気密性と防音性能の関係性について。高気密住宅は高い防音性を持っている?
近年の新築業界では、『高気密・高断熱』という用語が盛んに用いられています。高気密・高断熱住宅は、エアコンなどの空調効率を高めてくれることから、日々の生活にかかる光熱費を削減できるようになるのが大きなメリットとされています。日本は高温多湿な気候ということもあり、昔は気密性を高めるのではなく、湿気などがこもらないような換気性能が高い住宅が作られていました。もちろん、建材の性能なども関係していますが、一昔前のドラマでは、家の中にいても隙間風が入ってきて住人が寒さに耐えているといった演出がなされていましたよね。
高気密住宅は、こういった家の隙間を極力なくすように作られていますので、家の中の気温が外気の影響を受けにくくなります。そして、高気密・高断熱住宅を実現した場合、空調効率を高めてくれるというメリット以外にも「家の防音性が高くなる」というメリットが得られるという話を耳にしたことがあるのではないでしょうか?
家の気密性と防音性にどのような関係があるのかいまいちイメージできない方も多いかと思いますので、この記事では、気密性と防音性能の関係について解説します。
気密性と防音性の関係について
それではまず、気密性と防音性の関係について解説します。冒頭でご紹介しているように、近年の新築業界では『高気密』ということを大きなアピールポイントとしているハウスメーカーが多いです。ただ、気密性が何を意味しているのかをいまいち理解していないという方も多いかもしれませんね。
気密性は、「気体の流出入を防ぐ」密閉度の高さを表すもので、高気密というのは「気体の流出入が少なくなる」ということを意味します。住宅に対して気密性という用語が用いられる場合、その住宅に存在する隙間の割合を表していると考えてください。つまり、気密性が低い家は隙間が多いことから空気の流出入が多くなり、高気密住宅は隙間が少なくなり空気の出入りが少なくなります。
音が伝わる仕組みは、空気や構造体を振動させることで広がっていくとこのサイト内で何度もご紹介しています。したがって、住宅に小さな隙間があれば、そこを空気が出入りすることになり、空気と一緒に音も伝わってしまうことになります。これからも分かるように、高気密住宅は空気と共に音をシャットアウトすることができますので、空調効率などを高めるだけでなく、音の通過を許さず静かな環境を作りやすくなるわけです。
高気密住宅のメリットについて
それでは、近年の新築業界で注目されている高気密住宅について、高気密を実現することで得られるメリットについて解説していきます。高気密住宅には、以下のようなメリットが考えられます。
①高い防音効果を得られる
一つ目のメリットは、ここまでの説明で分かるように、高い防音性も実現することができることです。音は、ほんの小さな隙間から伝わってしまうという特徴があります。空気の振動で広がっていくという特徴から当たり前の事ですね。
逆に言うと、気密性が高く、住宅の隙間が少なくなると、外部から音が侵入する、内部で発生した音が漏れていく心配が少なくなります。幹線道路沿いや目の前に子供が集まる公園があるなど、住宅の近くに騒音源になりうる施設がある時には、騒音に悩まされることを防ぐためにも気密性の高い構造が推奨されます。
②断熱性も高める
現在の新築業界では、高気密と高断熱がセットになってアピールされています。実は、高気密と高断熱という効果は、非常に関係性が高いものです。一般的に、住宅の断熱性能を高めるためには、グラスウールなどの断熱材を使用します。しかし、いくら断熱材を使用したとしても、気密性が低いと十分な断熱効果を得ることができないののです。気密性が低ければ、住宅に存在する隙間から外気が侵入しますので、熱の移動が起きてしまいますよね。
住宅の断熱性を高めたいのであれば、気密性も同時に高めてあげ、熱の移動を極力なくしてあげることが重要なのです。気密性・断熱性両方が高くなれば、室内の温度が外気温の影響を受けにくくなります。したがって、夏場の冷房利用や冬場の暖房利用など、エアコンの効率が良くなり、空調コストを抑えてくれるわけです。ちなみに、室内の温度が安定するということは、それだけ空調機器の稼働を抑えることができますので、省エネで環境に優しい生活が実現します。
このように、高気密住宅は、断熱性も合わせて高めてくれるという非常に大きなメリットが存在します。
高気密住宅の注意点
住宅の気密性を高めることは、高い断熱性や防音性も兼ね備えられることから、非常にメリットが多いように感じられます。ただ、全ての面で優れた住宅になるのかというとそうではなく、いくつか注意しておかなければならないポイントがあるので以下でご紹介します。
①湿気がこもりやすくカビの繁殖を招く恐れがある
高気密を実現した住宅は、隙間が少なく外気を取り込みにくい環境になります。これにより、高い防音効果や高断熱を実現できるのですが、その反面、空気の循環が悪化しやすいという注意点が生じます。
高湿状態になると、カビが繁殖しやすくなりますし、カビの胞子が空気中を舞うことで健康被害などの心配もあります。実際に、住宅の高気密化が進んだことで、シックハウス症候群が急増し、法律で24時間換気システムの設置が義務付けられることになりました。24時間換気システムは、何の対策も無ければただの空洞ですので、空気の通り道となり音の侵入・漏れの原因となるので注意してください。
②ドアや窓の開閉時に重く感じる
気密性の高い住宅では、ドアや窓の開閉時に、重く感じてしまうようになるケースがあると言われています。これは、室内と室外の気圧差が要因です。
例えば、室内の気圧が低くなると、外側から窓やドアを押し付ける力が働くことになります。そのため、窓やドアの開閉時に、重さを感じてしまい開けづらく感じるのです。室内外の気圧のバランスは、給気口や換気扇などによって調整することができますが、何の対策もしなければ音の侵入・漏れの原因となります。高い防音性を維持を考えた場合、防音仕様の換気扇の導入がオススメです。
まとめ
今回は、住宅の気密性と防音性能の関係性について解説してきました。近年の新築業界では、高気密・高断熱であることが非常に大きなメリットとして前面に押し出されています。確かに、高気密・高断熱を実現した住環境であれば、外気温の影響を受けにくくなることから、エアコンなどの空調にかかる光熱費が大幅に削減できると言われています。
なお、現在では、建物に関わる建材や建築技術が飛躍的に進化していることもあり、特別な対策などを行わなくてもある程度の気密性と断熱性を確保することが可能です。つまり、現在新築されている住宅というのは、一昔前までの住宅と比較すると、建物そのものが持つ防音性は高いと考えられるわけです。しかし、都市部の戸建て住宅などは、非常に近接して建てられることが多くなっており、それなりに高い気密性を持つ住宅でも生活音などを原因とした騒音トラブルが多くなっていて、弊社のような防音工事業者に相談する機会が多くなっているはずです。
防音工事は、壁の中に吸音材(断熱材)や遮音材を設置して防音性を高めたり、窓やドアに生じる隙間が少なくなるような対策が施されます。つまり防音工事は、建物に生じる隙間を可能な限り少なくする対策ですので、言い換えれば高気密を目指しているとも言える対策です。これからも分かるように、気密性と防音性は非常に密接な関係にあります。