防音工事業者との打ち合わせで出てくる『Dr値』『T値』『L値』とは?

マンション暮らしの方が増えている、都市部では戸建て住宅ごとの距離が非常に近くなっているなどと言った要因から、自宅の防音工事を検討する方が年々増加傾向にあると言われています。そして、2020年以降は、新型コロナウイルス感染症による世界的なパンデミックが発生したことから、人々の在宅時間が急激の伸びてきており、防音工事の必要性がさらに増していると言われています。

実際に、この記事を読んでいただいている方の中にも、何らかの理由で防音工事の必要性を感じ、ネットで検索したところ、弊社のサイトを見つけたといった感じなのではないでしょうか?防音工事は、一見すると、非常に単純そうな工事なのですが、詳しく見ていくと、かなり高い技術力や知識が必要とされる工事で、一般の方からすると、業者のWEBサイトに登場する用語の意味すら分からない…と言うケースも多いようです。

特に、防音工事を施した後の、性能を表示するための値として『Dr値』『T値』『L値』と言ったものが採用されているのですが、日常生活の中で見かけることが無い値であることから、これらが何の性能を表す数値なのかよくわからない…と言う話をよく耳にします。そこでこの記事では、防音工事業者との打ち合わせ時などで、必ず耳にすることになる、『Dr値』『T値』『L値』の意味について解説していきたいと思います。
今後、自宅の防音対策などを検討している方であれば、必ず知っておきたい用語となりますので、ぜひ最後まで読んでいただけたらと思います。

『Dr値』『T値』『L値』それぞれの意味について

それでは、防音工事業者と打ち合わせを行う際、必ず耳にすることになる『Dr値』『T値』『L値』について、それぞれの値が何を意味しているのかをご紹介していきましょう。これら3つの値に関しては、それぞれが防音性能に関わる値を指しているのは間違いないのですが、微妙に意味が異なりますので、正しい意味を理解しておかなければ、理想の防音性能を手に入れることができないと考えておいた方が良いです。

ここでは、『Dr値』『T値』『L値』について、この3つの値が指す意味について解説していきます。

『Dr値』について

Dr値は、「sound pressure level Difference」と表現されるもので、この値は、壁や建具の防音・遮音性能を示す指標のことを指しています。もう少しわかりやすく言うと、人の話し声や楽器の音など、空気を伝わっていく音について、壁やドアがあることで、どの程度音を遮断することができるのかを示す数値と言った感じです。Dr値は、「Dr30」など、数字と一緒に記載されるものなのですが、数字の値が大きいほど等級が高く、遮音性能が高いことを示しています。

なお、Dr値に記載されている数字は、その数値分の音を遮ることができるという意味になります。音の大きさは「dB(デシベル)」と言う単位で表されるのですが、例えば、Dr50の防音室を作ったとすれば、おおよそ50dB程度の音を遮ることができるという意味になります。つまり、防音室内で100dB(ピアノの音ぐらい)程度の音を出したとすれば、防音室の外では50dB程度にまで減退されるという意味なのです。

専門業者に防音室を作ってもらう時には、見積書と一緒に、防音室の性能保証などをしてもらうことができます。その時には、このDr値で防音室の性能を評価しているはずですので、自分が防音室内で出す音の大きさをあらかじめ調べておくことで、防音室が完成した後に「性能が足りない…」などと言った失敗を防ぐことができるはずです。

なお、日本建築学会の「建築物の遮音性能基準と設計指針」で紹介されている、Dr値ごとの音の聞こえ方の目安は以下のようになっています。

遮音等級 ピアノ・ステレオ等の大きな音
D-65 通常では聞こえない
D-60 ほとんど聞こえない
D-55 かすかに聞こえる
D-50 小さく聞こえる
D-45 かなり聞こえる
D-40 曲がはっきり分かる
D-35 よく聞こえる
D-30 大変よく聞こえる
D-25 うるさい
D-20 かなりうるさい
D-15 大変うるさい

Dr値は、1992年にJIS(日本産業規格、以下JIS)A1419「建築物及び建築部材の遮音性能の評価方法」にて規定されたものです。ただ、1992年段階では「D値」と表記されており、これが2000年の改定で「Dr値」と表示が変更されるようになりました。「D値」と「Dr値」に関しては、表記が違うだけで、その意味は同じと考えてください。

