防音工事を依頼する前に!意外と知らない防音工事に関する知識をご紹介

近年では、自宅に防音工事を施す方が増えていると言われています。しかし、一口に防音工事と言っても、各ご家庭で防音工事を依頼する目的はかなり違っており、また防音工事にかける予算も大きく異なります。

例えば、防音工事というものは、自宅で楽器の演奏を行う人やホームシアターなど周辺環境にも悪影響を及ぼすような大きな音への対策と考えられがちですよね。実際に、プロの演奏家の方などであれば、仕事道具の一つとして防音室をとらえているような方もいて、自宅に数百万円をかけて防音室を作るようなことも珍しくありません。さらに近年では。日常生活上でどうしても生じてしまう生活音を防ぐため、専門業者による防音工事を依頼する方がいます。例えば、分譲マンションに住んでいる方は、赤ちゃんが生まれたタイミングで夜泣き対策のために防音工事をするだとか、上の階の足音がうるさいから防音工事をするだとか、一昔前までであれば考えられなかったような細かな防音工事が急増しているのです。

しかし、いざ防音工事を検討した場合には、その他の住宅リフォームと比較して、専門性が高すぎることからさまざまな疑問が頭をよぎるという方が多いようです。そこでこの記事では、一般の方が意外に知らない防音工事の基礎知識を簡単にご紹介しておきます。

『防音』は概念の話

防音工事と聞くと、「音を防ぐための工事」という意味で捉えることができます。それでは、具体的にどのような手段を使って音を防いでいるのか分かりますか?

実は、『防音』という言葉は、あくまでも概念のような物で、具体的な手段は「遮音」「吸音」「防振」「制振」と4つの手段が存在しており、どの音を防ぎたいのかによってこれらの手段を組み合わせていくことが必要なのです。

防音工事の需要が高くなってきた現在では、防音に関する知識など何も持たないリフォーム業者が防音工事業界に進出しており、「壁に断熱材を詰めれば良い!」「遮音シートを設置すれば良い」など、各手段の真似だけをしているという現場もよく見られます。しかし、お客様の要望に合わせて、必要な性能を出すためには、単に壁に断熱材を施工すれば良い…なんて単純なものではないのです。ここでは、防音の各手段ごとの特徴を簡単に解説しておきます・

  • 遮音
    遮音は「音を跳ね返す」という手段となります。具体的には、遮音パネルや遮音シート、石膏ボードなどを施工して遮音性を高めるといった工事です。
  • 吸音
    「音を吸収して小さくする」のが吸音ですグラスウールやロックウール、発泡ウレタンなどの断熱材を壁に充填するなどの方法が有名です。副次効果として居室の断熱性が高まります。
  • 防振
    音の伝導を減らすのが防振対策です。分かりやすい対策と言えば、マットやフェルト生地などを敷いて振動が伝わりにくくするといった感じです。
  • 制振
    音の振動を減らす対策が制振です。分かりやすい例を挙げると、洗濯機や室外機の下にゴムを設置して振動を減らすなどの対策です。

防音工事は、上記のような手段を上手に組み合わせて効果を出さなければいけません。例えば、人が出す声やピアノの音とドラムや工事現場などの振動を伴う音では、必要になる対策が全く異なるというのが誰でも理解できますよね。
したがって、防音工事は、実際に施工する前に現地調査で「どんな音に悩んでいるのか?」「防音工事を施す場所の状況はどのようになっているのか?」をしっかりと調査して、必要な対策をきちんと選べる業者に依頼しないと、「思ったような効果が出ていない…」なんてことになるのです。

防音目的によって施工箇所が変わる

防音工事を成功させるためには、「なぜ防音工事が必要なのか?」という目的をはっきりさせることも大切です。冒頭でご紹介したように、防音工事を行う目的は人それぞれで、上の階の足音が…など、近隣住宅から聞こえてくる音に悩んでいる場合もあれば、その逆に楽器の演奏などで自分が生じさせる音で他人に迷惑をかけないようにするなど、その目的は全く異なるのです。

防音工事と言えば、一室まるまる防音室にする工事をイメージするかもしれませんが、最近では窓のみの防音工事や天井のみなど、部分的な防音工事も増えています。「上階からの足音を防ぎたい!」という目的の方なのに、防音室を作ってしまうなんてことになると、余計なコストをかけさせているだけになってしまいますし、必要な箇所に適切な対処を行うということが大切なのです。

