ドラムは初心者の練習でも防音対策が重要!ドラムを始めたいと考えている方が知っておくべき防音の基礎知識
さまざまな楽器に対する防音工事の中でも、特に難易度が高いのがドラムなどパーカッション用の防音工事です。実際に、施工業者の知識不足から防音効果が期待できない防音室を施工され、高いお金を支払ったのに近隣住民とのトラブルに発展するケースも報告されています。
それでは、これから一戸建て住宅やマンションなどに住んでいる方が、自宅で時間を気にせずにドラムの練習ができるドラム用防音室を作りたいと考えた場合、どういったことに注意しておけば良いのでしょうか?
この記事では、さまざまな楽器の中でも、特に高い性能が求められるドラムに対する防音工事の基礎知識をご紹介します。
ドラム用防音工事を行う時の注意点について
それでは、自宅にドラム用の防音室を作る場合の注意点についてまとめていきます。この記事の他のサイトでもご紹介していますが、音の伝わり方は大きく2つに分けることができます。
- ①空気を振動させて伝わる音(空気伝搬音)
- ②固体を振動させて伝わる音(固体伝搬音)
なお、固体を伝わって発生した音から放射される振動が空気を伝わる音もあります。
ドラムは、皆さんもご存知の通り、床に置いた太鼓を叩いて音を出す仕組みですので、床に振動がダイレクトに伝わっていきます。手に持って演奏を行うような楽器の場合、ダイレクトに振動が伝わることが無いので、振動対策はそこまで高度な物を必要としません。ただ、サックスなどのように、振動した空気が床を振動させることがありますので、何の振動対策も必要ないというわけではありません。
ドラムセットは、太鼓だけでなく、ハイハットやシンバルも組み合わされています。基本的には、ドラムを演奏した時の周波数は20hz~15khzがピークだと言われるのですが、さまざまな楽器が組み合わされていることから、低音から高音までかなりの幅で高い音圧を持っている楽器だというのがドラムの特徴です。ドラムは、最大で110dBに迫るほどの音圧を持っているうえ、直接打撃を与えて音を出す仕組みですので、ドラム初心者の方でも腕力や脚力によっては結構な音が生じます。さらに注意してほしいのは、音が発生した時から最大音圧になるまでのスピードが非常に早く、すぐに音による衝撃が壁に届きます。したがって、狭い部屋にドラム用の防音工事を行うのは、非常に難しくなるという特徴があります。
ドラム用防音工事は床の対策が重要
ドラム用の防音室を作る時には、床に対する衝撃音の事を考えなければいけません。
ドラムセットの中でも、バスドラムを叩くときには、足でキックペダルを踏みこむという動きになりますので、ダイレクトに床に振動が行きます。音は、壁を貫通しますので、空気を振動させて伝わる音と床を振動させて伝わる音、両方の対策をしなければいけません。例えば、一戸建て住宅の一階部分でドラムを叩いたとしても、その衝撃の振動は建物全体に伝わっていきます。そしてそこからさらに、外壁を伝わった音が再放射されて、外に音が漏れていくという仕組みになります。
また、ドラムによる音は、低音域でも大きな音が発生するので、二重壁にしたときに、低音の共鳴現象による透過損失の減少があります。ドラム用の防音工事は、この部分にもかなり注意が必要です。
ちなみに、ライブハウスや貸スタジオなどが地下で営業することが多いのは、ドラムなどの振動を止めやすいのが理由です。また、鉄筋コンクリート造の建物は、床や壁の質量(重さ)と頑丈さを兼ね備えていますので、音や振動を止めやすいです。ただ、マンションなどで本格的なドラム防音室を作る場合、防音室の荷重の関係から、2階以上に防音工事を施すのが難しい場合があります。上述しているように、ドラムは、床に衝撃がダイレクトに伝わることから、床の防音対策が非常に重要です。時には床にコンクリートを増し打ちしたりするのですが、マンションなどの集合住宅の場合、こういった工法が難しいです。一戸建て住宅であれば、しっかりとしたドラム用防音室を実現しやすいですが、マンションの場合はいろいろな制限があるので、その辺りは注意しましょう。
ドラム用防音工事の検討ポイント
それでは次に、実際に自宅にドラム用の防音室を作ろうと考えている方が、事前に検討しておくべきポイントをいくつかご紹介します。
