オフィス防音の基礎知識!快適で働きやすい職場環境を作るための防音対策
今回は、一般住宅ではなくオフィスでの防音対策について簡単にご紹介していきたいと思います。「オフィスの防音対策」と聞くと、一般住宅とは比較にならないほど多くの人間が活動する場所ですし、必然的に話し声などが聞こえる場所となるため、「防音対策なんて特に必要ないのでは?」と考えてしまう人も多いです。
しかし、さまざまな業種が一堂に会す雑居ビルに入っているオフィスであれば、外から入ってくる音で会議にならない…、お客様の電話の声が聞こえない…なんて従業員が困ってしまう事態に遭遇する可能性もあるのです。さらに、機密事項を話し合う会議などもあるでしょうし、そういった会議の声が外に漏れてしまった場合、事業を揺るがす問題に発展してしまうこともあるのです。
例えば、新規にオフィスを立ち上げる際、1棟のビルを全て借りるという場合であれば良いのでしょうが、そうなると会社の維持コストが無駄に高くなってしまいます。最近では、「従業員が快適に働けるオフィスを作る」ということが、企業の採用活動においても重要視されていますので、この記事では、オフィスで問題となる騒音がどのような物なのか、またどういった対策がとれるのかということをご紹介していきます。
オフィスで考えられる騒音問題とは?
それではまず、オフィスで考えられる騒音問題はどのような物があるのかということについて簡単にご紹介していきましょう。そもそも、オフィスで問題となる騒音は『有意味騒音』と『無意味騒音』に分ける事が可能です。
有意味騒音は、話し声やオフィス内でかけている音楽など、特定の意味を持っている声や音のことを指します。例えば、従業員同士の会話や電話の話し声などがこれに当たります。無意味騒音に関しては、オフィス内で常に聞こえるものの、特に意味を持っていない音のことです。例えば、空調機器の稼働音や複合機などが発する音です。
それでは、こういったさまざまな音が飛び交うオフィスでは、なぜ防音対策が必要になるのでしょうか?以下にいくつかの例を挙げてみましょう。
機密情報が筒抜けになる
防音性能が低いオフィスであれば、従業員の話し声が他の入居企業に筒抜けになってしまう…という恐れがあります。当然、社内の音声の中には、機密情報も含まれていますし、個人情報など漏洩してはいけない情報もたくさんあるのです。
したがって、こういった情報の漏洩を防ぐためにも、しっかりとした防音性能が必要になるのです。防音対策をしていなければ、会議や何気ない会話の声が外に漏れてしまい、気付かないうちに機密事項や個人情報が漏れてしまう可能性があります。
外部からの騒音で作業効率が落ちる…
雑居ビルの一室を借りているオフィスであれば、他の入居企業から出る音に悩まされてしまう…ということも考えられます。特に、真下に飲食店などが入っていれば、かなりの騒音が考えられますのでノイズによるストレスはかなりのものになるでしょう。
自社内の問題であれば、注意することもできますが、外からの騒音は静かにしてもらうこともなかなか難しいです。そのため、重要な会議や集中する必要がある作業でも、外の音が気になって作業効率が落ちてしまう…なんてことが考えられるのです。
web会議の騒音問題
コロナ禍以降は、取引先企業との打ち合わせにweb会議ツールを利用しているという企業が増加しています。しかし、オフィスによっては、このweb会議が騒音の元になっているのです。例えば、過剰な反響音が発生するオフィスではハウリングなどで会議が円滑に進まない…、オープンオフィスの形になっているため、会議の音が他の従業員の集中を乱す…など、今までになかった騒音問題が生じているのです。
こういった問題を防ぐためにも、適切な防音対策を行い、全ての従業員が円滑に作業が進められる環境が求められています。
オフィスの防音対策でおさえておきたい『防音の三原則』
防音対策に関しては、大きく分けて『吸音』と『遮音』という2つの手法が存在します。別記事でもご紹介していますが、吸音は「音エネルギーを透過、または吸収して反射させない」という対策で、遮音は「音エネルギーを遮断し、通さない」ことです。オフィスでの防音を考えた場合には、この2つをうまく活用し、オフィス内の反響音を低減するためには『吸音』を、重要情報が外に漏れないようにするためには『遮音』するといった感じに、必要に応じて対策を練る必要があります。