つまり、防音工事の目的をはっきりさせるということは、最適な工法を選んで不必要なコストをかけないようにするためにも非常に重要になるのです。一般的に、目的別に必要な防音工事を以下でご紹介しておきます。

  • 外から侵入する音を防ぎたい…
    目の前が公園、幹線道路など、外から侵入する音に悩んでいるという場合、窓や換気口の防音対策が有効です。
  • 上の階の住人が騒いで足音が…
    上階に住む方の足音などに悩んでいる…という場合、天井の防音工事が有効です。
  • 近隣住宅からの話し声やテレビの音が…
    集合住宅などでお隣さんの話し声に悩んでいる…という場合、壁や窓の防音工事が有効です。賃貸住宅の場合は、防音カーテンや吸音ボードなどを購入して設置してください。
  • 24時間いつでも楽器演奏がしたい…
    防音室が必要です。

近年では、「高気密・高断熱」が家づくりのキーワードのようになっています。高気密というのは、家の隙間が少ないという意味ですので、一昔前の住宅と比較すれば、家そのものの防音性能は高くなっていると言えます。しかし、家も経年劣化してしまいますので、徐々に隙間が生じてしまうようになり、音の問題が表面化してしまうこともあるでしょう。そういった場合は、防音工事業者に、現在抱えている悩みやどうなってほしいのかなどの要望をきちんと伝えましょう。

住んでいる場所によっては補助金が出る!

防音工事は、住環境が原因となり、その工事が必要になっている…という場合、補助金が受け取れるケースがあります。例えば、空港の近くに住んでいる場合や、自治体が沿道整備道路と指定している場合などであれば、かなりの額の補助金が受け取れることもあります。
ここでは、住環境が原因で防音工事が必要になった方について、用意されている補助金をいくつかご紹介しておきます。

沿道整備道路として指定されている場合

交通量が多いバイパスや高速道路は幹線道路と言われていますね。そして沿道整備道路として指定されている住居に対しては、防音工事助成金が支払われることになっています。なお、現在、沿道整備道路として指定されている都道府県は、東京都・兵庫県・三重県の3箇所となります。具体的な道路は、

  • ・環状7号線(東京都)
  • ・環状8号線(東京都)
  • ・国道254号(東京都)
  • ・国道23号(三重県)
  • ・国道43号&阪神高速3号神戸線(兵庫県)

東京都などを例に挙げてみると、沿道整備道路沿いの住居に関しては、防音工事にかかる費用の3/4が補助されるとされています。詳しい条件などは他にもあると思いますので、「自宅で使えるのでは?」と思う方は、一度自治体などに問い合わせてみると良いのではないでしょうか。なお、この補助金に関しては、新築ではない、まだ防音工事を行っていない住居に住んでいる方が対象です。

空港の近くにある家の場合

空港周辺は、騒音レベルが高くなってしまいますので、その周辺に住んでいる方に対して補助金が出る場合があります。例えば、成田空港などでは、空港周辺の住宅に対して、防音工事や空調工事を対象とした補助金が空港会社と成田市から支給されます。

補助金額などは自治体などで確認してみましょう。

自衛隊の基地の近く

全国に点在する自衛隊基地の近くに関しても、航空機の騒音が大きい場所などであれば、防音工事の助成金が支払われることになっています。

助成金の対象となるのは、指定エリア区域内で、指定騒音レベル以上であるなどの条件に該当する必要があります。自衛隊基地の近くで騒音に悩んでいる場合、一度助成金が使用できるか調べてみると良いのではないでしょうか。

まとめ

今回は、防音工事を業者に依頼する前に知っておきたいさまざまな知識をご紹介してきました。この記事でご紹介したように、防音というのはあくまでも概念的なもので、実際の対策は、遮音や吸音、防振対策などを組み合わせて必要な性能を得るというものです。そのため、どのような音に悩んでいるのか、どこまで問題となっている音を小さくしたいのかによって必要な対策が全く異なると考えてください。

当然、施工内容によってコスト的な部分も変わりますので、「自分の目的に合った最適な防音対策」を行ってくれる業者を見つけなければ、不必要な費用まで支払わなければならない結果になることもあります。防音工事は、お客様の要望や現在な住環境などをしっかりと確認し、「どのような対策が必要なのか?」を見極めることが最も重要です。したがって、現地調査をどれだけ慎重に行っているのかを見ておけば、その業者が本当に信頼できる業者なのかは簡単に判断することができると思いますよ。

スタッフ A

大阪で20年間にわたって防音工事に携わってきました。
防音工事に関しての事、音に関する豆知識などを配信しております。

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