近くの工事がうるさい…そもそも工事だからと言って騒音を出しても良いの?
今回は、非常に多くの方が悩まされてしまう建設現場から聞こえてくる騒音問題について解説していきたいと思います。
皆さんも一度は経験したことがあるかもしれませんが、「静かで暮らしやすそう!」と思って住み始めた部屋なのに、近くで大規模な工事が始まり、毎日朝から晩まで工事現場から聞こえてくる騒音や振動に悩まされてしまった…なんてことは珍しくありません。特に最近では、新型コロナウイルス問題があり、テレワークが導入されて日中も自宅で過ごすという方が増加しています。そのため、今までは気付くことが無かった工事の騒音などが気になり始めてしまい、本来はリラックスできるはずの自宅にいる事がストレスに感じてしまう…なんて方が増加しているようです。
ここで気になるのが、「そもそも工事だからと言って他人に迷惑をかけるような騒音を出して良いものなのか?」ということではないでしょうか?最近では、ちょっとした生活音で近隣トラブルに発展してしまうようなこともある中で、工事現場で生じるような大きな音は「出してはいけないのではないか?」と考えてしまう人も多いです。
そこでこの記事では、現在の日本の法律について、工事現場の騒音はどの程度規制されているのかについて考えてみたいと思います!
工事の騒音に対する法規制について
『騒音問題』に関しては、人によって感じ方が異なりますので、なかなか難しい問題です。例えば、近年よく問題になっている生活騒音に関しては「これぐらいの音は当たり前」と考える人もいれば「気になって仕方ない…」と感じてしまう人など、両極端な感想になってしまうものです。
それでは、大きな音が生じる工事現場の騒音はどうなのでしょうか?現在の日本の法律では、建設作業による騒音について、一定の場合に、法律上の規制作られています。
騒音規制法
あまり聞き馴染みのない法律ですが、工事や建設作業による著しい騒音に関しては、一定の場合にこの法律で規制しています。
都道府県知事は、住居が集合している地域、病院や学校の周辺地域、その他の騒音の防止により住民の生活環境を保全する必要があると認める地域については、騒音規制法第三条で指定することができるようになっています。この騒音を防止する必要があると指定された地域は『指定地域』と呼ばれ、工事による騒音などの規制を受けるのはこの地域となるのです。
ただし、この指定地域になっていたとしても、全ての工事騒音について騒音規制法による規制がされるわけではありません。実は、規制される騒音というのは、『特定建設作業』と言われる、特に騒音の恐れが大きい作業のみとなっているのです。現在は、くい打機やさく岩機、バックホウなど、使用する建設機械に応じて、その作業が特定建設作業なのかどうかが定められています。逆に言えば、特定建設作業に入らないのであれば、騒音の規制が無いということです。
振動規制法
住居の近くで大規模工事が行われる場合、問題となるのは騒音だけでなく『振動』もありますよね。実は、工事による振動に関しても、振動規制法という法律が作られており、一定の場合については規制がされています。
コチラに関しても、都道府県知事などが「振動規制をする必要がある」と判断する地域を指定し、その地域内では振動が規制されるということになっています。ちなみに、作業内容に関しても、特定建設作業に分類される「著しい振動を発生させる」建設作業のみです。現在は、杭打機を使用する作業や鋼球を使用して工作物を破壊するような解体作業が特定建設作業に指定されています。
どんな規制があるの?
それでは、工事現場の騒音や振動については、法律によってどのような規制がなされているのでしょうか?ここでは、それぞれの法律で定められている規制についても簡単にご紹介しておきます。
騒音規制法による規制
まずは騒音規制法による規制です。騒音規制法によって規制される特定建設作業を行う場合、作業の騒音防止の方法など既定の事項を、作業開始の7日前までに市区村長に届け出なければならないと決めています。そのため、特定建設作業を行う場合には、事前に何らかの届け出を出している事がほとんどです。
なお、騒音規制の基準となる数値に関しては、指定地域の種類によって異なります。一例をあげると、指定地域第1号区域の場合は「敷地境界において85デシベルを超えないこと」という規制がされています。また、作業時間に関しても規制がされており、原則として「午後7時~午前7時は作業をしてはいけない」「1日当たり10時間以内」「連続6日以内」という規制があります。また、近隣住民が自宅にいることが多い日曜及びその他休日も作業をしてはならないという決まりがあります。
注意が必要なのは、この規制はあくまでも『特定建設作業』を行う場合の規制だということです。つまり、特定建設作業に指定されないものに関しては、現在の日本の法律では24時間いつでも作業可能だということなのです。近くの工事現場から聞こえてくる音が気になる…という場合、その作業が特定建設作業なのか、また規制を超えた騒音なのかを調べる必要があります。そして、特定建設作業でない場合は、法律を違反しているわけではないので、「工事を停止しろ!」などということは難しいのが実情です。ご自身で何らかの騒音対策を考えなければならないでしょう。
振動規制法による規制
次は振動規制法による規制基準です。上述したように、こちらも特定建設作業に分類されるものだけが規制されます。
振動規制法では、指定区域内で特定建設作業を行う場合、当該建設作業の開始7日前までに、振動の防止方法などと言った既定の事項を市区村長に届け出なければならないと決めています。そして、振動の許容限度が「75dBまで」と決められています。これに加えて、作業時間などの規制も設けられていると言う点は騒音規制法と同じです。
こちらの法律に関しても、特定建設作業の規制ですので、それ以外の作業で生じる振動に関する規制はありません。
工事の騒音に悩んだらどうする?
ここまでの説明で分かるように、工事現場での騒音や振動に関しては『特定建設作業』に関してはいくつかの規制が設けられています。逆に言えば、特定建設作業に分類されていないものに関しては、何の規制も受けないという意味なのです。したがって、あなたの住居の隣でマンション建設が始まり「うるさい…」と思ったとしても、法律を盾にクレームを入れるということはできません。それでは、工事現場の騒音は泣き寝入りするしかないのでしょうか?
もしあなたが工事現場からの音に悩んだ場合は、まず施工主に「騒音を何とかしてほしい…」と相談してみましょう。騒音の原因が、作業員の大きな声などであれば、きちんと対処してくれるはずです。しかし、作業を進めるうえでどうしても生じてしまうような音に関しては、施工主も何らかの対策をとってくれるものの解消できない…なんて場合もあるでしょう。
もし、クレームを入れたとしても、話も聞いてくれない…なんて対応の場合、自治体の役所などに相談してみるのも良いです。この場合、基準に違反するような騒音が出ている場合には、きちんと対処してくれると思います。
ここまでは、一般的な騒音対策なのですが、工事現場の騒音に関しては、どうしても生じてしまうものがある上に、法的に規制がない作業も多いということで、改善してもらえない場合も多いです。そのような時には、ご自身で何らかの対策を検討するしかないでしょう。特に、マンション建設など大規模工事になると、数年単位の工事になってしまうこともありますので、お金をかけてでも外からの音を遮る防音対策がオススメです。
まずは、工事現場側の窓に、防音効果の高いカーテンを設置してみるなどの対策をしましょう。それでも耐えられないような音に感じるようであれば、窓を二重窓にする、換気口を防音仕様にするなどの対策がオススメです。
ご自宅に防音工事を施す場合には、現状の悩みなどを専門業者に伝えて、効果的な防音対策を提案してもらうと良いでしょう。