防音工事の契約前に、業者が提出してくる見積書の注意点をご紹介します。
今回は、防音工事を検討している方に向け、いくつかの業者に相見積もりをとった際、絶対に確認しておきたい見積書のチェックポイントをご紹介していきます。
防音工事は、マンション暮らしの方が増加している、戸建ての距離が都市部で非常に近くなっていることもあり、一昔前よりもかなりオーソドックスな住宅リフォームに含まれるようになっています。10年程度前までであれば、自宅で楽器を演奏する、ホームシアターを設置したいなど、少し特殊な要望がある方だけが行うといった特殊工事と言う扱いを受けていました。さらに、工法が特殊であることや、専門性が高いこともあり、一般的なリフォーム工事よりも高額なうえ、周辺環境や顧客の要望により必要な対策がかなり違ってしまうことから、定価というものが無いかなり珍しい業界でもあります。
ただ、ここ最近は、騒音問題を抱える方が増加してきたこともあり、部分的な防音リフォームの需要が急激に高くなっています。そのため、一般のリフォーム業者も防音工事業界に進出してきており、工事を依頼する業者は多くなってきたように思えます。注意が必要なのは、もともと内装リフォームなどを行っていた業者が、防音工事業界にも進出してきていることから、かなり慎重に業者選びをしないと、工事後に「思ったよりも音が小さくなっていない…」なんてことになってしまうケースが多いという点です。
そこでこの記事では、防音工事業者選びをするときに、意外に重要ポイントになりがちな見積書の注意点をご紹介しておきます。
見積書で確認すべきポイントは?
一般的に、防音工事を依頼する場合は、まず業者に現地調査をしてもらい、自宅はもちろん、周辺環境などを詳細に調査したうえで、あなたの要望を叶える防音室(もしくは防音リフォーム)の提案書と見積り書を提出してもらうという流れになります。それでは、この段階では何を注意して確認しておくべきなのでしょうか?
中には、「防音工事は専門性が高いときくし、中身を自分が見てもどうせ分からないよね!」などと考えて、見積書の『総額』にだけ着目する方がいるのです。そして、「できるなら安価に納めたい!」という考えの元、最も安い価格を提示してくる業者を選択するという選び方をしてしまうのです。文字で見ると、こういった業者選びの方法はマズいと気付くと思うのですが、実際に自分がこの状況になると、同じような行動をとる方が非常に多いので、注意しましょう。はっきり言っておきますが、見積書の中身を確認せずに、業者を選んでしまうという行為は、あなたが求める防音性能が本当に出るのか何も分からない状態で契約するということになってしまいますよ。
ここでは、防音工事の見積書で、最低限確認しておかなければならないいくつかのポイントをご紹介しておきます。
『一式見積り』はNG
防音室を作るまでの工事になるとほとんどありませんが、たまに全て項目を一式と記載して、総額しか分からない見積書を提出するような業者があるようです。はっきり言っておきますが、そのような見積もりが出てきたら、問答無用でその業者は断った方が良いですよ。
また、ここまでではないものの、見積書の中に『一式』という表現を多用する業者も多いです。注意が必要なのは、『一式』と言う表記を使っているだけで、全てが悪徳と言うわけではなく、項目の特性上『一式』と言う表記しかできないケースもあります。
ただ、概算見積りではなく、正式見積りの提出なのに、多くの項目を一式でまとめているケースは注意が必要です。もちろん、一式と言う表記の下などに、「上記事項内訳」などと、詳細な内容を明記しているのであれば何の問題もありません。しかし、業者の中には、そういった詳細内訳は表記せず、各項目を一式でまとめて価格のみを表記するというケースも少なくないのです。こういった表記を行う理由に関しては、主に、以下のような理由からです。
- ・見積書作成の手間を省くのが目的
- ・あいまいにしておきたい項目、詳細を突っ込まれたくない場合
上の理由は、見積書の作成部分について経費削減を行うなどと言った目的で、一式とするパターンで、顧客が内訳まで表記してほしいと依頼すればすぐに出してくれると思います。ただ、後者の場合は注意が必要です。このケースの業者は、工事自体を下請けに丸投げすることから、自分たちも内容がよくわかっていないというケースや、単純に割高な価格にしていることを隠すため、詳細を出せないという感じなのです。内訳を表記する業者の場合、使用する材料の品番なども明記しますので、お客様が調べれば工事代が妥当かどうかすぐにわかります。しかし悪質な業者は、口頭ではランクの高い建材を使うと言っておき、実際には質の悪い建材を使用するなどとして、利益を出そうとするわけです。そのため、実際の工事の時に見積書に記載されている製品と品番が違うなどの突っ込みをされないため、詳細を書かないわけです。
見積書が、『一式』ばかり内容がよくわからない場合、内訳を記載したものを出してくれと依頼するか、分からない部分を質問するようにしましょう。その時に、あいまいな返事をする、内訳は出せないと言われるなんて場合、その業者は危険です。
工事の性能保証はあるか?
