防音工事でよく出てくる「Dr」や「DB」の意味をご紹介します

今回は、これから自宅の防音工事をご検討中の方に向けて、一般の方が防音工事を契約する前におさえておきたい基礎知識について簡単にご紹介していきたいと思います。

現在、防音工事を検討中の方であっても、「外部からの騒音に悩まされている…」「自宅で楽器の演奏がしたい」「ホームシアターを設置したい」など、防音工事を行う目的はさまざまだと思います。防音工事に関しては、そもそも必要としない方も少なくありませんので、一般のリフォーム工事などと比較すれば、専門的過ぎる知識だ…と感じる事柄も多く、実際に工事を依頼する前にはさまざまな疑問が頭に思い浮かんでしまっていることだと思います。

実際に、防音工事に関してインターネットで調べてみても「〇〇dB」や「Dr-〇〇」など、よくわからない専門的単位が使われることが多く、調べれば調べるほど防音工事のことが分からなくなってしまう…なんて声も少なくありません。防音工事というものは、必要とする人だけが行うものなので、通常のリフォーム工事などと比較すればどうしても割高になってしまうのが現状です。そのため、業者の中には、防音工事に関する知識がないのにも関わらず、防音工事業界に参入している…なんてことも少なく無いのです。

そこで、あなたが満足のいく防音工事を行うためには、最低限の防音に関する知識を持っておき、しっかりと業者と打ち合わせをできる体制を作らなければいけません。この記事では、防音工事をお考えの方が、最低限おさえておきたい知識を簡単にご紹介しておきます。

防音工事でよく見かける単位について

冒頭でご紹介したように、防音工事では『○○dB』や『Dr-○○』など、日常生活ではほぼ見かけることのない単位が良く登場します。しかし、これに関しては、音の大きさや実際の防音性能などを表す用語ですので、防音工事を行うなら、これらの意味は絶対におさえておかなければいけないのです。

これを無視してしまうと、「想像していたものと全く違う防音室ができた…」なんて後悔してしまう結果になる可能性があります。以下で、それぞれの用語について簡単にその意味をご紹介しておきます。

『Dr-〇〇』って何を意味する?

まずは『Dr値(D値)』についてご紹介します。これは「ディーアールち」や「ディーち」と呼ばれるもので、遮音性能を表す指標となります。

防音工事の見積書などでは、工事を行うことで発揮できる防音効果を「Dr-30」や「Dr-40」といった感じで、性能保証として記載することが多いです。数字がついた場合には「ディーアールさんじゅう(よんじゅう)」などという呼び方になります。
別記事でご紹介していますが、『遮音』は音を遮るという意味で、防音室の中で出る音が、防音室の外で聞こえなく(聞きえにくく)する対策のことです。そして、工事によってどの程度まで「聞こえなくなるのか?」ということを表すのが『Dr値』と呼ばれる遮音性能になります。

例えば、防音室の中で生じる音が「100」であったとして、防音室の外では「60」になっていたとしましょう。防音室の内と外の差は「40」ですので、この場合の遮音性能は「Dr-40(D-40)」といったように表記されるようになるのです。これは、防音室を作る事で「40の音が聞こえなくなった」ということを意味します。ちなみに、防音室の目的は、外に漏れる音をできるだけ少なくすることですので、この遮音性能に関しては「数字が大きいほど性能が高い」ということです。

注意
2001年1月に「JIS A 1419-1」が改正され、それまで「D-○○」と表記されていたものが「Dr-○○」と表記されるようになりました。

※ここまで説明しておいてあれですが、Dr値は「遮音性能」ではなく「遮音等級」を表すというのが正確です。一般の人にもわかりやすくするため、上記のような説明をしています。基本的に、上記のような理解をしておけば、防音工事の際には特に困らないと思います。

『〇〇dB』って何を意味する?

次は『〇〇dB』についてです。近年では、生活音に関する騒音トラブルなども増えていますので、『〇〇dB』が何を意味するか知っている人も増えているかもしれませんね。

『〇〇dB』は、音の大きさを表すものです。ちなみに、「18歳から24.5歳までの人の聴覚で、基準となる高さ(1000Hz)の音がぎりぎり聴こえるか聴こえないかの大きさ」を『0dB』としていると言われています。ただし、実際に人間の耳で聴きとれるのは「10dB」程度の大きさだと言われています。皆さんも、あまりに音が大きな空間にいた時には、耳鳴りがする…などの聴覚障害が出てしまった経験などもあると思うのですが、実は聴覚障害を引き起こしてしまう音の大きさは「130dB」程度だと言われています。こういった音の大きさは『音量』などと呼ばれ、私たちの日常生活上にある音量は「10~120dB」程度の範囲となります。

