高い防音性能を求めるなら、ドアの防音対策を忘れてはいけない!
自宅でピアノなどの楽器を練習するという方であれば、ご家族やご近所さんに迷惑をかけないように、防音のためにいろいろと気を使っていることでしょう。美しい音色を楽しめる楽器ですが、それを「聞きたい」と思っている方以外にとっては単なる『騒音』と思われてしまうこともあり、何も考えずに楽器の演奏をしてしまうと、騒音トラブルに発展してしまうことも珍しくありません。そのため、プロの演奏家や音楽学校などに通っているような方であれば、自宅にそれなりの防音効果を持つ防音室を作るのが一般的です。
楽器の防音対策としては、窓や壁、床や天井などに施すものが有名ですが、以外に見落とされがちなのが「ドアの防音」なのです。窓や壁にしっかりと防音対策を施し、「これで安心だ!」と思っていたとしても、ドアの防音対策が不十分であれば、そこからの音漏れでいろいろな人に迷惑をかけてしまう恐れがあります。
そこでこの記事では、一般の方があまり知らない、防音ドアの特徴や基礎知識についてご紹介していきたいと思います。
防音ドアとは?その特徴をご紹介!
それではまず、『防音ドア』がどういったものなのかについて簡単にご紹介していきましょう。
そもそも音というものは、振動によって伝わるもので、空気の振動によって建物の中に音が入ってきます。したがって、音を防ぐためには、空気を完全に切り離し、構造物が振動しないようにすることが大切になります。防音ドアとは、この考えのもと、室内と室外の空気がつながらないように、可能な限り隙間を無くすようになっているドアです。
皆さんが普段使用している部屋のドアに関しても、一見すると隙間などないように見えると思います。しかし、ドア周囲を慎重に確認してみると、床とドアの隙間であったり、ドア枠とドアの隙間であったり、空気を完全に遮断できていないことが良く分かると思います。そして、音というものは、こういったわずかな隙間からでも伝わってしまうもので、普通のドアでは十分な防音性能を得ることはできないわけです。
防音ドアとして販売されているものは、前述のような隙間を埋めるため、ゴムパッキンなどが使用されています。もちろん、100%完全に防音できるわけではないのですが、可能な限り隙間を無くすことで、音漏れの量を減らしているわけです。
なお、防音ドアにもさまざまな種類が存在しており、安いもので5万円程度のものから、高いもので数十万円以上するものまで、かなりの価格幅が存在します。最も安価な簡易防音ドアであれば、30dB程度の防音効果となっており、これでは約100dBの音が出ると言われるピアノなどの防音には不十分だと考えられます。防音ドアは、どういった音を防ぎたいのかをよく考えて、必要な減音効果を持つものを選ばなければいけません。
防音ドア選びのポイント
それでは、実際に防音ドアを取り付けようと考えた場合、どういった基準で選べば良いのかも簡単にご紹介します。防音ドア選びの際は、以下のようなポイントに注意しましょう。
防音タイプでも『引き戸』はオススメできない
防音ドアは『開き戸』を選択するのが基本と考えましょう。防音ドアは、しっかりと閉めてパッキンを潰すことで隙間を埋める仕様になっていますので、ドアとドア枠の間のパッキンをしっかりと潰すには開き戸構造でなければいけないわけです。
ただし、引き戸タイプの防音ドアが売られていることも事実で、カタログスペック的にはしっかりと音の減退効果を持っているとなっています。そのため、それを信じて購入する方も多いのですが、かなりの確率で後悔してしまう結果が待っているでしょう。というのも、引き戸では物理的にパッキンを潰すという事が難しいですし、1年程度はそれなりの防音効果が続いたとしても、徐々に隙間が広がってしまい、すぐに音漏れが気になるようになってしまうものなのです。
例えば、防音の目的が生活音レベルであれば特に問題ないのかもしれませんが、楽器演奏の音を防ぎたい場合は、「絶対に引き戸でなければいけない!」という理由がないのであれば、開き戸にしましょう。
ドアそのものの防音性のもう考えよう
上述したように、防音ドアは、隙間を埋めて防音効果を得る物というのが基本です。しかし、いくらしっかりと隙間を埋められる製品だとしても、ドアそのものが音によって振動するような場合は意味がありません。高い防音効果を持つものを望むのであれば、重くて厚い防音ドアを選択するようにしましょう。
例えば、カラオケボックスなどに行った際には、ドアの重さに驚いた…という方もいると思うのですが、これは本格的な防音には、しっかりとした重量感が求められるからなのです。簡易的な防音ドアに関しては、隙間はしっかりと埋められるものの、ドア自体は厚みや重みがなく、楽器の大きな音は防げない…という場合がほとんどです。楽器の練習などの用途で防音ドアを設置する場合、最低でも20万円程度のしっかりとした製品を選択するようにしましょう。
ドアハンドルにも注意
音漏れを防ぐ防音ドアは、ドアハンドルにも種類が存在します。開き戸タイプにしたとしても、しっかりとパッキンを潰しきるためには、ドアハンドルにも工夫が必要になるわけです。したがって、楽器防音などを目的に防音ドアを導入する場合、ドアハンドルにも注目するのがオススメです。
しっかりとした防音性能を求める場合は、カラオケボックスなどでも使用されている『グレモンハンドル』と呼ばれるタイプがオススメです。グレモンハンドは、ドアをしっかりと固定して、気密性が高くなりますので、防音性能も期待できます。
防音ドアの種類について
それでは最後に、防音ドアの種類についても簡単にご紹介しておきます。上述したように、一口に防音ドアと言っても、さまざまな種類が存在しており、価格帯もかなり違ってきてしまいます。防音の目的などから、必要な性能を持つ防音ドアを選ぶようにしましょう。
本体の素材について
防音ドアは、本体の素材も種類が存在します。
- スチール製防音ドア
- 木製防音ドア
- スチール製スライドドア
防音ドアの中でも最も高い性能を持つのは『スチール製防音ドア』です。ドア本体もしっかりと重量がありますし、振動しにくいものですので2000Hzで55dBも減衰できるドアも存在します。なお、音楽用の本格的な防音ドアになると、ドア本体だけで100万円以上します。
ドアハンドルについて
上述したように、防音ドアのハンドルも重要です。一般的に以下の種類があります。
- ローラー締りハンドル
- グレモンハンドル
簡易の防音ドアであれば、一般的なドアと同じハンドルが使われています。これが音楽用のドアになると、上記の二つのどちらかになるのです。標準的な防音ドアは、ローラー締りハンドルが採用されていますが、より高い防音性能を求める場合には、多点締めができるグレモンハンドルを採用したものがオススメです。
まとめ
今回は、防音室を作る際にも、以外に見落とされがちな防音ドアの基礎知識についてご紹介してきました。この記事でご紹介したように、音は空気の振動を伝わっていくものですので、一般的なドアであれば、ドア枠との隙間や下部に生じる隙間から音漏れが生じてしまい、楽器防音としては全く不十分な状態になってしまいます。
窓や壁の防音性能をいくら向上させたとしても、ドア部分を無視してしまっていては、そこからどんどん音漏れがしてしまい、周囲に迷惑をかけてしまう恐れがあるのです。「何の為の防音か?」をしっかりと考えて、必要であれば防音ドアの導入を検討してみましょう!