マンションに防音室を作りたい!防音工事を依頼する前に確認しなければならないポイント
近年では、戸建て住宅の一角に防音室を設けるといった要望だけでなく、マンションでの防音工事のご依頼が非常に多くなっています。マンションなどの集合住宅は、戸建て住宅などと比較すれば、各ご家庭の生活空間が非常に近いということもありますし、構造体で各居室がつながっていることもあり、騒音問題が非常に起きやすい環境であるからでしょう。特に、ピアノなどの楽器演奏をマンションなどで行いたいと考えているのであれば、近隣住民へ与える影響がかなり大きいと考えられるため、防音室を作らずに自宅で演奏を楽しむことなどできないと考えておいた方が良いです。
こういった事情もあり、ここ数年、マンションに住んでいるお客様から何らかの音の問題を解消したいとのお問い合わせをいただくことが増えているのですが、余計なコストをかけずに適切な防音工事を行っていくためには、防音工事業者と実際に打ち合わせする前にお客様側が決めておかなければならないポイントが意外に多いのです。そして、事前準備を怠ってしまうことで、防音工事に失敗してしまう…と言うケースが少なくないので、この記事では皆さんが注意しておきたい防音工事の前に確認すべきポイントをご紹介します。
防音工事業者との打ち合わせまでに要望をまとめる
防音工事の成否に関しては、実際に工事を行う工程にあるのではなく、工事に入る前の現地調査とお客様との打ち合わせが非常に重要になります。一口に防音工事と言っても、何に対しての防音工事なのか、防音室の中で何をするつもりなのか、音が出る何時ぐらいなのかなど、工事を行うお宅によって条件が全く異なるのです。そして、お客様の要望に合わせて工事を行わなければ、無駄に高性能な工事になり余計なコストがかかってしまったり、逆に性能足らずでコストをかけたのにクレームが生じてしまう…なんてことになりかねないのです。
防音工事の失敗に関しては、業者側に技術力が無かった…と言うことが原因と考えてしまう方が多いのですが、実は打ち合わせの段階で、要望がきちんとまとまっておらず、お客様側の考えと防音工事業者の理解にズレが生じてしまっていたなんてケースも意外に多いのです。したがって、こういった失敗を無くすために、業者が現地調査に訪れる前に以下のような事を明確にしておきましょう。なおここでは、何らかの楽器防音室を求める場合についてまとめてみます。
①楽器の種類について
一つ目のポイントは、どのような楽器の演奏を想定しているのかです。一般の方であれば、楽器の種類に関係なく、防音室を作れば気兼ねなく演奏が楽しめると考えてしまうものです。しかし、防音室は、楽器の音量や種類、大きさなどによって必要な対策も違いますし、防音室の広さや高さなども変わってきます。
例えば、フルートなどの楽器であれば、譜面台を置くことを考えても1.5畳程度あれば演奏は可能です。しかしこれが、ピアノやマリンバなどの大きな楽器になると、必然的に広い防音室を作らなければいけなくなります。また、楽器によっては空気音だけでなく、振動音の対策が必要になったりしますので、行わなければならない工事の内容も変わってきてしまうのです。
専門業者に防音室を作ってもらう時には、どのような楽器を防音室に設置するのかを明確にしておきましょう。これが明確になっていれば、防音室に作り替えようと考えている部屋が、スペース的に問題ないのか判断可能です。
②防音室を利用する時間帯について
次は、防音室を利用する時間帯です。これは、演奏する方の問題だけでなく、周辺の騒音レベルが関わってくるからです。皆さんも理解していると思いますが、昼間と夜間では自宅周辺の騒音レベルは全く異なります。そのため、環境省などが定めている騒音の許容範囲の数値もかなり違います。
例えば、楽器の演奏を生業にしている方などであれば、周辺が寝静まっている深夜などでも楽器の演奏をする必要があるケースも多いと思います。このような場合、周辺の騒音レベルが低い分、防音室からの音漏れは可能な限り少なくなるようにしないといけないので、より高レベルな遮音性能を持たせる必要があります。特に、マンションなどは、両隣、上下階に他の住人がいるわけですので、少しの音漏れでもクレームに繋がってしまう恐れがあるでしょう。したがって、24時間演奏可能な防音室を作るとなると、かなりのコストをかけてハイレベルな防音室を作らなければならないと考えてください。逆に、昼間しか演奏しないなどと言う場合、防音室に必要な遮音性能はそこまで高くないので、コストを抑えることが可能です。
