに、一昔前のように、庭付き一戸建てが当たり前というような状況であれば、常識外の大きな音を出さない限り、近隣住人と音の問題でトラブルになる…なんてことは少なかったです。しかし、近年の戸建て住宅は、狭小地にひしめき合うように建てられるようになっていることから、日常生活を普通に進める時に生じる生活音ですらトラブルのもとになってしまうケースが多くなっています。要は、家と家の距離が近くなってきたことで、集合住宅並みに音が伝わりやすくなってしまっているのでしょう。
このような状況下で、自宅でピアノの演奏などを検討している場合、防音室の設置が必要不可欠だと考えるべきでしょう。生活音ですら騒音トラブルを引き起こしてしまう場合があるのですから、楽器による大きな音は、しっかりとした防音対策を行わなければ、防ぎようがない時代になっているのです。
そこでこの記事では、戸建て住宅にピアノ用防音室を導入しようと考えている方に向け、事前に押さえておきたい基礎知識をご紹介します。
戸建てと集合住宅で、ピアノ室に違いがあるの?
まずは、ピアノ用の防音室について、戸建て住宅とマンションなどに施工するケースでは、どのような違いが存在するのかを簡単にご紹介しておきましょう。戸建て住宅とマンションなどの集合住宅に防音室を作る場合、最も大きな違いとしては「ピアノ室の下で別の住人が生活している」という点でしょう。戸建て住宅は、隣家との距離が非常に近くなっていることで、集合住宅並みに音が伝わりやすくなっていると言われますが、階下で別の住人が生活することはないので、下からクレームを入れられる心配はありません。特に、ピアノの防音対策については、空気音の対策が重要と考えられるのですが、多くの場合、ピアノの振動による個体音が階下に伝わることで、下の階から苦情が来ることになります。
こう聞くと、戸建て住宅にピアノ室を作る方が簡単そうに聞こえますが、そうでもない事情というのが存在します。それは、マンションはRC造で非常に頑丈な構造をしている一方で、戸建てのほとんどは木造という構造の違いが関係します。ここでは、戸建てにピアノ用防音室を作る場合に注意しておきたいマンションとに違いをご紹介しておきます。
戸建てと集合住宅で、ピアノ室に違いがあるの?
戸建て住宅にピアノ用防音室を作りたいと考えている人が注意しておきたいのが、希望の部屋に防音室を作ることが難しいケースもあるという点です。これについては、建物の構造的な問題となりますので、どうしても希望する部屋を防音室にしたいという場合、防音工事以外の部分に多額のコストがかかってしまうことになります。
どういうことかというと、本格的な防音室というのは、通常の居室とは比較にならないほどの重量になってしまうので、重さなどの問題から、木造住宅の2階以上にあるお部屋では、高性能な防音室を施工することができない可能性があるのです。最近では、狭小地に3階建ての建物を建てるケースが多くなっていますが、この場合、1階部分の大半のスペースを駐車場として利用するケースが多く、防音室に作り替えられるような部屋が無いケースが多いです。その場合、必然的に2階以上の部屋を防音室にするのですが、重量の問題から性能に限界ができてしまうのです。なお、どうしても高性能な防音室にしたいという場合、耐震補強など、建物そのものの補強を行ったうえで防音室の施工となるので、全体的なコストがかなり高くなってしまうと考えておきましょう。
なお、ピアノ用防音室のもう一つの注意点としては、ある程度の部屋の広さを確保しておかなければならないということです。ピアノ用の防音室について、既存の部屋を一室まるごとリフォームして防音室にする場合、元の状態よりも一回り小さな仕上がりになってしまいます。
したがって、防音室に設置するピアノの大きさのこともよく考えて、どの部屋を防音室にするのか考えておかなければいけません。ピアノにも、アップライトピアノとグランドピアノ、電子ピアノなど、いくつかの種類が存在しますが、アップライトピアノを設置する時には、演奏スペースのことを考えると、最低でも2~3畳は必要です。これがグランドピアノになると、最低でも4畳程度はないと使いづらい防音室になってしまうでしょう。
戸建て住宅に防音室を設置する場合、上記にようなポイントをしっかりと押さえておきましょう。
ピアノ用防音室は、ピアノの種類によって仕様が変わる
一口に「ピアノ用防音室」といっても、防音室内で使用するピアノはさまざまな種類が存在します。例えば、キーボード・電子ピアノ・アップライトピアノ・グランドピアノなど、お客様によって防音室内で演奏するピアノの種類は異なるのですが、どれを演奏する想定なのかによって、音色や鍵盤のタッチはもちろん、大きさや重さ、形状などさまざまな面で違いが存在します。
例えば、アップライトピアノとグランドピアノについて、それぞれの大きさを比較してみると、以下のような感じになります。
- アップライトピアノ・・・奥行60cm×幅150cm程度で重さは210~275kg