『T値』について

次は『T値』についてです。Dr値以上に聞き馴染みのない値なのではないでしょうか?T値は、サッシやドアの遮音性能を表すもので、JISが定めたものです。なお、T値は、JISが定めた基準に基づいて、T-1・T-2・T-3・T-4と言う、4つの等級に分類されています。
このT値と言う指標について、防音ドアを参考に解説してみましょう。防音ドアのT値については、ドアを閉めた時、どの程度の音が遮断できて、静かになるのかを示していると考えてください。等級については、数字が大きくなるほど遮音性能が高く、その逆に数字が小さいほど遮音性能が低いことを示しています。ちなみに、JISが規定しているT値については、T1~T4までの等級があるのですが、実はこれ以上の性能を持つ防音ドアも存在しており、その場合はT-5やT-6と言った等級で表されることがあると覚えておきましょう。要は、数字が大きければ遮音性能が高いと考えてください。

以下にT2~T4について、それぞれの性能を持つ防音ドアがどのような用途で利用されるのかをご紹介しておきます。

遮音等級 用途
T-4 レコーディングスタジオやラジオ放送のスタジオなど非常に高い性能が求められる場所
T-3 ピアノ教室を始めとして、映画館や劇場など、高い性能が求められる場所
T-2 カラオケボックスや会議室など

T値は、ドアや窓に関する統一規格ですので、あらかじめ等級ごとの用途を押さえておけば、自分が気になる音の問題を解消するために導入しなければならない製品の判断ができるようになります。

『L値』について

最後は『L値』についてです。L値は「floor impact sound Level」と評されるもので、JISが定めた床の遮音性能を表す指標です。このL値を分かりやすく説明すると、上の階で生じた床衝撃音が、下の階でどの程度の音に聞こえるのかを示すものです。上述した『Dr値』に関しては、空気と伝わる空気伝搬音の遮音性能を表しているのですが、L値に関しては、物体を振動させることで伝わる固体伝搬音である床衝撃音のレベルを表していると考えてください。

なお、L値は、LH値とLL値の二種類に分類することができます。と言うのも、床衝撃音にも、軽量床衝撃音と重量床衝撃音と言うものがあるからですね。LH値は、人が飛び跳ねた時や走り回る時に生じる重たく鈍い音を指していて、これを重量床衝撃音と言います。そして、床に金属製のスプーンを落としたなど、軽く高い音を軽量床衝撃音と言い、こちらがLL値になります。

注意しておいてほしいのは、上で紹介しているDr値やT値に関しては、数字が大きいほど遮音性能が高くなっていくという物でしたが、L値に関しては、「L-40」と「L-60」では、数字が小さなものの方が遮音性能が高くなるのです。ただし、LL値になってくると、△LL-1⇒△LL-2と言った表記をされるようになり、こちらは数字が大きくなるほど性能が高くなります。L値は、表記方法が非常にややこしいので、その点は注意しておきましょう。防音室を検討している方以外でも、マンション購入時などには特に注意しておきたい数値ですので、何を指していて、どういった意味なのかを覚えておくのがオススメです。

まとめ

今回は、防音工事にまつわるさまざまな性能表記についてご紹介してきました。この記事でご紹介した性能表記の中でも『Dr値』に関しては、防音工事そのものの性能保証などで用いられるものになることから、防音工事を検討したことがある人にとっては、一度は耳にしたことがあるのではないかと思います。

ただ、T値やL値に関しては、実際に防音工事を行ったことがある人でも知らない方がいるなど、これらの性能表記が何を指しているのか全く分からない…と言う方も意外に多いです。しかし、防音室を作るなどと言った工事を行う場合、各性能表記が何を指しており、記載されている等級がどの程度の効果を期待できるのかが分からないと、満足のできる防音室に仕上がらない可能性が高いと考えておいた方が良いですよ。

なお、音の問題は、人によって感じ方がかなり異なるものですので、一般的には性能が高いと言われる等級のものを使用しても、どうしても音が気になる…なんてことになるケースもあります。したがって、そういった事態を防ぐ為には、性能表記の知識だけを頭に入れるのではなく、実際の防音工事を行う前に防音室のモデルルームなどでどれほど音が小さくなるのかを体験してみるのがオススメです。そうすれば、Dr値やT値などの効果を実際に体験することができるので、満足のいく防音室を実現することができると思います。

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スタッフ A

大阪で20年間にわたって防音工事に携わってきました。
防音工事に関しての事、音に関する豆知識などを配信しております。

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