防音工事は、住宅リフォームの中では比較的高額な部類に入ります。そのため、総額の安さに着目する方が多いわけですね。ただし、いくら安くても、あなたが考える性能が出ないのであれば、お金をどぶに捨てるようなものですので意味がありませんよね。
したがって、工事を依頼するかどうか決める時には、「工事による防音性能を数値化して保証してくれるのか?」と言う点を確認しておきましょう。まともな業者であれば、見積書と一緒に「遮音等級D-60(数値が大きいほど遮音性が高いです)」や「隣の部屋の騒音レベルが40dB以下(数値が小さいほど音が小さいです)」などと、工事後の防音性能を数値化して保証してくれるはずです。
こういった防音性能の保証に関しては、必ずしも全ての防音業者が行うわけではありません。なぜかと言うと、防音性能を保証するということは、その分、工事前後に詳細な調査が必要になるということで、防音工事業者からすれば手間が増えることになり、どうしてもコスト高につながってしまう可能性があるのです。
しかし、どうせ防音工事を行うのであれば、きちんと求める性能の防音室を作ってもらうため、価格の安さではなく『防音室の性能』に注目するのが良いと思います。
見積り内容の明確な説明を貰う
最後は、見積書を貰った際に、業者の提案や見積り内容に関して明確な説明を求めるということです。当たり前のことのように思えますが、防音工事は非常に専門性が高いという特徴があるため、素人は口を出さずに専門家に任せた方が良いか…と考えてしまう人も少なく無いのです。
防音工事業者から正式な見積書を貰った時には、必ずその見積り内容について詳細な説明を求めるようにしましょう。きちんと説明を受けておけば、業者の提案が自分の希望に沿ったものになっているのかも確認できますし、後から「こんなはずじゃなかった…」なんて事態を防ぐことができます。住宅リフォームでは、業者と顧客の認識にズレがあることから、後々のトラブルに発展してしまうということが多いのです。
なお、見積書の内容について説明を求めたのに、「自分は営業担当だから工事の詳細は分からない…」など、しっかりとした説明が貰えない、曖昧にごまかすといった対応をとるような業者であれば、考え直す必要があります。
上でもご紹介したように、防音工事は専門性が高いうえ、定価が無く相場が曖昧な業界です。そのため、業界の曖昧さを良しとして知識の少ない人やお金を取れそうな人から「できるだけお金を取る」なんて考えをする業者が存在するのです。もちろん、大半の業者は誠実に仕事を行っているのですが、あなたの家に来た業者が悪徳な業者の可能性もあるのです。したがって、必要以上のお金を請求されないようにするため、不安や疑問があった時には、契約前に質問し、きちんと不安を解消してから話を進めるようにしましょう。
防音工事の失敗事例としてよくあるのが、「できるだけ安くしたい」などと考えて、予算を渋るあまり中途半端な工事になってしまうというものです。もちろん、お金をたくさん出せば良いというわけではないのですが、無理に予算を削り「安かろう悪かろう」になってしまうと、お金をかけたのに求める性能がでなかった…なんて目も当てられない結果になる可能性があるのです。防音工事を依頼するときには、最終的に「どんな防音空間を目指しているのか?」ということをしっかりとおさえて、業者と打ち合わせするのが大切です。あと10万円かけていたら満足のいく工事になったのに…なんてことが珍しくないのが防音業界です。
こんなことを防ぐためには。自分がどんなイメージを持っていて、どんな性能が欲しいのかをきちんと業者さんに伝えるのが大切と覚えておきましょう。
まとめ
今回は、防音工事を依頼する業者選びを行う時に非常に有効なチェックポイントになる見積書についてご紹介してきました。見積書は、企業によって作成方法が違いますし、積算方法なども異なりますので、一概にどのような記載方法が正解などとは言いにくいのが実情です。
ただし、工事の見積書と言うのは、それを見たお客様が、どういった工事を行い、どこのどれだけのお金がかかっているのかがイメージできるものほど、信用できて精度が高いと言えるのです。したがって、各項目を『一式』でまとめてしまい、何をするのか分からない…、どこにお金がかかっているのか分からない見積りは、不親切で、適切なものとは言えないでしょう。
もちろん、詳細すぎるのも分かりにくいものですが、見積書もきちんと確認する癖をつければ、自分の身を守る武器になると覚えておきましょう!