- グランドピアノ・・・奥行150cm×幅150cm程度で重さは255~410kg
それぞれのピアノの大きさは、メーカーなどによって異なりますが、上記のようにピアノの種類によってもかなりの格差が生じてしまうのです。したがって、どちらの楽器を設置する予定なのかによって、防音室の仕上がりについて、必要な広さが大きく異なります。
なお、アップライトピアノとグランドピアノについて、音色の幅の面では、グランドピアノの方が圧倒的に大きいと言われています。ただ、ピアノが出す音のエネルギーで考えた場合、大きさが全く異なる2つのピアノは同じ程度の音エネルギーと言われているのです。もちろん、演奏者の技量や引き方などによって、音量は違ってきます。
このように、ピアノ用の防音室を作る場合には、どのようなピアノを設置する予定なのか、演奏者の技量はどの程度なのかによって、防音室の使用や広さが変わると考えてください。
ピアノ防音の基本
ここまでは、戸建て住宅にピアノ用の防音室を導入しようと考えた時に知っておきたいポイントを簡単にご紹介してきました。それでは最後に、ピアノ用の防音室について、どのような視点で防音対策を行っているのかについてもご紹介しておきます。この部分を抑えておけば、専門業者に防音工事を依頼せずに、自分で対策を施す時にも、効果的な防音対策が行えるようになると思います。
一般的に、ピアノの防音と聞くと、直接的に耳に聞こえるピアノの音色が外に漏れるのを防ぐものと考えがちです。しかし実は、ピアノの防音に失敗してしまうのがこういった考えなのです。皆さんが押さえておくべきなのは、ピアノは「音には伝わり方に2つの種類がある」ということです。
空気伝搬音の対策
空気伝搬音が、皆さんがイメージするピアノの音色と考えておけば良いです。ピアノは、鍵盤をたたくことで音が出る楽器なのですが、鳴らした音が空気を通して伝わっていきます。そして、この空気伝搬音は、室内で聞こえるのはもちろん、窓やドアの隙間などから漏れる、壁などを通過することで、外部に騒音として伝わっていきます。
したがって、まずはこういった空気伝搬音を防ぐために、窓やドアの隙間を埋めたり、壁などを通過する音を減らすといった対策が必要になるのです。なお、ピアノの空気伝搬音に関しては、アップライトピアノとグランドピアノで違いが存在します。アップライトピアノは、ピアノの背面から音が出るようになっていますが、グランドピアノは上下・横に響きやすくなっています。ピアノの空気伝搬音対策は、こういった楽器の特性も考えて設置しなければならないと思っておきましょう。
固体伝搬音の対策
固体伝搬音とは、壁や床、天井などの建材を振動として伝わる音のことを指しています。ピアノは、楽器本体が床に接していることから、楽器を演奏した時の振動が床に伝わってしまいます。上述したように、ピアノによる騒音トラブルというのは、打鍵音やペダルを踏む時の振動が、床を通して階下に伝わることで、苦情につながってしまう…という特徴があるのです。
こういったことから、本格的なピアノ用防音室を作る場合には、浮き床構造を作り、振動を伝わりにくくするという対策が施されます。なお、個人の方が自分で防音対策を行う場合、防振マットなどをピアノの下に設置するケースが多いのですが、マンションなどであれば、これだけでは階下に振動音が伝わってしまう可能性が高いです。
まとめ
今回は、自宅にピアノ用防音室を導入しようと考えている方に向け、戸建てとマンションにおけるピアノ用防音室の違いについて簡単に解説してきました。
マンションなどで楽器を演奏する場合、他のご家庭と構造物でつながっていることから、防音工事が必要不可欠になるということは誰もが理解していると思います。しかしこれが、戸建て住宅でピアノの演奏するとなると、防音室などを用意しなくても、騒音トラブルの心配はないと考えてしまう方が多いようです。これは、戸建て住宅は、家と家が独立しているうえに、それなりに距離が離れていた時代の常識が現在でも通用すると考えてしまう方が多いからでしょう。
ただ、大阪市内など、都市部の戸建て事情を考えてみると、一昔前までの戸建て住宅とは全く異なる状況になっているということを忘れてはいけません。現在の戸建て住宅は、家と家の距離が数十cmしか離れていない…なんて状況が当たり前のようになっており、なんとトイレやお風呂の排水音などで騒音トラブルが発生してしまうケースがあるほどなのです。つまり、夜間も楽器の演奏を想定しているという場合、防音室を導入しなければ、ほぼ間違いなく騒音トラブルに発展してしまうと考えておいた方が良いですよ。
現在、ピアノ演奏用の防音室をご検討中の方がいれば、ぜひお気軽に弊社までお問い合わせください。なお、防音工事の匠では、日本の戸建て住宅に最も近い条件で防音室のモデルルームを作っています。「防音室は欲しいけれど、本当に音が防げるのか心配…」などという方がいれば、まずは弊社の防音体験ルームに足を運んでみてはいかがでしょうか?