防音工事業界でよく耳にする「Dr値、T値、L値」って何を示しているの?
近年では、ホームセンターやネット通販を利用すれば、本格的な防音材が簡単に手に入る時代になっています。そのため、DIYを趣味としている方の中には、音の問題を自分で解消できないものかと、防音対策に取り組んでみるという方が増加しているようです。
ただ、防音工事のため、防音材を集める時には、建材の遮音性能を表す「Dr値、T値、L値」と言った値が何を意味していて、自分が求めているものがどれなのか判断できない…と頭を悩ませる方が少なくないそうです。そこでこの記事では、「Dr値、T値、L値」について、各値が何を表しているのか、その概要を簡単に解説していきたいと思います。
防音工事業界では、非常に良く登場する値なので、自分で対策を施すのではなく、業者に依頼しようと考えている方も知っておいて損はないと思いますよ。これらの値が何を示しているのかがわかれば、業者の話の内容も理解できると思います。
「Dr値、T値、L値」は何を示しているの?
それでは、「Dr値、T値、L値」などの値が何を意味しているのかについて解説します。これらの値は、建材の遮音性能や遮音等級を表すためのもので、その意味を知っておけば、建材を購入する時に「どのぐらい音が遮れるのか?」をある程度予想することができるようになります。
DIYが流行している現在では、床材やドアなどと言った部分について、ネット通販で防音仕様のものを購入し、自分で取り付けを行うこともできるようになっています。ただ、「Dr値、T値、L値」などの意味を全く知らないのであれば、「実際に設置してみないとどれだけ音が遮れるのか分からない?」という手探り状態で対策を施すことになってしまいます。
防音対策による効果は、「Dr値、T値、L値」と言った値により、求める防音性能を発揮させるために、材料を選ぶ必要がありますので、以下にそれぞれの値について詳しくご紹介します。
「Dr値」とは?
Dr値は、防音工事で最も目にする機会が多い値かもしれません。これは、「sound pressure level Difference」の事で、壁や建具の防音・遮音性能を示す指標となります。もう少しわかりやすく言うと、人の話し声や楽器の音、TVの音声など、空気中を伝わっていく音を、壁やドアがどの程度遮断できるのか、その性能を示す値です。Dr値は、等級の値が大きくなるほど遮音性能が高く、値が小さくなるほど遮音性能が低いことを示します。
音の大きさは「dB(デシベル)」という単位で表されるのですが、例えば『Dr値=65』の防音ドアがあった場合、そのドアは65dBの音を遮ることができるという意味です。これを知っておけば、自分で防音対策を施そうと考えた時、自分がどの程度の音を出しているのかを把握することで、購入する防音材に必要な性能が判断できるはずです。そのため、素人の方でも、音を遮断することだけを考えると、防音に失敗する可能性がぐんと下がるはずです。
なお、日本建築学会の「建築物の遮音性能基準と設計指針」によると、各Dr値ごとの音の聞こえ方の目安は以下のようになっています。
遮音等級 | ピアノ・ステレオ等の大きな音 |
D-65 | 通常では聞こえない |
D-60 | ほとんど聞こえない |
D-55 | かすかに聞こえる |
D-50 | 小さく聞こえる |
D-45 | かなり聞こえる |
D-40 | 曲がはっきり分かる |
D-35 | よく聞こえる |
D-30 | 大変よく聞こえる |
D-25 | うるさい |
D-20 | かなりうるさい |
D-15 | 大変うるさい |
専門業者による防音工事であれば、部屋全体の性能についてDr値で65以上を目指すのが一般的でしょう。ただ、専門的な知識が無い方が行う場合、そこまでの性能を求めるのはなかなか難しいと思います。購入する防音材の性能を把握するには役に立つ値ですので、その意味をしっかりと押さえておきましょう。
「T値」とは?
