騒音対策の考え方について!静かな住環境を実現するには音の種類ごとに有効な対策を施すべき

今回は、日々の生活の中で騒音に悩まされることのない静かな住環境を実現するための防音の基礎知識をご紹介したいと思います。

マンションなどの集合住宅で暮らす方が増加している昨今、ご家庭ごとの距離が非常に近くなっていることから、ちょっとした生活音が原因となる騒音トラブルが増えています。さらに、都市部などでは、狭い土地を活用して戸建住宅を建設することが増加していることから、隣家との距離が数十cm程度しかなく、戸建住宅なのにお隣からの騒音に悩まされてしまう…なんてことが増加していると言われています。

こういった騒音問題に関しては、音を出す側が何らかの対策を施すべきだという考えが根強いのですが、近年騒音の問題となっている音が「誰でも生じさせてしまう可能性がある生活音」であるということが多く、音を出している側が騒音の原因になっていると考えていない…という場合が増えています。逆に言えば、あなたが「音に悩まされている…」と思っていても、実は音を出している騒音主側になっている可能性もあるのです。

そこで今回は、誰もがおさえておきたい防音の基礎知識について簡単にご紹介しておきたいと思います。一昔前までであれば、防音工事は自宅で楽器演奏をする方などが行うもの…と考えられていたのですが、近年では生活騒音を遮断するために行う方も増加していて、生活音を防止するための部分的な防音リフォームの依頼が急増しています。

騒音の原因となる『音』にも種類が存在する!

まず皆さんに覚えておいてほしいのは、人が「うるさい…」と感じる音に関しても種類が存在するということです。

例えば、家の中にいる時に、外から聞こえてくる音の中には、飛行機・自動車・楽器の音・人の話し声などが考えられます。これらの音は、空気を伝わって家の外壁や窓、屋根などから侵入してくる『空気伝搬音』と呼ばれるものです。実は、家の中に侵入する音は、これ以外にも存在しており、地下鉄・大型車の走行、近くの工事現場などの振動が地面を伝わって、建物の基礎や床から侵入してくるものがあるのです。こちらは『固体伝搬音』と呼ばれます。

つまり、家の中を静かで快適な空間にしたいと考えるのであれば、さまざまな音の種類について、それぞれの侵入経路ごとに適切な対策をしなければいけないのです。防音対策は、どういった音を防ぎたいのかによって必要な対策が変わってしまうということをしっかりと理解しておきましょう。

音の種類別に必要な防音対策を知っておこう

それでは、皆さんに覚えておいてほしい、種類が異なる音に対する防音の基礎知識をご紹介していきます。上述したように、家の中に侵入してくる音には『空気伝搬音』と『個体伝搬音』の2種類(厳密にはこの二つが混ざったものもあります)が存在しますので、静かで快適な住環境をつくるためには、それぞれに対する適切な対処法をおさえておかなければいけないのです。

空気伝搬音を防ぐためには?

空気伝搬音は、楽器の音色やTVの音声、人の声など空気の振動で伝わる音です。まずは、この空気伝搬音を防ぐためにおさえておきたい防音対策についてご紹介しておきましょう。空気伝搬音は、建物に生じる小さな隙間などから屋内に侵入して住人が騒音に感じるものです。つまり、壁や窓の構造的な問題が弱点となり、十分な防音効果を得られないことから「うるさい」と感じてしまうのです。

空気伝搬音を防ぐためには、以下のような事に注意しておきましょう。

  • より重く、より厚い物が高い防音効果を発揮する
    まずは、壁や床、天井に使用する材料に関することです。家を建てる時には外観の美しさを重視する人が多いと思うのですが、防音効果を考えた場合、使用材料の重量によって遮音性能が変わるということを頭に入れておきましょう。基本的に、壁や床、天井の材料は「重くて厚い物」ほど遮音性が高まります。
  • 多重構造の壁が有効
    遮音性を高めたいと考えても、むやみに壁を重く・厚くすることは難しいです。そこで住宅の防音対策として有効になるのが、壁や窓を二重にする多重構造です。壁などは、中間の空気層にグラスウールなどを充填することで吸音効果を得られるので防音性を高めることができます。また、共振を防ぐため複合材の使用も効果的です。
  • 建物に生じる隙間をできるだけなくす
    上述したように、音は住宅に存在する小さな隙間から侵入します。逆に言えば、こういった隙間を埋めることで、住宅の防音性能を高めることができるわけです。例えば、ドアや窓、換気口など、音の通り道となる隙間をコーキングなどで確実に塞ぐことが重要です。

個体伝搬音を防ぐためには?

次は個体伝搬音の対策についてです。個体伝搬音は、振動が構造物などを伝わる音の事を指しています。マンションなどの集合住宅で騒音トラブルが増加しているのは、各家庭が構造物でつながっていることから、足音や椅子を引き摺る音などが階下に伝わり、それがうるさい…と苦情を入れられてしまう…なんてパターンが多いようです。小さなお子様がいるご家庭は、特に注意しておきたいポイントと言えるでしょう。

個体伝搬音の対策は以下のような点に注意しましょう。

  • 家の構造を強固にする
    一般的に家の構造を強固にする事が有効と言われています。例えば、木造や軽量鉄筋造の住宅は、剛性が低いため構造体を伝わる振動が発生しやすくなりがちです。ただし、剛性が強い鉄筋コンクリート造は、振動が遠くまで伝わる事があるので、建築時に防音性を高めたいということをしっかりと伝えておきましょう。
  • 床のクッション性を高める
    これはどちらかというと、自分が騒音の原因とならないための対策です。フローリングの部屋が増えた近年では、足音や物を落とした時の落下音が階下に伝わり、騒音トラブルの元になる場合があります。こういった事を防ぐためには、床にカーペットなどのクッション性のあるものを敷くのが有効です。
  • 浮き床で振動をシャットアウト
    浮床構造にすることで、床と構造体の縁を切る事ができ、音の侵入を防ぐことができます。ドラムの防音室などは、床・壁・天井を防振構造として、建物から縁切りすることで、高い防音効果を得るなどと言った対策もとられます。

まとめ

今回は、誰もがおさえておきたい、防音の基礎知識についてご紹介してきました。この記事でもご紹介したように、家の中に侵入してくる『騒音』に関しても、個体伝搬音と空気伝搬音という種類が存在しており、それぞれに必要な対策が異なります。つまり、静かで快適な住空間をつくるためには、しっかりとそれぞれの音の特徴を掴んでおき、適切な対策をとらなければいけないということです。

なお、一般的に『防音』というものは、「音を通さないようにする対策」の事だと考えられています。しかし、遮音性能ばかりに注目してしまうと、部屋の中で反射音が響くようになってしまうため、逆に苦痛を感じるような空間になってしまうことがあります。快適な住空間を実現するためには、音を跳ね返すことだけでなく、適度に音を吸収する吸音性能とのバランスも重要だと考えておきましょう。

スタッフ A

大阪で20年間にわたって防音工事に携わってきました。
防音工事に関しての事、音に関する豆知識などを配信しております。

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