一戸建ての防音性能を考えると、屋根素材にも注目したほうが良い!
今回は、一戸建て住宅の防音を考えた際におさえておきたいポイントについてご紹介したいと思います。
マンションで暮らす方が増えてきた近年では、各ご家庭の生活空間が近づいたこともあり、何気ない音で騒音トラブルを抱えてしまうことが増えていると言われています。マンションは、部屋同士が構造的につながっていますし、壁一枚で空間を区切っているなどと言った理由で、ごく普通の生活音が気になってしまう…なんてことになる可能性があるのです。
一戸建て住宅に関しては、各家が独立して建っていますので、隣家の音にそこまで悩まされることはないと考えている方も多いかもしれませんね。しかし近年では、土地の問題などから都市部では戸建て住宅同士の距離が近くなってきており、マンション同様に防音対策の需要が高くなっています。それでは、戸建て住宅において建物の防音性能を高めたいと考えた場合、どういった対策を行えば良いのでしょうか?他の記事でもご紹介していますが、戸建て住宅の防音は窓やドア、壁などに対して対策を行うというのが一般的です。
しかし、意外と見落とされがちなのが、屋根の防音対策なのです。実は近年の住宅事情では、より軽量な屋根材が求められており、瓦屋根が当たり前だったころに比べて、屋根材がどんどん薄くなっているのです。そのため、大雨が降った際には「雨音が気になって仕方ない…」などと、屋根の防音性能に悩んでしまう方が増加していると言われています。そこでこの記事では、静かで快適な住空間を作るため、屋根材によって異なる防音性能についてご紹介します。
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屋根材ごとの防音性能について
それでは、採用する屋根材によって異なる、屋根の防音性能の違いについてご紹介していきたいと思います。日本国内では、古くから粘土瓦を採用した瓦屋根が愛されてきたのですが、近年では「瓦は重い」ということから敬遠される傾向にあります。詳細は省きますが、重量のある屋根材を使用し、屋根が重くなってしまうと建物の耐震性が弱くなってしまうからです。
あまり意識したことが無いという人も多いかもしれませんが、最近では瓦以外にもスレートや金属屋根など、さまざまな屋根材が登場しており、これらは瓦などとは比較にならないほど軽量な屋根材になっているのです。しかし、軽量にするために薄く成形されているため、屋根材としての遮音性能が低くなってしまい、ゲリラ豪雨や集中豪雨が増えた近年では、「屋根からの騒音が気になる…」という方が増えているのです。ここでは、日本国内で主流となっている屋根材について、それぞれの防音性能についてご紹介します。
日本の伝統的屋根材『瓦屋根』
まずは、古くから日本国内で採用されている屋根材です。この屋根材は、粘土を焼成して造られているため、他の屋根材と比較すると圧倒的に重くなってしまいます。しかし、他の屋根材と比較すれば、非常に優れた遮音性能を持った屋根材と言えます。
遮音性能は、外から入ってくる音エネルギーと中から伝わる音エネルギーの比率である「透過損失」という指標が目安になります。この透過損失は、素材の質量が大きければ大きいほど高くなり、遮音性能に優れると評価されるものなのです。つまり、「耐震性が悪くなる…」など、瓦の弱点とされている質量の大きさが、高い遮音性能の理由になります。
非常に軽量な『トタン屋根(亜鉛鉄板)』
金属屋根の一種である『トタン屋根』は、大正時代ごろに開発され、非常に安価なことや施工性が高いことなどから、高度経済成長期の日本では一般住宅でも良く採用されていました。しかし、トタン屋根は、非常にサビに弱く、5年ほどで全体にサビが広がってしまう…など、その耐久力の弱さから現在では工場や倉庫などで利用される程度で、一般住宅ではほとんど採用されません。
そして、このトタン屋根は、遮音性能も非常に低く、雨音が大きく響いてしまうというデメリットも持っています。これは、トタンが薄く成形されているというのが原因の一つですが、素材的に剛性がありますので、雨が当たると振動してしまい、音が響いてしまうという感じで、楽器のシンバルのような特徴も併せ持っているためです。したがって、トタン屋根の住宅では、「屋根からの音が気になる…」なんて屋根からの騒音に悩まされてしまうケースが多いです。
このように、トタンは、素材的特徴で、外からの音を通しやすいという防音上のデメリットがあると覚えておきましょう。ただし、屋根の遮音性能に関しては、採用する屋根材によって全てが決まるわけではなく、屋根材を含めた屋根の構造全体で高めていくものですので、トタン屋根でも遮音性能を高めることはできます。
進化した金属屋根『ガルバリウム鋼板屋根』
トタンは、安価で施工性が良いというメリットがある一方、非常に耐久力が弱いという明確なデメリットがあります。そこで開発されたのが、ガルバリウム鋼板を採用した金属屋根材です。この屋根材は、トタンと同様に非常に軽量な屋根を実現するというメリットを持ちながら、金属なのにサビにも強いという耐久力を併せ持っています。ここ数年では、屋根材に必要な性能全てを持っていると言われ、屋根リフォーム・新築両業界でトップシェアを誇るようになっています。
ただし、ガルバリウム鋼板を採用した屋根材も非常に薄く成形されているため「遮音性が低いのでは?」と考える方は多いことでしょう。このガルバリウム鋼板を採用した屋根では、旧来のトタン屋根のように簡易的な屋根構造ではなく、下地を構築してその上に屋根材を葺いていくという施工方法が採用されていますので、大幅に遮音性能が高くなっていると言われます。ただし、ガルバリウム鋼板屋根にも、断熱材が一体となったものとそうではないものが存在しているため、しっかりと防音性能も考えて材料選びをしなければいけません。当然、断熱材一体型の屋根材の方が遮音性も高くなります。
新築業界で人気の『スレート屋根』
最後は、新築業界で金属屋根と並び非常に高い人気を誇るスレート屋根です。スレート屋根は、天然石を加工したものと、人工的に生産された化粧スレートが存在しており、現在の新築業界では、後者のセメントに繊維材料を混合したセメント系ストレートが主流となっています。
スレート屋根に関しては、比較的厚みを持った屋根材に成形されるうえ、素材を重ね合わせて葺いていくという施工方法がとられることから、陶器瓦に準じた遮音性能があります。しかし、度を越した大雨が降った場合には、「屋根からの雨音がうるさい…」となってしまうことも考えられます。
屋根の防音性能を上げるためには?