T値は、サッシやドアの遮音性能を表すものです。日本工業規格(JIS)が定めた基準に基づいて、「T-1・T-2・T-3・T-4」という4つの等級に分類されています。
防音ドアとしてのT値は、ドアを閉めた時にどれぐらい静かになるのかを示していて、数字が大きくなるほど遮音性能が高く、小さくなると性能が低くなることを示します。なお、防音ドアの性能については、JIS規格が定めている「T1~T4」の規格以上の性能をもつドアがあり、そういったものはT-5・T-6と言った値で表されることがあります。
それぞれの性能については、T-1は、500Hz(ヘルツ)以上の中高周波数で25dB以上の音を減らせる効果があるとされているのですが、商品的には一般的な断熱サッシが該当しています。その他の値は以下のような場面で利用できます。
遮音等級 | 用途 |
T-4 | レコーディングスタジオ・ラジオ放送スタジオ |
T-3 | ピアノ教室・劇場・映画館 |
T-2 | 会議室・カラオケルーム |
T値は統一規格ですので、これが何を示しているのかおおよその部分でも理解しておけば、ドアやサッシの防音性能がある程度判断できますので、材料を購入する時の失敗を大幅に減らすことができるでしょう。
「L値」とは?
L値は、「floor impact sound Level」の事で、日本工業規格(JIS)が定めた、床の遮音性能を表す指標です。この指標は、上の階で発生した床衝撃音が、下の階でどの程度聞こえるのか、等級別に示すものです。上で紹介した「Dr値」が空気伝搬音のレベルを表すのですが、L値は固体を振動させて伝わる固体伝搬音である床衝撃音のレベルを表しています。
L値は、LH値とLL値の二種類に分類することができ、それぞれが以下のものを表します。
- LH値・・・重く鈍い音である重量床衝撃音(Heavy weight)を表す数値です
- LL値・・・軽く高い音である軽量床衝撃音(Light weight)を表す数値です
もう少しわかりやすい例を挙げると、家の中を子供が走り回ったり飛び跳ねることで生じるような衝撃音がLH値で、スプーンなど軽量のものを床に落とした時に生じる衝撃音がLL値となります。ちなみに、日本建築学会によって推奨されている住環境のL値等級は『LH-50』や『LL-45』程度です。
L値は、集合住宅で暮らす方が増えている昨今、上下階の住人同士の騒音問題でしばしば取り上げられている値です。マンション購入を検討している時に、上下階同士での騒音問題をできるだけ避けたいと考えているのであれば、このL値に着目して、床の遮音性能がどの程度なのかを把握するのが大切です。
遮音性能とは?
防音工事業界では、遮音性能という用語を耳にする機会が多いはずですので、これが何を意味しているのかはしっかりと押さえておきましょう。
遮音性能は、屋外から屋内へと入ってくる音、もしくは屋内から屋外へと出ていく音について「どの程度遮ることができるのか?」を表した指標の事を指しています。遮音性能は透過損失「TL(Transmission Loss)」で表され、壁に入る入射音と壁から出ている透過音の数値の『差』から求められます。具体的な例を挙げてみると、
入射音『100dB』-透過音『50dB』=透過損失TL『50dB』
という計算になります。
なお、音の単位として用いられる「dB」は、空気中の音波の振り幅を示していて、dBの数値が大きいほど大きな音になります。一般的に、人が生活している時に、「静か」と感じるような許容範囲の音量は約40dB前後と言われています。例えば、ピアノをそれなりの腕前の方が演奏した時には、約100dB程度の音量になると言われていますので、近所の方が迷惑に感じない40dB程度まで減音するには、60dB程度の遮音性能をもつ防音室を作らなければいけないと分かります。
このように、防音工事では、さまざまな種類の数値が用いられていて、それぞれの値が何を表しているのかを理解することが非常に重要です。数値が意味するものを理解できれば、どういった材料を使用すれば、自分の悩みが解決できるのか想像することが可能です。そのため、防音材を購入する時に、間違ったアイテムを購入しなくて済むようになるはずです