建築物の構造について
一つ目のポイントは、防音工事を施す予定の建物構造です。建築物に用いられている素材が、鉄筋コンクリートか、鉄骨か、木材かで、防音対策のしやすさが大きく変わります。
一般的に、鉄骨造は頑丈で広いスペースを確保しやすい反面、振動音が伝わりやすいので、ドラム用の防音室を作るのが難しいとされています。反対に、鉄筋コンクリート造の場合、素材の重量があるので、高い防音性能を発揮しやすいです。コンクリート自体が遮音性が高い素材ですので、防音室が作りやすいです。
なお、日本の戸建て住宅で最も主流な木造については、素材自体は高い遮音性を持っているとは言えません。ただ、適切な防音対策を施すことで、24時間演奏可能なドラム室を作ることは可能です。一戸建て住宅の場合、防音対策の手段に制限をかけなくても良いので、コストはかかるものの、高い防音性能を発揮できます。なお、ドラム用の防音室の場合、1階部分に作ることになります。
近隣住民との距離
音は、距離に比例して小さくなっていきます。
例えば、戸建て住宅に防音工事を行う場合、ご近所さんの家との距離が十分に離れている場合、高いコストをかけて完全に音漏れしないレベルの防音室を作る必要はありません。ある程度の防音性能を発揮していれば、近隣住民に迷惑を掛けるほどの音が伝わることはないでしょう。
ただ、マンションなどの集合住宅の場合、隣の住居と隣接していますし、構造体で居住空間がつながっています。したがって、戸建て住宅には不必要な対策まで施さなければならないケースがあります。
※近年では、戸建てごとの距離が近くなっているので、戸建てだから防音工事はそれなりで良いとは考えないでください。あくまでもお隣との距離から必要な防音性能を考える必要があります。
希望する演奏時間
防音工事は、防音室の中で生じる音について、一切の音漏れを無くすための工事と考えている方がいますが、これは間違いです。防音室を作ったとしても、一切音漏れがしなくなるわけではないですし、完全に音漏れしなくなるようにする必要もありません。
というのも、どのような場所であっても、環境騒音と呼ばれる音が存在しています。例えば、街中を歩いていれば、自動車の走行音や他人の話し声、風の音など、さまざまな音が溢れています。そして、人が静かと感じる環境でも、30~40dBほどの音があるとされているのです。つまり、防音室内で100dBほどの音を出していたとしても、防音室の外で40dBほどになっていれば、周囲の環境騒音に紛れることになるので、近所の方に音で迷惑を掛けることはないのです。
ただ、自宅周りの環境騒音は、場所や時間帯によって異なりますので、防音工事の前にどの程度まで音を小さくすれば良いのかをしっかりと測定しておきましょう。また、昼間と夜間では環境騒音の大きさがかなり違うので、ドラムを何時ごろに演奏する想定なのかをきちんと検討しておきましょう。例えば、昼間しか演奏しない場合と、24時間いつでも演奏できるようにしたいという要望であれば、後者の方が高い防音性能が求められます。
防音室の広さと予算
防音工事にかかる費用は、部屋の広さや使用する建材のグレードによって変わります。当然、グレードの高い建材を利用すれば、それだけ高性能な防音室に仕上がると期待できます。
つまり、あなたが求める防音室について、高い性能を求めるほどお金がかかってしまう訳です。また、防音工事を施す部屋の広さによっても費用が変わるので、どのような用途に防音室を利用したいのかで広さを決めると良いでしょう。
なお、ドラムは、部屋が狭くなると防音が難しくなるので、余りギリギリの面積を狙うのではなく、ある程度余裕のある部屋に防音工事を施すのがオススメです。
まとめ
今回は、さまざまな楽器の中でも最も防音が難しいとされるドラム用の防音室について解説しました。ドラムは、単純に大きな音が出るだけでなく、太鼓を叩いて音を出す仕組みであることから、強い衝撃音が生じるため、床の防音性能が非常に重要になります。
この記事では、ドラム用防音室の基本について解説していますが、なかなかイメージできない部分もあるかと思いますので、自宅にドラムなどの打楽器用防音室を作りたい方は、お気軽にお問い合わせください。