近所の工事がうるさい!日本国内における騒音や振動に関する規制について

皆さんも、一度は近所でマンション建設などが始まり、工事に伴う騒音や振動に悩まされた経験があるのではないでしょうか?こういった時には、「この振動や騒音はなんとかならないのか!」「こんな時間に工事をするなんて法的に問題ないの?」など、さまざまな疑問が頭をよぎってしまうことでしょう。

工事による騒音や振動は、日中、自宅などで過ごすことが多い方にとって多大なストレスを与える原因となってしまいますし、夜勤の仕事をしている方や乳幼児の睡眠を妨げてしまう原因となります。もちろん、工事というのはしばらく我慢すればいつかは終わると分かってはいるものの、マンション建設などの大規模な工事となると、年単位の工事となりますので、騒音や振動の被害を受ける方にとってはなかなか許容しづらいものです。さらに、場所によっては、次々と工事が連続して行われ、数年単位で騒音に悩まされてしまう…なんてことも普通にあり得るのが残念なところですね。

そこでこの記事では、「工事音がうるさくて困っている!」という方に向け、そもそも日本国内における騒音や振動に関する規制がどうなっているのかをご紹介します。

騒音規制法について

日本国内における騒音に関する法律には『騒音規制法』というものがあります。なお、日本で定められている法律については、その大半が最初に法律の目的が記載されるようになっています。騒音規制法については、第一条で以下のように定められています。

(目的)
第一条 この法律は、工場及び事業場における事業活動並びに建設工事に伴つて発生する相当範囲にわたる騒音について必要な規制を行なうとともに、自動車騒音に係る許容限度を定めること等により、生活環境を保全し、国民の健康の保護に資することを目的とする。
引用:e-Gov|騒音規制法より

建物の建設やリフォーム、解体などと言った工事は、もちろん人々の社会生活を鑑みると、必要不可欠な営みと言えるでしょう。マンションなどの大型施設を建設する際には、大型工作機の動作音やドリルなどの回転音などが生じてしまうのは、ある程度致し方ない事ではあります。しかし、いくら社会生活上必要なこととはいえ、音が出し放題になってしまうと、工事現場周辺で暮らしている人にとっては迷惑極まりない状態になってしまいます。
騒音規制法という法律は、こういった建設現場などで生じる騒音について「際限ない音」とすることを防ぎ、人々が健康に暮らせるように保護するため、適正なレベルまでの音に抑えるための法律として定められています。

騒音規制法では、著しい騒音が出てしまう機械や道具を使用する作業について、一定のパターン化を行い『特定建設作業』として規制するようになっています。特定建設作業を含む工事の場合、その工事を実施する所在地の首長(市町村長)に対して、詳細な届出を行わなければならないと定めています。そして、特定建設作業が行われる周辺にて、住人の生活環境が著しく損なわれるような騒音が生じていると認められる場合、市町村長は業者に対して「改善勧告」や「改善命令」を出すことができるとしています。
なお、必要な届出を怠っている、改善命令に従わないなどと言った場合には、厳しい罰則も設けられています。

「特定建設作業」とは?

著しい騒音を発生させる作業として、騒音規制法で『特定建設作業』に指定されているものは、以下のような作業です。

  • 1.くい打機(もんけんを除く。)、くい抜機又はくい打くい抜機(圧入式くい打くい抜機を除く。)を使用する作業(くい打機をアースオーガーと併用する作業を除く。)
  • 2.びょう打機を使用する作業
  • 3.さく岩機を使用する作業(作業地点が連続的に移動する作業にあつては、一日における当該作業に係る二地点間の最大距離が五〇メートルを超えない作業に限る。)
  • 4.空気圧縮機(電動機以外の原動機を用いるものであつて、その原動機の定格出力が一五キロワット以上のものに限る。)を使用する作業(さく岩機の動力として使用する作業を除く。)
  • 5.コンクリートプラント(混練機の混練容量が〇・四五立方メートル以上のものに限る。)又はアスファルトプラント(混練機の混練重量が二〇〇キログラム以上のものに限る。)を設けて行う作業(モルタルを製造するためにコンクリートプラントを設けて行う作業を除く。)
  • 6.バックホウ(一定の限度を超える大きさの騒音を発生しないものとして環境大臣が指定するものを除き、原動機の定格出力が八〇キロワット以上のものに限る。)を使用する作業
  • 7.トラクターショベル(一定の限度を超える大きさの騒音を発生しないものとして環境大臣が指定するものを除き、原動機の定格出力が七〇キロワット以上のものに限る。)を使用する作業
  • 8.ブルドーザー(一定の限度を超える大きさの騒音を発生しないものとして環境大臣が指定するものを除き、原動機の定格出力が四〇キロワット以上のものに限る。)を使用する作業