それでは、日常生活上にある音の大きさはどのような物なのでしょうか?以下に、音の種類と音量を簡単な表にしてご紹介しておきます。

音の大きさ 楽器音 生活音
130dB 生ドラム・ロックバンド・パーカッションなど 落雷など聴覚器官にダメージが大きいライン
120dB テナーサックス・ライブハウスなど ジェット機(200m)・新幹線の鉄橋下など
110dB ピアノプロ・アルトサックス・金管楽器など ジェット機(600m)・車のクラクション(2m)
100dB ピアノアマ・ハープ・吹奏楽など 地下の構内・地下繁華街の音
90dB ピアノ低学年・フルート・ヴァイオリンなど 地下鉄車内・大型ウーハーのオーディオ
80dB ステレオ中音量・ギター・ヴァイオリンなど ボーリング場・大型幹線道路沿い
70dB 掃除機・普通会話・テレビの普通音など 新幹線内・乗用車内・静かなレストラン内
60dB テレビ小音・小さな会話・大型クーラー 学校の授業・事務所
50dB 換気扇・住宅のエアコン(空調の音) 静かな室内(図書館など)
45dB ささやき声・小雨の音など 昼の住宅街・コオロギの遠音・換気扇
35dB 洋服を着る音・静寂・人の吐息など 夜の住宅街の静けさ・録音スタジオ
20dB やっと音として聴こえる程度・ほぼ無音に近い 呼吸する音・雪の降る音・木の葉のそよぎ
10dB 聴こえる事の出来る限界(超サイレント) 無音に近い・蝶の羽ばたき・髪のそよぎ

この表で分かるように、「35~45dB」程度の音であれば、日常生活上の生活音に混ざってほとんど聞こえなくなってしまう音量といえるでしょう。つまり、防音室を作る防音工事は、防音室内で生じる音が、室外ではこの音量まで下げるということが目的になるのです。基本的に、40dB程度まで下がれば、日中はほぼ問題ない音だと言えるレベルです。

防音室の性能について

それでは最後に、防音室の性能に関する計算式を簡単にご紹介しておきましょう。考え方としては非常に単純で「防音室内で生じる音」を「工事による遮音性能」でどれだけ下げられるか?という計算になります。つまり、計算式を単純に表すと以下のような感じです。

MEMO
室内で生じる音-防音室の遮音性能=室外で聞こえる音

もう少しわかりやすくご紹介しておきましょう。一般的に、防音室を求める楽器の音量は、「バイオリン85dB、クラリネット90dB、ピアノ95dB、トランペット100dB」程度です。

それでは、95dBの音が生じるピアノの防音室の場合を考えてみましょう。この場合、上述した「問題ないレベルの40dB」を目標にするのであれば、『Dr-55』という遮音性能が必要になります。ちなみに、このDr-55という遮音性能は、単純に壁・床・天井の防音工事を行うのみで発揮するのが非常に難しいレベルの性能です。実は、一般的な防音工事というものは、工事前の部屋がもともと持っている遮音性能と、そこに防音工事を行うことで得られる遮音性能を足して目標値を目指すということになります。
したがって、もともとの部屋が「Dr-25」の遮音性能を持っていた場合には、部屋の中に『Dr-30』の性能を持つ防音室を作る事で、目標とした『Dr-55』が実現することになるのです。この辺りは、実際に現地調査を行ったうえで、どの程度の性能が必要が専門家が確認します。つまり、専門知識を持っていない人間であれば、どの程度の防音性能を持たせなければいけないのかの判断がつかないため、防音工事に失敗してしまうリスクがあるのです。

まとめ

今回は、これから防音工事を行おうかとご検討中の方のため、実際に業者と打ち合わせをする前に知っておきたい防音工事の最低限の知識をご紹介してきました。

この記事でもご紹介したように、防音工事業界は、一般リフォームとは全く異なる専門用語が登場しますので、何の前知識もない状態で打ち合わせに参加すると、相手が何を言っているのかさっぱり分からない…なんて状況になる可能性があるのです。もちろん、工事を依頼する業者が優良業者であれば、お客様に合わせてしっかりと説明を行ってくれるはずです。しかし、中には工事の契約が取れれば良いなどと考えている悪徳業者もあり、そう言った業者であれば、あなたに知識がないことを良いことに、テキトーな説明で契約を迫ってくる可能性もあるのです。

まずは、防音工事に関する基礎的な知識だけでも仕入れておき、業者の話す内容が理解できる状況を作っておくのがオススメですよ。

スタッフ A

大阪で20年間にわたって防音工事に携わってきました。
防音工事に関しての事、音に関する豆知識などを配信しております。

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