ここではまず、会話の情報機密を保護するための『防音の三原則』をご紹介しておきます。アメリカなどでは、「Absorb :吸音」「Block :遮断」「Cover Up:サウンドマスキング」という3つを音の三原則として、それぞれの頭文字から「ABCルール」などと呼んでいます。
吸音(Absorb)
上述したように、「音エネルギーを透過、または吸収して反射させない」という対策で、音の増幅を抑える対策となります。発生する音そのものは小さくなりませんが、壁や天井などで反響して音声が増幅され漏れるのを防ぐ対策となります。
具体的には、壁や床、天井などに多孔質の吸音材(グラスウールやロックウールなど)を施工する感じです。
遮音(Block)
音は振動で伝わるものですので、少しでも隙間があればそこから音漏れしてしまいます。したがって、音漏れを防ぐことを考えた場合、可能な限り隙間を無くし遮音するという対策がとられるのです。もちろん、オフィスですので、消防法や換気面に注意して行わなければいけません。
具体的な手段としては、ドアを防音性の高いものに交換する、音の発生源をパーテーションで囲うなどの対策がとられる事が多いです。
マスキング(Cover Up)
マスキングは、隠したい音の周波数と同じ周波数の音を流すことで、生理的に聞こえにくくするという対策です。もともと、テレビの砂嵐のような音を使用していたそうですが、この音は長時間聞いているとストレスになるという訴えがあり、最近ではヒーリング効果を見込めるような自然音が採用されるようになっています。
この方法は、他の防音対策と比較すれば、安価で簡単に行える対策と言う点がメリットです。しかし、音量やスピーカーの位置によっては逆に会話の妨げになることもあるなど、意外に難しい面もあります。
具体的な防音対策について
それでは最後に、オフィスで可能な具体的な防音対策をいくつかご紹介しておきましょう。基本的に賃貸物件となりますので、可能な対策と不可能な対策というものがあります。以下でいくつかの防音対策をご紹介しますので、必要に応じて導入を検討してみてください。
壁を吸音できるようにする
オフィス内の壁に吸音材を施工する手段です。多孔質・スポンジ状のロックウールやグラスウールなどを壁に取り付け、吸音性を上げる対策となります。なお、遮音シートと一緒に使うことでさらに効果的になります。
サウンドマスキングを行う
サウンドマスキングは上述したように、別の音で騒音を聞こえにくくするという手法です。具体的には、天井にスピーカーを設置して、空調音のような背景音を流す、自然音などの軽音楽(イージーリスニング)を流すなどの対策となります。これをすることで、会議中の声や作業音など、特定の音が気にならなくなると言われています。
なお、流す音に関しては、リラックス効果が期待できるような物もありますので、専門家と相談の上、導入してみると良いでしょう。
吸音パーティションを設置する
オフィスでの防音対策として、最も取り入れやすく効果が期待できるのが吸音パーティションを使って区切るという方法です。簡易的なパーテーションでも効果的ですが、より防音効果を求めるのであれば、床から天井まで隙間なく区切ることができるタイプがオススメです。
なお、パーテーションの設置は、音が気にならなくなる以外にも、視覚的なノイズを減らす事ができるという効果もあります。皆さんも経験があると思うのですが、仕事中に他人の身振り手振りが視覚に入り、うっとうしく感じる…という場合があるのです。パーテーションを設置すれば、こういった視覚的なノイズも無くすことが可能です。
まとめ
今回は、オフィスにおける防音対策の必要性や、具体的な方法についてご紹介してきました。多くの人が活動するオフィスでは、仕事上の会話や顧客からの電話対応などがありますので、多少の騒音は我慢しなければならないものだとは思います。
しかし、建物構造などによっては、社内で話している内容が他の入居企業に筒抜けになってしまう…なんて恐れもあり、個人情報の重要性が高くなった近年では、オフィスの防音性能は決して無視できる問題ではないのです。もちろん、うるさいよりも静かなオフィスの方が仕事の効率も高くなると思いますし、現状に何らかの問題があるのであれば、簡易的な防音対策から始めてみても良いのではないでしょうか。