ここまでの説明で、どの屋根材を採用するのかによって屋根の遮音性能がかなり違ってくるということが分かっていただけたと思います。新築戸建て住宅を建てる時には、建物の外観イメージなどを重視する方が多いのですが、こういった性能面もよく考えておくのがオススメです。
それでは、既存住宅において、日常生活の中で「雨音がうるさい…」など、屋根からの騒音に悩んでいる場合、どういった対策を取ればよいのでしょうか?ここでは、屋根からの騒音に悩んでしまう可能性があるスレートや金属屋根での防音対策についていくつかの手段をご紹介しておきます。なお、屋根の防音対策に関しては、防音工事の専門業者が行う対策と、屋根の専門業者に依頼しなければできない対策があります。
①屋根下地に防音対策を施す
これは、防音工事業者、屋根業者どちらに依頼しても可能な対策です。屋根の遮音性に問題がある場合、屋根裏に断熱材を施工することで防音性能を高めることができます。断熱材は、建物の断熱性を向上させるのが目的の素材となるのですが、同時に音を吸収したり振動を抑える副次効果が得られるため、屋根裏などに断熱材を施工することで、屋根からの音を軽減することができるのです。なお、既に屋根裏に断熱材が入っているという場合でも、新しいものに入れ直すことで防音性能が高まることもあります。
こういった工事を、防音の専門業者に依頼しない場合の注意点としては、屋根業者の施工では、工事を行ったとしても騒音が収まらない…なんてパターンも考えられる点です。というのも、「雨音が気になる…」という場合でも、実は屋根に原因があるのではなく、壁の防音性能が低いのが原因…なんてことも少なく無いのです。一般の人からすれば『雨音がうるさい…』となると、屋根が原因と考えてしまうものですが、壁を抜けて音が侵入しているなんてパターンも多いのです。防音工事業者であれば、音漏れの原因をしっかりと調査したうえで施工を行いますので、こういった失敗が無いのがメリットになります。
②屋根リフォームを行う
これは、屋根の専門業者に依頼すべき工事です。例えば、現在屋根材の遮音性の低さが原因で屋根からの騒音に悩まされている…なんて場合、遮音性の高い屋根材に葺き替えすることで大幅に防音性能を高める事ができるでしょう。また、スレート屋根の場合であれば、既存屋根の上に新しく屋根材を施工する『カバー工法』を行えば、屋根が二重構造になりますので、遮音性が高くなります。カバー工法は『重ね葺き』などとも呼ばれ、既存屋根と新しい屋根の間に空気層ができ、屋根の防音性能がかなり高まると期待できます。
他にも、最近では防音性能の高いと塗料などが登場していますので、そういった塗料を利用して屋根塗装を行うことで、屋根の防音性能を高めることができます。こういった屋根リフォームに関しては、屋根に関する専門知識が必要になりますので、屋根業者に依頼すべき工事になります。
まとめ
今回は、住宅の防音性能を検討する場合でも、意外と見落とされがちな『屋根の防音性能』についてご紹介してきました。近年の戸建て住宅では、さまざまな屋根材が登場しているのですが、実際に採用する屋根材を決める際には、「耐震性を考えて軽量なものが…」「できるだけスタイリッシュな外観に…」などと言った要望から決める方が多いです。しかし、この記事でご紹介したように、採用する屋根材によっては、下地部分でしっかりと防音対策をしなければ、屋根が原因で外からの音に悩まされてしまう…なんて結果になってしまうのです。
戸建住宅の防音対策は、壁や窓、ドアなどが注目されますが、意外に屋根の防音対策も重要だということは覚えておきましょう。