上記のような特定建設作業を含む工事を行う場合、その工事を行う自治体の首長に対して届出をしなければいけません。これによって、現場周辺の生活環境を著しく壊さないように工事を行うよう牽制していると考えられます。なお、届出の内容については、自治体によって若干の違いがあるものの、おおむね以下のような内容を作業開始の7日以上前に届け出るようにとされています。

  • ・届出者(工事の元請業者の会社名、住所、代表者名など)
  • ・建設工事の名称
  • ・施設または工作物の種類
  • ・特定建設作業の種類
  • ・機械の名称、型式及び仕様
  • ・特定建設作業の場所(所在地を地番まで明確に記載)
  • ・実施の期間(作業をしない日曜や祭日を含めた総日数)
  • ・開始及び終了時刻(日々の工事の開始・終了時刻)
  • ・振動防止の方法(騒音や振動を防ぐ対策を具体的に記載)

上記に加えて、特定建設作業を行う場所付近の見取り図や、特定建設作業の工程を明示した工事工程表などを添付しなければいけません。この他にも、特定建設作業を行う事業者に対し、周辺住民への事前説明や作業現場への特定建設作業の内容の明示が努力義務としてかされています。

「特定建設作業」にはどのような規制がある?

それでは、上記のような特定建設作業を含む工事現場においては、騒音などに関するどのような規制が設けられているのかも見ていきましょう。なお、騒音などに対する規制について、各自治体で決められていますが、凡その部分は共通しています。

ここでは、大阪府の規制を参考としてご紹介します。

1号区域における規制基準

※1号区域とは:第1,2種低層住居専用地域、第1,2種中高層住居専用地域、第1,2種住居地域、準住居地域、田園住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域、用途指定のない地域、工業地域及び条例の追加規制地域のうち学校、保育所、病院、入院施設を有する診療所、図書館、特別養護老人ホーム及び幼保連携型認定こども園の敷地の周囲80メートルの区域内

  • ・特定建設作業の場所の敷地境界上における基準値・・・騒音:85 デシベル、振動:75 デシベル
  • ・作業可能時刻・・・午前7時から午後7時
  • ・最大作業時間・・・一日あたり10時間
  • ・最大作業期間・・・連続6日間
  • ・作業日・・・日曜その他の休日を除く日

2号地域における規制基準

※2号区域とは:工業地域及び条例の追加規制地域のうち1号区域以外の地域

  • ・特定建設作業の場所の敷地境界上における基準値・・・騒音:85 デシベル、振動:75 デシベル
  • ・作業可能時刻・・・午前6時から午後10時
  • ・最大作業時間・・・一日あたり14時間
  • ・最大作業期間・・・連続6日間
  • ・作業日・・・日曜その他の休日を除く日

どのような自治体でも、建設現場での騒音については、上記のような規制が設けられています。そして、建設工事を行うにあたっては、周辺住民に配慮し、工事の開始はおおむね午前8~9時で、土日は休日にするケースが多いです。
なお、上記の規制を破って、早朝や夜間も工事を行っているなどと言った場合、自治体に相談することで正式に工事を止めることを求めても問題ありません。

まとめ

今回は、建設現場から生じる騒音や振動に関する規制について簡単にご紹介しました。この記事でご紹介したように、建設現場で生じる騒音については、好きなだけ大きな音を出しても良いといったわけではなく、法律による規制がきちんと設けられています。

ただ、上述しているように、特定建設作業でも、現場の境界で85デシベルの音までは認められています。この85デシベルという音量については、地下鉄の電車内などと同程度の大きさですので、建設現場のすぐ近くにある住宅などであれば、十分に騒音に感じてしまうレベルと考えた方が良いでしょう。音は距離によって減退するという特徴があるものの、ほんの数m先が工事現場という場合、窓を開けていれば十分に騒音に感じてしまう…なんてケースは普通にあり得るのです。

ただ、このような騒音に関しては、法的には何の問題もないレベルと判断されてしまうことから、苦情を言ったとしても改善されないと考えておいた方が良いですよ。したがって、テレワークなどで工事現場の音が気になるという場合は、自宅の窓などに防音対策を施すのが最も手っ取り早いと考えておきましょう。

スタッフ A

大阪で20年間にわたって防音工事に携わってきました。
防音工事に関しての事、音に関する豆知識などを配信しております。

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