ジャストスペックな防音室を作るためには、防音室を使用する自分のことだけを考えるのではなく、周辺の騒音レベルのことなども考慮して、必要なスペックを持たせるようにしましょう。
③演奏する人の技量
意外に見落とされがちなのがこの部分です。同じ楽器だとしても、演奏者によって音のエネルギーの大きさが全く異なりますので、「誰が演奏するのか、どの程度の技量なのか?」は明確に伝えられるように準備しておきましょう。
例えば、ピアノを習い始めたばかりの子供が演奏するのと、プロが演奏するのでは、ピアノから生じる音量も振動も全く異なります。ちなみに、子供に練習させるための防音室に関しては、将来設計を含めてお話しておくのがオススメです。当然、ピアノを習い始めて技量が上がっていけば、音量もどんどん大きくなってしまいます。特に、将来的にプロのピアニストを目指しているという場合、最初からそれなりの性能を持たせておいた方が良いでしょう。
もちろん、防音室はスペックが高ければコストもかかりますので、予算などと相談しながら検討していくと良いでしょう。
④防音の目的
楽器の演奏のために防音室を作るという場合、第一の目的は「近隣住民の方々に迷惑をかけないように…」と言うことだと思います。
しかし、音の問題は近隣住民にだけ影響を与えるのではなく、一緒に住んでいるご家族にも多大な影響を与えるということを忘れてはいけません。例えば、家族なのである程度の音は我慢してくれるという環境なのか、そうではなく小さなお子様がいる、受験を控えた家族がいるなど、家族に対する防音もしっかりと行いたいのかによって必要な防音室のスペックは変わってきてしまいます。
防音室は、「誰に対して防音するのか?」によってどの部分の遮音を重視すべきかが変わりますので、その辺りを明確にしておきましょう。もちろん、数年先の家族の状況なども考慮しておくのがオススメです。
⑤そもそも楽器の演奏が禁止されていないのか?
最後は意外な盲点になってしまうポイントです。分譲マンションなどであれば、居住者が購入しているわけですので、自宅内で何をしようが住人の勝手だと考えている方が多い事でしょう。しかし実は、そういうわけではないのです。
賃貸マンションであれば、部屋は借りているだけですので、自分で費用を支払うといっても防音工事など本格的なリフォーム工事は大家さんに認めてもらうことができません。そして、分譲マンションに関しては、管理規約などでリフォーム工事に制限がかかったり、工事に制限が無くても楽器の演奏ができなくなっているケースがあるのです。
実際に、防音工事の失敗例として、管理規約を確認せずに防音工事を行った所、後から「演奏可能な楽器に制限があって、防音室が無駄になった…」なんて事例も存在するのです。分譲マンションなどは、同じ建物内にさまざまな人が生活することになるので、他人に影響を与えそうなことについては明確に規定されているケースがあります。楽器に関しても、「防音室を作ればOK」となっているケースもあれば、「防音室の有無に関係なく、楽器の演奏そのものが禁止」「昼間しか演奏してはいけない」など、物件によってルールが異なるのです。
この辺りは、防音工事業者がどうこうできない問題ですので、工事の相談をする前に管理組合などに確認しておきましょう。
まとめ
今回は、マンションに住んでいる方が、防音室を作ろうと考えた時、防音工事業者に相談する前に考えておくべきポイントをご紹介してきました。
この記事でご紹介したように、一口に防音室と言っても、何のための防音室なのか、誰が利用するのか、誰の為なのかによって、必要なスペックが全く異なります。当然、スペックが異なれば、必要な工事内容も変わってきますので、防音工事にかかる費用が大幅に変わってきてしまう訳です。
この記事でご紹介したような内容を無視してしまうと、出来上がった防音室の性能が足らず、防音工事をしたのにクレームが来てしまう…とか、本来必要としないレベルの防音室を多額のコストをかけて作ってしまうなどと言った失敗に繋がってしまう恐れがあります。防音工事を作る際には、まずこの記事でご紹介した内容を確定させてから業者と打ち合わせをするのがスムーズです。